ヘタレな男とポンコツオペ子   作:人類種の天敵

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浪漫を持つ男

本日の全授業が終了し、SHRも堤がなく終えた俺は、山田先生から寮の鍵を渡すので待っていて欲しいと言われたので憎き織斑と教室で待機している。

しかし、なんで織斑なんぞとこの教室で待ってなきゃいけないのだろうか?

どうせ俺オペレーターと同じ部屋なんだからオペレーターに鍵を渡しとけば良いんじゃねーの?

まず第一に放課後行く予定があるから拘束しないで欲しかったんだけどなー。

 

「なあ、存夜。山田先生遅いな」

 

「………」

 

織斑は面倒臭いから無視。

つーか話しかけてくんじゃねーよ。

俺を面倒臭いことに巻き込んだくせに謝りもしないで何のんきに喋ってくるわけ?バカなの?死ぬの?いや死ねよ。

しかもこいつだけ専用機貸してもらえるとかマジ萎えるんだけど、姉の七光りハンパねーなーオイ。

 

「存夜って照れ屋なんだな?普通話しかけられたら何か言うだろ」

 

「じゃあ黙れ俺に話しかけてくんな」

 

「おいおい、俺とお前はこの学園唯一の男子だぞ?もっとこう、助け合って…」

 

別にこいつ以外に協力者はいるから織斑イラネ。

そういえばオペレーターと鷹月大明神たちは先輩の所に行ってるところだろうか、だとしたら場所わかんないから教えて欲しいぞ。

 

「あ、そういえば存夜と話してた娘を紹介してくれよ〜」

 

「………」

 

なにこいつ篠ノ之とかいうお似合いな女がいるくせに他の女生徒にも手を出すのか?

流石織斑、クズの中のクズだ。

この女尊男卑の世の中で自分の顔を使って好き勝手生きてやがる……。

 

「すげーなこいつ…大物だぜ」

 

「? どうかしたか?」

 

なんでもねーからこっち見んな、と手を振ると廊下を爆走する音が……紛れもなく山田真耶先生その人だ。

 

「はぁ、はぁ……ふぅ、間に合いました」

 

いや、汗ダラダラになって教室と職員室を往復するんだったら朝の時点で渡してもらえませんかね?

 

「え?寮の鍵?俺、当分は自宅から通学って聞いたんですけど」

 

「あ、それはですねーー」

 

「すみません山田先生、話を聞いてない織斑はともかく俺は放課後予定があるので鍵渡してもらえますか?」

 

自分でも愛想よく言えなかったのがわかる。

これじゃまるで拗ねたガキだ。

 

「あ、は、はい。えっと……至鋼くんはこの部屋になります」

 

「ありがとうございます」

 

「なあ存夜、何号室だった?それと今度存夜の部屋に行ってもいいか?」

 

背後から聞こえる織斑の声を無視して事前に交換していたオペレーターに通話を掛ける。

1コール待たずに出たオペレーターに聞くと既に先輩の所についてるらしいので道順を聞きながらIS学園を練り歩く。

10分くらいで先輩が根城にしている部室棟?の一室へ入ると、先輩の発明品でゴチャゴチャとした部屋にオペレーターや鷹月大明神。

齋藤さん佐藤さんコンビと椅子に座って寛ぐ常盤先輩がいた。

 

「遅れてスンマセーン」

 

「まったく。遅刻してそれは感心しないよ、アリーヤ」

 

「………俺が何かして遅れたわけじゃないんすけどね」

 

遠回しにIS学園と山田先生の手際の悪さを示唆して肩を竦めると、オペレーターが手にもったアイテムをそっと机の上に置きながら先輩との交渉を宣言する。

 

「ACも来たので、来週のクラス代表決定戦で使用するスモーク弾を貸していただけないですか?」

 

「んー、良いよ」

 

先輩はさして考える事もなく使用を許可する。

 

「軽いっすね」

 

「ボクはアリーヤのお願いならどんなことでも聞いてあげるよ?それに、結果的に試作品のスモーク弾をテストしてくれる訳だからボクとしても喜んで貸し出すよ」

 

椅子から立ち上がって開発品の中からガサゴソとキャタピラの付いた円柱の先端に、長方形の箱を二つ付けたサムターレットのような兵器を持ってきた。

 

「これが例のブツっすか」

 

「うん。範囲を決めておいて自動でスモーク弾を撃ち出すターレットでスモークを高速で撃ち出して煙幕を瞬時に展開できるようにした物さ」

 

「暗視ゴーグルは私の方で手配できますので、あとは織斑戦の対策ですね」

 

「織斑?……ああ、織斑千冬の弟の事だね。そういえばボクのアリーヤを差し置いてアレが専用機で戦うんだろう?ああ、不愉快だ」

 

常盤先輩がクルクルと椅子に座りながら回転する。

 

「憶測で進めますが、織斑機は近接、それも白兵戦闘に特化した格闘という事で対策を立てましょう」

 

「近接機なら遠距離がセオリーだから……オルコットさんみたいな狙撃タイプ?」

 

「ミサイルを搭載した火力型で削るのも良いかもしれませんね」

 

「男なら拳一つだろ〜存夜っち〜」

 

「残念ながら俺の浪漫はガチタンなんでね。正面から全て焼き尽くす……俺の理想だわ」

 

ヒルドルブとか最強じゃね?高速で戦場を駆け抜けつつ主砲を1発当てれば即KOだから浪漫がビンビンだろ。

ヒルドルブさえあればISなんて目じゃないね。

 

「仮に織斑機にアサルトライフルが装備されたとしても精度は悪いはずなので特に問題はありません」

 

「織斑が格闘機で来るんならどデカいグレネードキャノン系でドカン!……これで終わりだろ」

 

「有澤重工のグレネードキャノンですか……今販売してある武装を調べてみます」

 

「そうそう!グレネードキャノンは何と言っても有澤………………………有澤?この平和な国日本にどデカいグレネードキャノン作ってる頭のイカれた企業があるのか?」

 

「はい、ちゃんと実在する企業ですよ。なんでも、男9女1の比率で運営してるためか女尊男卑の今ではあまり注目されていない斜陽企業ですね」

 

「へ、へー…。ちょっと…ほ、ホームページ覗いてみようぜ(ドキドキ)」

 

オペレーターの端末を弄って有澤重工のホームページを覗くと、項目にグレネードキャノン、グレネードランチャー、グレネードライフル(?)グレネードガトリング(?)グレネードショットガン(?)etc………中々にクレイジーな兵器を開発している企業の実情がボロボロと溢れてきた。

 

「う、うわぁ……」

 

「何これ……ふざけてるの?」

 

興味半分で有澤重工のホームページを覗き込んでいた他のメンバーもその技術力(と浪漫?)の尖った有澤重工の兵器にドン引きを隠せずにいた。

 

「な、なあ。オペレーター…織斑戦は有澤重工の武器を使っても良いよね!?」

 

「いや…ちょっと……これは……」

 

「存夜っち…こんな漢武器…扱えんのかよ?」

 

「反動に負けてろくに撃てないのが落オチかも……」

 

「でもグレネードアサルトライフルならある程度の弾幕を保ちながら反動もあまりないみたいだし、効果的と思うけど?」

 

鷹月大明神の援護を受けて次なる交渉材料を探していると、下へ下へスクロールした端末に更にクレイジーな画像が貼ってあった。

 

「IS専用装甲機動戦闘車輌キターーーーー!!!戦車の機動性の低さをISの機動力で補い、なおかつお釣りがくるほどの超火力で他を爆・撃・滅!するゥゥゥ!!ひゃっほーーーー!!」

 

最高だ……最高にイカレてるぜ有澤重工って奴はよぉ……。

 

「…………主砲一門にミサイル10数基と副兵装のガンランチャーを装備、側面にファランクスを取り付けそれら全てがグレネード弾を装備…………これ、戦車ですか?」

 

オペレーターが情報端末と睨めっこしながら信じられないように呟く。

 

「これ!これ!使いたいっす!ハイッ!」

 

「え、AC……これを使うとなると物凄い金額が発生しますけど………」

 

「!?」

 

バッと端末に目を向けるとそこには見たこともない金額が並べてある。

 

「!?……!!………」

 

ページ更新を繰り返すがその金額が変わることはない。

 

「……………」

 

両目に涙を浮かべていると常盤先輩が椅子に座ったまま両手を広げて「ウェルカム」と言ってくれたのでその胸に勢いよく飛び込むと頭をナデナデしてくれたのでシクシク泣きべそをかいた。

 

「………え、えーと……では織斑戦の作戦を考えましょう。今まで出たものではミサイル型、遠距離型がありますね」

 

「ミサイルだったらインパクトミサイルの衝撃で動きを止めて他のミサイルで削るほうが良いわよ」

 

「ミサイル運用の基本的な動きですね。ただインパクトミサイルは他のミサイルに比べて速度はあまりないのでスピードの高い機体には不利なのが欠点ですね」

 

「あー、織斑っちのは速度の速い近接基だからスピードが遅いインパクトミサイルはあんまし当たらないのかー」

 

「じゃあ、遠距離型です?オルコットと同じ武装構成になると思うです」

 

(…………オルコット?へえ、佐藤さんって気の小さい娘と思ってたけど気の強い所もあるんだなー)

 

「うひゃっ、アリーヤ、顔を動かす時は言ってくれないと、こそばゆいじゃないか。それと、美穂のことかな?」

 

オルコットオルコットとブツブツ佐藤さんが悪口を言ってるのを見て不思議そうにしてると常盤先輩から解説を聞く。

曰く、佐藤さんは女尊男卑の世の中とは逆にキチンと躾の効いた家庭で育ったために男を貶し、あまつさえ日本までもバカにして見下すオルコットの精神に苛立ちが限界を突破したらしい。

 

「………オルコットの機体の部品を2、3個外してやるです?」

 

ボソッと佐藤さんがえげつない言葉を発するが、即座に齋藤さんがまあまあ、と「2、3個なんてみみっちいこと言わずに10個20個くすねとけー!」……と、いや、全然自重しないなこの人。

 

「美穂も真希ちゃんも全然変わらないね」

 

「……そうだ、先輩」

 

「んん、ボクにお願い?アリーヤ」

 

「うっす、一つ俺に考えがあってですね……」

 

佐藤さんの過激な発想と齋藤さんのノリノリな便乗を聞いて考えついたアイデアを常盤先輩の耳に小声で提案すると、ニヤッと悪い笑みを浮かべて常盤先輩が面白い、と断言した。

 

「クスクス。あの自意識過剰な小娘に日本人の怖さを全身の細胞はもとよりその遺伝子にまで一生忘れられない恐怖をボクが刻みつけてあげるよ………ふふふ」

 

「………佐藤さんのダークサイド面って案外先輩から受け継がれたんじゃ…………」

 

いやー、この人の恐怖を味わうくらいならオモチャになってる方が断然良かったな!ウン!良かった良かった。

 

「遠距離ならアドバンス社のスナイパーライフル「SR−3E ブリッツ」ですね。射程距離も長く命中精度も高い上に稲妻の如き弾速は流石の一言です」

 

「あれなー!鋭角的なフォルムもヴィジュアルが良いんだってなー。まあ、男に人気があるだけで各国の代表はあまり使ってないらしいけど」

 

「とりあえずこの武装も私が手配します。その他で何か案はありますか?なければ今回はこれで終了します」

 

オペレーターの言葉にめんばーは何も無し、と声を揃える。

そしてオペレーターが解散を告げてそれぞれで常盤先輩の部室から出て行く。

 

「そんじゃ、オルコットの件はよろしくお願いしますね」

 

「うん。ボクに任せておいて、アリーヤ」

 

常盤先輩と短い言葉を交わして部室を出る、オペレーターと一緒に寮までの道すがらを歩いていると、女の怒声が地鳴りのように鳴り響く。

何事かと遠巻きに観察すると、その発生源は篠ノ之箒だった。

 

「なんだ、くだらね……あ、そうだ。オペレーター、これからISの勉強を教えてくれない?」

 

「いいですよ」

 

………オペレーターの教育指導方法はかなりのスパルタものだった。

その次の日は見違えるように教科書の内容が理解できて山田先生に褒められたが、別に嬉しくもなんともなかったし、というか非常に眠たい気分で散々な1日だった。

 




IS専用装甲機動戦闘車輌「龍神」
ISによる運営を前提に設計開発されたトンデモ兵器。
主砲による一撃はもとより10数基のミサイルや副兵装のガンランチャー。側面に配備されたファランクスの弾丸にもグレネード弾が装填されており、危険です。
戦車の名に恥じぬ防御力を誇り、アサルトライフルなどの攻撃は意に返さず、かつバズーカやランチャーさえも正面からなら無傷で受け止める。各国に採用されない理由は注目の低さという斜陽企業のサガ。

インパクトミサイル
衝撃力を高めたミサイルでISの絶対防御を貫通して衝撃を与えることを狙って開発された。
1発1発の威力は低いものの、対象の動きを止めることができるために人気。
しかし加速度はあまりないために速度重視型には避けられがち。

SR−3E ブリッツ
イギリスのとある企業が開発したIS用のスナイパーライフル。
大口径による威力を元に精度、射程、弾速を両立させた名銃。
性能は全て高水準高性能だが、その尖った鋭角的なフォルムが女性操縦者には受け入れられずあまり使い手はいない。

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