ヘタレな男とポンコツオペ子   作:人類種の天敵

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阿弥陀とは如月の象徴である(´Д` )

ガチタンとは神である(´Д` )

逆流とはそれ即ち穴である(´Д` )




阿弥陀鴉

 

ズドン、ドシン、ドガガガン。

ポリゴンで作られたバーチャル空間に存在する超高層マンションやビルが、地鳴りや衝撃と共に倒壊し、埋没し、破壊されていく。

そして荒れ果てた大地を逃げ惑う鴉が一匹。

その背を追う、緑色の王蟲(?)が三匹。

鴉は、たかだか虫如きに、狩られていた。

 

『ビーーービーーービーー!』

 

『AP60%減少』

 

『液状攻撃接近、接近、接近』

 

『左からビルが倒壊します、退避してください』

 

『キケン、キケン、キケン、キケン、キケーーー』

 

「ウワァァァァァァァァァァァァ!!?」

 

如月社が極秘に開発し、試作として電脳世界で飼われている電脳生体生物「AMIDA」に追われているノーマルAC、ナイトフォーゲルは絶叫を叫びながらビルの間をちょこまかと逃げ回っていた。

 

「デカすぎるゥゥゥぅぅぅぅゥゥゥぅぅぅぅ!!!ファァァーーーック!!うぉぁ!?」

 

右手に握ったライフルを背後へ撃つと、AMIDAは怒りを露わにしてナイトフォーゲルを追う速度を急激に上げる。

そして気になるAMIDAチャン、その大きさは実に8メートル3センチ!!

全高2メートル6センチのノーマルACの約4倍!!!!!!!

しかもAMIDAは口々に酸のような触れるもの全てを溶かす液状攻撃を連発し、紫色の脚の先は鋭利な射突型ブレードのように地面を突き刺していく。

その破壊力は、一撃でもマトモに入ればノーマルACの装甲を容易く貫くだろう。

 

「うぉぉおあかああな!!?」

 

しかしそれでもナイトフォーゲルか未だにAMIDAの餌食になっていないのは地上での移動を、超高速起動へと変貌させる可変型フロート脚部と、左手の火炎放射器による絶え間ない炎上波攻撃に他ならない。

 

「うぎゃぁぁぁぁぁ!!?あの脚で潰されるのも嫌だ!?酸で溶かされるのも嫌だァ!?かと言ってアレに捕食されるのもイヤァァァァァァァァァ!!!」

 

アレ、ことAMIDAチャン、実は如月社員が全高8メートル程に設定して、バーチャル空間で見上げながらAMIDAの全身を惚れ惚れと愛でていたところを社長に呼ばれて渋々シャットダウン………結局元のサイズに初期化することもなく常盤の元へ送られたために約8メートルという巨大な図体でナイトフォーゲルを追いかけまわしているのである。

そんな事を露ほどにも知らないノーマルACのパイロット………至鋼存夜は泣き喚きながらフロート脚部による逃走劇を繰り広げていた。

 

『アリーヤ、逃げてても勝てないよ、攻撃こそが最大の防御さ』

 

「ライフル弾を跳ね返すアレの甲皮に攻撃なんて意味がねぇぇアィイエエエエエ!!!」

 

無論存夜もただ黙って逃げていたわけではなく、途中途中、気を逸らす為にライフルを撃ちまくっていたのだが、AMIDAの甲皮はそれを跳ね返すほどに硬く……しかも下手に攻撃すればAMIDAの怒りを買ってしまい、更に熾烈な逃亡劇が始まるという悪夢もかという恐ろしい地獄ループがテスト開始から9分は経っている。

 

「あだぁぁぁ!!?アヒィィ!?こ、転けたぁぁぁぁイヤァァァァァァァァァ!!滑るぅぅぅぅドリブルはらめええええええええ」

 

ちょうどイイ高さに作られていた看板に頭をぶつけ、フロート脚部の角度が少し変わった為に出力の比率が変動し、ナイトフォーゲルが霞むほどの強烈なスピン、からの稲妻のような凶悪なジグザグドリフト。

目が回った存夜は知らず知らずのうちに背部兵装を起動していた。

 

『右背部兵装、展開完了』

 

『左背部兵装、展開完了』

 

左背部兵装のレールカノンが砲弾を超高速で射出してAMIDAチャンの複数あるチャーミングな瞳を一個潰し、右背部兵装の有澤製グレネードカノンが爆轟と共にAMIDAチャンの脚を粉微塵に吹き飛ばす。

AMIDAチャンAは口から泡のように酸を撒き散らして側に建てられたビルへと衝突して沈黙した。

 

『ナイスキルですAC』

 

『あ、ビルに衝突した』

 

そして、かく言う俺も凶悪なジグザグドリフトを制御出来ずにビルに衝突していた。

『AP90%減少』………くらくらする頭を被りを振って舌打ちをするが、ヘッドパーツに流れるアラームによってそれは掻き消される。

ふと頭を上げたところには緑色の凶悪な虫が。

鋭い脚を振り上げて……容赦なく振り下ろした。

 

 

 

 

「………………なんすか………アレ」

 

テストモードが終了すると、俺は真っ先に常盤先輩に問い詰めた。

 

……如月社が電脳世界で秘密裏に飼っている生体生物。

それが先輩の言い分だったが、テストの相手としてアレはマジで無いと思う。

威力を確かめようにも弾丸を弾く緑色の甲皮。

絶え間なく吐き出される酸。

コンクリに容易く穴を開けるほどに威力の高く鋭い脚。

しかも、それが一匹ないざ知らず、三匹が屯して襲いかかってくる悪夢。

 

「クスクス。どうやら如月が初期設定に戻してなかったようだね」

 

「………はぁ、初期設定はどんな相手なんすか」

 

「打鉄とラファールが1機ずつ」

 

「全然違えエエエエエエエ!!?」

 

もはやISですらねえ!!?

 

「はあ、もういいっす……とりあえずライフルは扱いやすかったっすね。後ろ手で撃ったけど外れなかったし…なにより照準装置とか、色々な機能がありがたいっすね」

 

アレの図体が大きすぎたのもあるけど、銃身先端に付けられた可変ズーム仕様のホロサイトスコープはブレることが全然無い。

あとは右側面に取り付けられた棒?は何かはわからなかったけど、この武器はただ持っていても何も起きないけど、武器を構えるか、トリガーに触れた瞬間にHUD上に敵の距離やタゲ取りが即座にロックされる。

 

「そういやあの棒みたいな外付けはなんなんすか?」

 

「ああ、アレは外付け仕様のセンサーポインターらしいね。あのセンサーを介してHUDやホロサイトに強風から微風程度の風の速度や、方向、ターゲットとの距離が表示されるみたいだね」

 

「へえ……」

 

あの武器……051ANNRか、お気に入りにしよう…ヴィジュアルもイケメンだしな!

 

「あ、そうだ。火炎放射器は?」

 

「………正味言ってアレ要ります?」

 

「まあ……人それぞれ?」

 

常盤先輩が顎を手の甲に乗せながら首をコテンと倒した。

ふと思いついてオペレーターを見ると、彼女はすぐ側で俺の感想を端末に記入している。

 

「オペレーターはどうだった?あのライフルと火炎放射器」

 

「そうですね、ライフルの精度は高いですし、火炎放射器にも…それに合った用途がありますよ」

 

「……高熱の火炎放射を当て続けて絶対防御を発動させる事でSEをガンガン減らす……的な?」

 

この火炎放射器、弾速は遅く射程距離も短い物だが、緑色の虫が近付けられると嫌がるくらいには熱いらしい。

それならISが火炎から操縦者を守る為に自動的にシールドバリアや絶対防御を発動する。

それを続ければISを戦闘不能にさせることは容易いだろう。

まあ、あくまで機体を拘束した状態じゃなけりゃ無理な話だけど。

 

「なるほどね、流石はボクのアリーヤだ」

 

「ふむふむ、これは高得点高ボーナスのチャンスですね」

 

「何のチャンスだよ……」

 

もしかしてお前の貰う感想料?がプラスボーナスとか言うなよ!絶対に言うなよ!?

 

「あ、そういや齋藤さんと佐藤さんに、鷹月大明神は?」

 

シュミレーションを終えてからあの3人を見ていない。

まあ、ここにいても俺の不甲斐ない戦闘というか逃走シーンを眺めるだけだし、帰った?

鷹月大明神はUNACの現物を見てるだけとは思うが……。

 

「マキちゃんと美穂ちゃんはお手洗いよ、AC」

 

鷹月大明神はそう言って片手で持ったトレイのに乗せたマグカップを慎重に机の上に置いていく。

 

「えぇ?コーヒー?」

 

「うん、道具もあったし、ちゃんと許可は取ったわよ」

 

「ん〜……良い香りだね」

 

先輩が目を瞑ってコーヒーの香りを楽しんでいる……何をしても絵になるな、あの人は。

鷹月大明神も澄ました顔でブラックコーヒーを飲んでいた。

 

「オペレーター、砂糖プリーズ」

 

「佐藤ですか?」

 

「いやいや違うからね、甘い方の砂糖ね?」

 

俺の舌はブラックコーヒーが飲めない甘党なのでオペレーターに砂糖を要求するも、彼女は砂糖と佐藤さんを間違えるという誰得な天然ボケをかましてきやがった。

 

「ほい、佐藤」

 

「うい」

 

オペレーターとは別の声がかかり、俺の膝の上にちょこんと佐藤さんが乗っかった。

佐藤さんは訳が分からないとオロオロと左右に顔を振って涙目だ。

とても愛らしいので怖がらせないようにと頭をポンポンと撫でてやればあら不思議、あんなに無糖で飲めなかったはずのブラックコーヒーが見る見るうちに甘い甘い甘甘コーヒーへと……

 

「………って、佐藤じゃなくて砂糖!!」

 

「ふへぇ!?ご、ごめんなさいぃ!?」

 

「えぁ?ああいや、佐藤さんが悪いわけじゃ無いんだけども………」

 

怯える佐藤さんをなんとか宥めて甘甘コーヒーを呷る、うむ、甘美なり。

 

「あ、そーだ。ほい、存夜っち」

 

「……………何これ」

 

更に角砂糖を2、3個入れてると齋藤さんから手紙らしき封筒を受け取る。

それを軽く振ると、微かにカサカサと中の物体がある音が聞こえる。

 

「さっき美穂とトイレ行ってたらそれ渡されちってさー存夜っち宛だってさ」

 

ぐてーっと机に突っ伏す齋藤さんを横目に封筒に書かれた文章を読む。

 

『 1−1組 至鋼存夜君へ 』

 

女子生徒らしい丸みを帯びた可愛い字で書かれている。

これは、まさか……『我が世の春がキタァァァァァァァァァァァ』と内心震えまくっているがそれをおくびにも出さずに封筒の中身を探る。

 

「ら、ラブ……レター…で、です?」

 

俺の膝の上に座ってるからといって大胆に手紙を盗み見する佐藤さん。

俺はこほんと咳払いをして手紙の内容をさっと黙読した。

 

『 1−1組の存夜君へ 』

 

『 初めまして、今日は。私は存夜君と同じ1年生の3組所属の生徒です。存夜君とは直接的に知り合ったわけでは無いけれど、存夜君を先日の1−1組クラス代表決定戦で見て、凄く憧れを覚えたし、なにより存夜君の事がすっごく気になりました。』

 

『 それで、私はもっともっと存夜君のことを知りたいなっ……て思ったから、この手紙を出しました。』

 

『 存夜君が迷惑じゃなかったら、今日の午後7時に寮近くの憩いの場に来てください。』

 

『 ………待ってます。』

 

「「「「「「………」」」」」」

 

「どんな内容でした?AC」

 

佐藤さんに見えないように片手で彼女の目を塞いで黙読。

丁寧に封筒の中に入れてからコーヒーを飲むと、オペレーターがギラリ、と瞳を光らせて封筒に目を向けた。

 

「いんや、別にあれな?クラス代表決定戦凄かったです…的な」

 

「………そうですか。では、試しに相手の名前を聞いても?」

 

「もちろん…ええと、1−3組の“森”さんっていう生徒だぜ」

 

いや、それにしても今日の7時に寮近くの憩いの場か…大胆すぎるぜ、森さん!

 

「1−3組の森………確かに、あまり特徴の無い……存在感の薄そうな生徒ですね」

 

「はは、んじゃ、先輩。今日はこんなもんですか?」

 

「ん?あ、うん。他にテスト依頼の武器は無いし、今日はこれでお開きにしようか」

 

先輩の閉会宣言を持って本日の部活動(?)は終了、それぞれが席を立つ。

俺も甘甘コーヒーを一気に呷って服装の乱れを正してから部室を出る。

オペレーターは常盤先輩と話があるようなので先に帰っていると伝えてルンルンルンとスキップしながら寮に帰った。

 

待ち遠しいぜ、午後7時。

待ってろよ!森さぁん!




我が世の春がキタァァァァァァァァァァァヒャダフォホァオオオオオオオ♪───O(≧∇≦)O────♪










………………“随分と調子良さそうだねぇ”………


本文見ててなんとなく「あ(察し)」ってなった奴駐車場な。

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