プロジェクト・クローネのプロデューサー   作:変なおっさん

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第40話

《おまけパート⑧》物語の都合上、出番が少ないキャラを書くための物なので書きます。基本おまけは即興何で内容は許して。

 

《諸星きらり》

 

「ねぇねぇ、Pちゃん」

 

「なんでしょうか?」

 

「一つ聞いてみていいにぃ?」

 

今、武内はきらりと共にシンデレラ・プロジェクトのアイドル達が出ている雑誌や写真などを確認している。普段から二人で行っているわけではなく、武内がやっていた所に偶然きらりが遊びに来た。

 

「きらりん、モデルのお仕事とかいーっぱいさせてもらってるけどぉ……きらりんで大丈夫なのかなってぇ」

 

きらりは、主に自分が出ている物を見ているが、他のアイドル達の物を見ると度々手が止まる時がある。

 

「気になりますか?」

 

きらりをスカウトした時の事を思い出す。彼女は背が大きい事を気にしている。小さい頃から背が大きかった少女は、自分の事を嫌っていた。自分も他の子のように可愛い服を着て普通の女の子のように過ごしたいと。

 

「うにゅ……Pちゃんには隠せないにぃ。みんなのカワイー姿とか見るとね、そう思う時があるんだぁ。きらりんじゃなくて、他の子の方がいいんじゃないかなって」

 

スカウトした時も似た様な会話をした。自分よりも他の子の方が相応しいと。

 

「ちょっと、待っていてください」

 

武内は、部屋の隅に行くと積まれている箱の一つをきらりの前に持って来る。

 

「これは、後で皆さんにお渡しするファンレターになります。この中には、諸星さんに送られた物もあります。もちろん、これまで諸星さんにお渡しした物もあります。それでもそう思いますか?」

 

少しずつだが仕事も増えている。それに比例するようにファンからの贈り物も増えてきている。

 

「……でも、不安になる……よ」

 

アイドル諸星きらりではなく。初めて会った頃の諸星きらりが顔を出す。本当の彼女は、とても真面目で大人しい子だ。

 

「みんな、本当にカワイイ。私とは違って……本当に。私は、こんなに大きい。これからもずっと」

 

誰よりも可愛い物が好きな少女は、可愛くない自分を隠すために魔法を掛けた。服を、飾りを、言葉を……ただ、それでも隠しきれることはなかった。むしろ、魔法で隠したことにより、本当の自分を表に出すことを恐れてしまうようになってしまった

 

「諸星さん。私が諸星さんをスカウトした時の事を憶えていますか?」

 

あれは、街中でシンデレラ・プロジェクトのアイドルを探していた時の事だ。

 

「私は、アイドルとして輝ける人を探していました。その時に諸星さんに出会いました」

 

あの時のきらりの事は忘れない。

 

「諸星さんが泣いている子供を思い必死になって泣き止まそうとしていた時に見せた笑顔を私は憶えています」

 

親とはぐれ一人で泣いている少女にきらりは声を掛けた。人目も気にすることなく、できる限り身体を小さくして少女の目線に合わせいろいろと話をしていた。

 

「あの時は、ごめんね」

 

その様子を見ていた武内も何かしようとして声を掛けたが逆に泣き止んだ少女を再び泣かすことになった。それで、きらりに怒られた。

 

「かまいません。あれは、私が悪かったですから」

 

結局、子供を探していた親が背の大きい二人の騒ぎに気づいて無事に子供を見つける事が出来た。

 

「でも、あの時にアイドルとしてスカウトされるとは思わなかったなー」

 

「断られてしまいましたけどね」

 

子供の涙を止めようとするきらりを見た時にスカウトしようと思った。結果は、相手を余計に怒らせ、呆れさせるだけだった。

 

「でも、Pちゃんは諦めなかったんだよね?」

 

「はい」

 

それでも諦めきれなかった。もう一度、彼女の笑顔を見たいと思った。

 

「次に諸星さんに出会ったのは、女性向けのアイテムを扱うお店の前でした」

 

「……うん、憶えてるよ」

 

あの時のきらりは、その店を外から眺めていた。

 

「あのお店はね。私の好きなお店なんだ。でも、私に合う物は小物とかそういうのしかない」

 

きらりが見ていたのは、店の前を通る人に向けられて飾られている服。少女たちが好んで着そうな可愛らしい服。きらりには小さい服。

 

「私は、子供に向ける諸星さんの笑顔に惹かれました。ただ、貴女を心からスカウトしようと思った時は、あの時のものです」

 

憧れの服を見ているきらりの表情は少女だけが持つ純粋で綺麗な笑顔だった。子供の為に向けた優しい笑顔も素敵だったが、心から溢れ出す笑顔には勝てなかった。

 

「あの時の諸星さんの笑顔は忘れられません。誰よりも、他の誰よりも可愛い物が好きで憧れている少女の笑顔を」

 

きらりは、武内の言葉を受けて胸を抑える。

 

「憶えてるよ。Pちゃんが言ってくれた言葉」

 

まだ名前も知らない。それこそあった時は、怒りもした関係だ。

 

『貴女の望む世界で、貴女の望む物を着させます。貴女がその笑顔でいられるのなら』

 

何故、そんな事を言ったのかはわからない。ただ、自然とその言葉が出ていた。

 

「あの時は、ビックリしたんだよ? いきなり声を掛けられるし、知らない人だし」

 

「すみません」

 

「でもね、きらりんは嬉しかったんだよぉ? こんなきらりんでもカワイイ服を着ていいんだって思えたにぃ」

 

あの時のきらりの返事は、「私でも着られるの?」と言うものだった。

 

「Pちゃんは、あの時の約束を守ってくれてるんだよねぇ? こんなにたくさんカワイイ服を着させてくれてるもん」

 

きらりの前には、憧れていた服を着ている自分の姿がある。

 

「この写真の一つ一つにあの時の諸星さんがいると思います。他の誰よりも可愛い物が好きな少女が。それでも、他の方がいいと思いますか?」

 

「……ううん、思えないにぃ……写真のきらりんはとーってもハピハピしてるよぉー、誰にも負けないぐらいに幸せそうだにぃ」

 

「私もそう思います」

 

誰よりも可愛いものが好きな少女が掛けた魔法。それが解け、代わりに新たな魔法を掛ける。自分を隠さずに、本当の自分を好きになれるように。今の彼女は――

 

「Pちゃん、これからもきらりんにカワイー服をたくさん着させてほしいにぃ☆」

 

――とても輝いているのだから。

 




こんな感じで登場が少ないアイドルを書いて行こうと思います。
物語の都合上、クローネは個別が終わった人しか書けないのでそこは許して。
文香、ありす、加蓮、周子なら書けますね。
シンデレラ・プロジェクトも書けます。
他も書けない事もないです。

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