今回は鳩というわけで、あの弾幕天使が登場です。
昔々、ある路地裏に。
他とは違う人種の少年はいましたとさ。
見た目は子供、頭脳はそれ以下、数の計算も、しゃべる事すらままならないその少年は。
確かに、他とは違うナニカを持っていた。
何処が違う?何が違う?そう言われても、ナニカが違うと言うしかないその少年は。
やがて青年へと成長し、鋼鉄の巨人を手に入れた彼は、気の弱い飼い主と、気の強い武器商人と、へなちょこの弱虫や無愛想な男と共に会社(言語の関係からこれが最も適切だと思われる)へと立ち向かっていく。
途中、へなちょこの弱虫があまりにも青年が怖すぎるものだか、逆ギレして返り討ちに遭ったり。
無愛想な男が会社の罠に陥ってしまうなど、幾多の困難が彼らを待ち受けていたものの、頭のイカれた(言語の関係からこれが最も適切だと思われる)異常者は醜く笑う。
神様が作ってくれた気に入らないもの全てを壊して、壊して、壊して、壊して、壊して、壊して、壊して、壊して、壊して、壊して、壊して、壊して、壊して、壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊し尽くすまで。
昔話 地を這う鴉 修正版
「あ、おはよう存夜君、もう体は大丈夫なの」
「おはよう、鷹月大明神。まだまだ体は痛いけど動けないほどじゃないから」
常盤先輩に看病されながら、データ上の強敵にボコボコにされまくった俺は、また今日もそれが行われるのにビビって体が痛むにもかかわらず学校に来た。
周りでは何やらヒソヒソ声で俺に関する話をしている様だが肝心の内容が俺には聞こえない。
どうせ俺の事をヘタレ野郎だとか言ってるのは明白なのでそれには触れないことにした。
聞くだけ悲しいしね!どうせ俺の事を祖チン野郎とでものたまってんでしょ!?
「AC、昨日新しいノーマルACの標準機が届いたことは知っていますか?」
オペレーターのカルマからその話を聞いたのは授業が始まる3分前だ。
どうやらノーマルACバリエーション第一陣であるアメリカ空軍の『ラプター』、アメリカにある軍事会社の『サンシャイン』、有澤重工の『霧積』が完成したようで、俺は有澤社製タンク型ノーマルACの霧積を、サンシャインはアメリカの生徒が、そして『ラプター』の方は3組の生徒がそれぞれ運用するのだと言う。
「以前有澤社の龍神が使いたいと言っていたじゃないですか。あの言葉に有澤社の社長が感激したらしくて急遽タンク型のノーマルACを開発した様です」
そうなんだ、でもこっちとしては龍神の方が欲しかったんだけど。
「放課後に新しく受理する手筈です」
「あ、うん。オーケー」
しかし、タンク、楽しみだ。
敵の攻撃はあんまり効かないけどこっちの攻撃は一撃死……みたいなね!
アラーム! アラーム! アラーム! アラーム! アラーム!
ミサイル接近中 要回避 着弾まで残りーー
ピーピーピーピーピー!
ミサイル直撃 右腕部損傷
ミサイル直撃 頭部損傷
残AP3700
後方敵接近
上空ミサイル群
着弾まで6秒 迎撃が必要
5
4
3
2
1
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ドガガドガドガドガガガがガン!!
不規則に畝るもの。
真っ直ぐに目標へと突き進むもの。
ぶつかり合って爆ぜるものもあれば空中で迎撃され、周りを巻き込んで自爆するものもある。
それらは一様に爆ぜ、爆煙を、爆炎を思い思いに撒き散らしていく。
そしてその中心に悠然と構える戦車もどき。
きゅらきゅらきゅらと地面を這う重厚な無限軌道、しかしその上には本来あるべきはずの主砲が無く、あるべきはずの無い、厚く、堅く、他を圧倒する様な無骨な胴体があった。
そして、胴体の側転には、腕が二本付いている。
厚く、そして太くい、その二本の剛腕の内、右手に多数の銃身を束ねたガトリングを。
左手には戦車もどきの腕程もある巨大な砲身を持ち、そこから榴弾を撃ち出すグレネードライフルを握っていた。
幾多ものミサイルが直撃しても気にする素振りも無く、襲い掛かるミサイルの群れへガトリングの弾丸雨を降らしていく。
ほう、とコンテナから次々とミサイル群を生み出す相手は感嘆する。
試合を開始してからはや37分。
あんな機体で良く持ちますね……と、少し、いやかなりドン引きしながら。
「うごおぉぉぉぉぉぉぁ」
ドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガ
「うげぇぇぇぇぇぇぇぇ」
ドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガ
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
ドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガ
「クソガァァァァァァァァァァァァァ」
ドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガ
バララララララララララララララララ、ガトリングの引き金を引き続けるたびに銃身からは延々と弾が吐き出され、空中でミサイルにぶち当たり、目障りな爆炎が幾つも幾つも生み出されていく。
うんざりするループを延々と繰り返しながら、左手のグレネードライフルを遠くに見える敵機へと撃つ。
銃身が榴弾を放ち、直後に確かな反動、榴弾は見る見るうちに飛んでいき、敵機はそれをへろへろと避けた。
「ヨケンナァァァァァァァァ」
ドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガ
「うぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
ドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガ
はぁはぁ………どうも!存夜です。
今現在アリーナでノーマルACの霧積に乗って、数え切れないほどのミサイルとバトってます!いやぁ、タンクだから敵の攻撃を耐えつつ一撃で決めるものだと思ってたんだけどね!使用火器はガトリングとバズーカ、あと背中にミサイルだし目の前はミサイルでいっぱいだしバズーカは避けられるし!もうなんかあれだねーフザケンナ!!
ドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガ
「うおおおおおおおおおおおおお」
敵機…………現行ISの中で最も拡張領域を持つラファールのバリエーションの1つで、腕部を常盤のアマツバメと同じく固定式のフライトユニットに変え、更に射出後独自に敵を追尾するASミサイルを備えたミサイルコンテナを装備する『武器腕』を扱う特殊な支援機。
腕がフライトユニットになっている仕様上ライフルなどの射撃兵装を使えず、飛行とミサイル兵装の同時併用という特異な戦い方を強要されるこのISは。
事実上の欠陥兵器として唯の支援機という位置付けにあった。
ドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガ
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガ
「邪魔くせえええええええええええええ」
IS適正D-、射撃精度F-、近接格闘F-、飛行適正C。
お世辞にも、というか素人目にもISを操縦する上で基本的な、または基礎的な操縦技能が欠陥していると言っても過言では無い評価適正。
これならばまだどっかの会社のOLやってる三十代〜四十代の方がまだマシだし五十過ぎのババアともいい勝負をするかも知れない。
そんな欠陥兵器と欠陥操縦者が、1人の天才に拾われた。
欠陥操縦者、一年四組所属、エイ=プールは運動も出来ないし教養もあまりなかった。
しかし、拡張領域の中身を外に出すことには長けていた。
彼女はそういう思考回路が常人の何倍も早くて速くて疾かった。
気付けばいつも夢の中、憧れの白馬に乗った王子様が自分を迎えに来たかと思えば横合いから魔王に殴られてそのまま魔王城へお持ち帰りされ、そのあとは腐ってなければ生きられない連中も大興奮ないわゆるBL展開に持ち込まれる…………その他にもコジマだらけのプール、AMIDA放題のテーマパーク、駐車場で待ち伏せ、騙して悪いが、etc………そんなストーリーを幾つも頭の中で同時行進していた。
つまり、妄想癖がそれはもう……すんごい!
妄想度合いも凄い、てか重症。
しかしそんなことは関係ない!!
ISの操縦技能にも複数ある武器を高速で切り替えて使用する
確かに便利なその技能は、現各国代表の操縦者ならば殆どが習得済みであり、過程に目を瞑ればISを扱う上で誰もが習得する、出来る技能である。
しかし、拡張領域に詰め込んだミサイル弾頭を刹那の内に射出ポッドへ装填し、ゼロコンマ秒で即射出するなどと言った芸当は、現在のところエイ=プールのみにしか真似出来ない。
正式名称を
苛烈な支援攻撃を行う彼女と愛機『ヴェーロノーク』は、タイマン以外の試合では最初に倒せるか倒せないかで勝敗が決する程にまで認識されることとなった。
それが、倒せない。
たった一機の、それも無限軌道という最低機動力のせいで良い的であるはずの戦車もどきが、倒せない。
否、削り切れない。
有澤重工の変態畜生共が丹精込めて開発した分厚い装甲、圧倒的な機体重量の前に、エイ=プールとヴェーロノークの火力は攻めあぐねていた。
「はぁはぁ………まだ、耐えるんですね」
エイ=プールは確かに消耗していた。
元々IS操縦技能が著しく欠損している上に今まで経験したことのない長時間の
最初の頃は存夜のグレネード弾をフラつきながら避けていたものの、今ではフラフラ、フラフラと避けるのが精一杯である。
元々体力が無い彼女は長期戦が大の苦手であり、何時もは始まって5分ほどでミサイルカーニバルラッシュで瞬殺する為に、精神的にも体力的にも限界近い。
「ぜぇぜぇ。まだ………飛んで来る……ぜぇぜぇ」
しかしそれは存夜も同じだった。
右手のガトリングで飛んで来るミサイルを迎撃するものの、ミサイルは撃っても撃ってもその後ろから飛んで来る。
正に永遠ループ、地獄のミサイルカーニバル。
きっと今日の夢はミサイルカーニバルだろうしこれから三日間は目を瞑ってもミサイルカーニバルが脳裏に焼き付いていることだろう。
それ程に存夜も体力と精神を消耗していた。
「はぁはぁ」
「ぜぇぜぇ」
互いに極限状態に陥っていた。
そうなると、最後は男女の違いや地力がモノを言うし、ただロックオンしたターゲットを撃墜するだけの単純作業を小中時代からひたすらに繰り返していた存夜は、既に自我を切り離して無我の境地に達していたので戦況はエイ=プールが不利な状況だった。
「ぁぁぁぁぁぁー」
ドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガ
ただ、ミサイルを撃ち落として余裕が出来たらグレネードライフルを撃つ、避けられる。
それだけ、それだけの積み重ねでようやく1時間が経過。
「ヴェーロノーク……戦闘、もう無理です………無理」
ヘロヘロ〜とヴェーロノークがアリーナの地面に不時着し、エイ=プールがリタイアしたことで霧積のデータ試験は終わりを告げた。
ISを解除したエイさんは心身ともに憔悴しきっていて、動く気配が無い、まるで屍のようだ。
こうなってはもう動けない状態だったから霧積のタンク部分に座らせて無限軌道をきゅらきゅら動かして帰った。
正直に言おう、俺も疲れた。
歩きたく無いし失礼だがエイさんを担ぐorお姫様抱っことか多分いや絶対に死ぬ。
なので何の誤解もなく、無駄な消耗もないように霧積に乗せて帰るのだ。
はいそこヘタレとか言わなーい。
「クスクス。お疲れ、アリーヤ。随分と疲れただろう?」
常盤先輩だ。
手にはスポーツドリンクとチョコレート。
霧積のフレームをパージしてそれらを受け取り、口の中へ頬張る。
「…………あぁ、はい。そう……すね」
エイさんの方は最早ゾンビのようだ。
フラフラと彷徨う姿は正に魂ここにあらずといったところか。
「エイ=プールも疲れているようですね。お疲れ様でした」
「私、クタクタで、………あ、貧血……」
クラッと倒れ込むエイさんを咄嗟に抱きかかえ、ガクガクブルブルと震える足腰に鞭を入れて必死に休憩室へ直行する。
「エイさん……エイさん?」
俺の背中ですうすうと寝息を立てる彼女に「俺も眠てえんだよ!」と血の涙を流しつつ、先輩に連れられて部室の方へと。
「さて、一応データは取った訳ですが。ACの感想も聞きましょう」
「地獄でした。あんたらは鬼です」
「はい、そうですね。他には?」
「…………」
悪魔や、この人ほんと悪魔。
「タンクで対IS戦闘はほんと無理っすね。武器もいまいち火力が足りないとか、弾速が遅いだとかで手応えは皆無だし。でも実弾に対しての防御性能は使ってて安心感とか余裕は出ますね」
エイさんの技能やヴェーロノークとの相性もあるだろうけど、ガトリングはほぼミサイルの迎撃に使われ、グレネードライフルはフラフラとしながらも回避された。
空を自由に飛べるISに、タンク型はやっぱり不利かぁ。
「ふむふむ」
「ミサイル何十発も同時に喰らったのに衝撃とかほんと無いんで。これはタンクの取り柄って、訳ですけど、かなりの強みだと思うなぁ」
「まあ、防弾に定評のある有澤ですから」
おう、マジか。
凄え会社ですね有澤重工…………。
ただ、オペレーターの目がどこか呆れてるように感じるのは気のせいか……!?
「機体速度と使用兵装に気を使えば日本の自衛隊に好まれる機体ですね」
カタカタカタと軽快に文字を打つオペレーターは、多分だが試験でのデータ入力をして情報として売りつけるのかもしれない。
「UNACの育成状況はどうだい?シズちゃん」
「順調よ。まだUNAC1に付きっ切りで2〜6まで見切れてないけど、個性は全員良いわね」
なんの話だよ大明神。
あんただけたまごっちでもやってんのか?
「彼女が行なっているのは戦闘のパターン化。つまりAIの設定です。例えばUNAC1は典型的なアタッカータイプでUNAC2はU1を援護しながら敵を墜とすスナイパータイプ、U3とU4はミサイルやガトリングで弾幕を張る支援タイプ、U5は火力型、最後にU6は弾薬などを供給する補給型になります」
「お、おう?」
つまり6機で1つの部隊ってことかね。
「UNACとはACにも戦ってもらいますので」
「…………え?」
「頑張って下さいね」
6対1、しかもタンク型ノーマルAC縛り。
まだ肝心のAIに難があるとは言っているが、かなり理不尽なゲームマッチが予定されてしまった。
今回からタンクも使っていきます。
まあ、滅多打ちにされますけども盾持ってターレットガン任せにすればかなり強いんじゃないでしょうか。
それかスナキャ構えるか。
個人的には一夏対鈴戦で乱入するゴーレムをACVのOPで出てくるタンクみたいにでぶち壊すとかやってみたいよね。