主人公にとって世界一頼りになる味方だ!多分!
「あ、チャイムが鳴りましたね。ではこれで4時限目を終わりますね」
「「「「ありがとーございましたー」」」」
4時間目終了、内容はやはり意味不明。
なんかISを操縦するときに飛びやすいイメージみたいなこと聞いたけど意味ワカメ。
「……………昼飯食べるか……」
「ACもこれから昼食?じゃあ一緒に食べましょ」
「そうですね。スモークや対織斑戦の作戦がまだ決まってないので有効活用したいところです」
「そうっすか(´Д` )」
食堂に行くために席を立つと、鷹月大明神とオペレーターと食べることになった。
長身の齋藤さんも、紹介する人物を確保したようで、齋藤さんとは対照的に小柄な女性とと一緒に食堂に行くことになった。
「齋藤さん、紹介よろしく」
「んー、オッケー!っと、私の知り合いの佐藤美穂。ちっちゃくておっちょこちょいだけど整備の腕ならばっちぐー!」
「………(゚Д゚)」
齋藤さんに紹介を任せたのがやはり間違いだった。
だがまあ、佐藤さんの整備力が高いってのが分かっただけ良しとしよう。
「至鋼存夜だ。よろしく、佐藤さん?」
「……あっ!はいっ、さ、佐藤美穂です!よ、よろしくしてくれると嬉しいですっ」
挨拶をされてびくんと反応。
即自己紹介を終えて齋藤さんの背後へ隠れる佐藤さん。
「俺ってそんな怖い?」
「あはは、美穂はかなり人見知りだかんねー。どんまいー!」
バシバシと齋藤さんに叩かれながら食堂までの廊下を歩くと、前方から痴話喧嘩のような声が聞こえる。
…………案の定織斑と篠ノ之だ。
チッ、リア充が……自爆しろ死に腐れ。
「織斑の性格だ。顔合わせたら一緒に食べようとか言い出すに決まってる」
「作戦内容を聞かれるのはマズイですね」
「えー、別にいーじゃん?なっ、美穂」
「マキちゃん…私は篠ノ之さんが…怖いよぉ」
「声をかけたら睨まれるからでしょ?篠ノ之さんは結構いい人よ」
織斑+篠ノ之に気付かれずに昼食の席に着く
賛成3、反対2というわけで前方で痴話喧嘩してる2人を避けて食堂に入った。
「おっ、常盤先輩じゃん」
「ほんとだ、常盤さんっ」
各自昼食メニューを載せたトレイを持っていると、齋藤さんと佐藤さんが食堂の複数あるテーブルの一つへ駆け足で行く。
齋藤さんは想像つくが、内気そうな佐藤さんが嬉しそうに走っていくので、ちょいとした好奇心で2人が走って行ったテーブルに座る女生徒を盗み見してみた。
「こんちゃーっす!常盤さん」
「常盤さんっ、先日貰った整備キット!凄いですっ!」
「ふふ、マキちゃんは何時も元気だね。それに美穂もボクが作った整備キットを使ってくれててボクも嬉しいよ」
3人の会話を聞いてるとどうやらこの女生徒は齋藤さんと佐藤さんに慕われているらしく、自作の整備キットを作るほどに発明分野においては物凄く開発力が高いらしい。
しかもボクっ娘というのも興味が出るぞ。
なんせこのご時世で純真無垢なボクっ娘というのは………俺のアリーナの対戦相手もボクっ娘だったが、いや、アレは酷い。
遊び道具と称した高性能追尾ミサイルやら小型セントリーガンやらUNACとかいう無人機やらまるでファルスな戦場で俺をマッハで蜂の巣にしやがって………クソぉ……。
…そういや、齋藤さんと佐藤さんがめっちゃ話し込んでる女生徒がその対戦相手にまんま似てるような………
「ブッ!?(まんまあの女じゃねえかぁ!?)」
「あれ、どうしましたAC?」
「いや、あれは危険だすぐにこの場から離れry」
「あーれれ?見たことのない男子生徒じゃないかと思えば……やあ、学校生活初日はどうだった?アリーヤ」
……………やべっ、ちょ、まっry
「え?常盤さんってば、存夜っち知ってるんすか」
「うんうん。なにせ彼のIS操縦適正の検査官を務めたのはボクだからね。それに」
やべえ、マジでやべえ。
あの女この場でアレを言う気かよオイ!?
正気じゃねえ!?ウワァァァァァァry
「……クスッ……。アリーヤはボクのオモチャだからね」
「…………へ?」
「…………え?」
「…………はい?」
「…………え、AC?」
「ウワァァァァァァ!!?俺あの女嫌いー!!?嫌だもう嫌ァァァァァ!!?」
ピタッと静止した空間。
この場に留まるのはマズイと本能で察知して逃走を図ったがカタカタと震えるオペレーターに尋常じゃない力で右腕を抑え付けられて離脱失敗。
加えて左腕を口を半開きにした鷹月大明神に掴まえられてズルズルとあの女が待つテーブルまで引きずり寄せられる。
あの女といえばまるで喜劇を眺めているように微笑ましく見守っているが、その瞳はまるで自分の思い通りになる自分だけのオモチャをジッと眺める目つきで俺を、俺だけを見ていた。
「クスクス。アリーヤはなんでそんなに怯えるんだい?ほら、ボクの隣に座りなよ」
「あ………あ………あばばばば (゚Д゚)」
もう死んだ。
口から魂的なものを吐き出しつつガタガタと震える俺を興味深そうに観察している奴は、両手を組んだ上に顎を乗せ、機嫌良く鼻歌を奏でる。
「ふふん〜キミがその放心……いや、無心状態に入ると、動きがより洗煉になるからボクとしては今のキミはとても興味深いよ。アリーヤ」
優雅にコップの中の液体を飲み込み、ペロリと唇を舌で湿らせた女、雨燕 常盤が両手を広げて薄く笑った。
「その前に自己紹介をしようか。ボクは2年の雨燕 常盤。キミ達1年生の先輩で……付け加えておくとアリーヤはボクのオモチャであり、ボクはアリーヤの所有者だ。それを踏まえた上で、これからよろしく頼むよ」
(ウワァァァァァァ!!?言っちゃった!?言っちゃったよこの人おおおおお!??人をオモチャ扱い!!果てには自分を所有者って言うとかぁぁぁ!!マジで精神崩壊してるうううう)
「雨燕…常盤。雨燕財閥の1人娘。世界的財閥の令嬢がこの学園にいるなんて………」
「あの、AC…もしかして、そういう趣味があったんだ?」
「ちげ、ちっげえから!?おおおお俺別にオモチャにして下さいなんてこの女に言った訳じゃねーし!?どっちかっつーと強制的理不尽な選択?生きるか死ぬか?オモチャかモルモット?」
「クスクス。確かにボクからキミにそう提案したのは事実だけど……オモチャにして欲しいと言ったのはあくまでキミの意思だ。つまり、あの時ボクのオモチャになるという契約…いや、主従関係の契りを交わした時点でアリーヤは永遠にボクの…ボクだけの可愛い可愛いオモチャさ。大丈夫、ボクのオモチャである限りキミは理不尽な選択に直面することもつまらないモルモットにされる事もないんだからね」
(嫌ァァァァァやっぱり!あの時思ってたんだけどこの人独占欲とか自己主張とか激しいのおおおおおお)
オペレーターの絶句も鷹月大明神のある意味絶句と誤解を解くために身振り手振りで説明を試みるが雨燕 常盤先輩のさらに誤解を招くような言い分のせいで鷹月大明神が完全にドン引いてしまった。
「ぎぃぐぐぐぐぅぅ、せ、先輩ィィィ……学園内じゃそういうのはやめて下さいねえって言いませんでしたっけぇぇぇ?」
テーブルに両手をついて至近距離から先輩と話し合いをすると、先輩は悪戯っ子のように目配せをして口元を緩める。
「でも、キミのご主人サマがボクであることをハッキリさせておかないと、調子に乗る輩が次々と増えるものだからさ。ボクもボクなりにキミの事を考えているんだ。その事を分かってくれると嬉しいな」
「それと!これとはァァァァァ話がちげええええええ!!?……はぁはぁ、ふぅぅぅ……違いマスヨネ?ネェ?」
「ふふ、やっぱりキミは面白いよ。それより昼食を食べなくて良いの?なんなら、ボクが食べさせてあげても良いんだよ」
「第二の天災と称される雨燕 常盤がこんな人物だったなんて、データベースには載ってません。修正が……修正が必要です」
話を聞かねー先輩にブツブツと独り言を唱えるオペレーター。
齋藤佐藤はぽかんとこちらを見てるだけで鷹月大明神に至っては沈黙して昼食を始める始末。
全てはこの女……雨燕 常盤こそが元凶…!!
「あっ、そだ。常盤さんってば、学園のアリーナ全域を覆うほどのスモーク弾作ってませんでしたっけ」
「あー、あの試作品かい?あるといえばあるけど、要る?」
(………………え………もしかして齋藤さんのスモーク弾のツテってこの女なの?なにそれ死ぬの?俺が……)
「〜〜ってことで存夜っちが要るらしいっすよ〜」
「へぇ〜(チラチラ)アリーヤがボクのを……ねぇ…(ニヤリ)」
こちらを見て隠す気も無く嫌な笑いを浮かべる先輩に、俺の五感も臆面も無く警告を発する。
IS学園きっての問題児、第二の篠ノ之束、世界的財閥の1人娘、etc……IS学園最強の生徒会長も霞むほどに才狂の女は、ニヤニヤと笑いながらこちらへ手を差し出す。
「アリーヤ、お手」
「「「「ッ!!?」」」」
「〜〜〜〜ッ!!!グググググ」
ああ、こんな公衆の面前でお手をさせるなんて……だが、逆らえないのだ!!悔しい!!
「「「「ッ!!?」」」」
ああ、見てる……見られてるよ……(泣)
齋藤さんが佐藤さんが鷹月大明神がオペレーターがその他大勢の女生徒達が全員が全員食べることも忘れて俺を見てるよ。
「クスクス。アリーヤ、ボクの試作品を使いたい?」
「…………」
下唇を噛みただ堪える。
「ふふ、何か言わなきゃ分からないよ?」
「〜〜〜〜〜ッ………!!」
落ち着け…落ち着け。
この先輩は俺の反応を見て面白がってるだけだ。
俺をオモチャとか言ってからかってるけどスモーク弾はちゃんと貸してくれるし…
「アリーヤの口から…聞かせてくれなきゃ、ボク……困るなぁ……」
「〜〜〜〜ッ!!………ぃの………!」
ぐぬぬぬぐぐくぬぬく……!!!
「ほら……頑張って?もう一度。もう一回。ほら、ボクに聞かせてよ」
「先輩のぉぉぉ!!?ぉおおおお!!」
「んっ…ボクの……ナニ?」
「先輩のをぉおおぐだざいいいいぃぃ」
あれ、なんでがな?なぜか両目から涙が溢れてくるぞ?(困惑)
「ボクの……ナニを?それが分かんないとボクもアリーヤの力になってあげられないなぁ」
「先輩の試作品を俺にィィィ!!貸して下さいいいいいいい!!」
もういいや、どうせ後々こんなことされるんだったら今の内に恥ずか死しとけ。
どうぜ最終的には麻痺しちまうんだしな。
「クスクス。うん、よく出来ました。じゃあ放課後ボクの部室で待ってるから、バイバイ」
「………あっ…お疲れ様でーす」
「………………あ、また、後で…いき…ます、ね」
雨燕 常盤はそれだけ言ってさっさと食堂を出てしまった。
本当に自由気ままな嵐そのものだ。
「…雨燕 常盤。自由奔放フリーダム精神を座右の銘にしていると聞き及んでいましたが…これほどとは…ところでAC、大丈夫ですか?」
「大惨事に決まってんだろ…………」
端末を弄っていたオペレーターがついでのように聞いてくるのも精神的にダメージが高く、半べそをかいていた俺はさらに瞳を滲ませた。
「ん、んっ!ま、まあACも立派な男の子だからしょうがないでしょ?それに婿の貰い手が決まってると思えば……」
「大明神…もう止めて……それ以上はマジで泣くから……」
更に更に癒えない傷を抉り搔き回す大明神の肩をガシッと掴んで涙ながらに力説する。
そんな俺を周りの女生徒はみな冷たい視線で見つめていた。
これも全て織斑の所為だ。
ISを動かさなきゃ俺はこんなところに来てないし俺を巻き込まなきゃあの先輩にお願いことをせずに済んだんだ!!
「織斑ァァァァァ………ぜ、ぜってえに叩きのめす………う、う、ううう(泣)」
「ま、まあまあ。常盤さんってば、結構面倒見良いし味方なら100万力だって」
「常盤さん……世界に2人しかいない男性操縦者を自分専用のオモチャだなんて……憧れるです……」
ああ、もうなんか……………………。
「こことは縁のない場所で静かに暮らしたい(泣)」
そんな願いは、あの先輩がいる限り、叶うことはない。
それは俺が最も知る悲しき現実である
雨燕 常盤(あまつばめ ときわ)雨燕財閥の1人娘。
高いIQと独創的な思考で有名で第二の篠ノ之束として世界各国から期待と監視を受ける2学年。
自分からISを操縦することは滅多になく基本は好き勝手に作った試作品のテスト。
最近面白いオモチャを手に入れたので上機嫌。