提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

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はっちゃんのクリスマスグラがエロかった。



提督(笑)と愉快な仲間たち

 長女と三女の親睦を眺めながら、如何したもんかという思いと共にズボンをどうにか持ち上げられないかと体をくねらせていた時、水密扉を捻じ開けて入って来た人物がいた。

ながもん。

もとい長門だった。

 

はて、なぜ彼女がここに? なんて思いをしつつも顔を合わせたのだから、挨拶を交わそうと思う。

 

ながもんじゃん、チィーッス。

 

「…長門か。久しいな」

 

うん知ってた。そんなチャラ男的な挨拶は出来ないって事。

 

そう声をかけると彼女は金剛達から俺、また金剛達へと何度か視線を彷徨わせた後、

それはもう、とても澄んだ瞳をして虚空を見つめて固まった。顔文字にするなら( ͡° ͜ʖ ͡°)こんな感じである。

 

「oh…ナガト? どうしたデスカー? 立ちBirthなんかして」

 

弁慶かよっ! ってそれ死んでんじゃん…。

 

「お姉さま、この場合stalledでよろしいのでは?」

 

突っ込むところそこじゃないと思うんだけど…。

金剛が帰国子女という説に俺の中で疑惑が生まれたが、そんな事よりながもんがピクリとも動かない。

え、ちょっとマジで死んでないよね?

 

「よし、夏だな…駆逐艦でも愛でるか…」

 

あ、なんかブツブツ言ってる。生きてんな良かった。

 

そうか、彼女が迎えに来てくれた艦隊の艦娘か。

となると、迎えはライバック氏か。

 

「長門さーん! 何処ですかー? 司令官が怒ってますよー」

 

そこへひょっこりと顔を出すグレイッシュピンクの髪を持つ娘さんが一人。

 

「あ、やっと見つけましたよ。…あれ、どうしたんです…か…」

 

お、青葉じゃんチィーッス!

 

「青葉か」

 

そして、ワレアオバは長門と同じように俺と金剛達へと視線を行ったり来たりさせ、さらに何故か徐々に顔色を悪くさせて、

 

「青葉、見ちゃいました」

 

と回れ右してダッシュで去っていった。

この状況をみてパパラッチの血が騒いだのか。

それは俺にとって非常に宜しくない状況である。

次回発行の艦娘新聞には『艦娘に緊縛プレイを要求する変態提督』とか見出しが躍りそうで怖いのだけれど。

今すぐ追いかけたい。マジで。

 

「おい、金剛」

 

「何デスカー?」

 

じゃねぇだろ。なんでそんな余裕なんだお前は。

 

「これを解け」

 

「oh…テートクはせっかちさんデスネー」

 

「待て、何をしている?」

 

何故、脱ぎかけになっているズボンに手をかけるの?

 

「さぁテートクtake offするデース」

 

解けって、縄を解けって言ってんだよ!?

 

「待ってください、お姉さま」

 

さすが榛名。姉と違って常識人! さぁ早く姉を止めて。俺の拘束を解いてくれ。

 

「ここに長門さんが来たという事は、迎えの艦隊が到着したのでしょう。いずれ他にも誰か来る可能性があります。さっきの青葉さんが他の皆さんの拘束を外してしまうかもしれません。…なので、場所を移しましょう」

 

あるぇぇぇ!?

待って、ねぇ待ってよ! さっき貴女、姉を止めてたよね? 勝手は許しませんって言ってたよね?

 

「Oh、榛名の言うとおりネー。では誰にも邪魔されない場所でバーニングラァァブデース!」

 

「お姉さま!」

 

「分かってるヨ、ハルナー。二人でテートクに愛してもらうデース」

 

と、俺を抱き上げる金剛お姉さま。俗にいうお姫様抱っこである。

やだ、惚れてまう…なわけあるかーいっ!

 

「縄を解け、そして降ろせ」

 

「何処なら見つからないデース?」

 

「えぇと」

 

ねぇ、聞いてる? 何で無視するの!?

 

「貴様たちは何をやっているかっ!!」

 

と、ドゴンッという音が響き渡り、金剛と榛名の頭の上に長門の鉄拳が突き刺さった。

そして頭を押さえてうずくまる姉妹。

という事はお姫様抱っこされていた俺は床に投げ出されるわけで…。

 

「ぐっ」

 

次に来るであろう背中から床に落ちる衝撃に備えるべく、身を捩り目を閉じる。

 

「……」

 

で、思ったほどの衝撃が来ない事を不思議に思い、目を開けば俺を見下ろす長門と目が合う。

 

「…感情が全く追い付かん。何が一体どうなっているのだ? こんな時、どんな顔をすればいいのだ?」

 

長門は俺を見ながら百面相でネタを振って来る。

 

「…笑っとけ」

 

それに答えて俺も口を開く。

そして、君も私をお姫様抱っこしているようだけども、なんか恥ずかしいので降ろしてください。

妙に漢らしいながもんを見ながらそう思ったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先を歩く清霜。それを見守るように後を追う霞。

ちょっとした林を抜ければ、容赦なく照りつける夏の太陽が顔を出す。

それ程の時間をかけずに、上陸を果たした海岸の逆側へと着くはずだった。

清霜があっちへフラフラこっちへフラフラとあらゆるものに興味をひいては時間をかけることがなければ。

それでも霞は文句も言わずに清霜の後を追った。彼女にはお艦属性が備わっていた。

そうして、ようやく反対側の海岸線に辿り着いた所で清霜が急に走り出した。

 

「あっ、長波姉さん」

 

という言葉と共に。

 

霞はその背中を追って歩き出すが、そこには異様な光景が広がっていた。

 

「長波姉さん!」

 

「お、おう。清霜じゃないか!」

 

「ねぇねぇ何してるの? 楽しい? 清霜もやりたい」

 

清霜は砂浜に寝転び、長波に対して矢継ぎ早に話しかける。

 

「…わかったわかった。後でな?」

 

砂浜に首だけ出した状態で埋まる艦娘達と一人の女性提督の姿があった。

 

「なにしてるわけ?」

 

霞はこめかみを押さえながら問う。

 

「嵌められたっぽい!」

 

と夕立が元気いっぱいに叫ぶ。

 

「金剛と妖精たちが結託してね…」

 

と時雨が遠い目をして意味深なワードを呟く。

 

「ぬおおお焼けるぅぅぅぅ」

 

と白露が顔を捩って太陽に対して無駄な抵抗を試み、

 

「暑い…もう無理…」

 

頬を伝い顎先から汗の滴る村雨は妙に艶めかしい感じになっている。

 

「でっかいカニがこっちにくるぅぅ」

 

さらに五月雨はカニに襲われそうになってプルプルしていた。

 

「連装砲ちゃん早く早く」

 

島風の周りで連装砲ちゃんたちが一生懸命に砂を掘り、主人を助けようとしている。

 

「この展開は予想外過ぎるんですけど…。業和さん、大丈夫かな…」

 

「ちゃんと避妊するかしら」

 

「陸奥さん、そのセリフなんかすっごい複雑な気分にさせられるんだけど…」

 

首だけ出した状態で会話している百合恵提督と陸奥。

 

「お腹すいたなぁ。マグロたべたい」

 

「あのマグロのカルパッチョは美味しかったよね」

 

艤装の飛行甲板は砂浜にきれいに並べられた状態だが、飛龍と蒼龍も見えるのは首から上だけである。

 

「何なのよ、これは…?」

 

霞の呟きは夏空に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒトサンサンマルをもって退避完了です。物資の被害や放棄した物はありません。人的被害は…どうなんでしょう?」

 

俺は映画監督とかが座ってそうな椅子に腰かけて、お迎えに来てくれたライバック氏からタブレットと今回の件についてのシナリオが書かれた紙束を渡された。

それを読みながら現在、平波の艦長室から仮拠点の前に場所を移して大淀さんの報告を受けてます。

ライバック氏とは軽く挨拶を交わして、ながもんにはお姫様抱っこされてた時に俺の事は内緒ねってお願いはしといた。

あ、青葉には言えなかったけど大丈夫だろうか。ちょっと心配だな。

 

「そうか。ご苦労」

 

「ごくろう。ごくろう」

 

俺の前では罪人の如く縛られて正座する四人の艦娘。金剛、榛名、長門、あと磯風の姿。

それぞれ頭の上にたんこぶを作っている。俺の頭の上には時津風が乗っかっている。

他にもうちの艦隊の娘さん達。全員じゃないけど…そのうち集まってくるだろう。

空挺隊の方々に、ライバック氏の所はながもんと青葉。

ユーリエちゃんとその指揮下の艦娘達がいないな。

 

「大淀、建物内には誰もいないのだな?」

 

「はい。間違いありません」

 

なら、平気か。

 

ライバック氏の所には名取と第五駆逐隊がいるみたいだけど、乗って来たシーワックスでお留守番のようだ。

あとどうでもいいけど、大淀さんは俺の寝間着に使っていたTシャツを片手に持っているようだけど、返してね?

鹿島も俺の制服の上を胸に抱えてるけど、後で返してね? 今は暑いからいいけど。

 

「いやーほんと申し訳ないね、ウチのながもんが…」

 

と軽く頭を下げるライバック氏。

まぁ、うん。物資とか皆に被害なくてよかったよ。

建物を見ながらちょっと遠い目になっちゃう。

 

──倒壊の予兆が確認できます。

 

「崩れるか…」

 

と呟いたら、本当に崩れたよ。フラグってあるんだなぁ…。

倒壊した建物があげた砂塵を見ながらしみじみする。

 

「いや、ほんとになんかすまないね」

 

とライバック氏が乾いた笑いを上げている。

 

「おい、提督。なんだその口の利き方は」

 

ライバック氏の指揮下のながもんが、自身の提督にいちゃもんつけている。

 

「いやいや、あれ壊したの長門だからね? 君の不始末謝ってるんだからね? 何で俺が責められるのよ」

 

正論だと思います。

俺の身(貞操的な意味で)は助かったけど、その代わりに貴女の引き起こしたことも色々と酷いからね?

 

「Hey! ちょっとアナタ、テートクに気安いヨー!」

 

「黙ってろ」

 

「ぶぅー」

 

何で金剛が不満顔するんだ? もとを糺せば君らのせいだからね!

それと青葉はライバック氏の隣にいるのだが、顔がずっと青いけど大丈夫か?

なんか俺とライバック氏が喋るたびにビクッてしてるけど。

 

「…青葉は体調が悪いのか?」

 

「っ!? 大丈夫です問題ありません!」

 

俺の問いにビシッと敬礼で返す青葉。

 

「どしたん?」

 

それに対して訝しむライバック氏。

 

「司令官。知らないって幸せですね…」

 

「いや、ほんとにどうした!?」

 

青葉が挙動不審なのは俺のせいか? まぁ思い当たる節は無くはない…。

第一次ソロモンでは一緒に輸送船団蹴散らしたし、サボ島沖は…、あれは嫌な戦いだった…。

それまでは犠牲はあったにせよ明確な勝ちだと思えた戦いだった。

だがあの戦いは、史実では第一次ソロモンで沈むはずだった加古が、事前に潜水艦を潰していた事で沈められること無く、参加していた。

しかし、サボ島沖でその加古は沈み、第四艦隊事件で生き残った深雪も沈んだ。

史実は…、歴史の流れは大きく覆せないって突き付けられてるような気分になった。

そんな苦い思い出がサボ島沖の戦いだった。

 

あと、五十鈴が二水戦の旗艦になるんだろうと踏んで、司令部をお出迎えにトラックに自主的に参上した際に、

井上さんと、何故か大和に乗って来てた山本長官から滅茶苦茶怒られた。

大人しくしてろと言われてから、五十鈴からは一歩も出なかったのになぁ…。

 

「おい司令! 縛っていいと言ったが、なぜ正座までさせられるんだ?」

 

磯さんが大層不満げに抗議してくる。

 

「…食材を無駄にした罰だ」

 

あと、お艦を縛り上げやがって。なぜ俺をその場に呼ばないのかと小一時間言葉責めしたいところである。

そもそも今回の一件は今縛られて正座している高速戦艦姉妹の長女が元凶である。

妖精さんたちと結託して皆を行動不能にしたそうだ。

お艦に関しては、妖精さん達のヒエラルキーの頂点に君臨しているので、磯さんを言葉巧みに誑かして彼女に縛り上げさせたらしい。

 

その元凶が凶行に及んだ原因は俺の発した不用意な一言ともいえるけど…。

 

俺がイタリアンな戦艦が好みだと言った事が相当、彼女達にしたら不満だったようだ。

ええやん、あくまで軍艦の好みやん。艦娘の好みちゃうやん。とも思うがそこはやっぱり艦娘って存在。

なんか譲れないものがあったらしい。

で、中でも目の前で膨れっ面を晒している金剛お姉様は斜め上にかっ飛んだ結論に至ったらしい。

彼女流に言うなら「ワタシの体を使ってメロメロにして、他の娘の事なんか考えられなくしちゃうネー」ってところか。

 

さすが俺の嫁艦、そんなところも可愛い。

 

 

…それが画面の中であれば、そんな風に考えられたんだけどな。

 

「テートク、ワタシの事嫌いですか?」

 

「……」

 

嫌いじゃないけどさ…。

 

「ワタシはテートクとまた逢えてホントにホントに嬉しかったんダヨ? どうしてワタシを、ワタシたちを見る時、悲しい顔するノー?」

 

しょうがないじゃないか。かつて、俺はお前たちを…。

 

「また逢えたこの奇跡をテートクが嬉しいと思ってくれるならハグして欲しいデース。もう二度と離さないってハグして欲しいデース。それで、テートクが嬉しいときには笑ってくれたらワタシもhappyネ。テートクが悲しい時は私がハグしてあげマース。

だから悲しい時は悲しいって言って欲しいデース。苦しい時は苦しいって言って欲しいデース。ワタシが出来る事何でもするヨ。だから逃げないで欲しいデース。ちゃんとワタシを私たちを見てヨ、テートク」

 

そんな簡単に割り切れるかよ…。

 

──貴方は失ったモノに比重を傾けすぎています。

 

お前までそんな事言うのか…。

 

「あー、そのなんか、ひっじょぉぉに空気読めてないようで本当に申し訳ないんだけど、餃子氏は金剛と以前に会ったことあんの?」

 

大変申し訳なさそうにそう口を開くライバック氏。背中には哀愁が漂っている。

 

「俺からしたら今の金剛が俺の知っている金剛ではあるんだけど、餃子氏が転移してきたの春先っしょ?

退かぬ媚びぬ省みぬ状態だった金剛といつ会ったのかなーって。あと長門と青葉が君に会ってから明らかにおかしいんだけど」

 

あぁ、どう説明したもんかね。ってか、ここには空挺部隊の面々もいるんだよなぁ。

 

「提督よ。この方には最大限の敬意を払え。それと今回の件、私は絶対に認めないことにした」

 

いや、そういうのは別に要らんのだけど、今回の件とは何ぞや?

 

「エェ…」

 

ライバック氏は困惑気味である。

 

「パパーーーっ!」

 

声のした方に視線を向ければ、うさ耳リボンをつけたはっやーい娘さん。

 

「島風にパパと呼ばせる餃子氏パネェ」

 

長波様に首根っこ掴まれているから突っ込んでこなかったのは助かった。

よからぬ誤解が生まれた気がする。

 

それに続き、ユーリエちゃんとムッツォに白露姉妹たち。

何故かみんな砂まみれだ。

 

「建物が倒壊してる…」

 

「あらあら」

 

呆然とするユーリエちゃんと仲間たち。

 

「お説教っぽい?」

 

「まぁ当然だよね」

 

「お前ら覚えとけよ」

 

妖精さん達にメンチ切る長波様。

 

「ナミヘーオコ オコナノ?」

 

対してそこを軽くスルーしちゃう長野さんとこの愉快な仲間たち。

 

「はぁ!? え、はぁぁぁ!?」

 

「霞ちゃん、どーしたの? え?」

 

うちの娘さん達に続いてやって来た、こちらを指差してくる霞ちゃんと呼ばれる艦娘。うん、霞ママやな。

あと戦艦になりたガールのキヨシ殿。もとい清霜。

二人とも口が半開きで固まってます。

 

「オウオウオウオウ! アンタがここの司令官か? 歴戦の空母たるウチによう喧嘩売ってくれたのぅ? …あかん。ウチ疲れとるな」

 

別の方向からやって来た、チンピラの様な言いがかりをつける駆逐艦みたいな軽空母は、俺の顔を見て目を擦りだした。

 

「金剛お姉さまぁぁーーー!」

 

「もう私は金剛型じゃ…グスン」

 

あれは艦隊の頭脳か…。

ヒェーを曳航しながらこちらに歩いてくる霧島ネキ。

 

これまた一波乱ありそうな気がする。どうやって収めればいいのだろう?

あっ、そうそう。大変余談ではありますが今回の南鳥島解放の件でこの度、私二階級特進をするみたいです。

 




ちょっとした補足。

第一次ソロモン海戦で輸送船団に突撃かましたのは 鳥海 青葉 衣笠 夕張 天龍
サボ島沖海戦の時期、五十鈴には爆雷は積んでいなく、機雷が積んでありました。


今年最後の更新です。皆様、良いお年を。

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