あーなんでこんな事になっちゃうんだろうねぇ~。
買い物して偽装トラックの荷台コンテナに乗り込んで、
本屋での出来事はちょっと苦い思い出になりそうだ。
鹿島ちゃんと連れ立って入った本屋は大型書店。本の他にもゲームやレンタルビデオなんか置いてあったんだけど、俺の映画はまぁ、鹿島に聞いてたから衝撃はそこまでなかった。
だけどさ、タイムスリップした女子高生とのラブロマンスする少女漫画とか、俺が女体化したゲームとかなんなわけ?
長野苺ちゃんはクーデレキャラとかどうだっていいわ! とか考えていたら、
あとは学校まで帰るだけって時にそれは起こった。
「提督さん、大丈夫ですか?」
「問題ない」
悲報 俺氏、襲撃を受ける。
事の発端は何だったんだろうか?
走り出して数分で、大きなブレーキ音とともに衝撃を食らって、鹿島ちゃんと荷台の中を転がっていた。
荷台から脱出してみれば2トンあるトラックは電柱にぶつかって、運転手さんは頭から血を流している。
エアバッグのおかげで命に別状はなさげだが、まさかここまでデンジャラスな展開になるとは思いもよらなかった。
他国にどれくらいの情報が洩れているのか知らないが、鹿島ちゃんの顔写真位、出回っていたと考えておくべきだった。
ついでに言えば、鹿島ちゃんの俺に対する提督呼び、そこまで大きな声を出していなかったし、周りに聞こえるほどでもなかったと思うが、集音マイクのような物で盗聴されていた可能性だってあった。
国内の状況が落ち着いて見えたから警戒心が薄すぎた。
ミック先生が居なければ所詮俺は、この程度なんだよぉ。
しかし困ったな。
俺を視姦していたおっさんが三人ほどサイレンサー付の銃口を向けあい、牽制し合っている。
このうち一人は工作員とみてもいいだろうが、残り二人は何なんだ? 全員が違う国の工作員か? ふぅむ。
「どうしたものか」
状況は違うけど陸奥の時を思い出すなぁ。
そうアレは前日から降り続いた雨が止み、霧の深い朝の日だった…。
「そ、そんな悠長なこと言ってる場合じゃないですよ!」
あ、回想しようと思ったのに…。
だって下手に動けないじゃん? 鹿島ちゃんが居れば暴漢なんて鎮圧簡単だろうけど、このおっさん達のうちの誰かが、
もしかしたら俺たちの護衛の可能性もないとは言えないんだもんよ。
「とにかく提督さんは私の後ろに」
「鹿島、全員を生かしたまま鎮圧可能か?」
「出来なくはないですけど、鎮圧中に提督さんに何かあったら…」
なるほど。まぁこのまま膠着状態でいれば、警察やらなにやらが間違いなく駆けつけて来るだろうから、工作員はジリ貧だろう。
最初に動き出す奴が工作員と当たりをつけて、残りの二人はどうしたものか。
「是那里的組織的人?」
スーツ姿の中間管理職にいそうなおっさんが言葉を発した。
随分と訛りが強いというか、発音が可笑しい大陸言葉を話すね。大方、大陸の工作員だと思わせようとしているんだろうが…、
「アレは潰して構わんな」
ちょっと迂闊すぎやしませんかねぇ。功を焦っているのか?
大体、艦娘が護衛についているのを分っていて一人で襲撃したとするなら、とんだ馬鹿野郎と言わずにはいられない。
「おい、あんちゃんたち。とっとと逃げるか隠れるかしてくれねぇかな」
どう見ても堅気にみえないおっさん。
公安的な組織の人か? まぁ敵ではなさそうなので放置でよし。
「……」
で、最後の一人。短髪の特に特徴がないおっさん。
これが一番不気味なんだよなぁ。でもまぁ、コイツから目を離さなければ何とかなるだろう。
「鹿島、スーツの男を潰せ」
「で、でも…はっ、はい! 鹿島了解しました!」
俺に顔を向けた鹿島ちゃんが言い淀んだがすぐに聞き入れてくれた。
見た目、可憐な乙女に突っ込ませるのは精神衛生的に…ていうか、男としてかっこ悪いが致し方なし。
艤装展開して一気にスーツ姿のおっさんに肉薄、発砲された銃弾を艤装で弾いて金的を…
「O、Oh」
えげつない、第四艦隊の旗艦えげつない。
スーツ姿のおっさん言葉にならない悲鳴を上げて悶絶している。
あ、やべぇ! あまりに衝撃的な光景で短髪の男から目を離してしまった。
短髪の男は一気に駆け出して街中に消えていった。何者だったんだろうか?
「あんちゃん無事だな」
「…ああ」
「提督さん!」
こちらに走り寄ろうとする鹿島を大丈夫だと手で制す。
それよりそこで白目向いて泡吹いてる男を監視していなさい。
「可愛い顔しておっかねぇなぁ。あれが艦娘か」
「……」
怖くはないだろ…えげつないとは思ったけど。
「あぁ、アイツはこっちで引き取るからよぉ」
そういって胸から桜の代紋付の手帳を取り出す。
あ、マジで公安の人だったのか。
「逃げた者を追わなくていいのか?」
「…あぁ、あれは…なぁ。さっき気づいたがちょっと訳アリだ。まぁ危険はないから大丈夫さ」
「…そうなのか」
いいのかそれで…。まぁ公安がマークしていて大丈夫っていうなら大丈夫なんだろう…多分。
「俺からも良いか?」
「なんだ?」
「あんちゃん、名前は?」
「長野業和だ」
「…なるほどねぇ。本来は調書やらいろいろ取らないとならないんだがなぁ…海軍所属のしかも長野か…。参ったねぇ。とんだVIPじゃねぇか。ご同行願えないなぁ」
「俺は長野所縁の者ではない」
という事になっています。ので、そこのところ訂正よろしく。
「…まぁ、そういう事にしておくわ」
あれ、信じてないね!? 超ポーカーフェイスのこの顔見てよ!
「……」
「道理で最近、本腰を入れて摘発に乗り出しているわけだわ。ああ、こっちの話だ気にするな。ほんじゃあ、
俺が後は処理するから、あそこでおっかない顔してこっち見てる可愛い子ちゃん連れて帰ってくれや」
あれ、だからそんな特別扱いしてくれなくてもええんですがねぇ?
そそくさと鹿島ちゃんの足元に転がるおっさんを公安のおっさんが拘束した。
「提督さん行きましょう」
「…あぁ」
うお!? 俺のジャン○が俺のジャン○が…見るも無残な姿になり果てている。
「鹿島…本屋に」
「駄目ですよ。ほらまっすぐ帰りますよ」
耳かきと爪切りは鹿島の小さなバッグの中なので無事だが…一番欲しかったものが…。
「…鹿島」
「駄目です」
ミック先生、ジャン○がジャン○が読みたいです。
──システムアップデート中……78%……
そのまま鹿島ちゃんに引きずられて帰る俺氏であった。
何故かご立腹のお艦とメロンが待ち受けているとも知らずに…。
横須賀鎮守府のいくつかある提督執務室の一室。
「提督、遠征いってた娘達が帰投したわよ。はいこれ報告書」
そこに入室した薄枯葉色のショートカットのどこかフランクな雰囲気を持つ美人。
服装はノースリーブの和服を意識したボディスーツのような上着に黒の超ミニスカート。
すらりと長い脚は赤いハイソックスに包まれ、やたらと肌色面積が多い。
モデルよりスタイルが良いのではないかと思えるほどに整った体形である。
世の男が特殊な性癖でないかぎりは街中で出会ったなら間違いなく振り返る、そんな美貌と色気を持っている艦娘。
「ありがとう陸奥さん」
執務机に向かい書類仕事をしている女性提督。今にも鼻歌を歌いだしそうな勢いである。
もしかしたら陸奥が入ってくる前は歌っていたかもしれない。
「最近ご機嫌ねぇ、何かいい事でもあったの?」
「ふっふっふ、内緒」
尊敬する人物に頼られて嬉しいのだが、人物が人物なだけに今は話せない。
これが違う人物なら教えてあげることも吝かではない。むしろ縛りがなければ小一時間は語りたいと思っていたりする。
「あ~ら内緒なの?」
「内緒です。ん~♪ん~♪」
報告書を見ながら鼻歌を歌う女性提督。
「あら? その鼻歌どこかで聞いたわね。もっと物悲しい感じだったけど」
「え?」
「どこだったかしら?」
顎に指をあてて考える陸奥、その仕草にも色気を感じるが、生憎この空間に男がいない。
「ちょっとよく思い出して」
「急にどうしたの?」
「いいから思い出して」
急に立ち上がった提督に、困惑した表情を浮かべる陸奥。
「なんなのよもう~。…あ、大和だわ。ほら、この間大本営に行ったとき。提督たちが会議中に長門や大和と一緒になったのよ。
その時に大和が何気なく口ずさんでいたわ」
「…そうなんだ。だとすると艦時代かなぁ」
再び椅子に腰を下して腕を組む提督。
「なぁに? お姉さんにも教えてちょうだい」
「…う~ん。でも他にも知っている娘もいるのかしら。う~ん」
「ねぇ、聞いてる?」
「聞いてますよ…まぁ陸奥さんならいいかなぁ。あんまり他に喋らないでね、陸奥さん」
「え、ええ?」
「この歌、…壱業さんの手記に残ってたの」
「長野提督の?」
「私も長野提督なんだけどなぁ…」
「茶化さないの百合恵提督、それで詞は?」
「大和さんが歌ったの聞いてたんじゃないの?」
「私と長門が待機する部屋に大和が先に居たんだけどね、途中で私たちに気づいて止めちゃったのよね」
「仕方ないなぁ。それじゃあ一曲披露してあげましょう」
そうして長野百合恵提督は歌いだす。
「……」
「……」
執務室に静寂が訪れる。陸奥も百合恵提督も無言である。
「陸奥さん…無言で固まられると居た堪れないのだけど…」
「…あら、ごめんなさい。ちょっとお姉さん感動しちゃって。…それにしてもあの長野提督がねぇ」
「陸奥さんは壱業さんと面識があるの? っていう聞き方も変かなぁ」
「そうねぇ。この言い方も変だけど命の恩人? になるのかしら」
「命の恩人?」
「そう。それじゃあお姉さんも、一つお話しちゃおうかしら」
1943年6月
長官の国葬も終わり、国内は沈んだ空気が流れていた。
ここ柱島でも霧が深いその日、停泊する艦船の乗員たちも陰りのある表情の者たちばかりだった。
そんな中、いきなり陸奥に乗り込んできた男がいた。
長野壱業少将である。
長官が軍神ならこの男は戦神であるという声が下士官たちの言である。
先のソロモン海戦での活躍。戦果を挙げているものの、軍令部の示す作戦の多くに反対して、在り方自体にも批判。
今までは長官が抑えていた部分もあったが、この先出世は無いだろうと言われ、
もしかしたら予備役に回されるのでは、とか、査問会が開かれるのでは? と多くの憶測を呼んでいて、話題には事欠かない男。
その男がいきなり現れたのだ。
乗員は何事かと騒ぎ出すが、近づいた乗員に一言二言、言って彼らを従え、そのまま弾薬庫に突き進む。
そして弾薬庫にて不審な人物を発見。
男は壱業たちの存在に気付くと懐から銃を取り出し銃口を向けるが、壱業が瞬く間に拘束したのだ。
拘束された男は時限爆弾を仕掛けようとしていたのである。
「ほんとに凄かったわよ。銃を向けられても不敵な笑みを浮かべて、怯むことなくあっという間に銃を叩き落として、
爆弾男を床に引き落として、アクション映画みたいだったわ」
実はこの時、不敵に笑っていた訳ではなく、発砲されて当たり所が悪ければ誘爆して史実通りに爆沈か、と思って顔が引き攣っていただけだったりする。
本人は何とかしようと我武者羅に突っ込んで、持っていた兼光(鞘付き)で運よく剣道の小手が決まったような感じになり、勢いつけ過ぎてそのまま爆弾男に体当たり食らわせて、相手が転んだところに躓いて、鳩尾に膝を入れ、自分も転びそうだから持っていた兼光を軸に踏ん張ろうとして相手の肩に突き立てて砕く、という追い打ちをかけていたりする。
傍から見れば陸奥が言ったとおりに見えたかもしれない。
こうして歴史は本人の思いとは裏腹に歪曲されていくのである。
「…さすが壱業さん」
「そうねぇ。だからそんな強いイメージしかなかったから、さっきの歌は意外よねぇ。作曲まで長野提督がしていたって事でしょ?」
「そうですね。でも、うちのひぃばぁ…妹の前では穏やかでいたみたいですし、戦場の外では意外と普通だったりするんじゃ…いや、あれ普通じゃないや」
「他にも何か逸話があるの?」
「あっ、そういうわけじゃなくて…あはは」
「そうなの。もっと意外な一面聞けると思ったのに」
「た、たぶんひぃばぁなら知ってるんじゃないかなぁ…」
「機会があれば今度、聞かせてもらいたいわね。それにしても長野提督に想い人か…」
「歌を作るほどに好きな人が、何としても護りたい人がいて、ずっとその人を想って戦場に立っていたって考えると…胸が締め付けられます」
「愛されていたのねぇ、その女性」
「そうでしょうね」
そういって二人はそれぞれ目を瞑る。果たして本人たちの頭に浮かぶ人物は誰だったのか…。
「相手はどんな人だったの?」
「それが分からないんですよ。憶測だと何人かいるみたいですけどね。妹だった、既婚の女性だった、あとは当時、長野商会のライバル企業の財閥系の令嬢だったとか。
長野家における解き明かしたい謎の一つですね」
「そうなの、残念ねぇ。私もそこまで想われてみたいわねぇ…。あ、百合恵提督は想われてるものね?」
「え? なんですかそれ」
「あら、気付いてなかったのね。それじゃあ内緒」
「え、陸奥さん?」
「さぁ、お仕事頑張りましょう提督」
「む、陸奥さん!?」
秘書官用の机に座り、ユーリエの言葉を流しながら仕事を始める陸奥であった。
ちなみに話題に上がった人物はというとジャン○がぁ…とぼやいていたりする。
恐らく、本文で語られることのない感想にあったものへの回答
大型回して まるゆ でた。この世に神はいない…。速攻でむっちゃんに食わせた。
>お米が6千円のくだりについて
──まぁ、私の近所のスーパーでもいい銘柄のもので4千円前後かな。
ただ、輸入止まり国内だけで回している状態で6千円で収めてるところ驚いていただきたい(笑)
>英国面に落ちていない金剛は流暢に日本語を話すのかな?
─英国面に堕ちていないのはあくまで兵器としての性能です。なので金剛は大丈夫デース。
>長野グループの会社沿革が知りたいなw
─触りだけですよ?(笑)
1868年 長野豆腐店開業
1921年 株式投資を主業務として長野商会設立
1925年 発動機事業設立
以下略
>震電改とか持ってそうな.,.
─正確には2年半ですね。 そんなものは都市伝説です。
>那珂ちゃんの霊圧が……消えた!?
な、那珂ちゃんはあくまで艦隊のアイドルだから(震え声
>改陽炎型、っていうとこっちでいう夕雲型?
─改陽炎型です。夕雲型は夕雲型です。
陽炎型〇番艦から手を出し始める主人公。これは本編にそのうち出て来るんでしばしお待ちを。
>そういえば長野提督の大預言(笑)なんだけど、コレってどこら辺まで書かれているのかな?
─歴史に関していえば1999年までです。