カラクリの行方   作:うどんこ

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 最近どうやったら続きをすぐに上げられるのか悩んでいる作者です。2、3日に一話上げてる人は書き置きとかしてるのだろうか……
 ちなみに、書き置きはしてませんが次の話の流れはちゃんとあるんですよ。ただ、細かい部分の流れを書くのが凄まじく遅いのです。そして……(以降見苦しい言い訳)

 今回久々の戦闘描写ですが後半からです。久々だから上手く書けてる自信がないや……


第十八話 観戦

 夜中の空座町、駄菓子の上空では一人の死神と一人の破面(アランカル)が対峙していた。一人は赤髪の死神、阿散井恋次。そしてもう一人は金髪の美男子、イールフォルト・グランツである。片や卍解しても尚苦戦、片や斬魄刀だけで無傷かつ余裕綽々であった。

 そんな二人の戦闘を数匹のカラスが、いろんな方向からその様子をただじっと見つめていた。

 

 所変わって虚夜宮(ラス・ノーチェス)のアンジェの部屋の一つ。そこにはポップコーン片手にビールを飲むアンジェと、その様子を呆れた顔で見ているザエルアポロの姿があった。部屋の隅の方には、旅芸人の様な格好におっとり碧眼とツンツン青髪、仮面の名残である太陽の形をした髪飾りを付けた少年──ハロルドと、童話の赤ずきんを全部白にした様な服にクリクリとした可愛らしい橙色眼とオレンジのボブカット、仮面の名残である月の形をした髪飾りをつけた少女──レクシーが、以前アンジェが使っていたタブレット端末を仲良く楽しそうに見ていた。レクシーは白兎のぬいぐるみをギュッと抱きしめ、ハロルドは黒兎のぬいぐるみを無くさないよう、ぬいぐるみの右腕をしっかりと握っている。子どもらしくて可愛らしいものである。

 一方のアンジェ達はというと、大スクリーンに映し出される映像を映画を見る様な感覚で、つまらなさそうな様子で見ていた。そのスクリーンは何分割かにされており、全ての映像がイールフォルトと恋次の戦いを映していた。

 

「なんだあの赤パイナップルは? 卍解もしてんのに負け越してるとかどんだけ役に立たないんですか。これじゃあ他の連中もあんまり期待出来ないかもじゃないか」

 

 ポップコーンをボリボリ食べながら文句を垂れ流すアンジェ。食べながら喋るものだから食べカスがザエルアポロの方に偶に飛んでいっており、迷惑極まりない。

 

「僕はこの映像を映す準備をどうやってしたのかがすごく気になるのだけれど。もしかして先を見越して、最初に現世へ行った時に準備しといたのかい?」

 

 ビールを喉に流し込み、顔を赤くしながら機嫌良さそうに語り始める。もう酔っ払ったのであろうか?

 

「先なんか見越してないよ〜。空座町の地理を見るために放ったつもりだったけど、なんかグリムジョー君達が現世に遊びにいったから偶々役に立っただけだべ〜。うぃ〜、ヒッ」

 

 かなり酔いが回っている様だ。心なし目も据わっているようにも見える。

 

「だいたいさぁ〜、何でこんな忙しいときにあいつらがここに来るんだよ。やる事でいっぱいいっぱいになってんのに子守なんてやってられないんじゃ〜。東仙さんがよく可愛がってるから負担は少し減ったけど、あいつらが一緒にいると気が気でないよ……うっぷ……」

 

 椅子にもたれ掛かりながら泣き言を言い始めた。どうやら泣き上戸のようである。いなまら口を滑らせて、隠し事を吐かせることが出来そうな気がする。ザエルアポロはとりあえず、試しに双子について訊ねてみた。

 

「色々とばたばたしてて聞けなかったけど、あそこにいる二人と君はどんな関係なんだい?」

 

 その質問に対し、アンジェは面倒くさそうな表情を浮かべながらも何も考えずに言葉を吐き出した。

 

「決まってんじゃん、私の唯一の『()()』だよ。……ん? これ言ってよかったんだっけ? ……まあいいや……」

 

 酒のせいでだいぶ口が緩くなっているようだ。今がチャンスである。今まで聞けなかった事をどんどん聞いて行こうではないか。ザエルアポロはそんな事を考えていた。話を急に変えて酔いが醒めることがないよう、今の話題から近い内容を訊ねるみる。

 

「『家族』ってどういう事だい? それと出来ればどんな力を持っている子達なのか教えてくれるとありがたいな」

 

 『家族』については何となくであるが予想はつく。恐らく『グランツ』に近いものなのであろう。しかし能力に関しては謎である。

 

「『家族』は『家族』だよ! そのまんまだよぅ。どんな力かか……何て言えばいいんだろ……頭がグワングワンしてて考えんのもしんどいや……まあ、凄いよ」

 

 酒がまわり過ぎてまともな返答も出来なくなっているようだ。早速ザエルアポロの考えてた事が水の泡になりそうである。

 

「あいちゅらのちかりゃを一言で説明しゅるにゃらねぇ……キミ達十刃(エスパーダ)で言う『司る死の形』を教えた方が早いのら。あいちゅらが司りゅ死は『秩序』だ。うへへ……なんかヒミチュをばりゃすのたぁのしくなってき……ゴボッ!? ゴボボッ……ゴバッ……ッ…………」

 

 アンジェが他の秘め事を語る前に、口に一升瓶が突っ込まれていた。そしてその一升瓶の中身をアンジェの口へ流し込んで笑っているのが、先程の話題に上がった双子、レクシー&ハロルドである。酔いで完全に目を回しているアンジェを尻目に、双子はザエルアポロの方を向いた。

 

「アンジェはもう寝んねしたから」

「楽しいお喋りはここまで」

「あんまりアンジェの情報を」

「詮索しないよう気をつけてね」

「アンジェの邪魔をするようなら」

私達(僕達)が許さないよ」

「だって、アンジェは」

「僕達の」「私達の」

「「大事な」」「『()()』」「『()』」

「「なんだから」」

 

 十刃(エスパーダ)であるザエルアポロにも臆する事もなく言い放つ双子。その顔はニコニコと笑っていたが、どこか恐ろしさを感じた。場の雰囲気を変える為、ザエルアポロは此処に来た目的へと話を変えた。

 

「此処に来たのは、アンジェが僕から許可を貰って、(ゴミ)に仕込んだ何かの説明を受けるために来たのだけれど、その本人が倒れた今、誰が僕に教えてくれるのかな?」

 

 その言葉に双子はそれがどうしたといった顔をしている。あまり理解出来ていないようだ。

 

「つまりだ、僕は(クズ)を実験に使う対価に、その結果の詳細を求めていたんだよ。それが出来なくなった今、邪魔した君達にその賠償をどうして貰おうかと言っているんだ」

 

 実際は後からたっぷりと教えて貰えるのだが、そんな事知らないであろう双子から何か聞き出す為に、とっさに出まかせを吐いた。それに対しての双子の反応は分かりやすいものである。

 お互い顔を向け合い、しかめている。そして何か言い争いを始め、ジャンケンをし出した。そして負けたレクシーが悔しそうな表情を浮かべている。

 

「何で私がやらなきゃいけないのよ! お酒突っ込んだのハロルドじゃないの!」

「ジャンケンに負けたんだから早く始めろよレクシー。僕は1人で真珠頭とデカ男の闘いを観戦するから」

「ずるい! 私も続きが楽しみだったのに!」

「録画してるんだから後で観ればいいだろ」

「ハロルド絶対ネタバレするじゃん! そー言うの一番嫌なの」

「ほら、僕に何か言ってる暇があったら、アンジェのお友達にアンジェの代わりをやってやれよ。いつまでたっても終わんないぞ〜」

「もういいもん。後で東仙さんにハロルドがこないだしたイタズラの事言いつけてやるもん」

「あっ、それこそズルいぞ! 内緒にしとくってこの間約束したじゃないか! ルール違反だ!」

 

 ぎゃーぎゃーと言い争いをする双子。やがて溜飲が下がったのか、レクシーはザエルアポロの方に向きなおる。その間にハロルドは最初にいた部屋の隅に移動して、再びタブレットを見ていた。

 

「えーと、えーと……アンジェのカンペは何処だろ……ここかな?」

 

 ザエルアポロの方を緊張した表情で向きながらも両手はアンジェの白衣を(まさぐ)っていた。そしてそのままポケットから数十枚の纏められた紙を抜き取り、そのまま表紙に書かれたメモだけ熱心に読みはじめる。

 

「仕込みが反応したらザエルアポロ君の反応や予想を聞きながら解説する……取り敢えずザエルアポロさんはその時まで待っててって事みたい」

「いや、君はアンジェじゃないんだからそんなまどろっこしい事しないでくれ。と言うより、その紙束さえ見せてくれればもういいよ」

 

 レクシーが握っている資料を奪い取る。レクシーは全部教えてもよいのだろうかと不安そうな顔をしているが、何の問題も無いはずだ。そもそも今回の実験は成果を全てザエルアポロに譲るという条件で許可しているのだ。資料も自分の為に作ったものである筈だからキレられるのはお門違いであろう。

 掻っ攫った資料に目を通す。そこにはやはりというか中々興味深い事が長々と記されていた。聞きたい事も色々とあるが、それを説明してくれる者が酔い潰れているので今日は諦めざるを得ない。酒はやはり止めておくべきだったかなと少しだけ後悔した。

 

「そう言えば、君達はコレをどうやって兄の身体に入れたのかなどは聞いていないのかい?」

 

 ダメ元で聞いてみたが、意外にも知っているようであり、先程まで不安そうだった顔が笑顔に変わった。

 

「あ! それなら分かるよ! アンジェに頼まれて私達がしたんだもん! えっとねえっとね!」

「僕がイタズラで口の中にねじ込んだんだよ〜。 レクシーのおままごとに付き合わせてる時にね」

 

 レクシーが伝える前に、ハロルドが後ろから意地悪な顔をしながらレクシーの台詞を奪った。

 

「も〜何で私の言おうと思ったこと言うの! 意地悪ばっかりするハロルドなんて嫌いになっちゃうもん!」

「はいはい。それよりもさ、ザエルアポロさんもそろそろそんな紙束じゃなくてあっちみた方が良いんじゃない?」

 

 その言葉と同時に、画面から眩い光が放たれた。

 

 

 

────────────

 

 

 

「限定解除!!!」

 

 そう言葉を発すると同時に目の前の死神の霊圧が跳ね上がった。先程までは自身が圧倒的な力でねじ伏せていた筈なのに、一瞬の間に左腕を()がれ、角は片方へし折られ、最早勝ち目がある状況ではない。撤退の合図は出たが、恐らく逃げ切れる事は無いだろう。

 

狒骨大砲(ひこつたいほう)

 

 後ろから巨大な霊圧の砲弾が迫って来る。……此処までか。自分達の王が高みに登って行く姿をもう少し見ていたかった……。

 

──そうして巨大な霊圧の奔流がイールフォルトを飲み込んだ瞬間、(くら)い闇がイールフォルトを包み込んだ。

 

 

──────────────

 

 

「何だよ……今のは……?」

 

 恋次は動揺していた。確実に仕留められる相手へ、自身の最高の技を喰らわせたのだ。倒せていない筈がない。それなのに相手を飲み込んだであろう位置には、怪しい闇が漂っている。しかも先程まで戦っていた破面(アランカル)の霊圧が僅かながら感じ取れるのだ。そして徐々に闇が晴れていく。そして闇の中から姿を現した者の姿に恋次は舌打ちした。

 

「何で今の攻撃は無傷で凌いでんだよ……」

 

 闇から現れたイールフォルトの姿は、先程までとは少し変わっていた。死覇装は死神達と同じような黒いものに変化しており、帰刃(レスレクシオン)で現れた虚の特徴も全て黒く染まり、折れた片角からは霊子で出来た光の角が生えている。幸いにも左腕は失われたままであるが油断は出来ない。

 

「ハ」

 

 イールフォルトの口から感情が漏れる。

 

「ハハハ」

 

 その感情は歓喜であった。

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 恋次など眼中にないのか、自身の身体から溢れる力に喜びを噛み締めている。

 

「何を笑ってやがる。てめえが不利な状況は変わってないんだぜ。次で終わらせてやる」

 

 恋次の少し苛ついような言葉に、そういえば何かと戦っていたのを忘れていたといった様子で恋次の方を向く。完全に舐めきっている様にしか見えない。

 

「おお、すっかりワスれてしまっていたよ、キョウダイ。ジブンでもイマのジョウキョウがリカイデキていないんだ。ナゼイきているのかもフシギでしょうがないクライだからユルしてくれよ」

 

 そして恋次の方へ身体を向けられると、先程までとは比べ物にならない威圧感が恋次を襲った。

 

「まあ、こんなことをやったヤツにはほぼイキドオりしかないが、スコしだけはカンシャしてるよ。イきナガらえることがデキたのだからな」

 

 暗黒の角と光の角を恋次へと向け、そしていつでも飛び掛かれるよう身構える。恋次もいつでも迎え撃てるよう、己の卍解、狒狒王蛇尾丸で攻守どちらにも対応出来る構えをとった。

 

「このアラたなチカラ、サッソクタメさせてモラうぞ! キョウダイ!!」

 

 そして勢いよく恋次に飛び掛かってきた。その姿はまるで、前にあるもの全てを壊す、巨獣の突進のようである。恋次も狒狒王蛇尾丸を操り、その猛牛の突進を迎え撃つ。そして、光闇の双角と大蛇の大顎がぶつかり合う瞬間、轟音が響き渡った。

 

「冗談だろ…」

 

 少し前には相手の左腕を喰い千切っていた顎が、恋次の遥か後方に吹き飛ばされ、その後に続く刃節が達磨落としの様に横に弾き飛ばされていく。中には突き砕かれる節もあった。

 

「ハハハ! ヌルい! ヌルいぞ、キョウダイ!! それでオレをトめられるものか!」

 

 勢いを落とす事なく一直線に恋次に突っ込んで来る。流石に正面から止めるのは無理だと理解した恋次は、咄嗟に横に跳んだがそれは間違いではなかった。全く勢いを落とす事なく、そして進む軌道を変える事もなく少し前まで恋次がいた位置を駆け抜けていく。どうやら方向転換は苦手の様だ。止まってこちらを向き直す前に吹き飛ばされた狒狒王蛇尾丸の刀身をイールフォルトの周りに集め、次の攻撃に備える。またこちらに突っ込んできた時が反撃のチャンスだ。

 

「まるで猪みてぇだな。少し前までとは違って、真っ直ぐ進むしか能が無くなったのか? そんな単調な突進で俺を倒せるものならやってみやがれ!」

「チョウハツのつもりか? いいだろう、ノってやる。そのカラダ、このツノでツきウガってやろう」

 

 再び此方に爆進してくる雄牛、そのスピードは先程までよりも速い。しかし捉えきれない程ではなかった。

 

「手に入れたばかりの力に慢心してんじゃねえよ! その(おご)りの代償を身を持って知りやがれ!」

 

 狒牙絶咬(ひがぜっこう)

 

 先程まで散らばっていた骨の刃節が、全方向から猛牛の肉を喰らう為に襲い掛かる。直進しながら全ての刃節を叩き落とすのは無理に近い。そして進むのを止めようにも勢いが付き過ぎていて、急停止も無理である。そして、まさに闘牛が大蛇の中に飲み込まれようとした時、恋次の顔から勝ち誇った笑みが零れた。

 

「サイゴのサイゴでのユダンはヨくないぞ、キョウダイ」

 

 金牛宮の剛槍(タウロ・ランサ)

 

 光の角が凄まじい速さで射出される。正面から向かってくる刃節を()()()()()()薙ぎ払い、恋次の右肩をブチ抜き、遥か彼方へと消えた。そして骨の檻を前方に開いた空間から、更に加速する事によって無傷で抜け、その勢いのまま驚愕を表情に浮かべている恋次の左肩を穿ち、遠くへと吹き飛ばした。

 

「ハ……ハハハ……ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 恋次の姿が彼方へと消えたのを確認したイールフォルトは、この世のものとは思えない程の、(おぞま)ましい歓喜の雄叫びをあげた。

 

「ナンだこれは! あのシニガミがまるでカスみたいだったぞ! これだけのチカラがあればグリムジョーがこれからススむオウのミチをサイゴまでミトドけられる! オトウト(根暗)シンイり(アンジェ)のシワザだろうが、コンカイはカンシャしといてやるよ。ハハハハハハ……ガッ!?」

 

 そう叫んだ瞬間、激しい頭痛と空腹感がイールフォルトを襲った。まるで

頭がすり潰され、考える事すらままならない苦痛が思考を支配してくる。

 

「イタいイタいイタい! アタマがヤける! ヤめろ! クルしい! トまれトまれトまれトまれトまれ………………」

 

 そして苦しむそぶりを止めたイールフォルトは、ある方向を見つめ始めた。

 

「アソコからウマそうなヤツらのケハイがする……()()()()をクえば、このクツウもキえそうだ」

 

 一護とグリムジョーが火花を散らしている方向を。

 

「アソコにはタシかグリムジョーがいたはずだ……グリムジョー? ……ダレだったかオモいダせない……」




※恋次はスタッフ(織姫)が後でしっかりと治療しました。

今回、双子の司る死の形が出ましたが、正直双子の戦闘(?)描写と能力は最後の方にしか出てこない予定です。帰刃名も先に出す予定という始末です。興味がある方は予想してみて下さい。

イールフォルトさん? 嫌な事件だったね……

次回、夜の空座町襲撃大作戦(終)! 乞うご期待!

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