提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

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『重い女』というフレーズでマチルダ戦車を思い浮かべる私は末期かも知れない。
あと山風可愛い(秋刀魚漁中




提督(笑)と重み

 

「はぁ」

 

暑い日差しを避けるようにガラスの無い窓から外を見つめる女性が一人。

潮風で靡いた亜麻色の髪を片手で撫でつける姿は深窓の令嬢を思わせる。

実際、良い家柄に生まれ大切に育てられたという意味でなら間違ってはいない。

しかし本人の性格と行動が俗世間に染まっていない様子からは程遠い。

なにせ横須賀から文字通り飛び出て、勢いのままこの南鳥島までやってきたのであるから。

 

そんな長野百合恵の表情は冴えない。

 

「どうしたの百合恵提督」

 

そんな百合恵に声をかけるのは彼女の指揮下にいる艦娘の一人である陸奥。

ちなみに他の指揮下の娘達は姉妹艦水入らずで何やら話し込んでいる。

 

「ちょっと時間たって落ち着いたら自己嫌悪と他色々」

 

「どういうことかしら?」

 

「…ねぇ陸奥さん。陸奥さんにとって幸せって何?」

 

その質問に陸奥は訝しい表情を見せながらも答える。

 

「そうねぇ…。百合恵提督をからかってる時とか、美味しいご飯を食べた時とか色々あるわね。今だって割と幸せよ? こういう何気ない時間」

 

「そっか。こういう時だからこそ何気ない時間が幸せに感じるのか。…それじゃあ壱業さんにとってもこういう時間が幸せって思うのかなぁ」

 

ちょっとばかしテンションアゲアゲで乗り込んで到着したその日は過ごしたが、今は気持ちが少し落ち着いた事によって色々な事が頭を巡っている百合恵である。

 

「提督の?」

 

「そう。考えてみたら壱業さんの認識だと少し前まで戦争してたんだよね。それで『俺を信じて散って逝った者達に俺は報いなければならない』って言葉思い出したら、ね」

 

日本を護る為に決死で挑んだ長野壱業の率いた艦隊だけで人員はざっと六千人。艦隊の生存者は非常に少ない。

大和率いる第二艦隊もほぼ全ての艦が損傷している。それを合わせたら…と百合恵は深いため息をついた。

 

「…提督はずっと戦い続けてるのね」

 

「こういう何気ない時間が幸せってちゃんと感じられてるのかな」

 

もちろん戦い続けてるのは陸奥さん達も一緒なんだけどね。

と言葉を続けながら困ったような笑顔を陸奥へと向ける。

 

「…難しいかもしれないわね。提督が私達、艦娘をかつての戦船の化身と認識しているのなら、私達が却って重荷になっているかも知れないわ」

 

百合恵は内心、陸奥の言葉に同意する。というよりは再認識した。

自身で陸奥と同じ答えに至り、堂々巡りしていたのだから。

再会を喜ぶのではなく、自分の指揮下で戦って沈んでいった事への責任や後悔が先に来ているのではないか。

先の経歴から考えるに長野壱業という男の疑いようのない責任感の強さと覚悟が見て取れる。

喜ぶ事なんてできてはいないし、己の幸せなんて考えてないだろうと。

 

かといって壱業に集っている艦娘たちを遠ざけるというのは違う気がする。

何より、これからますます増えていく気がするし、そんな事したら身の危険を感じる。

そして今の日本の状況を打開出来るかもしれない人物でもある。

と、こんな感じで百合恵は自己嫌悪と他様々な感情を持て余していたのだ。

 

「…百合恵提督」

 

陸奥は真剣な面持ちを百合恵へと向ける。

 

「なに?」

 

「誰かが支えないと突然、折れてしまうかもしれないわ。どうすればいいか金剛達も含めて皆で考えましょう」

 

「…結局はまぁ、そうなるよね」

 

「じゃあ、金剛達を提督から引きはがさないとね」

 

「それが一番、骨が折れそうなんだけど…」

 

長野百合恵提督は再び溜息をつくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛龍は地面に大の字になって青空を見上げていた。

 

「多聞丸…また仇取れなかったよ…」

 

「それじゃあ、長野提督が山口司令を手にかけたようになってるじゃん」

 

そんな飛龍を木陰から眺める蒼龍。

 

「実際に手をかけてたもん。多聞丸落としてたもん」

 

「落として多聞? あんまり面白くないよ」

 

「駄洒落じゃないから!」

 

何故このような構図になっているのかは至極簡単である。

壱業改め業和に掴みかかって逆にぶん投げられたからである。

ちなみに今回で二度目だ。

 

飛龍が掴みかかった経緯は初邂逅の時まで遡る。というか昨日の事である。

 

 

 

「…救援感謝する」

 

金剛と夕立を肩に担いでそう言った男を見た時の衝撃は如何ほどだったか。

 

「…ねぇ蒼龍。私の目には帝国海軍で一番ヤバかった人が見えるんだけど?」

 

「一番ヤバいかどうかは置いといて、艦長を殴って担いで脱出していった人なら私にも見えてるよ…」

 

「……」

 

「……」

 

というアイコンタクトでの会話を行っていた。

衝撃が抜けきらないまま、仮の司令部施設を歩いている中で、

 

「司令、探したぞ。ほら」

 

「なんだ?」

 

「私を縛っていいぞ」

 

磯風が提督に縄を渡そうとする様子に、

 

「やっぱりヤバい奴だった!?」

 

「…えぇ」

 

というアイコンタクトでのやり取り。さらに、

 

「パパーーっ!」

 

と呼ばれて艦娘に抱き着かれている様子に、

 

「絶対ヤバい奴だって。間違いないって!」

 

飛龍は完全に不審者扱いし始め、

 

「いやぁ最初と今のだと意味が違うんじゃないかな? ヤバい奴って否定できないけど…」

 

蒼龍もまた違う意味でヤバい奴認定せざるを得ない出来事があった。

残念ながら蒼龍にとって島風は艦時代には見覚えのない艦である。

さらに言えば自分の設計者の事ならまだしも他艦の設計、開発者の名前など知らないのが普通。

 

ここに二航戦コンビにヤバい奴(変態)認定されたのである。

 

「でもさ、どうするの?」

 

「う~ん。とりあえず投げる?」

 

「…えぇ」

 

「投げてみれば本当にヤバい奴か、ただのヤバい奴かわかると思うの」

 

「飛龍が何言ってるかわからないよ…」

 

というアイコンタクトでのやり取りがあったのだった。

 

 

飛龍が艦時代に長野という男と会ったのは開戦前、観艦式の少し前の事である。

長野が観艦式に参加するために佐世保から文字通り飛んで来て、飛龍の飛行甲板に着陸したのが出会いとなる。

当時、厳しい訓練が課せられていた艦載機のパイロット達が四苦八苦していた中、お手本の様な着艦をしたのが長野だった。

 

「おぉ上手上手」

 

艦橋の上で、届くことのない声と拍手を送っていたら、飛行機から降りて来たのは第一種軍装に身を包んだ高級将校だ。

それに驚いた。パイロット達もそれを見てざわついていたのが印象的であった。

そして観艦式が終わり、暫らくした後これまたお手本の様な発艦をして飛び去って行った。

 

 

次の再会はミッドウェー海戦での事である。

 

「何しに来た貴様」

 

多聞丸が艦載機隊に攻撃命令を出そうとしていた時にその男は乗り込んできた。

 

「撤退を進言に。これ以上の継戦は不要。作戦が失敗に終わったことは明白。ならば、残存艦艇を速やかに退避させるべきです」

 

「怖気づいたかっ! ここで仇を討たねば…」

 

と二人とも一歩も引かずに言い争いになっている。

 

「こいつをつまみ出せっ! 海に投げ捨てても構わん」

 

乗り込んできた男を止めようとした士官は次々とぶん投げられた。

そして多聞丸も後ろに回られチョークで落とされる事態にまで発展した。

飛龍にはどうすることも出来ずにただただ呆然とする。

 

「…加来艦長。司令は体調が優れないようだ。これ以上の指揮は執れない。これより私が指揮を執る。進路反転退却する。宜しいな?」

 

「……」

 

無言で頷く艦長。

有無言わせぬ、とても獰猛な笑顔で迫るのだから残った艦橋の士官は誰も逆らうことが出来なかった。

 

これが、飛龍がヤバい奴認定する記憶である。

 

 

 

砂浜で相変わらず大の字の飛龍に

 

「で、認めたの?」

 

蒼龍は木陰から問う。

 

「間違いなくあの獰猛な笑みは長野提督だわ」

 

「判断基準そこなんだ…」

 

「よぉし! 次こそ負けないんだからっ。見ててね多聞丸」

 

「…えぇ」

 

いつか長野をぶん投げる事を誓い、飛龍は砂浜から立ち上がるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ、空はあんなにも青いのに…。

 

今の俺の心境を表す言葉はこれだ。

未だに昨夜の一件が尾を引いている。隣を歩く榛名の顔が見れない。

臭いとかで気が付かれなかったんだろうか…。

それとも気が付いたうえでも普通に接しているのか、さすが正ヒロイン枠である。

 

あの後、気を紛らわそうと海に潜った。

 

天津風を縛って…。

 

余計いけない気分になってしまった。

 

荒ぶるパッションを沈めるために我武者羅に潜ったお陰か、朝食はマグロのフルコースが並んだ。

無心でいろいろ作ってしまったぜ。自信作はマグロのカルパッチョだ。

 

「Hey! テイトクゥゥ何故無視するデスカー?」

 

「お姉さまぁーー」

 

っーか、重ぇぇっ。

 

「重い。離せ」

 

「レディに重いは失礼デース」

 

「そーですねお姉様」

 

こいつら…。

 

ズリズリと金剛型姉妹の長女と次女を引き摺りながら砂浜を歩く。

ぶっちゃけ体を動かすこと以外、特にする事ないのである。

煩悩退散させるために運動しようと思ってるのに、こ奴ら一時も離れようとしない。

おっちゃん無限の苦しみを味わっております。

 

「提督、お水飲まれますか?」

 

そして隣を歩く榛名が甲斐甲斐しく世話を焼こうとしてくる。

やめて欲しい。貴方の顔今見れないの。

でもこのまま見ないというのは流石に無理がある。そうだ想像してごらん。

 

榛名の顔は島崎君の顔。榛名の顔は島崎君の顔。

 

ちらっ。

 

「…大丈夫だ、問題ない」

 

無理。可愛い。

そうだ別の事を考えよう。榛名と言えば島崎君。

そういえば釣りしようとして出来なかったなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜のテンションに任せて遺書を初めて書いた。

主計さんと鳳翔の上で飲んで、ほろ酔い気分が抜けなかったようだ。

妹へは、とにかく重くならないように心がけてたら、ただの手紙みたいになってしまった。

追伸で、父ちゃんが動物の絵下手だったけど、実は兄ちゃんも下手だったとカミングアウトしといた。

笑ってくれる事を祈ろう。

変なところで親父殿の受けてた呪いを受け継いでいたようだ。

有機物を描くと軒並みUMAになる呪いだ。

まぁ日常生活に全く影響ないからいいんだけど。

あとは後を託すことになろう方々に何通かだ。

 

三日後には出航か。窓の外では太陽が水平線を染め始めた。

 

今日も暑くなりそうだ。

 

と決め顔で窓の外を覗いてみても特にする事がない。

これまで文字通り、各所を飛び回ってたからぽっかりとする事なくなってしまった。

自前で買った零戦二一型長野専用機カラーリングレッドが大活躍だ。

二回ほど味方から襲われそうになったけど…。

 

よし、釣りでもするか。

 

島崎君を叩き起こして付き合わせよう。

 

 

 

なんて考えていた時期が俺にもありました。

 

「長野司令! 一筆願いますっ!」

 

榛名の甲板で釣りしようと思って島崎君と連れ立ったまではいいんだが、若い子達に揮毫求められる。

何でもいいから一筆ってさぁ、何でも良いが一番困るとおかんに言われなかったのか? 君達。

おかげで設計開発に関わった飛行機に命名しようとして却下されたシリーズを繰り出す事になってしまった。

史実で雷電って局地戦闘機があったけどそれにあたる機体…。いやもう全く別物だな。

とにかくこの世界で雷電と呼ばれる飛行機の開発に携わった。初代雷電は複翼機だ。

初代に『文鳥』と名付けようとして却下され、それ以降飛べない鳥の名前を付ける度に却下され続けた。

結局、初代と全く異なるエンジンと構造しているのに現行の雷電は七七型とか言われている。

 

さて、この若者にはとりあえず『ドードー』と書いておこう。

 

「長野、ドードーとはなんだ?」

 

島崎君と数十分だけ釣りしていた時にやって来た松田君。

特に何があるわけでも無い様で、三人で釣りをする事に、すぐ若い子が来て出来なくなったけど。

 

「マダガスカル東方沖に位置する諸島に生息していた飛べない鳥だ。警戒心が薄く人間を見ても近づいて来たそうだ」

 

で絶滅してしまった。

 

「……」

 

そんな微妙な顔するなよ。えぇっと

 

──茂木 喜一郎。階級は一等水兵です

 

ん、ありがと。

 

「何でもいいと言ったのは茂木ではないか」

 

「は、いえ、大事にさせていただきますっ!」

 

と敬礼して去っていく。

その背中を見送り、フライトデッキの陰に入る。うん?

 

「…金剛が動いていないか?」

 

ちょっと動いてない?

 

「気のせいではないか」

 

と島崎君。

 

「…そうか。気のせいか」

 

ならいいや。

 

「最古参の戦艦が最も戦果をあげている。付喪神が宿っていてそれが戦いたくてうずうずしているのかもな」

 

時間と場所をわきまえたら何でもしてくれそうだ。胸が熱いなっ!

 

「長野司令っ! 揮毫をお願いします!」

 

また来たか。そろそろネタが尽きる。

あとは長距離爆撃機につけようとした『ペンギン』か『不鶴』か…。

これも結局『富嶽』ってつけられたんだよ。ちくしょう!

『ペンギン』が通らないだろうという思いと『富嶽』と提案されるであろう予測から、『不鶴』を提案した。

不覚に通じるから駄目って言われた。富嶽だってちょっと不覚が訛った感じじゃんかよ。

大体、不鶴(フカク)って読むのがナンセンスだ。

不鶴の不は打ち消しや否定の意味を持つ、つまり鶴じゃない。

 

不鶴と書いてサギと読むのだ!

 

そう言ったら全員ドン引きしてた。

こっちは飛べる鳥で妥協したのに解せぬわ。

 

「…おう。何と書けばいい?」

 

ミック先生。

 

──高田 実 階級は二等兵曹。

 

「高田」

 

「俺の名前を…失礼しました! 何でもかまいません」

 

お若いのに下士官になったのか、大分頑張ったんだろうな。では、皇帝ペンギンとでも書いて進ぜよう。

 

「文字を言った方が良い。先ほどきた者は『ドードー』と書かれた」

 

やるな松田君。俺がボケるのを見越して先にツッコミを入れるとは!

 

「で、では毘沙門天と。島崎艦長にも願います」

 

毘沙門天好きだな皆。

俺は多聞丸思い出すからあんま好きじゃないけど。

 

「長野、お前全員の顔と名前覚えているのか?」

 

あぁ頭の中でゴーストが囁くんだ。

とか言ったらドン引きするんだろうな…。

 

「……」

 

それ想像したら遠い目になっちゃうね。

 

おや、大和艦長の有賀君と二水戦の両舷直の親玉だ。

古村さんはおっかない顔しておりますね。

世が世なら道で声かけられたら財布に手が伸びてるぜ。

 

松田君ブツブツ文句言っとる。油掬い大変だもんね。

 

「長野司令」

 

あ、そういえば

 

「有賀艦長、浦風と時津風をこちらに回してくれた礼がまだだった。ありがとう」

 

どっちも決死隊ではあるけど第二艦隊の方がまだ生存の確率は上だと思うのに馬鹿野郎ばかりだ。

 

「いえ…」

 

「…長野司令。今回の作戦の事ですが…」

 

何よ? 今回の作戦? そりゃあはっきり言って無謀な作戦よ。

特攻やりたきゃ上の連中がやればいいのにな。いても邪魔だけど…。

それでもやらなきゃならないからさ、第二艦隊の方は沖縄に刺さってもらわなきゃならないからさ。

 

大丈夫だって大和をでっかい金物だと思えば金物屋の倅なら余裕余裕。

ちなみに、うちは豆腐屋だ。

 

「…俺は豆腐屋の倅だ」

 

しかもグンマーで榛名山の麓で営んでました。

という事はドリフトとか超得意そうじゃね? ね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てな事があったなぁ。

その後、松田君が怒って帰っちゃったり、若い士官に五省書いてって言われてミック先生に聞きながら書いたなぁ。

あの時の有賀君。面白い顔してたわ。

 

 

「ここで会ったが百年目! 多聞丸の仇っ。覚悟!」

 

げぇっ!飛龍!

 

そしてエンカウントした飛龍さん。見た瞬間に条件反射で顔が引き攣る。

多聞丸の仇でも無ければ、百年も経ってない。

とりあえず掴みかかってきたので習得したAI・KI・DO-で袖掴んでぶん投げておく。

 

「提督さんは人間やめとるのぉ」

 

浦さんどういう意味だろうか…。

頭に情緒不安定体飼っているけども、空を飛ぶことも出来なきゃ、海を走ることも出来やしない。

子供の頃やったから間違いない。ということで人間はやめてない。

 

「提督さん夕立もーっ」

 

そして掴みかかって来るぽいぬ。

いやいや、遊んでたわけじゃないから、でも、そーいっ!

 

…すげぇよ、ぽいぬ人間やめてるよ。何であれで着地できるんだ?

 

おい、何度も掴みかかって来るな。時雨まで!? そーいっ! 

 

投げる。着地する。向ってくる。投げる。

 

無限ループか!

 

「自分も一手ご教授願います」

 

た、助かった…?

 

「うん?」

 

「自分も一手ご教授願います」

 

それさっき聞いた。空挺部隊の女性隊員の方。

髪は天龍ちゃんくらいのショートできりっとした目元してる。

胸は手に収まるくらいの大きさか。

 

しょ、しょうがないじゃない! タンクトップ姿なんやもん!

見てまうやろが!

 

──私に言い訳されても困ります。

 

…せやな。しかしこれはチャンスだ。

 

「金剛、離れろ」

 

ちょっと君達、離れていなさい。おっちゃんこの方にぶん投げられるから。

そしてそのまま走って逃げる。

 

不承不承で離れていく艦娘の皆さん。

 

「待たせた」

 

「いえ、では行かせていただきます!」

 

さぁこい! 投げられる覚悟は完了している。

 

「…あ」

 

「ぐっ」

 

体が勝手に動いてもうた。

 

お嬢さん大丈夫ですか?

 

「大丈夫か?」

 

砂浜に寝転ぶ空挺隊女子に問いかける。ごめんね投げちゃって。

 

「何今の」

 

うお!? なんかスゲエいい笑顔でいらっしゃる。ドМか?

 

「自分もご指導ください」

 

なんかマッチョメンが来た。拒否権はないのだろうか。

なんなら、さっき飛龍に投げてもらえばよかったかもしんない。

 

「……」

 

拒否権はないのだろうか。そうですか無いようです。

意気揚々とストレッチされてますもん。ヤダって言えへんやん。

いやこの際、このマッチョメンに投げてもらおう。

 

「では、やるか」

 

「丹波、強いよ。気をつけな」

 

「分かっている」

 

空挺女子とマッチョメンが一言二言言葉交わしている。

 

「一つ質問宜しいでしょうか?」

 

「何だろうか?」

 

なんだいマッチョメン?

 

「好きな軍艦は何ですか?」

 

ん、なんか空気がピキッって言わなかったか今。

 

「せいっ!」

 

おいいいいっ!? 質問してきて掴みかかって来るのかよ!?

 

ほら、体が勝手に動いてしもうたやん? そーいっ!

ちなみに好きな軍艦は

 

「ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦」

 

です。

そりゃね大和型もかっこいいよ。だけどね、性能とかそういうの一切無視して見た目だけで行けばイタリア艦が俺の好みなんだ。

別にテストに出ないから覚えておかなくていいぞ。

 

ん? 周りを見る。

 

アレ、なんだこの空気?

 

 

 

 




苺餃子のスキル

引き攣った顔が獰猛な笑みに見える。



ちょっとした補足

感想にあったので亀作戦での戦力・戦果は以下の通り

英国

空母
フォーミダブル ヴィクトリアス

戦艦
ロイヤル・サブリン ウォースパイト

駆逐艦5隻 計9隻


日本

空母(軽)
龍驤

戦艦
陸奥

巡洋艦(軽)
夕張 龍田 五十鈴

駆逐艦
第二(村雨、五月雨、春雨)
第十六(時津風、天津風) 計10隻


戦果

龍驤の攻撃隊により英空母2隻被雷

伝統の夜戦今こそお見せするとき(キリッ

ムッツォに一方的に殴られてロイヤル・サプリン撃沈。ついでに随伴駆逐艦も二隻ワンパン。
瞬く間にやられて混乱した英国東洋艦隊に接近して、
村雨嬢の魚雷でフォーミダブルに止めを刺し、何故か一機だけいたソードフィッシュによる雷撃で大破の目に合う。
五十鈴、五月雨ちゃん、麻婆春雨が他の随伴駆逐を牽制しつつ、ヴィクトリアスに龍田さんと夕張メロンが意気揚々と突っ込んで魚雷ぶちかましで止め差す共同戦果。
ただし、駆逐艦から砲撃浴びて龍田さん中破、メロンが小破。
五十鈴、五月雨ちゃん、麻婆春雨で撤退に入った東洋艦隊追撃し2隻撃沈。
スパ子さんが「おうちかえる」と泣きながら駆逐艦一隻と共に逃げ切った感じです。
一応、陸奥に至近弾当ててました。(至近弾当てるという表現がおかしいが突っ込まない事)

龍驤は夜戦なので後方待機、時津風と天津風はそのお守り。
なので二隻は夜戦に不参加。二水戦所属なのに解せぬと嘆いていた模様。

その後、

帰投中に病院船臨検してたところでムッツォが潜水艦の雷撃で中破判定。
五月雨ちゃん海峡で座礁する損害。



あと初霜についての感想がちらほらあったので、
モフモフは大和と共に島に刺ささってたの。



1940年(昭和15年)頃はおそらく加賀さんは佐世保か上海辺りにいたんではないかと思いますが、この頃はまだエリート街道爆走中の苺餃子、観艦式参加の為に飛んで帰ってきた感じですかね。

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