ヴィランスレイヤー   作:ジャギィ

10 / 10
◆◆◆◆前回の あらすじな◆◆◆◆

死穢八斎会の目的、関連を調べるべく、ヴィランスレイヤーは大阪のドウトボリで休養と情報収集を行なっていた。休息も束の間、ヴィランが街を襲撃してきた。さらにその場に居合わせたヒーロー、フルーエントとプロテクションも敵対し、三つ巴のイクサへと激化!どうなるヴィランスレイヤー!?


ナイト・フォーリング・イントゥ・サンド・ヘル#2

「砂地獄作る気やで!!」そのフルーエントの言葉と同時に、ヴィランの足元からすり鉢状の地獄が生み出された。中心で手を構えて、血走った目で獲物を待ち構える姿は、まさにアリジゴクめいて見える!「アイエーエエエ!」ナムサン!すでに人質の女性が1人落ちてしまっている!彼女はこのまま粒子レベルまで分解されてしまうのか!?

 

「プロテクションはん!ハイヨー!」フルーエントが紙にしていた巨大スプーンを砂地獄内に伸ばす!だが深さが足りていない!すでにその深くのヴィランにまで近づいている!「アイエーエエエ!」「伸ばす!」ゆえにプロテクションはスプーンを元に壁を下に伸ばし、女性までの距離を詰める!

 

GRAP!!危機一髪、女性を掴んだプロテクションは壁を元に戻し、元に戻ったスプーンをフルーエントが引っ張り込んだ。救助した女性はコンクリートの床にへたり込む。「アイエエエ……ありがとうございます!ありがとうございます!」「お礼はいいから早よ逃げんさい!自分があのヴィランとヴィランスレイヤーを抑えとく!プロテクションはんは市民たちの避難誘導を!」「大丈夫だな?」

 

プロテクションの心配も当然のものだった。片や赤黒の死神と恐れられるヴィランスレイヤー、片や“トリガー”で強力な“個性”に変化した無差別破壊者のヴィラン。組織というワードも懸念事項だ。もしこれが末端の人間の行動だとするならば、その組織の規模は計り知れない。(まさか死穢八斎会の人間か!?いや、奴らは頭領を含めた幹部クラス全員がペストマスクで顔を隠している。ならばその繋がりのある組織か!)救助活動を行いながらも、プロテクションは非常に冷静だ

 

「食らえや!」フルーエントは複数の黒い紙を取り出すと、砂地獄に向けて投げ出した。それはフルーエントの意思で徐々に本来の形に……ピンの抜けた閃光玉に戻った!砂地獄ヴィランの意識を奪うつもりだ!カッ!「ヌゥーッ!」FLASH!!すり鉢状の中に放り込まれたため、砂地獄内だけに凄まじい光が覆う!「これは効くでー!」フルーエントはすでに新しい閃光玉紙を準備している

 

だが、砂地獄の中にいるはずのヴィランの姿が見えない。一体どこへ!?「はっ!」「ヌゥッ!」フルーエントとヴィランスレイヤーの2人は気づく!砂地獄を生み出したヴィランは己の“個性”で地中を掻き進み、新たな砂地獄を作るべく真下へ移動していたのだ!「シャァーッ!」ハナカマキリめいた鋭利さで地中から腕を振るう!「イヤーッ!」崩れ始めた大地の上でも問題なくヴィランスレイヤーはバク転回避!

 

フルーエントも“紙変化”で伸縮棒を取り出し、紙一重で一時離脱していた。「イヤーッ!」攻撃直後の隙をヴィランスレイヤーは逃さない!コンクリート大地が塵になったことで露わになった上半身めがけて、スリケンを3発投擲!「同じのが通用するかよォ!!」ギャギャギャリィン!ヴィランは掌の角度を調節することでスリケンを衝撃を軽減し、最低限のダメージでニンジャのスリケンを防いだ!ワザマエ!

 

ヴィランは嘲笑する。「ハッハァー!ニンジャってのもこの程度かこの程度か?これなら、あいつらの棍棒の方がもっとイテエだろうなー!!」これをヴィランスレイヤーは無情な声音で返す。「クスリに頼り、逃げ隠れする臆病者風情が幹部になれるとは、よほど負けイクサを繰り返した負け犬組織とみえる」「ッテメエ!今なんつった!?」「聞くことがさらに増えた。ドブネズミどもの情報を洗いざらい吐いてもらうぞ!」

 

ヴィランスレイヤーのドクゼツが、彼の琴線を激しく刺激した!真の自由を社会から取り戻さんと錯覚する彼にとって、己の属する組織への侮辱が何より堪え難かった!「テメエは楽にブッ殺さねえ!手足をちぎって、水分吸ってミイラにして、串刺しにしてから焼き殺してやる!!」その邪悪な宣告とともに、再びヴィランは大地へと姿を消す!商店街の路地には巨大な砂地獄、真正面には伸縮棒を持ったフルーエントがいる

 

「煽るだけ煽ってくれおって、ええ加減にせえよ!ハイヨー!」「イヤーッ!」ヴィランの破壊行動を助長させるようなヴィランスレイヤーの言動にフルーエントが怒り、ギミックを動かして伸縮棒を伸ばし突き攻撃!これを体を軽く捻って容易く回避

 

GRAP!「イヤーッ!」そして掴む!「イヤーッ!」「おわっ!」槍を代打バッターめいて強く振り回し、フルーエントと槍をプロテクションが作り上げた壁にぶつける!CRAAASH!!「グハッ!」「そこで大人しくしているといい、フルーエント=サン」ヴィランスレイヤーは忠告し、だがフルーエントは立ち上がる

 

「冗談や…ない…!自分はこの街が故郷なんや!この街で育ってん!!みんなこの街で生まれて育って、みんなこの街が大好きやねん!!」プロテクションはんはまだか!?自分だけで2人を同時に相手とかできひん……せやけど諦めるかい!フルーエントとして、この街を守るヒーローとして、戦うんや!

 

フルーエントの魂の叫びが己自身を鼓舞させる。2枚の紙を取り出してそれを元に戻す。現れたのは取手に四角い鉄棍棒が装着した武器、トンファーだ!この攻防一体の武器を取り出したということは、ヴィラン2人を意地でも止めるという決意の表れであった!「アンタらが勝手にやりたいことなんかのために、みんなの幸せを壊させてたまるもんかっちゅーねん!!」

 

「うるせェんだよ」「!!」崩壊を始めた大地の下から声が漏れる。ヴィランはすでにフルーエントの真下に移動していたのだ!ナムアミダブツ!彼もこのままでは完全にアブナイだ!「塵殺してやる!!」足場が崩れて動けないフルーエントの足元から手が1つ伸びる!触れれば死ぬ!「ハイヨー!」だからこそフルーエントはこの攻撃に立ち向かった!

 

激突する2つの攻撃!あらゆる物体の水分を吸収し、枯渇させ塵に変えるヴィランの腕が、トンファーを破壊する!CRAAASH!「グワーッ?!」いや、破壊されたのはヴィランの右手だ!掌から指と腕の折れた骨が突き出た致命的な破壊!しかしなぜこのようなことに!?「お、俺の手が!?」「アンタがさっきから散々掌で水吸収しとったからな。少し器用に攻撃させてもろうたで」

 

成功して、フルーエントは一息つく。フルーエントは激突の直前、手首、指の動き、トンファーの角度を瞬時に変えることで、弱点である手の甲にトンファーを当てたのだ!長年のヒーローとしての観察力、洞察力、そして状況判断と技術が、防戦一方だった彼の状況をサイオーホースさせたのだ!「クッソがぁ!!よくも俺の手を!ブッ殺す!」破壊された右手と残った左手を使い、フルーエントを殺しにかかる!

 

しかし彼はこの場にいたヴィランスレイヤーの存在を忘れている!「イヤーッ!」「グワーッ!」モグラめいて出てきたヴィランの両腕をヴィランスレイヤーは情け容赦なくスリケンで切断する!インガオホー!「今度はウデが!?」「イヤーッ!」「アイエッ!?」混乱するヴィランに隙を与えず、ヴィランスレイヤーは首根っこを掴みひとっ飛びでタコボール・ショップの屋根に飛ぶ。殺さずにヴィランを連れて行ったヴィランスレイヤーの謎の行動に、フルーエントが訝しむ

 

首を掴んで、ヴィランスレイヤーは殺意の眼光で睨みつける!「離せ!離しやがれ!」「今からオヌシにインタビュー(拷問)する。私の質問に答えろ」ヴィランスレイヤーは有無を言わさない。「私の質問に正直に答えれば、オヌシを苦しまず、楽に殺してやる。答えぬならば、オヌシの臓器を抉り取り目の前で握り潰す」もがくヴィランを無視して、ヴィランスレイヤーはインタビューを開始する

 

「オヌシはどこの組織の人間だ」「ふざけるな!誰が答えるか!」「イヤーッ!」「グワーッ!?」ヴィランスレイヤーは膵臓を抉り出して、目の前で握り潰した。「オヌシはどこの組織の人間だ」「だ、誰が答えるか」「イヤーッ!」「グワーッ!」ヴィランスレイヤーは脾臓を抉り出して、目の前で握り潰した。「オヌシはどこの組織の人間だ」「だ…誰が、こた…」「イヤーッ!」「グワーッ!」ヴィランスレイヤーは肝臓を抉り出して、目の前で握り潰した

 

「オヌシはどこの組織の人間だ」「だ、誰か、タスケ…」「イヤーッ!」「アバーッ!」ヴィランスレイヤーは腎臓を抉り出して、目の前で握り潰した。「オヌシはどこの組織の人間だ」「わ、分かった!答える!だからやめてくれ!」「イヤーッ!」「アババーッ!?」ヴィランスレイヤーは大腸を抉り出して、目の前で握り潰した。「ナ、ナンデ…?」「これが最後だ。オヌシはどこの組織の人間だ。答えなければ肺と心臓を同時に抉り潰す」

 

ヴィランスレイヤーは無関心だ。これほど凄惨な拷問を行なって、なお無感情な声で囁く赤黒の死神に、とうとうヴィランの心は耐え切れなくなった。「お、俺は、トゥーン・フリーという組織に入っている。オールマイト引退の直後に設立された組織で、裏路地にいた所をスカウトされた…」

 

「オヌシの組織と死穢八斎会の関係はなんだ」「死穢八斎会は、トゥーン・フリーの上位組織だ…俺はただの組織の使いパシリだったんだ。突然ボスに“トリガー”を渡されて、この街で、取引の時間に合わせて暴れてヒーローを引き付けろって…」

 

「ならば次だ。オヌシは私以外のニンジャを知っているのか」「し、死穢八斎のニンジャに、1度だけ会った…双子で、見上げる巨体で、それぞれ“レッドオーガ”“ブルーオーガ”…って、呼び合…って、い…た…」「ならば最後に聞かせろ。取引とやらの相手は誰だ」

 

もはや死に体のヴィランが、微かに口を動かす。「し……え、や………い…………」「イヤーッ!」「アバーッ!」聞くべきことを聞いたヴィランスレイヤーは頭部をトマトのように握り潰し、路地に向かって打ち捨てた

 

「サヨナラ!」臓器の60%を失ったヴィランは爆発四散!「取引……ニンジャ……死穢八斎会……」今殺したヴィランは捨て駒だ。取引の場所を聞いても分からずじまいだろうとヴィランスレイヤーは結論付けた。しかしわざわざ“トリガー”を渡してまで暴れさせたということは、死穢八斎会の関係者が大阪のどこかにいるということをヴィランスレイヤーは確信した

 

そしてニンジャ!インタビューの末に聞き出した情報には、死穢八斎会に属するニンジャの存在が明らかであった!(果たしてソウカイヤと関係のあるニンジャか、あるいは独自の手法で見つけ手駒にしたのか)いずれにせよ、ヴィランスレイヤーがやることは変わらない。(まずは取引とやらの現場を探す!そしてヴィランがいたならば、インタビューし情報を吐かせる)ヴィランスレイヤーの血が滴ったブレーサーに雨粒が落ちる。この地では珍しくもない突発的ゲリラ豪雨だ

 

腐った血を洗い流し、惨劇が形として残ったドウトボリで燃える炎を瞬く間に消火してゆく!まさに恵みの雨と言えるだろう。「イヤーッ!」屋根伝いに飛び交い、ヴィランスレイヤーはソウルを感知していく。邪悪なソウルを見つけるために、ヴィランスレイヤーはドウトボリを後にした

 

 

 

 

 

 

 

「プロテクションはん、警察はいつ来はるんや?」「あと10分もすれば着くらしい。今回のヴィランは俺の“個性”では太刀打ちすることができなかった。フルーエント、全部押し付けてすまなかった」真面目なプロテクションらしく、彼はフルーエントに頭を下げた

 

「ええよええよ、今回は相手が悪すぎたんや。それにプロテクションはんが人質のみんなを避難させてくれたおかげで、死人0、怪我人もほぼなしで済んだんや。こっちこそ、感謝してもしきれんわ」互いに謝罪と感謝を述べたところで、プロテクションは眼下の亡骸を見て顔を歪ませた。爆発四散した砂地獄ヴィランの死体だ

 

内側から焼け爛れており、臓器の多くが無理やり抉り取られていた。「エグいな」忌避感を隠さずプロテクションが言う。「ホンマ、酷い殺し方やで。血の流れ具合からして生きたまま内臓を取られてんな。地獄の苦痛やわ、悲鳴が聞いてられんかったで」救助ヒーローゆえに人体に精通しているフルーエントが呟く

 

フルーエントにはヴィランスレイヤーのインタビューが聞こえていたのだ。だがただの人間の彼に即座に屋上に移動する手段はなく、フルーエントが屋上に辿り着いた時には、すでにヴィランスレイヤーの姿はなかった。「ヴィランっちゅうたって同じ人間やんか。なんでここまで酷いことできんねんやろうな」「ヴィランスレイヤーはニンジャだ」「なら、ニンジャってなんなんよ」フルーエントの声は震えている

 

確かにフルーエントとプロテクションは実感していた。ヴィランスレイヤーの“個性”抜きの超人的身体能力、そして歪んだ精神性、どれを取っても人間とは別種と言えるだろう。しかし、フルーエントは分からなかった。「“個性”持った人間と“個性”持たんニンジャ、何が違うんや」安易に違うとプロテクションは答えなかった。それはプロテクションにも、ニンジャという存在を正しく定義できないからに他ならなかった

 

しかし、ニンジャは実際邪悪ヴィランと肩を並べられる存在。それだけは確かだった。ヴィランの定義を失っていくものから死んでいくのが、ヒーロー社会の暗い一側面なのだ。そして今、オールマイトを失ったことでヒーロー社会の根底が揺らぎつつある。ナムアミダブッダ!これが古事記に記されたマッポーの世の始まりに訪れる暗黒期であるのか!?答えを知る者はここにはいない!

 

「…とにかく、こうなっては作戦の方も練り直しだ。ヴィランスレイヤーの件もある。お互いしばらく暇になってしまったわけだが」プロテクションはフルーエントの肩を叩き指を指す。指した方向には簡素な居酒屋が繁盛していた。「調書が終わったら、一杯やるか?」「エ?」

 

それはプロテクションなりに彼を思いやっての誘いだった。「………せやな。いつまでも暗い顔しとったら街のみんなを不安にさせてまうわ」フルーエントは残酷な方法で殺されたヴィランに手を合わせてオジギをする

 

死者に対しての垣根などあるはずがなかった。「…うっし!じゃあとっとと後始末を終わらせんとな!」「…やはり、お前に辛気臭い雰囲気は似合わないな」「やかましいわ!」フルーエントは豪快に笑う。それを見た人々は心の底からありがとうと述べた。「ありがとさん、フルーエント」流麗ヒーローはドウトボリの人にとって、最高のヒーローであるのだから




最近忍殺語のキレが悪くなってきたので、決断的に忍殺ツイッターを読破!テレッテー!ジャギィの忍殺語力が3上がった

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。