食事の場所に選んだのは、有名なホテルのバイキングだ。此処は、346プロダクションも懇意にしている所でいろいろと融通が利く。
「ねぇ、プロデューサー。此処って高そうだけど大丈夫なの?」
渋谷凛をはじめ、プロジェクト・クローネのアイドル達に心配される。確かにこの人数を自腹で払うのは大変だが、美城常務が何処からか話を聞いたようで会社の方でいろいろとしてくれた。
「美城常務の方から無料券を頂きました。これを使うので安心してください」
「ミッシーさっすがだねー!」
「常務ってすごいねー! フレちゃん、もうミッシーに足向けてネムネムできないよー! でも、ミッシーの家ってどこだろ?」
大槻唯と宮本フレデリカの二人は、物珍しそうにその辺を見て回っている。保護者役の速水奏が居ないと不安だ。
「二人とも、落ち着きなさい」
「えー! でも、なんかいろいろあって楽しいよ?」
「みんなでたくさん取ろうよ! アタシは、一口ずつ食べるからさー」
「食べられる分だけ取りなさい。いいわね?」
「はいはい、もーカナデちゃんはマジメなんだからー」
「ねえねえ、ゆいちゃん。あっちで何かやってるよ?」
「ホント? じゃあ、行ってみよう!」
唯とフレデリカは、ローストビーフを切っているシェフの下に急ぐ。
「……まったく仕方がないわね。ごめんなさい、あの子達を追いかけるから」
奏は、二人の後を追いかける。
「文香さん、あっちにケーキがありますよ! イチゴがたくさんキラキラしてます!」
「そうですか。では、一緒に行きましょうか」
「はい!」
鷺沢文香は、橘ありすと共にケーキバイキングの方へと向かう。
「こう言うのってマナーとかないよな? 私、そう言うの無理だ。やったことない」
「大丈夫じゃないの? アタシもそんなにないし。それに普通のバイキングでしょう?」
「奈緒。そんなに気にする必要はないんじゃない?」
「でもさー。此処って有名なホテルだろ? だからもしかしたらあるかもしれないじゃん」
「……凛、先に行こう」
「……だね。じゃあ、先に行ってるよ」
「――待ってくれよー」
北条加蓮と渋谷凛は、有名なホテルのバイキングに落ち着かない神谷奈緒を置いて先に行く。
「なんだか、パーティーみたいですね。Вы потеряли。たくさんあって、迷います」
「そうですね。どれを取るか悩みます」
「適当に皆で取って食べちゃおうよー」
武内とアナスタシア、塩見周子は、端の方からゆっくりと見て回る。
「こう言うのって元を取ってナンボって言うよねー」
「もと、ですか?」
「代金分の事だよ。元取れワンワンってね」
「どれぐらい食べれば、もとが取れるんでしょうか?」
アナスタシアは真剣に食べ物を選び始める。
「そう言うのは気にしなくていいと思います。好きな物を好きなように食べるのが醍醐味ですから」
「だいごみ……少しむずかしい言葉ですね。でも、みんな楽しそうです」
既に取る物を取って席に着いている者も居る。唯とフレデリカは、皿に山を作っているが食べきれるのだろうか? 皿には、山盛りのローストビーフが載っている。
「……私は、取らずにいる事にします」
「почему。どうしてですか、プロデューサー?」
「いえ、バイキングは基本的に残す事は禁止されています。此処も残すと罰金があります」
「前に美波とケーキのバイキングに行きました。美波も同じことを言っていました。Бесполезный , в результате чего。残したら、ダメだと」
「男の人って、こういう役になるよね。頑張ってね、プロデューサー」
アナスタシア、周子と共に簡単に見て回るが、自分は取らずに唯とフレデリカの分を食べることにする。案の定、食べている途中で飽きたようで残りを食べることになった。
「いやー、奏ってなんだか様になってるよな。もしかして、こう言うの慣れてんのか?」
「慣れているかはわかないけど、両親とたまになら食べるわね」
隣に座っている奏の作法が気になって、奈緒も真似てみる。
「うーん、どうかな?」
「アタシ達は、ファーストフードの方が似合うよ」
「そうだよね。普通に食べたら?」
「でもさ、少しはない? こう奏みたいにさ?」
「へぇー、どんな感じ?」
「そうだな……たとえば、こうとか」
二人は、奏のような食事の姿を真似る奈緒の写真を無言で撮る。その動きには無駄がない。
「――どう見ても子供が親の真似をしているだけだね」
「――だね。いつもの可愛い奈緒だね」
「――くそー、私としたことが……」
ニヤニヤしている二人に乗せられてポーズを取ってしまった自分に腹が立つ。
「どうしましょう。こんなにいっぱいイチゴがあります!」
ありすの皿には、イチゴが使われているケーキなどが大量に載っている。
「そうですね。でも、全部食べ切れるでしょうか?」
「大丈夫です! 私と文香さんなら。それにプロデューサーさんも居てくれますから安心です」
「……プロデューサーさんですか……」
文香の目には、唯とフレデリカが持ってきたローストビーフの残りを一人で食べる武内の姿が見える。
「……大丈夫です、ありすちゃん。私が頑張りますから」
「……そうですか」
急にやる気が十分になった文香の姿にちょっとありすは引いてしまう。
「プロデューサー、大丈夫ですか? Поможешь。私も手伝いますか?」
「……いえ、大丈夫です。アナスタシアさんは、好きな物を食べて下さい」
「そうだよー、アーニャちゃん。プロデューサーは、男として頑張ってるから手伝うんじゃなくて、応援しなきゃ。フレフレーって感じでさー」
「Не унывайте ли。頑張ってください! 応援しています!」
アナスタシアと周子の応援を受けて頑張って皿に載っている肉を食べていく。しかし、新たな敵がこの間にも盛られている事を彼は知らない。
♢♢♢♢♢
大人?組が書きたいだけなんや《おまけパート②》
「聞いて下さいよー。ナナは、頑張ってるんですよー」
今日は、たまたま帰る途中で出会った安部菜々と屋台のおでん屋で飲むことになった。
「知っていますよ。安部さんが頑張っている事は」
「ほんとーですか? プロデューサーさんは、ナナのプロデューサーさんじゃなくなりましたけど、ナナにとっては今でもプロデューサーさんなんですよ? わかってくれてますか? ナナをアイドルにしてくれたのは、プロデューサーさんなんですからね」
ナナは、ウサミン星特製の炭酸麦茶を一気に飲む。
「ぷっはー! プロデューサーさんと一緒に飲むと美味しいですね! おかわりください、ガンモとタマゴも!」
「はいよ! 菜々さん!」
お店の親父が手慣れたようにタネを選んでいく。
「大体、忙しいのはわかりますけどナナの事もかまって下さいよ! この前、みくちゃんの時に久しぶりに話したんですからね! 怒りますよ、ぷんぷん」
「……申し訳ありません」
「……別にいいですよ。プロデューサーさんが大変だったのも知ってますから。でも、ウサミンは寂しいと死んじゃうんですからね? こうしてかまって下さいよ」
「はいよ、菜々さん!」
「――待ってました! 親父さんのおでんは本当に美味しいです!」
「そうかい? いやー、菜々さんに言われると嬉しいね! よし、これもおまけだ!」
「ありがとうございまーす! でも、ナナにさんはいらないんですからね! ナナは、リアルJKの17歳なんですから!」
(それ飲んでてそれはまずいんじゃないかい?)
親父さんは、そう思いつつもウサミン星特製の炭酸麦茶を菜々に出す。
「でも、みくちゃんと最近一緒になりますけど若いですね……なんだか付いて行くのが大変で……。――ち、違います!? ナナも若いんですよ!? ただ、身体が言うことを聞いてくれない時があるぐらいで……いえ、違うんですよー!」
久しぶりの菜々との飲みは、ほとんど聞き役で終わった。迎えに頼んだ川島瑞樹も合流して女子寮近くで飲み直すことになる。
質問があったので一つ。
基本的にアニメに出た事のあるアイドルとは知り合いです。
前のプロジェクトで関わったのか?
スカウトしたのか?
直接担当になったのかは別として。