出会った日
その日バニングス一家…と言っても、兄と妹の二人きりの家族だが…と、お隣のノイエス家の一人娘と一緒に、のんびりとピクニック中だった。
バニングス家の妹、ロイド・バニングスは、バニングス家の兄、ガイ・バニングスと、ロイドにとって姉のような存在、セシル・ノイエスと一緒に、花冠を作ることに夢中になっていた。
「セシルお姉ちゃん、できたよ!!」
「ロイドは手先が器用ね。誰にあげるの? はっ、まさか彼氏さんに……」
あまりに一生懸命に作っていた、この年頃の少女にしては、とても上手に作れたロイドの力作を前に、セシルはあらぬ方向へ勘違いしていた。
「なにっ、それは聞き捨てならないぞ、ロイド!!」
そして、それに当たり前の様に乗っかるガイ。
ちなみに天然で、乗っかっている。
「……ガイお兄ちゃん、セシルお姉ちゃん、これ、あと1つ作って、二人にあげようと思ってるんだけど」
いつものことながら、この二人は想像力豊かだなぁ、と、思ったロイドであった。
「なんだ、そうだったの。なら、私はロイドに作ってあげるわね」
ふふ、とセシルがどこか安堵したように微笑み、ガイは、大袈裟に息をついていた。
そんな時であった。
がさり、と近くにあった茂みが大きく揺れたのは。
「な、なに……?」
「静かに、」
怯えるロイドを抱きしめて、セシルがそう言えば、ロイドは、こくこく頷いた。
「……」
ガイがトンファーをとりだし、静かにそっと、茂みに近づく。
がさ、と茂みをかき分けたそこにいたのは、薄汚れているものの、元が白いと分かる服にくるまれた子供が、倒れていた。
「おい、大丈夫か!?」
パッと見、怪我は無いようなので、ガイがトンファーを手放して抱き上げれば、子供は、小さく呻いた。
「どうしたの?」
セシルがロイドを抱きしめたまま、問うてくる。
「子供だ。……弱ってるみたいだな」
『えぇ!?』
ロイドとセシルは揃って声を上げ、ガイに駆け寄る。
確かにガイの腕の中には、静かに眠る様に目を閉じた子供が力なく、くったりと収まっていた。
「大変だ!! えっと、セシルお姉ちゃん、こう言う時は、えっと、えーと……」
「救急車よ。すぐに呼ぶわね」
慌てるロイドにそう返しつつ、セシルは両親が持たせてくれた導力通信機で、母親と病院に連絡を入れていた。
その後、数分もせずに救急車が駆けつけ、セシルがロイドとその場に残り、ガイが子供に同行して、救急車で病院へと向かった。
そして、残ったロイドとセシルは、駆けつけてくれたセシルの母、レイテ・ノイエスと共に、病院に向かうのであった。