ヘタレな男とポンコツオペ子   作:人類種の天敵

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ども、天敵です。
感想で主人公サイドのヒロイン常盤先輩がevergreenだということを見て正直目が点になりました。いやはや、みなさんのフロム脳的なコジマ汚染考察は本当凄いっす。俺じゃこの先生きのこれないとつくづくry。
あとなんでかACネタに進んでいく。なぜだ(´Д` )


飛翔する鴉

「うーん、むにゃむにゃ………誰だい?ボクを起こしたのは………って、美穂ちゃんか……」

 

朝、ボクの気持ちの良い眠りと夢を邪魔したのは従姉妹にあげた朝が弱いボクを、もしもの時起こすための目覚まし時計のようなものだった。

それが美穂によって使用されたということは、早急にボクに何かして欲しい、状況を知って欲しい、何かマズイことが起きてしまった、もしくはそれ以外の何かだ。

そうだね?ボク……。

 

「………うん、思考は正常に廻ってるね」

 

流石ボクだ、と頷いて端末のメールを開く。

そこには、漢字に変換することも忘れて慌てて出したのだろう拙い文章が記されていた。

 

『おりむらちふゆのしじでありーやがEOSでせしりあおるこっととたいせんちゅあ』

 

「ボクのアリーヤへ織斑千冬はそこまでやるのか!!薄汚い女がッ!」

 

思わず叫んだボクは持っていた端末を叩きつけてしまった。

そもそも、EOSだって?ボクが作った玩具を真似たガラクタがISに傷一つ負わせることが出来るとでも思ったのか?バカな、いや、バカ過ぎる。

あの女はそこまで脳味噌がボケたのか、正気の沙汰じゃ無い。

 

「不愉快だ……不愉快すぎる」

 

頭に手を当てたボクは即座に端末を起動、操作してIS学園のアリーナのカメラをハッキング、独自に占拠して現在の状況を観た。

 

「…………」

 

そこには、地面に横たわる可愛い可愛いボクのアリーヤがいた。

ボクはもう一つの端末を手繰り寄せてカメラの録画モードを引き抜いてログを再生した。

それは最早見てられないほどの弱者虐めであり、女性こそがこの世の頂点に立ち、男はみな女の奴隷であることを宣言しているかのようだった。

 

「醜…い……ゴミ共…め……ぇ……ボクのオモチャを、お前たちは何処までも………」

 

直ぐに端末からIS学園の資金面での援助を凍結し、セシリア・オルコットの初日での暴言やいざこざをネット上に暴露、イギリス政府の隠蔽事実などもハッキングして暴き、ネットへ流出し、ストレスを発散させるために思い思いに掻き回してやった。

 

「はぁ…………はぁ…」

 

画面に映る彼はその痛々しい体を織斑に蹴られ、斬られ、弾かれ、それでも尚銃を杖にして立ち上がる。

その目は濁り切って虚空を見つめ、その口はニヒルにヒクついて嘲笑を浮かべる。

よろよろと立ち上がった体がまた、近接ブレードによって切り裂かれて後方地面へ何度も何度もバウンドしていく。

その姿を見て織斑は爽やかな笑顔を浮かべてスラスターを吹かせる。

なんの抵抗もしない人間に対して世界最強の兵器でもって傷付ける。

中々にイカレた思考思想とそれに伴う立派な志を持っているらしい。

 

「…………ん?」

 

必死にアリーヤを観ていたからだろうか、彼の口元が小さく細かく何かを呟いているのを発見したのは、そして、彼が紡ぐ言葉を一人呟く。

 

『「地を這う鴉」』

 

地を這い、跳ねることは容易い、だが、この空を飛ぶことまでは出来ないのだ。

空を飛ぶためのこの翼が、ボロボロになって一切機能しないから仕方ないのだ。

他の翼を持つ者たちが楽しく空を飛んでいる様を、ただただ地上で眺めている。

俺にはそれしか出来ない、悔しくとも、それを受け入れなければならないのだ。

悔しい悔しい、この体に翼さえあれば、悔しい悔しい、俺も大空を飛べるのに。

何故神は俺に期待させるのだ?希望さえなければ、甘んじて受け入れる現実を。

この不平等な世界に、この不公平な大空に、この不鮮明な現実に、この不感動な自分に。

 

『「足掻くな、運命を受け入れろ」』

 

それはまるで詩のようなアリーヤが紡ぐ絶望が謳う負の感情。

ふらり、とアリーヤの体が不意に揺れて地面へ倒れていく。

バッテリーが切れたEOSはパワーアシストも出来ずに機能を停止し、もはや人力でアレを動かすことは不可能だ。

 

「そんなになるまで………アリーヤを苦しめたのか……」

 

居ても立ってもいられず、ある機械を起動させ、アリーナへ、アリーヤの目の前へ本物の兵器というものを転送した。

 

『なんだ、これ……』

 

理解できない織斑は呆然とそれを見た。

同時に美穂宛にメールを送り、操作権を彼女へ移行して別の作業に勤しむ。

直ぐに画面で変化が起こった。

転送した兵器が織斑を攻撃し始めたのだ。

戸惑う奴の顔にひっそり笑いながら作業を続行する。

これが終わった時、奴らの驚く顔を見るのが楽しみというものだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「常盤さんから…メール」

 

「えっ、なんて」

 

「わかんない……なに、これ……」

 

アリーナの観客席、沈痛な面持ちで試合を観戦していた美穂は受信したメールを開いて小首を傾げる。

 

「これは、ドローンの操作アドレス?とりあえず起動してみましょう」

 

端末を操作するカルマ・ヴェニデは直後にハッと息を呑んでアリーナへ視線をアリーナへ移すと、ACを嬲るだけの茶番に、変化が起こっていた。

 

「なんだ、これ………」

 

白式の操縦者、織斑一夏は目の前の光景に困惑していた。

あと少しで在夜を倒せるはずだったのに、目の前に謎の物体が出現したからだ。

 

『ピピピ………ピピピピピ………味方視認………敵性反応感知』

 

「え…?え?え?無人機?なんだよ、これ!!」

 

織斑一夏は目の前の無骨な、ゴツゴツと角ばった機体に対して疑問を口にしながらも近接ブレードを向けた。

 

「今からこの端末で操作します…フォーミュラ・ブレイン正常に起動…UNAC1、戦闘を開始します」

 

『ーーーーUNAC1、戦闘ヲ、開始シマス』

 

「き、キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!」

 

織斑一夏は目の前のロボットがシャァベッタァァァァァァァ!!事に驚いてブレードの握りを甘くしてしまった。

そこをオペレーターが操作するUNAC1の腕部アームに殴られてブレードを取り落としてしまった。

 

「し、しまっーー」

 

『腕部兵装、フィンガーバルカン展開』

 

UNAC1は両腕を織斑機へと突き付ける。

すると5本の指を模したマニュピレーターが手のひらへ収納され、5つの丸い穴が開く、すると手のひら部分が高速で回転し、5つの穴からもんの凄い勢いで弾丸が射出された。

 

「ぐわぁっ!?あだっ!?ぁだだだだ!!」

 

慌てて両腕をクロスさせて射線を遮る織斑機にUNAC1のフィンガーバルカンが唸りを上げて襲い掛かる。

 

「なんだ……なんだよ……お前」

 

『……………』

 

UNAC1の背後、EOSのパワーアシストが切れて横倒しに倒れた存夜はただ呆然として呟いた。

 

「もう少しすれば、終わるのに…!なんで足掻くんだよ!折れろよッ!!」

 

体は動かない、その代わりに口は動く。

自分を守る目の前のロボットへ、胸中に渦巻く負を大声で吐き出す存夜へ、ロボットは無機質な機械音声でこう語る。

 

『護衛対象、健在』

 

「………は」

 

『はい、そうです。この端末を操作してUNAC1を動かせますので、鷹月さんは織斑機の牽制をお願いします』

 

『分かったわ』

 

『AC……聞こえますか。間もなく、始まるまはずです』

 

は………?始まる?

 

『それまで私たちが貴方をサポートします、守ります。だから、立って下さい』

 

「う、ぅ、おぉおおおおおおお!!」

 

『きゃぁ!!?』

 

『右腕部損傷…パージシマス』

 

目前、織斑のブレードで切り裂かれたロボットの右腕が、火花を散らして損傷する。

ロボットのスピーカーから機械音声が流れ、淡々と壊れた右腕を前方の織斑へと放り投げて左腕を向けて幾多もの弾丸を射出、自爆させた。

しかし織斑のISはその自爆攻撃を物ともせずに俺を庇うように立つロボットへブレードを突き立てた。

 

『APーー70%減ーーー少ー戦闘ーー続行ーーーマスーーー』

 

「ぐわっ!?」

 

ブレードを突き立てロボットの損傷は目に見えて酷くなる。

装甲を突き抜けるブレードとそれに絡みつく色々なコード類と破片。

ぼん、ぼん、と小規模の爆発を起こし無機質な声にも耳障りな亀裂が生じる。

 

『立ちなさい!ACッ!』

 

「……ッ……」

 

『私たちは戦います、貴方が…諦めない限り』

 

だが、一体どうしろって言うんだ?俺のEOSら既に充電が切れてパワーアシストが機能せず、ボロ雑巾のように地面に横たわっている。

 

「一体……どう…しろって………」

 

『私たちは』

 

『アリーヤを選ぶよ』

 

オペレーターの声に続いて、常盤先輩の声が通信機から聞こえた。

 

『今からそのガラクタとは比べ物にならない性能の翼を転送するから、それまで保つよね……UNAC1』

 

『ジジーーージーー目標再設定ーーー時間稼ギギギギーーー』

 

「のわぁぁぁ!!?」

 

織斑の顔面を殴りつけて5本のマニュピレーターを展開し、その手で織斑機のスラスターを掴んだロボットがブースターを展開して織斑と共に地上を滑走する。

 

『準備完了、送るよアリーヤ』

 

常盤先輩の声を聞きたくなかった。

彼女の言葉は、俺にとって希望だから。

 

『AC、私は、貴方をサポートする貴方専用のオペレーターです』

 

オペレーターの声を聞きたくなかった。

彼女の言葉は、俺にとって心地の良い言葉だから。

 

『アリーヤならやれるさ、少なくともボクはそう確信してる』

 

『私も貴方と戦います。貴方が、戦い続ける限り』

 

だけど、だけど、俺にどうしろって言うんだ。

彼女たちから戦う勇気を貰った、でも、肝心の体が、EOSが動かないんだッ!!どうしようもないんだよッ!!

 

『それは、ガラクタ。ただのニセモノさ』

 

突如目の前が真っ白な光に包まれる。

 

『地を這う鴉か……言い得て妙だね、アリーヤ』

 

『出力オーバーーー限界ーーデス。時間稼ギハ滞リナク完了ーーーミッショーーコンプリーーーーーーー』

 

派手な爆発が上がる。

残骸の骸から織斑が、立ち上がる。

 

「凄え、凄えよ、存夜!」

 

笑っている。

奴は俺を見て、笑っていた。

 

『これは正に、今のキミのように、地を這い、空を跳ぶ……今はまだノーマル…でも何時かは、空を制する機体になる』

 

白い光が収縮していく。

なんとも情けなかったEOSの装甲が次々とパージしていき、新しい装甲がスーツの上を滑り、構築されていく。

 

『けどそれには、ISのような安全装置なんて存はしない』

 

ヘッドパーツが頭部を覆い、ズキンズキンとこめかみが、後頭部が、覚醒したように痛みを覚える。

 

『でもキミなら飛べるさ』

 

視界が赤く染まる、緑に染まる、青に染まる。

三種類の視界を経て元のクリアーな視界へと戻っていく。

 

『だってキミは“地を這う鴉”(AC)なんだから』

 

身体中が細かく振動し、鼓動を刻む。

装甲の下に隠されたコードが音と震えを伝播して、それは確かに視界を確保するセンサーへと伝わっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………聞こえますか』

 

ああ、聞こえる。

 

『間もなく、始まるはずです』

 

ああ、感じる。

 

『貴方の伝説が』

 

ああ、始まる。

 

『いずれ語り継がれる地を這う鴉(黒い鳥)の昔話が』

 

ああ、飛ぼう、この空を

 

『それを是非とも、見せて下さい』

 

いいとも、くれぐれも目を回すなよ?

 

 

 

 

「 …………システムオールグリーン。こちらAC、戦闘を開始する 」

 

眼前5メートルには純白の敵が爽やかな笑みを浮かべて剣を携えている。

だがまあ、怖くなはい。

俺を支えてるくれる仲間がいるからか、バカなヘタレ野郎が半端な希望を抱いちまったからか……。

それは分からないが、今はまだ、酔っていたい気分なんだ。

 

「へへっ!盛り上がってきたなっ!!?」

 

「ケッ、ほざいてろ死に腐れがッ!」

 

両手に握った銃器を織斑へ向け躊躇なくトリガーを引く。

織斑は即座にそれらを避けて大空へ飛ぶ。

俺は奴の姿を見ても一切躊躇も恐れも抱かなかった。

 

俺にだって翼がある。

常盤先輩から貰った不恰好な翼が。

だからきっと、俺でもきっと空を飛べる。

地を這う鴉はいずれ、この大空を自由気ままに舞う。

邪魔する者全てを黒く焼き尽くして何処までも。

 




感想で着想を得たフィンガーバルカン。
読者さん本当にありがとう。これからも天敵のアイデアボックスとして活動ry
寧ろこう言わせて欲しい。
アイデアボックスへようこそ。歓迎しよう、盛大にな!!
マジで読者の皆さんは(´神`)です(´Д` )

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