提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

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ラブコメってこんな感じ?


提督(笑)の休日

俺、ある日突然、気付いたんだ。

 

俺の一日の行動。

 

起床→朝飯→士官学校→少し走る→夕飯→走る(性欲を持て余す)→ひたすら走る(たまに刀もって牙突)→風呂→寝る

 

平日はこのサイクルで回っているという事。

 

休日? ひたすら走ってたまに牙突な一日。

 

おいおい、おっちゃんストイックすぎんだろ…って事に。

体若返ってるし、体力あり余ってるのもあるんだけど、前は常に何かに追われていたから時間の使い方忘れてしまっていたね。

そんで、休日は申請すれば外出できるのだ。護衛付きだけど…。

まぁ他所のお国から狙われるからって事だけど、薄い本とかやたらと肌色の多いお姉さんが載ってる雑誌とか気軽に買えないじゃん。

…嫌な時代だねぇ。

 

で、ちょっと娯楽品の一つでも買ってみようかと思い立った訳。

基本、三食寝床付ついでに学校で使う物、着る物も支給なんで最低限、生活するには困らない。

ただし酒保では揃えられない細々とした日用品とかもある。ついでにそれらを揃えようと思う。

ここに来る前に一通り買い物は済ませたんだけどね、ユーリエちゃんと一緒に。あれは服飾品がメインだった。

…耳かきとか爪切りとか酒保にないんだよね。

 

そして更に気付いた。

 

……無一文だったという事を。

 

兼光を質に出そうとも考えたが、ユーリエちゃんに恥を忍んで電話して頼んだ。

 

働いたら返すから金を貸してくれと…。

 

あの時は居た堪れなかった。

でもユーリエちゃんとてもいい娘で、快く引き受けてくれた。

…借りた俺が言うのも何だが、将来変な男にひっかからないかちょっと心配です。

 

そしたら後日、通帳とキャッシュカードと手紙、暗証番号とかATMの使い方が添えられてきた。

というか文乃のお世話係の人がわざわざ持ってきてくれた。

 

まず何から突っ込んだらいいかな。

 

銀行名? 榛名銀行(長野グループ)です。長野商会とは関係ないよね? グループってなってるし!

銀行のロゴにうちの家紋入ってるけど関係ないよね!?

坊の岬の前に文乃が食うに困らない程度のお金は残したけど、残りの現金資産は最悪の場合に備えて戦災孤児基金と復興基金の法人立ち上げてそっちに回しといたんだから、

銀行なんて創業できるわけない。た、たまたまうちの家紋(檜扇)に似たロゴなだけだな。

 

次、名義は 長野 百合恵 になっとります。これはまぁ仕方ない。俺身分証明書ないし。

でもますます、ユーリエちゃんの事が心配になります。口の上手いホストとかに騙されないだろうかと…。

 

で、最後に通帳を見たのね? 俺の中では諭吉先生が二人くらい入ってれば御の字って思ってたわけよ?

 

なんでゼロが7ケタもあるんですかねぇ!?

 

もしかしたら物価が物凄い上がっていてとか考えたけど、酒保での商品の値段を見る限りそこまで上がってる形跡無かったし、嗜好品の類は2倍くらい値段が高くなってはいた気はするけどこれは多過ぎだろ。

 

速攻で電話したわ! おっちゃん貴方の将来が心配です! そしたらなんて言ったとおもう?

 

「なんだあの通帳の額は?」

 

『足りませんでしたか? 壱……業和さんの時代…世界…えっと昔より物価高くなってるんですよ。お米は10kg6千円はします』

 

「六千円…」

 

元いた世界とそんな変わらないな…。

って違う違うそうじゃない! そうじゃないんだよ!

 

「ですから、これくらいが妥当だと考えていたんですが、足りないようでしたら追加しますね。どれくらい必要ですか?」

 

確かに1940年頃ならサラリーマンの給料が一カ月80円くらいだよ?

それから考えれば6000円は大金に思える。

 

だからと言ってこの額は多過ぎだからね!

 

「…いや、十分すぎるから結構だ」

 

ってなやり取りがあったわけだ。もうねユーリエちゃん超お嬢様だったんだよ。

お父さんが大きな会社の社長さんだってさ…。

 

それでその社長さん俺の甥の子、つまり又甥って奴にあたるそうだよ。

 

で、俺は現実を受け入れました。

 

…わが妹は長野商会を引き継いでとんでもないモンスター企業を一代で築き上げてしまったらしい。

 

穏やかに過ごせるくらいのお金を残したけどさ…。長野商会も優秀な人材に後を頼んできたけどさ…。

まさか、あの可憐な妹が女社長やってたなんて驚愕ですよ。

 

通帳のお金は好きに使ってくれって言われてもさ…爪切りと耳かきとジャン○位しか買うものないんだけど?

…細かい物価がどうなっているか知らないけど元の世界ならワンコインで済んでしまうのだよ。

 

そしてついに今日はその休日である。

 

護衛には学校の先生かその道のプロがつくことになっているのだが…

 

「…鹿島」

 

「ひゃ、ひゃいっ!」

 

何時もとは違う格好をしたエロカワ鹿島ちゃんが外出の際の指定場所におった。

太もも辺りまである白いカーディガンを羽織り、チェック柄のシャツにブルー系のボトムに黒のショートブーツ。

とっても新鮮ですね。超可愛いし、街中で出会ったら三度見くらいはするわ。

いやぁ、この娘はきっと何着ても似合うんじゃないかな…。

 

「護衛は鹿島か」

 

学校の先生だし、艦娘だし護衛には向いているけど。

艦娘はやはり人の身を持っていたとしても戦う兵器なんだよなぁ、鹿島のような娘さんでも艤装を展開していない状態で、暴漢の2~30人鎮圧は事もないらしいよ。

セクハラをするときは命がけである。

 

「そ、そうで、ありましぃ…んす」

 

でも、何でこの娘ガチガチなのか? 

 

 

 

 

夕張は暴走する危険が極めて高いと上が判断し、鳳翔は任官後に小さな警備府とかの場合は自炊をしなくてはならない場合もあり、そういった者たちの為にお料理教室を休日に開いているので付いていけず、香取も比叡も補習授業の為に、鹿島に白羽の矢が立った。

夕張には威嚇されまくり、鳳翔には穏やかな笑顔で「くれぐれも大事がないように」と脅迫…お願いをされ、人間側は何か考えているのか、あまり関わろうとしないし、その態度には感じるモノもある。

ついでに、この男の正体を知ってしまったら尚更である。

この外面は威圧感あるし歴戦の指揮官然とした雰囲気の男、しかも艦時代を思い返すに相手が誰であろうと気に食わなければ噛み付きまくるイメージがある。

艦娘であろうとも面と向かうと緊張する。

 

鹿島がストレスマッハであることをこの男は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

「…そうか。よろしく頼む」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

馬鹿正直に海軍服を着て外に出るわけにも行かないので普段着で、そして学校に出入りする業者の車に偽装したトラックで外に出る。

 

 

 

 

 

 

まずはやって参りました。榛名銀行ATM前。

恐る恐る、暗証番号を押して口座残高確認。やっぱり0が7ケタある。

手の震えを抑えながらとりあえず、諭吉先生を3枚ほど下す。

 

「…おお」

 

懐かしの諭吉先生! お久しぶりです。脱亜論は朝鮮投機を引き上げの折、当時大変、お世話になりました。

 

いかんいかん感慨に耽っている訳にはいかん。後ろに並ぶ御婦人の視線が痛いので早々に退散。

 

…まずは財布でも買うか。

 

裸の現金とキャッシュカードを持ち歩くのはどうにも落ち着かない。

バリバリ財布とかなら安くそこらの露店で売ってないだろうか?

 

 

 

鹿島はそんな男を見て、初めて触る機械に戸惑い、無事にお金を引き出せたことに安堵している様子に見えていたりする。

その様子がちょっと可愛いかな、などと本人には口が裂けても言えない思いを感じたりもしていた。

 

 

 

 

 

「あ、あの提督さん。こっちの方がいいと思いますけど」

 

百貨店のお財布売り場でバリバリ財布を手に取っていたら鹿島が違うオサレ感あふれる財布を勧めてくる。

女性にはどうにもマジックテープ式の財布は受けが悪いらしい。おかしいなぁ宇宙服にも使われているんやぞ?

人類文明の偉大な発明の一つだと思うんだけどなぁ…。

 

「…そうか」

 

まぁせっかく鹿島ちゃんがお勧めしてくれるんだし、そちらでかまわんだろう。

鹿島ちゃんの服装のセンス見ても俺よりはその辺のセンスあるだろうしな。

 

すんませーんコレください。

 

 

 

 

鹿島はそんな男を見て、マジックテープに興味津々の子供のようにみえ、またちょっと可愛いと感じたりしていた。

 

 

 

 

 

百貨店にて耳かきと爪切り、お財布を手に入れて、現在昼食時で鹿島が薦めるオサレなお店に入っているわけだが、ちょっとメニュー表を見て前の世界より割高かな、と思いつつも許容範囲の値段。

味も、前世? と変わらず大変おいしく頂けました。まぁもともとグルメじゃないけど戦時中から考えたら贅沢過ぎる味わいだったよ。

 

さて、無資源国家の日本。現在、ほぼほぼ輸入が止まっている状態にも関わらす、

百貨店も途中見てきた街中も物が溢れているとまでいかないがそこそこの活気。

コンビニの品揃えも食べ物関係が大分少なくなっていたが、それでも営業できている。

近海の防衛だけで手一杯と言っていたが、街中は悲壮感に溢れているという事もない。どういう事だ?

 

「鹿島」

 

「ふぁい?」

 

ザッハトルテを口に運んでいた鹿島ちゃん。うん可愛い、超可愛い。最初のガチガチだったのは何だったのか?

このまま愛でていてもいいのだが話が進まないので咀嚼し終わったのを見て疑問を口に出そうとしたとき…

 

「はい、提督さん」

 

フォークに刺さったザッハトルテを手を添えてこちらに差し出す鹿島ちゃん。

ああ、物欲しそうに見えたのね…でも違うんだよ。

 

貰うけど!

 

…うん甘い。

 

さて本題だ。

 

「鹿島」

 

「……」

 

フォーク見て固まってる。しかも無視された。

 

「鹿島」

 

「うひゃい!」

 

え、何その奇声。まぁいいや、本題本題。

というわけで、かくかくしかじかでして、そこのところどうなんでしょう?

 

「流石、提督さんです」

 

いや、何が流石なのか知らないけど…。

 

国内の産業だけで持っている事が不思議でならないのだ。

なんかユーリエちゃんに聞いたような気もするんだけどなぁ。眠くて半分も聞いてなかった気がする。

で、鹿島ちゃんの説明曰く、

 

「…長野グループか」

 

「はい」

 

またこの企業か。この企業、海外進出はしていてもあくまで国内産業にこだわっていたんだと。そのおかげで、現状何とかなっているんだとの事。

石油はどうにもならないけど鉄とかはリサイクルで何とかしてしまっているらしい。

石油もバイオ燃料やら何やらで国内の混乱を乗り切ってしまったんだと…。なんだこの変態企業…。

 

誰がこんな企業を作ったんだと思ったけど…わが妹でした。

思わず頭を抱えそうになったけどまぁ悪い事したわけじゃないし深く考えないことにした。

 

 

 

 

 

「見られているな」

 

「…そうですね」

 

どうにも居心地が悪い。昼食後に本屋に向かう途中、鹿島ちゃんと並んで歩いているのだが、道行く人がこちらを見ていることが多い。

俺の自意識過剰じゃなければだけど…。

まぁ視線は鹿島ちゃんに送られているんだろうけど、こんなに可愛いんだもんそら仕方ない。

 

あ、そうか…、

 

「鹿島はメディアに露出しているのか」

 

艦娘というの存在は知られているのだ。芸能人が歩いているような感じなんだろう。

 

「いえ? TVや雑誌に出るのは大和さん、長門さん、陸奥さんが多いですね。他の皆さんが出ている話は聞いたことないですけど」

 

「…そうか」

 

なら単に鹿島ちゃんの可愛さにみんなやられてしまっているわけか…。

しかし長門、陸奥、大和か。

 

「私達がこの姿になる前から人気ありましたからね。あとは改陽炎型の一部も人気ですかねぇ」

 

長門、陸奥は帝国海軍の象徴的な艦だったからな。大和型は戦時中は機密だしなぁ。

なら大和はなんでだ? 宇宙戦艦の影響か? まぁその辺りは本屋で調べてみるか…。

駆逐艦が人気…? 艦娘の姿を知らないのに? なら紳士って訳ではない、なんでだろう?

 

「一番の人気なのは金剛さんなんですけど」

 

「…金剛か」

 

英国面に落ちることなく日本の得意な魔改造でいい艦になったのは確かだけど。

35.6cm45口径三連装砲1基を大戦前にぶち込んでみたり、機関の性能を向上させたりしたなぁ。

あと何年か早く、艦の方に口出せていたらなぁと思わなくもない。

でも、人気? いや、いい艦なのは乗っていた俺が保証する。だが、人気? 

どうしても大和型や長門型よりネームバリューは劣ると思うんだけど。この世界、ゲームの艦これないしな。

 

「はい、提督さんが乗って大活躍しましたからね。あと映画の影響も大きいと思いますけど」

 

「…映画?」

 

「はい、提督さんの映画です。私も初めて観た時、泣いちゃいました」

 

「え?」

 

えへへと笑う鹿島ちゃん。可愛い…いや今はそんな事じゃなくて…、

俺の映画ってなんだよ!? 永遠のジークみたいな? 漢達の大和みたいな? そういう事!?

ちょっと本人の与り知らないところで黒歴史作るのやめてくれないかなぁ!?

どうせ、ある事ない事、誇張して描かれてるんでしょう?

 

絶対、絶対に見ないんだからねっ! 

 

「あ、あれ? 提督さん」

 

思わず空を見上げてしまった。何でもないと首を振る。

 

ん? 気のせいか? あのおっさんとあのおっさん、あとあのおっさん、おっさんばっかりじゃないか!

なんで俺を舐めるように見ていたんだろうか? いや、考え過ぎだな、鹿島ちゃんを見ていたに違いない。

俺を見ていた訳じゃない。そう信じよう。

 

「さん…提督さん」

 

「ああ、行くか」

 

とりあえずジャン○を手に入れよう。

 




恐らく、本文で語られることのないもの

史実では曙は珊瑚海海戦参加してますが、ドゥーリトルで損傷してたんで不参加でした。

うちの鎮守府には3年経った今でも大和型はいない。

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