「ようやくアンジェちゃんが動き始めたみたいですねぇ、隊長。彼女、ずっと大人しくしてると思ってたボクの予想を見事に裏切ってくれましたわ」
「そうだね、こんなに早く行動を起こすとは私からしても予想外だったよ」
そうは言うものの、藍染の表情は全てを見透かしたような表情であった。
「……ホンマかいな? まぁ、それはええとして。アンジェちゃん、いきなりノイトラに喧嘩を売るとはねぇ……。流石に相手が悪いんちゃうん?」
そんな市丸の疑問に藍染は何も問題ないといった様子である。
「心配する必要はないよ。彼女は『戦士』でも『兵士』でもなく、『狩人』だからね。『獲物』に追い詰められる様な失敗はしない筈さ。まあ、それはこの戦いをみれば分かるよ」
その言葉を皮切りに二人の意識はアンジェ達の戦いの様子が映し出されたモニターへと向けられた。
ーーーーーーーーーーー
解号を唱えると同時に大きな砂煙が辺り一面を包み込んだ。これにはノイトラも追撃を中断せざるを得なかった。舌打ちしながらも砂煙が消えるのを待った。
砂煙が消えると、そこにはあまり様子の変わっていないアンジェの姿がそこにはあった。強いて変わった所といえば額に小さな鼠の頭蓋骨のような物が付いているくらいであり残りは先程までと変わらずタンクトップとホットパンツに白衣を纏った格好であった。
しかし、大きな変化は外見以外に起こっていた。アンジェの姿が
「なンだぁ、テメェの
その言葉に四人のアンジェはゲラゲラと笑いながら答え始めた。
「そうだよ〜。キミを仕留めるつもりだよ」
「キミはまだ私の『
「これから私たちがじっくりと教えてあげるよ」
「それまでせいぜい悪足掻きでもしているといいよ」
そう言うとアンジェ達はノイトラの四方を囲み始めた。そしてそのまま円を描くようにゆっくりと回っている。
これにはノイトラも面倒くさそうに舌打ちした。攻撃対象が四人いる上にそれに囲まれてしまっているのである。一体を狙えば残りの三人が攻撃してくるのは目に見えている。しかし、各個撃破以外道がないのだ。
そこまで考えると、早速自分の目の前にいるアンジェ目掛けて走り始めた。するとどうであろうか、目の前のアンジェは逃げる素振りも見せずに数十個の小さな光球をノイトラ目掛けて飛ばしてきた。大した威力もないだろうとたかをくくったノイトラは、そのまま正面突破をしようとして光球に触れた。
──その瞬間、途轍もない激痛と痺れがノイトラを襲った。光球が当たった場所は特に傷を負ったように見られない。しかし、光球が当たった場所から言葉に表せないような痛みと全身を襲う痺れが一斉におきたのである。痺れで身体を動かせずにいるノイトラに、光球を放ったアンジェ以外の三人が一斉に襲いかかった。ノイトラの4本の腕に貫手で攻撃をするも軽い傷しか負わせることしかできなかった。そしてそのままノイトラの四方へと散り始めた。
それと同時にノイトラの身体から痺れと痛みが引いてきた。どうやら一瞬だけではあるが相手の身体の自由を奪う攻撃のようである。
そこでノイトラはある事に気が付いた。己の自由を奪った後に開放前に放った強烈な攻撃をしてきていない事に。その瞬間、ノイトラの中に一つの考えがよぎった。相手はこの戦いを『戦い』として見ていないのではないか。そう考えると途轍もない怒りがノイトラの中で湧き上がった。己の事を『獲物』とみなしてジワジワと弱らせながら『狩り』を楽しんでいるのだ。その証拠に、ノイトラの周りを攻撃する事もなく四人のアンジェがくるくると回っている。どうやらノイトラが何か行動を起こすまで何もする気はないようである。まるで遊びの為に獲物をなぶって狩ろうとしている猟犬のようである。
その事に怒りを抑えきれなくなったノイトラは叫んだ。
「このクソアマがァ! このオレを舐めやがって‼︎ テメェみてぇ戦いを舐めてる奴がこのオレを殺せるものか! テメェら四人共アタマを捻じ切ってやる!」
その言葉にアンジェ達はまたしてもゲラゲラと笑い始めた。まるで何も理解出来てないと笑っているようだった。
「私は別に『戦い』を舐めてはいないよ」
「ただ、自分の能力に合わせた戦い方をしているだけだよ」
「さっきの
「そしてキミはまだ
急にアンジェ達はノイトラの周りを回るのを止めた。そしていきなり霊圧を指先に集め始め、そのまま四人同時にノイトラの方向へとその指先を向けた。
「「「「
四方向からの
──筈であった。上に跳んだ筈であるのに何故か地面に倒れ込んでいる。その原因はすぐにわかった。両足が吹き飛ばされていたのだ。四人とも
ーーーーーーーーーー
四方向から放たれた
その様子にアンジェはわざとらしく驚いた。
「へぇ〜。私たちの『
ノイトラは目の前に立っているアンジェ達を睨みながら怒りにみを任せて叫んだ。
「オレが
ノイトラは新たに腕二本を生やし、計六本の腕と鎌でアンジェ達に襲いかかった。幸いな事に、先程の攻撃の後、一ヶ所に集まっていたので一気に攻撃する事が出来そうである。有無を言わさず先手必勝とばかりにアンジェ達に飛びかからんとした瞬間、途轍もない寒気がノイトラを襲った。
このまま突っ込むと不味いと思ったが、もう既に手遅れだった。上半身と下半身が引きちぎられ、大量の血をぶちまけていた。超速再生でも治すのは不可能なダメージである。一体何が起こったのかと考えながらも、飛びそうな意識の中で前にいるアンジェ達を睨みつけていると後ろから足音が聞こえてきた。
後ろを振り返ると、そこには
「せっかくだから、キミに私の能力の説明をちょっとばかししてあげようか。どうせ知った所で活かす事なんて出来なくなるのだけどね。簡単な言うとあの四人の私は全て
ノイトラは意識が遠のく最中、アンジェに向かって言い放った。
「クソがッ‼︎ このオレがテメェみてぇな奴に負けるとはよォ……。さぁ殺せ! オレは戦いの中で死にてぇんだ‼︎」
その言葉にアンジェはキョトンとした顔をした。何を馬鹿な事を言っているんだといった様子である。
「キミを殺す? 馬鹿言っちゃいけないよ。私がなんでキミをジワジワと消耗させる戦い方をしたと思ってるんだ? 出来るだけ原型を留めた状態のキミを私の実験台にする為に決まってるだろ。
ああ、心配しなくてもいいよ。君にはこれからも重要な役割を担ってもらうつもりだから安心してくれたまえ」
ノイトラの意識がどんどん遠のいていく。このままでは戦いの中で死ぬどころではなくなるのに、身体はもう既に動かす事すら出来なくなっていた。
「さぁて、キミの身体は無駄にはしないよ。これからもバリバリ戦える身体にしてあげるから安心して眠ってくれ」
それがノイトラが聞いた最後の言葉であった。
大変長らくお待たせしました。次回の投稿も未定ですが待って頂けると幸いです。