アンジェは今、とある
それに対してアンジェは、相手の隙を伺いながら手をワキワキさせていた。
遠くで何か物音がした。その時、一瞬であったが子犬の注意がアンジェからそれた。その瞬間、アンジェの行動は早かった。
一瞬で子犬を抱き上げ、頬ずりをし始めた。
「ああ、とっても可愛いな〜。こんなに可愛らしい存在がなぜこんな所にいるのだろうか。まあ、そんな事はどうでもいいや。私のペットにしちゃってもいいかな、いいよね?」
かなり暴走気味であるアンジェに対し、子犬はたまらないと言った様子である。助けを求める様に大きく鳴き始めた。
するとどうであろうか、1人の
「……ったく、クソ犬が……一体どうしたってんだ……って、あン? 誰だテメェは?」
アンジェと比べてかなり大柄の男がアンジェと子犬の前にやって来たのであった。
アンジェはその男に気付くとあからさまに残念そうな顔をしていた。なぜなら、自分が今抱えている子犬は、おそらく目の前の人物のペットであろうと思ったからである。
そんな残念そうな顔をしているアンジェの顔を見た男は少しイラついた様子で言葉をぶつけてきた。
「なんだテメェは? 人の顔を見るなりいきなり顔をしかめやがって。それとテメェが抱えている犬は俺のだ、分かったらさっさと降ろしやがれ」
目の前の男の言葉に従って子犬を降ろしてやると、一目散に男の元へと逃げていった。どうやらかなり嫌われてしまった様だ。
アンジェはとても残念そうな顔をしながら目の前の男へと一応自己紹介をし始めた。
「いやはや、先程は済まなかったね。私はアンジェ・バニングスと申す者だよ。最近この
その様子を見て、男は若干呆れながらもアンジェの問いに答えた。
「……こいつの名前はクッカプーロだ。それと、俺の名前はヤミー・リヤルゴ、
これで話は終いと言った様子でヤミーはその場から立ち去ろうとしたが、アンジェがそれを許してはくれなかった。
「ちょちょちょ、ちょっと待ってくれないかな。君が
その質問に多少の疑問を持ちながらもヤミーは正直に答えた。
「あン? 俺の宮はすぐそこにあるやつだ。そんな事聞いてどうするつもりなんだ?」
その質問に対してアンジェは、特に臆する様子もなく、自分の考えを語り始めた。
「いやなに、自分の住処をこの辺りに移そうと思っていてね。この辺りに住んでる人に許可を貰ってた方が問題が少なくて済むかな〜って思った次第なんだ」
ヤミーは別にどうでもいいといった様子である。その様子を見てアンジェは、これで移住先が見つかったかなと、少し気分が良くなっていた。
「あ? そんなくだらねぇ事を聞くためだけに、俺を呼び止めたのかよ。別に移住したけりゃ移住してくりゃいいじゃねーか。俺はンな事気にしねーからよ」
「そうかいそうかい。じゃあ遠慮なくこの辺りに住処を移動させて貰おうかな。ありがとうヤミー君、君のお陰で残っていた問題が片付いたよ」
そのお礼にヤミーは悪い気はしなかった。他人に礼を言われるなどこの
気分が少し良くなったヤミーは、しかしといった様子でアンジェに話し始めた。
「別に移住してくるのは構わねえ。ただ、俺はなにも手伝いはしねえからな。テメェ1人でがんばって移住の準備やら何やらしろよ」
それに対し、アンジェはなにも問題は無いといった様子である。
「別に問題無いよ。移住に関しては、土地さえあれば一瞬で片がつく問題だったからね。今から君は私の隣人となるわけだ。これからよろしく頼むよヤミー君」
そう言うとアンジェはポケットから小さなカプセルの様な何かを取り出した。それをそのままヤミーの宮から少し離れた所に投げた。投げられたカプセルは地面に着くや否や大きな音を上げ、砂埃が舞い上がり辺りを包み込んだ。
するとどうであろうか、先程まで何も無かった空間に、壁は全て機械仕掛けの不気味な建物がたたずんでいた。
その様子を黙って見ていたヤミーは、素直に驚いていた。
「へぇ、おもしれえな。一体どうやってこの建物を作りあげたんだ?」
そんなヤミーの疑問に、アンジェは簡単な説明をし始めた。
「作ったんじゃないよ、移動させたんだ。瞬間移動って分かるかい? その技術を使って遠く離れた場所から移動させてきたんだ。面白いだろう?」
アンジェは残っていた問題が片付いたので満足気であった。
ヤミーは自分の宮のすぐ近くに出来た建物をしばらく面白そうに眺めていたが、直ぐに興味を失ったらしく、己の宮へと帰ろうとしていた。
「中々面白いモンを見せて貰ったよ。まぁ、俺は迷惑さえかけられなければ何も問題ねぇからよ。これからよろしくな」
そう言ってその場から立ち去ろうとした。しかし、またしてもアンジェがそれを止めた。
「ちょっと待って。一つ頼みたいことがあるのだけれども、いいかな?」
そういうアンジェにヤミーは早く用件を言えと促す。
「出来ればクッカプーロとも仲良くなりたいと思ってるんだ。だからちょくちょく君の宮に遊びに行っても構わないかな?」
その問いに対して、ヤミーはくだらない事を聞くなといった様子である。
「なんだぁ? そんなくだらねぇ事を聞くためにまた俺を呼び止めたのかよ。別に迷惑さえかけられなければ構わねぇよ、ンな事。寧ろクソ犬に構ってやる時間が減るから俺としては歓迎だ」
「そうかい! それはありがたいね。わざわざ呼び止めて悪かったね。まあ、これから隣人としてよろしく頼むよ」
──こうして、アンジェはヤミーと言う隣人との邂逅を果たした。
次回くらいに戦闘回が入ると思います。