カラクリの行方   作:うどんこ

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そろそろ虚圏に一護を行かせたいのにそこまで至らないこの頃。な、なんでだ……描きたいシーンがあるからこのSS書き始めたのにそこまで全くとどいてないぞ……


第二十話 集結

 

「甲板長!! 死に損ないのクソったれ供を集めろ!」

「はい船長!!」

 

 虚夜宮(ラス・ノーチェス)の前に広がる砂漠の海、その上に浮かぶガレオン船から大きな声が響き渡る。

 甲板の上にゾロゾロと異様な(ホロウ)達が集まると、舵輪の前にいた一際異様な虚が先ほどと同じ声で叫ぶ。

 

「久々の虚夜宮(ラス・ノーチェス)だ! 今はあの頑固ジジイ(バラガン)の城ではないらしいがそんな事など知らん! 平和ボケした阿保供に()()というものがどういったものだったか、その身に刻み込んで思い出させてやれ!」

 

 一言一言発せられる度に怒号が上がる。

 

「だからといって暴れ過ぎるなよ? 今回はあくまで俺の力を見せる為の行動だ。これから舐めた態度をとる奴が出ないようにするためのな。全て殺してしまっては意味がないからな!」

 

 その言葉には周りから笑い声が上がった。全くもって笑えない冗談である。

 

「貴様らのやる気が出るように今から良いものを見せてやろう! 甲板長!! アレを連れてこい!!」

 

 その言葉を待ってましたと言わんばかりの歓声が広がり、甲板長は船の中へと消えた。少しばかり待つと、一体の破面(アランカル)が両腕を縛られ恐怖で身体を震わせながら、多くの者の間をかき分けて『船長』と呼ばれる者の前に引っ張られていく。

 

「少し前に俺の船にちょっかいをかけてきた客人(ゴミ)だ! なんでも力ある者を探していたらしい。良かったな、目的を達成出来て」

 

 ゲラゲラと不快な笑い声が響く。それでも捕らえられた破面(アランカル)は怒りなど湧かず、恐怖に支配されている。それも全ては目の前にいる男に原因があった。

 

「どうだ俺の船、

残虐なるアンヘリカ号(デスピアダド・アンヘリカ)』の乗り心地は? 俺の自慢の宝だから最悪って事はないだろう? あァ?」

 

 発せられる一言一言が心臓を握られるような錯覚を覚えさせる。ドンッ、ドンッと足音を立てながら近づいて来た。その足音一つ一つからも何か恐ろしいものを感じさせられる。

 手を伸ばせば届く様な距離まで近づいてきた『船長』と呼ばれる男は、普通ではなかった。

 

「ガタガタと身体を震わせてどうした? そんなにも俺の姿が珍しいか? なんなら俺がママの元へ案内して安心させてやろうか、震えが止まるようにな」

 

 その男は闇に包まれており、正体が見えないのである。

 姿が全く分からない黒い霧の中から言葉が発せられている。唯一分かるのは、霧の中から怪しく緑の光を放っている二つの瞳だけである。その瞳も、見つめられているだけで身体が冷たくなっていくような錯覚を覚えた。

 

「オ、オレを一体どうするつもりだ! 藍染様の忠実な(しもべ)であるオレに手を出してみろ! 藍染様が直々にお前を滅ぼしに来るぞ!」

 

 ようやく口を開いたかと思えばこれである。その反応に『船長』は、表情は分からないが漏れ出る失笑で大体どう思っているのかが分かった。周りの者達も腹を抱えて笑っている。

 

「な、何がそんなに可笑しい!?」

 

 まだ状況を理解していない相手に優しく説明する為に、霧に覆われた腕を振り、船員達を黙らせた。笑い声は止まったものの、全員ニタニタ笑うのは止めなかった。

 

「俺達が何故ここに居るのか知っているか? どうしてお前に何もせずここまで連れてきたのか考えてはみないのか? さあ、あれを見ろ」

 

 そう言って相手の頭を掴み、後ろを向かせる。そこには虚夜宮(ラス・ノーチェス)の壁がそびえ立っていた。

 

「俺はここに攻め込みに来たんだよ。良かったな、藍染様とやらが滅ぼしに来る手間が省けて。さあ、お前に選ばせてやろうか」

 

 頭を掴みんでいた腕が、首を掴み持ち上げられる。そのせいで緑の二つの光と目が合う──合ってしまう。

 

「俺にこのまま(くび)り殺されるか、それとも俺以外の奴等に(なます)に刻まれるのがいいか、好きな方を選べ」

 

 目が合った瞬間、今まで感じた事のない寒気が襲った。涙は溢れ、失禁し、無様な醜態を晒してしまっている。

 

「選べない? それは困った。だが人生とは選択だ。自分の最後も自分で選べよ。死に方を選べるなんて普通出来ない事だぞ? ありがたく思え」

 

 どんどん首を握る力が強くなっていく。そして咄嗟に出た発言はどちらの選択肢でもなかった。

 

「嫌だ! 死にたくない!! 頼む、助けてくれ!!」

 

 この様な場では受け入れられる筈もない命乞いである。当然周りからは嘲笑が湧き上がる。だが、意外にも腕の握る力は抜かれ、再び地に足をつけることを許される。

 

「ほう、死ぬのは怖いかァ? しかし何事にも代償というものが必要だ。己の命の為にお前は何を差し出す?」

 

 そう言うと再び首を掴み持ち上げる。返答次第ではそのまま首を握り潰すつもりなのだろう。

 

「あ、あんたの言う事を聞くよ! 雑用でもでもなんでもする! だから頼む……」

 

 その瞬間、腕に込められる力が増していく。気に食わない答えだったのだろうか? そして緑の光が怪しく輝いた。

 その瞬間、何か()()()()()が身体から抜け落ちた様な気がした。失くしてはいけない何かが。それと同時に腕に込められた力がなくなり、地へ投げ捨てられる。

 

「我が船にようこそ、新入り!! この船で働きたいという心意気、実に気に入った! 船員として歓迎しようではないか!」

 

 先程までとはうってかわって、態度ががらりと変わる男。しかし、この後に待ち受けている事に、決して良い事などある筈がない。

 

「新入りには守ってもらう掟が一つだけある。この船で唯一の掟がな。船長の命令は『絶対』だ。さあ! 早速命令を一つ出してやろうか」

 

 顔は見えないが、(おぞ)ましい歪んだ笑みを浮かべているような幻覚が見えたような気がした。

 

「先輩達に此処での過ごし方をたっぷりとその身に教えて貰ってこい。なに、死にやしないさ。全員、『加減』は()()()()()()からな。さあ野郎ども!! これから一緒に暮らしていく仲間だ! 新入りをたっぷりと可愛がってやれ!!」

 

 話が終わると同時に、周りにいた者達が一斉に飛び掛かり、船の中へと引きずり込んでいく。必死に抵抗をするも、当然どうにもなるものではなくデッキの下へ身体が吸い込まれる。そして身体が完全に引きずり込まれる直前、『船長』の言葉が耳に届いた。

 

「そう言えば自己紹介がまだだったな。俺の名前は『バラクーダ・ウィグルスダル』! 砂海の覇者と呼ばれし者だ! 忘れるなよ新入り」

 

 そして甲板の下からは打撃音、血が飛び散る音、そして悲鳴が聞こえ始めた。

 

「さて、甲板長。あの壁を破壊する用意だ。()()を使う準備を始めろ」

「アイアイサー。それにしても久々の新入りですな。一体いつ、あの時()()()()()()()()()()って思うのでしょうかね?」

「もう既に思ってるのかもしれんぞ? どれだけそう思おうとも解放などしてやらんがな。しっかり働いて貰うぞ、()()()()()()()()()()()()()

 

 

──────────

 

 アンジェたちは玉座のある間へと集まっていた。そこで、今回のグリムジョーの無断侵攻の裁量を決めるのだ。

 中央にはグリムジョーと東仙要がいた。

 その後方にアンジェがおり、気分が悪そうな顔をしていた。まだ酔いが抜けていないようだ。

 上方に据えられた玉座の側にレクシーとハロルドが(くつろ)いでおり、玉座に腰掛ける藍染が言った。

 

「──おかえり、グリムジョー」

 

 とてもただいまと返す気が起きない、威圧感たっぷりの労いの言葉である。全くもって嬉しくない。

 対してグリムジョーは何も言わず、それを見かねた東仙が口を開いた。

 

「......どうした。謝罪の言葉があるだろう、グリムジョー」

「別に」

「貴様......」

 

 眉をしかめた東仙に藍染が声を掛ける。

 

「いいんだ、要。私は何も怒ってなどいないよ」

「藍染様?」

「グリムジョーの今回の行動は、御しがたいほどの忠誠心の表れだと私は思っている。違うかい? グリムジョー」

 

 グリムジョーは一息間を置き、

 

「そうです」

 

 その瞬間、彼の襟首を東仙が乱暴に掴む。一触即発の空気の中、アンジェはこっちに飛び火しないでくれよと願い、双子はドラマを観るような感覚でワクワクしながらその光景を眺めていた。

 そして東仙が声を張り上げるように進言する。

 

「藍染様! この者の処刑の許可を!」

 

 その言葉に双子は目を爛々とかがやかせた。それをうんざりとした顔でアンジェは見る。そんな三者の様子も藍染は見逃す事なくじっくりと見ていた。

 そんなことはつゆ知らず、グリムジョーは口の端を吊り上げながら東仙を横目で見た。

 

「私情だな。てめえが俺を気に喰わねえだけじゃねえか。統括官様がそんなことでいいのかよ?」

「私は調和を乱す者を許すべきではないと考える。それだけだ」

「組織のためか?」

「藍染様のためだ」

 

 グリムジョーは鼻で笑った。

 虚に秩序など必要ないのだ。それを無理やり作り出して『調和』を乱しているのは、東仙自身だとでもいうように。

 

「はっ、大義を掲げるのが上手なこった」

「そうだ、大義だ。貴様の行いにはそれがない」

 

 東仙が己の斬魄刀の柄を握りこむ。その様子に気付いた双子は興奮を抑えきれないといった様子である。そんな二人を見て、アンジェは嫌な予感がし始め、更に具合が悪くなってきた。

 東仙の独白が続く。

 

「大義無き正義は殺戮に過ぎない。だが、大義の下の殺戮は──」

 

 東仙が刀を引き抜き、一閃した。

 グリムジョーの左腕が肩の辺りから斬り飛ばされ、宙を舞う。

 

「──正義だ」

「ァああああああああああああ!!」

 

 その瞬間、藍染の視界からもアンジェの視界からも双子の姿が消えた。その事に藍染は興味深いものを見るような目をしており、アンジェは天を仰いでいた。

 

「破道の五十四 『廃炎』」

 

 東仙から放たれた霊子の塊が、地に転がっていたグリムジョーの左腕を灰にする。

 それを見てアンジェは勿体無いと感じていた。腕一つでも色々と使い道があるのだ。それも十刃(エスパーダ)のものである。価値が低い訳がない。

 

「くそッ! くそッ!!! くそッ!! くそッ!!!」

 

 苦痛と怒りに染まったグリムジョーの叫びが響く。

 

「てめえ......! 俺の腕を……!! ──殺す!!」

 

 グリムジョーは残った右腕で斬魄刀に引き抜こうとした。しかしそれは許されなかった。

 

「『秩序』は絶対なんだよ、グリムジョー」

「『罪人』に反抗は許されていないんだよ、グリムジョー」

 

 見た目とは裏腹に、足掻いてもビクともしない力で双子に地面に押さえ付けられる。現世での出来事からの確執が此処でも続き、グリムジョーは双子への殺意を再び燃え上がらせた。

 

「止めろ、グリムジョー」

 

 上から降ってきた藍染の声に、まるで体が鉛のように重くなり、身動きすら取れなくなる。藍染は少しばかりの厳しさを含んだ表情で言った。

 

「お前がそこで要かハロルド達を攻撃すれば、──私はお前を許すわけにはいかなくなる」

 

 逆らえば待っているのは死だ。それを明確にグリムジョーに刻み付ける。ここでは感情を押し殺すしかなかった。

 グリムジョーの内心など全く考えない双子は藍染へと『お願い』をする。

 

「ねーねー藍染さま〜、グリムジョーへの『罰』は腕一本でいいの〜?」

「もし、足りないのなら私達(僕達)にちょうだい!!」

僕達(私達)が『遊んで』楽しむからさ! 現世に行くだけじゃ物足りなかったんだ!」

 

 これには東仙も眉をひそめる。遊びで断罪をしているのではないのだ。そういった事も教え込まなければなどと考え、何か言おうと思ったが藍染の言葉で妨げられた。

 

「ハロルド、レクシー。グリムジョーはもう十分罪を償ったんだ。君たちが何かする必要はないよ」

 

 その発言に双子はあからさまにがっかりとしていた。楽しみにしていたイベントが無くなったかのように。

 

「そっか〜、それじゃあ仕方ないね」

「あーあ、退屈だなぁ……」

 

 その瞬間、グリムジョーを押さえ付けていた力が()()()()。今のグリムジョーでも軽く払いのけられる程に。

 双子がグリムジョーの上から退いくとグリムジョーは立ち上がり、双子と東仙を凄まじい形相で睨む。そして──

 

「ちっ!!」

 

 舌打ちをしてその場を去っていった。

 アンジェはホッとした様子でグリムジョーと同じようにその場を去ろうとしたが、それを藍染は許さなかった。

 

「それはそうとアンジェ、今回の件に関しては君にも少しは問題があったと思うのだが」

 

 その言葉を聞き、首をギギギと音を立てているかのように捻って藍染の方へと向く。

 

「問題って……ちゃんと前もって実験の事は伝えていたじゃないですか! それにはちゃんと藍染様も納得してくれてましたし……何もやらかした覚えはないですよ?」

「いや、一つだけあるよ。その実験体が現世に連れてかれる、管理不十分という問題がね」

 

 それにはアンジェも顔をしかめた。グリムジョーにバレないようにしていたのに、それに加えて外に出ないよう管理するのははっきりいって無理だ。 確かに、グリムジョー達が現世に侵攻するだろうと踏んでおり、それを利用したというのは否めない。だが、それは不確定の事であり、勝手に動いたグリムジョー達の非がアンジェにいくのは理不尽である。

 しかし、藍染がその非がアンジェにあると言えばそれを覆すのは無理である。東仙も、藍染が下す判断によっては再び先程と同じ惨劇を繰り返すつもりなのか、柄に手をかけ始める。

 

「それで、藍染様は管理能力なしな私に一体どんな責任を取らせるつもりなのでしょーか?」

 

 やけくそ気味に開き直ったアンジェは軽口を叩くように藍染に問う。何か秘密を訊ねて来るかもしれない。それに応えるのは結構痛いが、仕方がない事だと納得させて藍染の返答を待つ。だが、藍染の要求はそんなものではなかった。

 

「なに、私は君に罰を与えるつもりなどないさ。ただ、今回の事に目を(つむ)ってあげるかわりに私のお願いを一つ聞いて欲しいんだ」

「そしてそのお願いとは?」

「簡単な事だよ。レクシー、ハロルドの力、彼女達の帰刃(レスレクシオン)を一度だけ見せて欲しいと思ってね」

 

 その瞬間、アンジェは予期していなかった事にポカンと口を開けて呆け、双子は喜びを露わにしていた。

 

「ホントホント!? 藍染さまそれホント?」

私達(僕達)が『遊ぶ』の許してくれるの?」

 

 キャッキャッと騒ぐ双子を無視し、アンジェは藍染に必死な形相で物申す。

 

「藍染様! そればっかりは駄目です! あいつらは抑えが効かないんですよ! 危険過ぎます!」

「私は別に構わないよ」

 

 その一言にアンジェは返す言葉が思い浮かばなかった。そんなアンジェを片目に、双子は藍染へと問いかける。

 

「今から? 今から?」

「いや、もう少し待ってて貰おうかな」

「ホント? 『()()』だよ?」

「ああ、約束しよう」

「『()()』は『()()』だかんね!」

 

 満足な顔を浮かべ、その場から双子は立ち去っていき、その場にいる破面(アランカル)はアンジェだけとなった。

 

「機会が来た時に連絡する。その時は私のお願いをしっかり聞いてくれる事を期待しているよ。話は以上だ。気を付けて帰りたまえ」

 

 そして来る時よりも具合が悪そうな顔でその場から姿を消した。

 

 

──────────

 

 

「また意地が悪いことなさりはるなァ……」

 

 玉座の間から移動した藍染に掛けられたのはそんな一言であった。

 

「──見ていたのか、ギン」

 

 声の方向には市丸とそして──

 

「このキャンディ美味しーよ」

「ありがとー市丸さん」

 

 ペロペロキャンディを口に突っ込んだレクシーとハロルドがいた。藍染はその事を全く気にする事なく市丸の方だけを見る。

 

「どういたしまして。それで、隊長はどうしてアンジェちゃんにイチャモンつけてまでこの子らの能力見たかったん?」

 

 市丸の疑問は最もであろう。アンジェから許可など貰わずとも、ただこの二人に命令すればそれだけで済む話であるのだから。()()()()()()の話だが。

 

「ギン、この子達はちょっと特殊みたいでね、力の解放には『許可』がないと出来ないらしい。アンジェが近くにいる時はアンジェが、いない時は他の誰かが許しを出さないと自分から帰刃(レスレクシオン)は無理との話だよ。アンジェが中々首を縦に振ってくれないから少し意地悪をしたまでさ」

 

 これは初めての話である。だが、アンジェは危険だと言っており、そんな面倒を冒してまで見る価値のあるものなのだろうか。

 

「アンジェちゃんの反応からするに、かなりヤバいもんちゃいますん? ()()()()して来たらどうするつもりなんでっか?」

「大丈夫だよ、ギン。大体どのようなものか予想は付いている。それになんだかんだ嫌がってるアンジェも、抑え方を知っているようだからね。本人は隠しているつもりなのだろうけれど」

「じゃあなんでアンジェちゃんはそんな頑なに断ろうとしはるん?」

「色々と手間が掛かるからか、少しも目を離したらいけないかのどちらかだと思うよ。まあ、彼等の性格を考えるに後者だと思うけどね」

 

 そして双子の力を見て一体どうするつもりなのか? それが市丸の中で渦巻いていた。

 

「で、いつ舞台を準備しなはるんでっか? 相手も用意しとく必要もありますし……」

「その点は大丈夫だよ。次の現世侵攻が終わったら、舞台も相手も整うからね」

「? 誰を当てはるんですか?」

「それはその時のお楽しみさ」

 

 市丸と藍染の会話をポーっとしながらハロルド達は聞いていたが、ふとキャンディを口から取り出し、ある方向を見始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「来たね」

「ああ、来たね」

「久々だね」

「ほんとに久々だね」

「集合だ」

「ならず者達の集合だ」

 

 

 

 

 

 

 

 その直後、凄まじい破壊音が遠くから聞こえてきた。それに糸のような細い目を少しだけ市丸が開き、何やら楽しそうな笑みを藍染が浮かべる。

 

「なんや? また喧嘩かいな?」

 

 昔の出来事を思い返す市丸に、藍染はそうではないと説明する。

 

「違うよ、ギン。侵入者だよ」

 

 そんな藍染の言葉に眉を顰める。またからかっているのであろうか? そんな事を考えていると焦った東仙の声が藍染の後ろから聞こえてくる。

 

「藍染様! 侵入者です! 場所は三ヶ所。一つは第5宮(クイント・パラシオ)の中。もう一つは第2宮(セグンダ・パラシオ)に接近中!」

 

 

 

 

 

「そして最後は──「ここなのだろう? 侵入者さん」」

 

 藍染がそう断言し、市丸が身構えるとつまらなさそうな声を出しながら、先程の声の主が姿を現す。

 

「玉座に踏ん反り返るぼんくらかと思ってたら、どうやら性根の腐ったキザ野郎みたいね。反吐が出るわ」

 

 悪意のこもった言葉を吐き出しながら現れたのは、女の虚であった。スタイルは良く声も透き通っており、蠱惑的な気配を漂わせる。

 藍染も挑発には乗ることなく、軽く言葉を返す。

 

「要の声を真似する君に性悪とは言われたくないな」

 

 すると今度は市丸の後方から声が聞こえてくる。

 

「藍染様! 侵入者です! 場所は三ヶ所。一つは第5宮(クイント・パラシオ)の中。もう一つは第2宮(セグンダ・パラシオ)に接近中!」

 

 先程と全く同じ声で一文一句違わずに繰り返される。

 

「そして最後は──「ここなんやろう? 東仙はん」ッ!?」

 

 姿を現した東仙は、市丸の返答に少しだけ驚きつつも藍染の側にいる虚に気付き、斬魄刀を構える。三対一、しかも虚夜宮(ラス・ノーチェス)のトップ三人という不利な状況にも関わらず、どこか余裕そうであった。

 

「で、君の名前を訊ねてもいいかな。美しい侵入者さん?」

「そうね、相手に名前を訊ねるのに自分が先に名乗らないゴミクズじゃないのなら特別に教えてあげてもいいわよ」

 

 その言葉に東仙は頭に血が上り、飛びかかろうとするがそれを藍染が腕を横に伸ばして制する。

 

「これは失礼。私の名前は藍染惣右介。この虚夜宮(ラス・ノーチェス)に住まう者全てを束ねる者だ」

 

 名前を言わせた癖にどうでも良さそうな雰囲気を出している事に東仙は更に苛立ち、市丸は癖の強い虚だなと思った。藍染に名乗らせたのたからには自分も名乗るのが礼儀であろう。礼儀があるかは分からないが、約束通りに優雅に礼をしながら女は己の名を口に出した。

 

「私の名前はリンファ。リンファ・ツァナルよ。その腐った脳みそに忘れないように叩き込んでおきなさい」




3人中2人がそれなりの存在感を出しながら登場してくれましたが残りの1人は空気でした。次回しっかりと登場するかって? ……ま、まあちゃんと出でくる時は近いのでお楽しみに!

レクシー&ハロルドの刀剣解放? 一体どんな能力なんだ…

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