何とか6月中にもう一度投稿出来ました!
今回新キャラが出ますが、本格的な活躍は大分先になります。まあ、それまでにどんなキャラか皆さんに覚えて頂けると幸いです。
「ほう、儂と会う前に切り離した力が
そう言いって、威厳をかもし出しながら紅茶を飲むバラガン。アンジェと違い、非常に様になっている。
因みにバラガンのティーカップや椅子などは当然用意されていなかったのだが、何処かのガキ大将のようにアンジェから奪っていた。これにはアンジェも涙目である。
「ちゃんと答えたんですから〜、もう帰って下さいよ〜。へーかに此処にいられると心臓に悪いんですよ〜。またメチャクチャにされたら私、寝込んじゃう!」
子供が駄々を
そんなアンジェに慣れているのであろう。バラガンは不機嫌になる事もなくアンジェへの追求を続ける。
「儂が聞きたいのはその力の内容だ。どの様にして生まれたかなどどうでもいい。藍染の小僧にも見せたのであろう? それを儂にも見せろと言っておるのだ」
アンジェは駄々を捏ねる動きを止め、バラガンの方を向く。その顔はキョトンとした顔であった。
そんな様子のアンジェを
「もしかしてアンジェ、藍染様に
冗談めかしく言ったのだがどうやら事実の様だ。アンジェは大きく首を縦に振っている。
「藍染様からは逆に、
どうやらアンジェの隠している力は
そんな反応のザエルアポロに、アンジェは聞いてもいない事をペラペラと語り始めた。
「東仙さんが見せろ見せろ〜って言ってたけど、藍染様はそんな東仙さんを一蹴してたのが面白かったね。百聞は一見にしかずとは言うけど、危険なものは一見より百聞の方が安全だもんね〜。そこんとこ、藍染様は良く理解してたみたい」
そんな事はどうでもいいと言うかの様に鼻を鳴らすバラガン。話が脱線してるのが気に食わないようだ。
「見せる事が叶わぬのなら早う教えんか。貴様の無駄話など時間の無駄だ」
「またまた〜、会話ってものは無駄なものが多ければ多いほど娯楽性が増すもんですよ。こんな殺伐とした職場にはささやかな娯楽が少しでもあった方が──ヒッ! 分かりやした分かりやした! 今すぐ本題に入りますんでその不穏な力を此処で使おうとしないで!」
無駄話をまだまだ続けようとするアンジェに殺気を飛ばす。流石のアンジェもこれ以上はふざけられないと理解したのであろう。
「でも藍染様からは周りに教えるなって言われちゃったんですよね〜。だから
アンジェの言葉に含まれている意味をちゃんと読み取れた二人。面倒臭い奴との付き合いは伊達ではないようだ。
「でもこの場でも簡単な事は教えて良いと思うから、ざっくりと話しておこうかな」
さっきまでは藍染様が何やらなど言っていたくせに、語る気満々である。
「藍染様はその……少しも教えるなと忠告してたのではないのかい?」
「別に少しくらいは良いんじゃない? ちょっと情報を流しとけば、噂が勝手に私の能力を作り上げてくれるからね。そこで満足しちゃってホントの力を調べようとする奴は居なくなる筈さ。あ、もちろん私の独断だよ。でも藍染様なら許してくれるでしょ」
バラガンは視線をアンジェへ飛ばす。御託はいいから早く本題に入れという様に。
「あー、ハイハイ。分かりましたからそんなに急かないで下さいな」
ヤレヤレと首を動かしながらもようやく本題に入る。
「私の『黒い力』は簡単にいうと、殺傷能力はそれほど高くはない。でも、誰もが私の力を知ると避けたがる。それは何故か? 簡単な話さ、私の力は『相手を殺す力』ではなく『相手を苦しめる力』だからだよ」
バラガンもザエルアポロも目を細める。相手を殺す力がそれ程高くないのにどうしてそれ程危険視されているのか。それがまだ理解出来て居ないからである。
「まだ納得いかないって顔してるね。もっと分かりやすくしようか。簡単な話だよ。相手に『
自分の事を語るアンジェの顔は、とても
「正に『
心なしかアンジェから嫌悪を感じる黒が漏れている様に感じた。
「おっといけねぇ、ちょいと感情が引っ張られちゃった。私が今教えられるのは此処まで〜。少し喋りすぎた気がするけど、後は想像で補って下さいな。」
そうしていつもの様なおちゃらけた雰囲気に戻った。
ようやく地面から腰を上げると、バラガンとザエルアポロが囲っているテーブルに予備の椅子を持ってきて寛ぎ始めた。どうやらまだ何か話を続けるようである。
「そうそう! へーかにいい事教えてあげるよ! まだ藍染様に伝えてない事をね」
バラガンはその言葉にすぐに食いついた。あの藍染が知らない事を先に掴んでおけば、もしかしたら優位に立てるかもしれないからだ。
ザエルアポロも気になるが、バラガンが席を外せと言われたら此処から出ていかなければいけない。秘密が漏れないように少しでも知っている者を減らすためだ。
「あ、ザエルアポロ君も聞いて行きなよ。どうせ藍染様もすぐに知る事になるようなものだからさ」
そんなアンジェの発言に、先程まで食いついていたバラガンはあからさまにどうでも良さそうな態度へと変わった。藍染がすぐに知れるような情報だ。どうせ大したものではないのだろう。
「儂は自分の宮に戻る。下らない話は貴様らだけでやっておれ」
紅茶を飲み干し、この場から立ち去る為に席から立とうとする。
「『バラクーダ』って聞けば、聞いていく気になるじゃないですかね、へーか?」
ザエルアポロは何の事かさっぱり分からなかったが、バラガンの反応が急に変わった事から、どういったものか大体理解出来た。
「そういうことか……確かに前もって知っていた方がいい事だな」
上げていた腰を再び椅子へと降ろす。どうやらまだ此処に留まるようだ。
「で、
そうして睨みながら送られるバラガンの威圧を、澄まし顔で受け流していく。
「何で知っているかってのは、単純にへーかが知らない所で知り合ってるだけて、いつ来るかってのは、彼の気まぐれで決まるってとこですね〜。と言うよりもまだ声は掛けてないんだよね。他の二人にもまだだし」
「……他の二人?」
最後の一言が気になったのか、アンジェに圧力を掛けるのをやめる。そんな疑問もしっかりと返していく。
「ああ、他の二人はへーかも知らない人さ。そっちはあんまり気にしなくてもいいと思いますよ。まあ、他の二人も同じくらい濃いキャラだから気になっちゃうかもですけどね」
何も言わずに何か考え込むバラガン。ザエルアポロもバラガンが喋っていない隙に聞きたい事を聞きにかかる。
「そのバラクーダって
そんなザエルアポロにアンジェはまたもやキョトンとした顔をした。まるでもう説明した筈といった感じである。
「あれ? ザエルアポロ君にはもう説明してなかったっけ? まあいいや。織姫ちゃんを確実に確保して取り返されないようにする為さ。 ……やっぱこれ言ってた気がするよ〜」
確かに同じような事は聞いてはいるが、全くの別件の事である。同じ系列の話とは説明されてなかったのだから分かる筈がない。
そうは思ったものの言ってもどうせ屁理屈を言って来るだろうと思い、文句は言わなかった。
「確かにそんなこと口にしてた気がするね。それで? その三人の詳細と関係は教えてくれるのかな?」
アンジェはザエルアポロに軽くあしらわれ、少し残念そうにしていたがすぐに気を取り直していた。
「他の二人は呼んでからのお楽しみと言うことにして、へーかと因縁深い『バラクーダ・ウィグルスダル』について、不肖この私めが語らせてもらおうかしら。まあ、そんなには知らないけどね〜」
何で大して知らない奴を呼び寄せられるのか。しかもバラガンとしのぎを削るような相手を。そんな疑問が浮かんだが、おそらくこの問いははぐらかさられると思い訊ねなかった。ザエルアポロは最近、アンジェがひけらかす・はぐらかすの境界線が何となく分かってきている様である。 ……まあ、振り回されてる事が多いので当然の結果かも知れない。
「フン、貴様よりも儂の方があの『血気盛んな野蛮ジジイ』の事をよう知っとるわ。聞くまでもない」
つまらなさそうに、そして昔を思い返すように呟く。
「思い返すと段々腹が立ってくるな。なんだ彼奴は? 儂が何か行動を起こした時に冷やかしに来たり、邪魔したり、終いには儂が
独り言の様に愚痴をこぼす。そんなバラガンの姿を見て、ザエルアポロはどんな人物なのかを大体予想出来た様な気がしていた。アンジェは笑い声を我慢しようとしているが、全然出来ておらずもろバラガンにもザエルアポロにも聞こえている。おそらく後でしばかれることだろう。
そんな中、バラガンの視線がアンジェの後方にある『セルラ』が入っている容器に移る。どうやら何かきになるようである。
「……おい、あれは何だ?」
溶液以外何も入っていない様に見える容器がそんなに気になるのであろうか? そんな事を考えながら、アンジェは悟られない様返答する。
「実験の片付けしてないカプセルですよ〜。片付けが面倒だったからずっと放置しっ放しで、次使うまでにはと思いながらも、結局放置しちゃってる始末なのさ」
特に問題なく返すことが出来たと思ったが、それでもバラガンの視線は動かない。心なしか容器の少し上を見ている様な気がする。
「そんな事聞いとらんわ。儂が聞いとるのは、その容れ物の上におる
そんなバラガンの発言を冗談だと捉え、笑いながら振り向く。
「ははは、御冗談を。まだ呼んでいないんですから、場所も知らない所に用もなく来るわ……け……」
アンジェは信じられないといった様子で、目を見開いて動きを止める。どうやらアンジェにとっても予想外であった様だ。
「やっとこっちに気付いてくれた!」
「アンジェ久しぶり〜」
「なんか楽しそうな事するんでしょ?」
「
そこには二体の小さな虚が大きな容器の上に腰掛けてアンジェ達三人を見つめていた。どちらも10歳くらいの子供と同じような身長で放つ霊圧も弱々しい。ただ、アンジェの様な存在もいるので、バラガンとザエルアポロは油断せずに二体の虚を観察する。
「何でお前達が来てるんだよ。お前らを呼び寄せる予定なんかさらさらなかったのに……レクシー、ハロルド」
招かれざる客──レクシーとハロルドは二人共同じタイミングで笑い始めた。
「なんかこれから楽しそうな事をする気配を感じたんだ」
「だからアンジェを探しに来たの」
「
「そしていっぱいいっぱい楽しませてよ!」
そう言うと容器から飛び降り、アンジェの方へ歩いて来る。そしてバラガンやザエルアポロの事など気にせず、テーブルの上のお茶菓子に手を伸ばす。
「あーーッ! クッキーだ!」
「キャンディもあるよ〜」
「美味しそうなタルトは私が貰うね!」
「そしたら僕はオペラを食べちゃおう」
アンジェすらも気にせずにお菓子を食べ始めた二人。どんどんお茶菓子がなくなっていく。
「礼儀のなっとらん餓鬼だ」
そう言うや否や、バラガンは自身の能力を二人目掛けて飛ばす。当たれば朽ちる絶対の能力。二人は一体どんな反応を示すのであろうか。そんなバラガンの行動は、予想していなかった結果で終わった──絶対の能力が、当たる手前で
バラガンは驚きを隠せずにいたが、当の本人達は全く気付いていないようである。
「そもそも何で私がここにいる事を知ってたんだ」
アンジェが不満そうに訊ねると、二人はお菓子を食べるのをやめ、アンジェの方を向く。
「アンジェがこの大っきい建物に行くのは前に見てたの〜」
「見てたの〜」
「だから昨日くらいからずっと探してたんだ」
「そしたら優しいお兄さん達が教えてくれたの」
「最初は色黒のお兄さんが何か怒ってたけど」
「糸目のお兄さんと優しそうなお兄さんが止めてくれたの」
「アンジェの居場所も丁寧に教えてもらったよ」
「最後にチョコをくれて」
「「とってもとっても美味しかった!」」
レクシー&ハロルドがここに辿り着いたのはどうやら藍染達の仕業らしい。その事にアンジェは頭を抱えた。
「まあいいや。取り敢えずへーかとザエルアポロ君に挨拶をするんだ。その後に藍染様達の所に行くよ。分かった?」
二人は頭をブンブンと縦に振った後、バラガン達が見えやすい位置に移動した。
「「こんにちは!」」
「僕の名前はハロルド・モリアルテ」
「私の名前はレクシー・モリアルテ」
「
「なのだ〜」
「「これからはどうか宜しくね!」」
息ピッタリで動く双子に何の反応も示さず、バラガン達はただじっと見ていた。
「それじゃ、藍染様達の所に行くよ。へーかとザエルアポロ君、私はちょいと席を外すね。非常に申し訳ないけど、今日はこれにてお開きという事で。また今度会いましょ〜」
レクシーとハロルドを連れて、部屋の外へと向かって行く。そんな中、何かを思い出したかのように後ろを振り返る。
「そうそう、ザエルアポロ君に許可を貰っておかないといけない事があったんだった。まあ、また後で話すよ」
そう言い残すと部屋からいなくなった。残されたザエルアポロとバラガンは暫く無言であったが、痺れを切らしたザエルアポロが話を振る。
「陛下はあの双子についてどう思いましたか? 僕はどの様に誕生したのかが気になりますね。自然発生の双子の虚なんて聞いた事もないですし」
そんなザエルアポロの反応を鼻で笑う。そんな呑気にいられるような存在ではないのだ。
「あの小童供といい、今度来るであろうジジイといい、厄介な輩ばかりだ。恐らく残りの二人も相当だろうな。あの小娘は一体何を企んでおるのだろうな」
「 ??? こないだの人間の為に準備しているって言ってましたよ」
そんなザエルアポロにバラガンは溜め息を吐く。どうやらザエルアポロの反応を残念に思っているようだ。
「それも確かにあるのだろうな。だが、それが本当の目的ではないのも確かだ。人間一人の為だけに、あんな連中を何人も連れて来る事自体がおかしいのだ」
そんなバラガンの反応にザエルアポロは反論する。アンジェと同じ研究者からして見れば、織姫の力は喉から手が出るくらい欲しいものである。だから、全力で手に入れに行くのも何ら不思議ではないと思っていた。
「陛下からして見ればそうかも知れませんが、僕ら研究者からしてみれば何もおかしくないと思いますよ」
そう言い切るザエルアポロを、バラガンはまだ分からぬのかと言いたそうな表情で見つめる。
「だからだ。彼奴が呼んだ連中を考えてみろ。一人は確実に価値など分からぬ奴なのだぞ。他の二人も大して変わらぬ筈だ。彼奴と価値観が同じなら共に行動している筈だからの。そんな理解もしてくれぬ連中がそんな下らぬ事に手を貸すと思っておるのか? 可能性はなくは無いだろうが薄いだろうな」
確かにそうである。皆が皆アンジェではないのだ。価値が分からぬものに力を貸すなど、力で支配して入れば可能性はあるが、アンジェを見て入ればそれはないと分かる。そしたら他に利害が一致するものがある筈である。
「あの人間を見てから急に行動を始めたから関係はしているだろうが主目的ではないだろうな。人間は目的の為に使うのであろう。かなり大規模な目的の為に。まあ、何をするのかは分からぬが……大きく荒れるだろう」
うんざりした表情で椅子を立ち、部屋の外へと向かって行く。そして部屋から出る前に、残っているザエルアポロへと忠告をした。
「彼奴のいう事はあまり鵜呑みにせぬ方がいいぞ。意味有りげな発言は嘘ではないだろうが、大事な事は隠しておる。奥に潜む意味も考えぬと掌の上で踊る羽目になるぞ」
────────
「アンジェの奴からの呼び出しなんて珍しいな。まあいい、丁度暇してたんだ。さて、どんな出来事が待っているだろうか」
そう言い残すと姿をその場から消した。
同じく果ての何処かで──
「アンジェの呼び出し? ……ふーむ、まぁいい。バラガンの奴にも挨拶をしてやらんとな。
野郎どもォ!! 面舵一杯! 目的地は『高慢ジジイ』の城だ!」
大きな何かが進む方向を変えた──
同じく
「アンジェ? 名前を聞くだけでも反吐が出るわ。他の糞野郎二人もどうせ呼んでんでしょうね。本当は無視したいけど、これは流石に行かないといけないみたい。ハァ、嫌になっちゃう」
溜め息を吐きながら一体の虚が歩いて行く。しかしその顔は何処か笑っていた。
「でもあのクズ女の言う事なんて何にも聞いてやらないわ。絶対にあのアバズレの計画をメチャクチャにしてやる」
何か名前が出たのも出てないのも含めて五人くらい出ましたね。まあ、全員結構大事な役割があるので大丈夫でしょ……
これ以上は新キャラは恐らく出ないので安心して下さい。まあ、名のないモブは恐らく出ますが。
それとアンジェ(斬魄刀二本別々)も含め全員に死の形を一応用意しています。良かったら予想して見て下さい。十刃じゃないのに何で死の形があるんだよ! ヴァーカ!っていうのは許して下さい。お願いします。
あ、それと次は久々の戦闘描写ありです。
○レクシー&ハロルド・モリアルテ
司る死の形『???』
帰刃『???』