カラクリの行方   作:うどんこ

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 大変長らくお待たせしました。色々な事情により投稿出来ずにいましたがやっと投稿する事が出来ました。


第八話 雑談

 第10宮(ディエス・パラシオ)のすぐ近くにある機械仕掛けの不気味な建物の中、二人の人物が思い思いに行動していた。

 一人はこの建物の主人であるアンジェ・バニングスである。モニターに映し出される膨大な量の情報を見ながら、忙しそうにキーボードを弾いている。

 もう一人はザエルアポロ・グランツ。己の宮で休憩していた所を、アンジェがちょっと手伝って欲しい事があると言って、無理矢理連れて来られたのだ。この様な事をされれば、不機嫌になるもの当然である。イライラした様子でアンジェの今回の『作品』を観察していた。

 

「フーッ! 最終調整もそろそろ終わりに近づいてきたや〜。そうそう、今回の私の作品を見ての感想はどうだい、ザエルアポロ君?」

「そんな事を聞く為だけにこの僕をここに連れて来たのかい? 正直に言うと、()と比べて見た目以外違いが分からないのだけれども…本当にコレが君の自信作なのかい?」

 

 そんな事を言いながらも、アンジェの作品を食い入る様に見ていた。何だかんだ言いながらも興味深々なのである。

 

「そうだよ〜。今まで色々と作ってきた物をぶち込んでみた自信作だよ〜。まだ動作確認はしてないからどの様な動きをするか分かんないけどね……。まぁ、これからまだまだ弄っていくから問題はないかなぁ……」

 

 言い終わると同時に、アンジェは先程まで座っていた椅子から立ち上がった。どうやら先程までやっていた作業は終わったようである。ザエルアポロの側まで歩いて行くと、己が持っていた電子端末を手渡した。

 

「……これは?」

「ああ、これかい? これは現世で最近作られた電子端末って言うものだよ。タブレットって言った方がいいかな? 色々と便利だから使っているんだ〜。ザエルアポロ君の所でも取り入れたらどうだい? 便利だと思うよ」

「はぁ、そう言う事を聞いたんじゃ無いんだけどな……。一体何の為に僕にこれを寄越したんだい?」

「ああ、それには現時点での細かい情報や装備などを纏めた資料が入っているんだ。それをザエルアポロ君に見て貰おうと思ってね。その後に動作確認をして、キミからの意見を聞こうっていうつもりだったのさ」

「そう言うのは早く言ってよね……」

 

 そう言いながらもアンジェが手渡した資料に目を通していく。色々と気になる内容が有るが、最後まで目を通していった。そしてそのまま気になった事をアンジェに質問した。

 

「色々と面白い物を積み込んでいるのは分かったのだけれど何か問題を生み出してる所が無いかい? 調整すればもっと無難な感じになりそうなものだけれども……」

 

 その言葉を聞くやいなや、アンジェは分かってないな〜と言わんばかりの顔をし始めた。かなりムカつく顔である。

 

「ザエルアポロ君は分かってないな〜。ロマンを追い求めると所々に異常(デメリット)が生じるのはお決まりだろ。それがまた味を生み出すからいいんじゃないか。余りに問題が酷い場合はそれを補う為の機能を追加すれば出力を抑える必要もないしね。因みに私は最初に決めた性能を上げる事はあっても、抑えるという選択肢は無いよ。そこん所よろしく」

 

 ザエルアポロにはアンジェが言っている事が理解出来なかった。問題を指摘しているのにロマンがあるからなどとズレた事を言っている。しかも、深刻な問題が生じた場合でも、調整の仕方はふざけているとしか言えない。問題が生じないレベルまで性能を下げるのでは無く、問題が深刻ではないレベルまで周りで補うといった始末である。もはや、色々とイカれているとしか思えない。

 呆れ顔でアンジェを見つめていると、アンジェは理解を得られなかった事に少し残念そうな様子を見せた。

 

「ザエルアポロ君はロマンを追求するタイプではなかったか〜。いや〜、失敬失敬。まあ、私はこう言う奴だと理解してくれたまえ。ま、性格みたいなものさ」

 

 そんな簡単な一言で済ます次第であった。

 ザエルアポロは先程までの会話は一旦置いといて、一番気になった問題について言及し始めた。

 

「まあ、さっき迄の事はいいとして、一つ重大な問題を抱えていると思うんだけど、そこはどうやって補っているんだい?」

 

 その言葉を聞いた途端、アンジェは待ってましたと言わんばかりの顔をし始めた。ザエルアポロは絶対に質問してくるだろうと確信していたのだろう。かなりウザい顔をしている。

 

「そこを聞いちゃうかい! ザエルアポロ君。やはりそこに気付くとは流石だよキミは。ボンクラ供に見せた場合は絶対に流し読みする箇所だからね!」

「まだ内容を言ってないのだけれども……。まあいいや、で、一体コイツは()()()()()()()()()()? このままだと、絶対まともに動かせないと思うのだけれども」

 

 アンジェは何を聞きたいのか理解しているにも関わらず、焦らすように見当違いな事を答えた。

 

「どうやって動くのかだって? そこに全て書いてるじゃあないか。コイツの元になった破面(アランカル)の霊力と足りない分を補う『核』が動力源だって」

 

 ザエルアポロはまだ焦らすアンジェに少しイライラしながらも問題を追求していく。

 

「ああ、確かに書いてあるね。でもこれだとただ動く事は出来たとしても、ココに書いてある兵装は何一つまともに機能させる事が出来ない筈だよ。例えるなら馬鹿みたいにデカいモンスターマシンに小さいエンジンと燃料タンクを積んでいるようなものだよ。足りないエネルギーと貧弱な動力炉を一体どんな魔法を使って補ったんだい?」

「其処まで言われちゃあもう隠し通す事は出来ないなぁ。ネタばらししないといけないなんて、ああ困った困った。私とザエルアポロ君だけの秘密だからね。ミンナニハナイショダヨ」

 

 口では困ったと言いながら、態度は正反対であるアンジェにザエルアポロは呆れながらも早く説明しろと促す。

 

「ザエルアポロ君が言った通り、私が積み込んだ武装はどれもこれも生半可な力じゃ動かす事は出来やしない代物さ。ま、そんな事これには書いて無いから殆どのヤツらは気付けないことだろうけどね。そんな代物を動かすにはココに書いてある動力源じゃあちっと物足りない。じゃあどうすればいい、足りない分を補えばいいじゃないか! 簡単なことだね」

「そこで私はコレを組み込むことにした」

 

 そう言って取り出したのは、朱殷(しゅあん)に染まった拳大の禍々しい(たま)である。

 

「何だい、それは?」

「ん? これかい? レプリカだよ」

 

 その一言にこけそうになりながらも何とか耐えるザエルアポロ。その様子をニタニタ笑うアンジェ。

 

「コイツの本物は既に搭載してしまっているから手元に無いけれども、コイツは莫大なエネルギーを生み出し、それを一気に循環させる事が出来る代物だよ。簡単な話、霊力を著しく高める為の物だね」

 

 その言葉にザエルアポロは呆れたといった様子で言葉を投げ掛けた。

 

「それじゃあ何だ? そいつを使えば貧弱な魂魄も十刃(エスパーダ)を凌ぐ霊力を手に入れる事が出来るって事かい?」

 

「理論上はね」

 

「そんな物が存在するならこの世界のパワーバランスが崩壊するじゃあないか。馬鹿馬鹿しいったらありゃしないね」

 

「普通そう思うよね」

 

「まあ、こうは言っているけど期待はしてるんだ。資料を見せてくれよ、資料。実際に見た時に知識があった方が理解が深まるだろう?」

 

 ザエルアポロはそう言ってアンジェに資料を要求したが、アンジェは何も渡して来なかった。それだけの事であったが、ザエルアポロは()()がどういった扱いの物かを察した。

 

「そういう事か……。いや、少し安心したよ。君にも秘密の研究内容があったんだね。僕は少し前まで何でもかんでも他人に発表する馬鹿だと思っていたよ」

「酷いね〜、ザエルアポロくんは。いくら私でも、今までで一番力を注いできた傑作を他人においそれと深い情報を渡すはずがないだろう。教えるのは名前と効果までだね。因みに、キミに情報を公開したヤツは全てパクられても痛くも痒くもない代物だからね。そこのところ勘違いしないように」

 

 その一言にザエルアポロは目を細めた。

 

「あれらの物が君にとってはどうでもいい代物なのかい? ちょっと正気を疑うよ……」

「そうなのかい? ま、価値観の違いってヤツかな。そうそう! 名前を紹介してなかったね! 一番大切な事を忘れてたよ‼︎」

 

 そう言って朱殷(しゅあん)の珠を己の胸に当て、おぞましい笑みを浮かべながら言葉を紡いだ。

 

「『憺珠(コラソン)』これがコイツの名前だ。いい名前だろう?」




 次はやっと十刃(エスパーダ)就任の話です。書き置きは無いから次回の投稿も未定です(吐血)。今月中にもう一つあげたいな…。

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