提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

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話がなかなか進まないけど勘弁してね。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は実在名称等ありますが、実在のものとは関係ありません。

いつも感想、評価、誤字修正、報告をくれる方々、本当にありがとうございます。


18,10,31
三次ソロモンの下りで
ワシントン→インディアナに修正。


提督(笑)と配達

「…ムム」

 

腕を組み目を瞑り思案顔な金剛。

 

「どうかしましたかお姉様!?」

 

比叡が問いかけるも反応はなく、唸り続ける。

 

「何か悪いものでも食べたのでしょうか」

 

「紅茶ではないのが、お辛いのでは?」

 

榛名の言葉に霧島は眼鏡をクイッとあげながら答える。

それぞれの姉妹の前の湯呑からは湯気が上がっている。

榛名が急須から入れたばかりの昆布茶である。

金剛姉妹だけのお茶会が久方ぶりに開催された。

 

「…分らないデース。ズズッ」

 

と目を開き、目の前の昆布茶を啜る金剛。

 

「何が分らないのですか?」

 

小首をかしげる比叡に、

 

「テートクはワタシを見てもワタシを見てないデース。why?」

 

と湯呑を見つめて答える金剛。

 

「哲学でしょうか?」

 

と霧島が言うがそれには榛名が静かに首を振り、

 

「提督は私達を通して何か別の物を見ていらっしゃる気がするの。嫌われている訳では無いと思うけど…、」

 

「そうデス。何度かとても悲しい顔されたデース」

 

「え? 司令っていつも同じ顔してません? 見下すような蔑むようなそんな顔ですよね?」

 

「ヒエーはテートク検定十級ですネ」

 

と昆布茶を啜る。意外と気に入ったのかもしれない。

 

「お姉様と榛名はどの位なのですか?」

 

霧島の問いに

 

「ワタシの愛はそんなものじゃ測れないくらいにバーニングデース」

 

自信満々の笑みを浮かべる長女。

 

「榛名も負けませんもん」

 

と対抗する三女。

 

「ところで榛名。司令ってどんな方なのですか?」

 

「えっ!? 霧島は知ってて指揮下に入ったんじゃ…」

 

三女榛名と四女霧島はお互い呼び捨てだったりする。

 

「いえ、状況判断の結果です。全員が司令の指揮下にいるべきだと私の冴えわたる頭脳が」

 

「霧島もテートク検定十級からですネ」

 

穏やかな笑みを浮かべる金剛に霧島は内心でほっと息を吐いた。

どうやら危うい状態は脱したようだと。

 

「でも、お姉様。分からないなら直接聞いたらいいと思うんですけど」

 

「…ヒエーのそういうところお姉ちゃん好きダヨ」

 

「はい私もお姉様大好きです」

 

「それじゃあテートクに直接聞きに行くデース。ついでに一緒に寝マショー」

 

「榛名もご一緒します!」

 

と両頬の横でにぎり拳を作る榛名を霧島は若干あざといと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある米海兵の日記より。

 

 

オキナワは地獄だ。

 

今日はフレッドが帰ってこなかった。

昨日はジョージが左足だけになって帰って来た。

 

奴らは悪魔の集団だ。森の中、地面から突如湧き出て、死を恐れずに突撃して音も残さず消えていく。

テリブル・ターナーとマッド・スミスはジャップの戦艦の砲撃でミンチになった。

バックナーはジャップに狙撃されて星条旗に包まれて地面の下。

ジョンブル共の艦隊は怖気づいてフィリピンから動かない。

フィリピンで二度もジャップにやられたアホのマッカーサーは安全な場所から『必ず助ける。それまで戦線を維持し勇気を持って戦え』と命令してくる。

誰かコイツを撃ち殺してくれ。もう我々は弾も食料もない。

後退することも出来ない場所まで追い詰められている。

 

この地に我々の神の加護は届かない。

この地獄から抜け出せるのであればナガノというジャップ共が崇拝する悪魔にすら縋りたいと思ってしまう。

奴が再び艦隊を引き連れて来るのが先か、俺が死ぬのが先か。

 

明日は誰がジャップの餌食になるのか。

 

オキナワは地獄だ。

 

 

 

ちょっと本格的にエゴサーチする事にしたらなんとも複雑な気分にさせられた。

今読んでたのは沖縄戦についての物で、ライバック氏は結構、戦史関連の書物を持っていて見せてと頼んだら快く娯楽系のを含め何冊か貸してくれた。

元いた世界との違いについて調べていたのだと思うが、俺という異物を見ても転生主人公乙!的なツッコミが入らないのは何故なのだろうか?

艦娘の推し聞いたら知らないおっさんの名前を上げるあたりちょっと思考が斜め上の方に行く方なのかもしれないけど…。

 

しかし、直接的、間接的に俺が関わった事で随分とアメさんの死傷者が増えた。

サイパン島攻防戦で2万2000人、硫黄島の戦いで3万人、沖縄戦(海戦含む)11万人。

手が血で染まる、どころか全身血まみれだ。敵だけではなく味方の血も含めて…。

それだけやったにも関わらず結局は本土空襲防げなかったみたいだし。

アメさんの物量を嘆けばいいのか、形振り構わず護衛機少数でB-29飛ばしてきた勇気を称えるべきか、俺の至らなさを恥じればいいのか。

史実よりは一カ月から二カ月位マンハッタン計画は遅れが出ていた。

アメさんのレンドリースも各国減らされているから独ソ戦も少しだけ長引いていた。

欧州での出血量は各国とも増えてるはずで、それでも講和までは残った連中が本当に明治維新張りのミラクルを起こしたから成った。

ソ連の南下は想定内だが、柳本君たちが頑張ってくれたからだ。

坊の岬沖海戦後の後詰で輸送隊護衛の松田君率いる伊勢、日向が嘉手納のアメさんの上陸地点に艦砲射撃してる。

そんなの当初、予定になかったが、スケジュール自体予定を繰り上げて海戦後、出来るだけ早く動いて行ったようだ。

海戦後に陸軍さんが貯蔵してた重油の一部を分けてくれたらしい。

本当に味方かと思うほど仲が悪い陸海軍で珍しい事例。

ちなみに護衛隊の編成は日向、伊勢、皐月、秋霜、宵月、海防艦1隻と清霜。

清霜は修理終ってたけど主砲なかったやん…。とツッコミたい所。沖縄では無事だったようだが、全艦呉に空襲があった時に損傷、着底したりして終戦を迎えてる。

長門や陸奥も八月の末の北方海戦を終えて、九月の中頃に東京湾での空襲で陸奥は横須賀で着底。長門も損傷。

東京にも空襲による被害が出ている。

その頃に潜特型潜水艦がパナマ運河強襲して損傷を与えていなかったらもっと悲惨な空襲になっていただろう。

 

本当に俺の死んだ後…生き返ってるけど、皆が針に糸を通す様なミラクルを起こして捥ぎ取った講和だ。

だから俺は大した人物じゃないと思うのだが、知名度が何故こんなにあるのか。

 

あと気になるのは、坊の岬海戦後の歴史を見ていく中でうちの実家の前で三式自動小銃持った方々とアメさんの兵が睨み合ってる写真が載ってるものを見つけた事…。

それによく見るとチトたんがうちの庭に鎮座してるように見えるんだけど…。

史実と違って1945年の8月時点で100台位できてたけどさ、この記述によると1946年の4月のものらしいからあってもおかしくはないんだけど、うちの実家で何してたんだコイツら。

 

さらに色々と玩具にされている俺氏。

「この戦いで決着をつける!勝利せよ!」的なセリフはサブカル界隈で特大の死亡フラグだそうです。

他にも、実は生きていて戦後の日本を牛耳ってたとか、今もどこかの海で幽霊船に乗って彷徨ってるだとか月の裏側に秘密基地作ってそこにいるとか、やりたい放題だいい加減にしろ。と言いたい。

まぁでもその都市伝説的な話の中に沖縄の慰霊祭って言うのが触れられていた。

それに関しては時間見つけて行けないかと考えてる。

一先ずは頭の片隅に置いておくとして、他にもほんとにネタにされること多いこと多いこと。

一番笑ったのはタブレット使って『長野壱業』でネットの画像検索すると天一号作戦前に撮った奴の隣に、どっかの山道を走るハチロク。それを追いかける戦艦の画像が出てきた事だ。

 

──さらにその隣には長野苺ちゃん。苺ちゃんはクーデレキャラです。

 

ぶっ飛ばすぞテメェッ!

 

敢えて触れなかったところに触れるんじゃねぇ!

 

──失礼しました。間もなく父島に到着します。

 

現在、早朝。

多分新聞屋さんが新聞を配ってる時間帯。

艦娘達の目を盗みながら外へ移動を始める。

もうこれ以上俺の理性を削らないでいただきたいのである。

昨日は平和に船の旅であった。俺の理性は別として。ついでに船内の空気が微妙だったことも無視する。

 

ライバック氏の指揮下の娘さん達を昨日、全員紹介された(その間は損傷軽微なうちの娘さん達が護衛)。

もうなんか隠すの無理なんじゃないかと思う。

皆様、人の顔見て数秒固まって指差して「えっ? えっ?」っていう反応。

それを見てうちの娘さん達が得意げな顔をしてた。

名取だけ周りの反応に「えっ? えっ?」って取り残されてた感はあった。

彼女とは本当に縁が薄い。戦前戦中通してもこれと言って関わりが無い。

艦娘としての姿は五十鈴と同じ巫女服っぽい色合いの制服でショートカットのお嬢さんだ。

他の姉妹と比べるとキャラ的に影が薄いが、下三人を長良型にするのか由良型にするのかはさて置き、胸部装甲は五十鈴に次ぐ厚さを持っている。

出来れば彼女の様な娘さんと過ごしたかった。失礼な言い方だが精神的に楽だから。

あと俺はジムとかジェガンが好きなんだ。彼女見てるとね何故か頭に浮かんでくる。

きっと相性がいいのだ。そうに違いない。

 

唯一関わりがありそうなのがマリアナ沖海戦か? ただ、彼女補給部隊の護衛だったからなぁ。

あとは第二次ソロモンとか亀作戦で一緒だった陸奥の艦長の山澄君が開戦直前まで名取の艦長だったか。

レイテ時の武蔵の艦長チョロビン君こと猪口君も名取の艦長だったよな。

開戦直前と直後にやたら砲術に関する事聞かれた気がするが…名取関係ないな。

五十鈴の艦長自慢じゃないが歴代艦長には後ろから見ると猫が秋刀魚を咥えたように見える方とかもいた筈。

あだ名はそのまんま「ねこさんま」。

個人的には同郷の先輩で岸さんかな。海上護衛総司令部の参謀長で第七艦隊司令してた人。

硫黄島近海に機雷撒いた時の高栄丸をこっそり貸してくれたりいろいろ便宜してもらった。

最終的に軍令部出仕だったけど「もうどうにもならん」て頭下げられたなぁ。いや、名取関係ないな。

 

結論、やっぱり名取は関係薄い。

 

というわけで、彼女の反応は仕方がない。

 

朝風というよりは神風型は大正モダンガールな出で立ちだ。

上は振り袖の二枚着。内側は白色で外は各自で色が違う。

下は腰帯巻いて袴。こちらもリボンがついてたりそれぞれのカラーリング。

四人並ぶと戦隊ものっぽい。

 

戦隊カラーでいくと朝風はブルーだな。

亜麻色のゆるふわなロングヘアーに大きな青いリボン。

きりっとした眉なのに青っぽい瞳の垂れ目。何故かデコピンして涙目にさせたくなる容姿だ。

 

春風はピンクだな。

上はピンクで下の袴は緋色。セミロングの茶髪の後ろ髪を縦ドリルにして肩から前に流すスタイルで、緋色の大きなリボンが良く似合っている。戦闘時は頭のドリルが分離して敵に飛んでいくに違いない。

 

旗風はイエロー。

桜の入った薄い黄色羽織っていて羽織の下の着物は白練だ。下の袴は黒色。

春風より色素の薄い亜麻色のポニテール結びで、毛先が巻き巻きしてる。

あれだ、小っちゃい鹿島。

 

そんな神風姉妹とは神風と疾風以外は面識あるか。

疾風はミッドウェー海戦の時には既に沈んでいて第二九駆逐隊は追風、夕凪、朝凪と睦月型の夕月という編成だったから。

神風は初戦から中頃まで北の方で、終盤も南シナ海方面で、記憶を思い返す限りすれ違いがあったかどうかだろうな、

他の娘さん達は大体護衛任務でご一緒したかな。

小回りが利いて潜水艦追い掛け回しやすかったってイメージだ。

だいたい、ご一緒した時は夕張に乗ってた。そして夕張の爆雷が尽きたら駆逐艦に移るという感じだった。

というか夕張は艦これでも帝国海軍でも軽巡枠になっているが平賀さんの中じゃちょっと大きい駆逐艦扱いだった。実際に秋月型と…、秋月型は駆逐じゃ最大サイズだけどそれほど大きさ変わらないし。

 

さぁ、艦娘さんには誰にも見つからずに甲板までやって来れたぜ。

妖精さん達が後ろから隠れながら? 付いて来てるのはこの際無視だ。

 

「あ、あのっ長野提督っ!どちらに?」

 

水上から収容用クレーンに掴まり甲板に降り立ついっちばん艦に見つかってしまった…。

船内だけを気にしていた俺の馬鹿。

というかここまで来たのはいいがその後はノープランだった。

そして何でこんなに怯えてんだこの娘。

 

「…あうっ」

 

この娘さんとの面識は第三次ソロモン海戦の印象が強い。

第三次は大惨事。史実で言うところの南太平洋海戦とソロモン海戦の抱き合わせだった。

1942年(昭和17年)11月10日から13日までの全三日に渡る戦い。

日本の主目的はツラギとガ島とニューギニアのラエに兵を送り込むため。

一日目は空母同士の航空戦。

加賀、瑞鶴、瑞鳳vsサラトガ、レンジャー、サンガモン、スワニー。

その後、夜戦で残存部隊に決着つけようとしたが新月があけたばかりで空振り。

二日目から三日目は日米ともに相手の機動部隊を撃滅したと思い込み、ソロモン諸島にお互い輸送部隊と護衛艦隊を送り込んだ。そして夜中に遭遇戦から始まった。夜戦初日はガ島の北にあるツラギ近海とガ島近海。いわゆるアイアンボトムサウンド。日本側はツラギ、ガ島の輸送は行えず。史実と違い綾波が第一夜で活躍してた。

俺は五十鈴に乗って照明係やってた。敵と味方からめっちゃ撃たれた気がする。

三日目は体勢の立て直しとニューギニアのラビに輸送成功した部隊と空母機動部隊の護衛部隊の一部が増援に来たことで金剛型四姉妹vsコロラド、ワシントン、サウスダコタ、インディアナという戦艦同士の殴り合いに発展した。

もう滅茶苦茶だったな。命令の行き違いと、情報錯綜、艦隊連携の不備。

史実と同じように比叡と霧島は結果的に沈み、金剛と榛名も長期修理を要する様だった。

もっともアメさんもコロラド、インディアナが沈んでいる。

途中で突っ込んできた艦隊に夕立がいた。あとその中に白露もいて司令の高間さんは頭おかしいんじゃないかと思った。

俺は五十鈴に乗って照明係。以下略だ。

 

うむ、怯えてる理由が分らん。

分らんが、いいことを思いついた。

 

ミック先生、父島がうっすら見えてるけどあとどれくらい?

 

──5海里ほどかと。

 

 

「……」

 

「……」

 

長野がじっと白露をみつめる。

その視線にさらされる白露は恐怖を感じていた。

脳裏に浮かぶのは第三次ソロモン海戦の時の事。

白露が当時所属していた四水戦はガ島のルンガ泊地(アメリカ揚陸地点に使ってる所)に強襲をしかける任務であった。

強襲部隊は第四水雷戦隊の旗艦秋月。軽巡由良。

第二駆逐隊(夕立、春雨)と亀作戦で損傷して村雨、五月雨を欠いた第二七駆逐隊(白露、時雨)。

一時的に第六駆逐隊(雷、電)。

強襲しようにも通り道には戦艦たちが殴り合ってるという状況。

その敵味方戦艦たちの間で探照灯を照射しながら暴れ回る五十鈴。戦艦4隻含む艦隊に軽巡がである。頭おかしい。それに感化されたのか白露一行は敵艦隊向けて突撃する道を選択。敵艦隊を突っ切るという頭おかしな選択だった。ちなみに一発、五十鈴に向けて誤射した。

 

そんな過去を思い出した。

 

「白露」

 

「はうっ!?」

 

手を掴まれてもう一度収容クレーンに乗せられる。

 

…長野と一緒に。

 

「え? え?」

 

クレーンは再び海の上に。

 

「父島まで最大船速だ」

 

という長野はいつの間にか救命胴衣を着けていた。

 

「ちょっと意味がわからないです」

 

「畑の様子が気になる。行け」

 

「アッハイ」

 

白露は混乱しながらも海へ飛び出した。

 

長野をもって。

 

無表情で波に打ち付けられている男を視界の端で捉えながら頭おかしいのは自分なのか、この男なのか、

今までで一番の意味不明の状況に感情の整理がつかない白露であった。

 

 




磯さんと浜さんが少し大人に。浦さんは顔は幼くなった気がする。

というわけで新生活スタートした方々はそろそろ新しい環境に慣れたかしらん?
新社会人の皆には社会人の先輩としてピロシキィからアドバイスだ。
上司に「パスポート持ってる?」って聞かれたら「持ってない」と答えたほうがいい。

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