とりあえず現武器最強はKARASAWA。まあ、当然の結果だな
「なんですかあの高出力のレーザーライフルは!?危うくオルコットさんの肌に傷が付くところでしたよ!?」
いや、その前に俺の体は傷やら火傷やら痣だらけなんですけどねー……あれか……ガキが作った粘土細工ならいくらひび割れても良いけど国宝級の壺に傷を付けたら最悪死罪ですよねって、話か……マジかよ。
「常盤さんに聞いても知らぬ存ぜぬですし……うぅ、存夜くんが常盤さんにとって良い影響を与えてくれると良いんですが……」
………状況を少し説明しよう。
俺は今、オルコットとのリベンジ戦で、接戦の末に最後にビットのフルバーストをしてきたオルコットへEMPレーザーライフル“KARASAWA”のフルチャージを喰らわせてやったのだ。
SEギリギリのオルコットの機体は当然絶対防御を発動。
オルコットは衝撃とEMPによる電磁障害によって頭の中のハイパーセンサーをメチャクチャにされて脳の情報処理能力が機能せず、ハイパーセンサー酔い?IS酔い?まあ、分かりやすく言えば、多分車酔いの状態になったので保健室に速攻で連れて行かれた。
……それで俺の方はハンガーに帰ったら山田先生に怒られているわけだ。
「はあ、オルコットさんは今保健室で休んでいるので、後でお見舞いと謝罪に行きましょうね」
真剣な表情の山田先生から説教を受け、俺はつくづくこう思う。
………ノーマルACを手に入れても、俺の価値はやっぱり変わってないのだと。
「でもまあ、別に……気にはならなくなったな」
「? 何か言いましたか?」
「いや、なんでもないです」
「そうですか。それじゃあ存夜くんは今日の模擬戦で2勝してますのでクラス委員長を指名する権利を持ってますけど、どうしますか?」
「そうですね、それじゃあ………」
「クラス代表おめでとー!!」
「……………俺、存夜とセシリアに一勝もしてないんだが…これ、一体どういうことなんだ?」
織斑一夏は、自身を歓迎している1−1組の面々を前に、首を傾げながら疑問を口にした。
「こんちわー!織斑一夏くんにクラス代表になった意気込みとかその他もろもろ取材したいんだけどー!!!!」
「織斑くん、次のクラス対抗戦頑張ってね!私たちは当然応援するから!」
「織斑くんなら絶対勝てるよ!」
飲めや騒げや、一夏のクラス代表記念パーティーは一夏本人を置いてけぼりにして好き勝手に進んでいく。
「なんで俺なんだ?」
「さあ?分かんないよ」
「なんでも、至鋼くんが辞退したんだって」
「へ……」
「織斑一夏くーん?ちょっと取材してもいいかなー?とりあえずクラス代表になった意気込みね、それと好きな女性のタイプでしょ?他にも生徒たちからのリクエストが山ほどあるから頑張ってね!」
じょ、冗談じゃない……織斑一夏は自分と同じ男性操縦者、つまり至鋼存夜の姿を探してキョロキョロと周りを見回したが、彼の姿はどこにも見えず、新聞部や他女生徒からの魔の手に逃げられずにいた。
一方、雨燕常盤が占拠している部室……仮称常盤研究所では、ノーマルACを使用しての2連勝をお祝いするためのささやかなパーティーが行われていたが、その途中で突然訪れた名も無き女教員による「ノーマルACの引き渡し」を巡って女教員とノーマルACの生みの親である雨燕常盤が口撃しあっていた。
「2−1組、雨燕常盤、貴女が開発したこのパワードスーツをIS学園で性能調査を行うので本機体及び設計図を渡しなさい」
「断る。キミたちにボクの玩具を解析できるほどの頭脳は無いし、まず、ボクは自分のオモチャに触らせる気も、玩具を弄らせる気も毛頭無い」
「なっーー!?」
常盤の即答……しかも自分たちの指示に従う気がないというその答えに、女教員は唖然として目を剥いた。
「そもそも、キミたちの目的は性能調査なんかじゃないだろう?まあ、女権団出身の女尊男卑思考の女が、ボクの玩具の性能に怯えてノーマルACを封印して一生お蔵入りにする気か……もしくはノーマルACが今や喉から手が飛び出るほどに欲しているアメリカの犬か」
クスクス……ノーマルACの提出を言い渡された女生徒、雨燕常盤は目の前に立つ教員を冷ややかに見つめて薄く笑った。
「うっへ……先輩のあのゴミ虫を見るような冷たい視線……怖えな…」
「初の戦闘でISに勝ったノーマルACの性能を知りたがる気持ちは分かるだけどなー、ほら、先輩ってどんな理由があっても他人に自分のは触らせたくない人だから」
「常盤さんに対しての物言いも悪いです。あの人、何様のつもりです……」
「でもまあ……国連のEOSを完成させるにはノーマルACが鍵になるわけだし、引き渡しを迫るのも当然なんじゃない?」
「どこも欲しがっているのはデータや機体じゃないですよ」
オペレーターの言葉に微かな違和感を感じて目で続きを促しつつ、身を乗り出すと、オペレーターは端末を弄りながら小声で続きを喋る。
「どこの国や組織も、本当に欲しいのは雨燕常盤が生み出した機体を独占すること…分かりやすく言えば彼女の技術です。そして、そこから第二の篠ノ之束と称される彼女を自国の所属下に置く事が最大の狙いです」
「……………はっ、すっげぇ人気だな、常盤先輩」
「あり?その常盤先輩からお気に入りを公言されてる存夜っちってやばくね?」
…………………………あ゛。
「だ、大丈夫です?手が震えてコップの中身が零れてるですよ?」
「美穂ちゃん、これは大丈夫じゃないっていうACの心の声よ」
「心配しなくても雨燕財閥かバックについているならどこもそう易々と手は出せませんよ」
表の顔はですが………オペレーターは端末を弄っていた手を止めてホログラムのスクリーンを映し出した。
なにか気持ち悪いISに女が載っている映像だ。
これはなんだ?と言う前にオペレーターの解説が始まる。
「アメリカの奪われたIS、アラクネです。イギリスでも淑女(笑)の兄弟機が奪われましたね。奪った組織は亡国機業と呼ばれています」
「そこが、ここ、こここん、こん………今度は俺とノーマルACを狙ってぬって?」
「あ、噛んだ」
「可能性は非常に、何故なら貴方が使っている機体はISと違って老若男女、性も歳も分け隔てなく扱える制限のない技術ですから」
やべ、今すぐナイトフォーゲルを先輩に返して平穏な日常に戻りたいお。
「一例として亡国機業を出しましたが、アメリカも自国の特殊部隊、アンネイムドを必要があれば即どんぱちさせる気ですし。ノーマルACに搭乗しているのは男性操縦者の片割れですから……一石二鳥を狙う組織なんて世界中にいますよ……いえ、上手くやれば雨燕常盤も手中に収められるので一石三鳥ですか」
「……………(゚Д゚)」
「あ、口からジュースが出てる」
「自分の立場を理解して思考が停止したのね……」
「なんの話をしてるんだい?」
実は俺の方が織斑より危険な状況だったことに頭を抱えているとニコニコと珍しく笑う常盤先輩がテーブルに帰ってきた。
どうやら女教員との口撃戦に勝利したようだ。
「クスクス。ボクのアリーヤを危険な目に合わせるわけないだろう?そのためにUNACも色々な型式を開発してるわけだし、なんなら、全てKARASAWAで焼き尽くせば良いさ」
「いや、KARASAWAって性能とかEMPとか、ISの天敵ですよねー」
フルチャージでブルーティアーズのSEほとんど削れたし、頭に喰らわせればEMPでハイパーセンサーがブラックアウトとか初心者救済過ぎる。
「バカな奴らが力を得れば過信だけを覚え、反対に奪われた者は現状に足掻く為に力を、探り、求める、終に答えを得る。……ISの天下なんて、所詮もう少し経てば終わるようなものだったのさ」
ことも無げにそう告げた常盤先輩。
他の三人、オペレーターと佐藤さんと齋藤さんは驚くこともなく平然としていた。
多分、彼女たちはISの限界を知っていたのだ……オペレーターは分からないけど、佐藤さんと齋藤さんは、常盤先輩を通じて……。
そして鷹月大明神は数秒思想して、やがて諦めたように肩を竦めた。
「ACの戦いを見ちゃったからね……ISの限界かは分からないけど……多分、ISは元の道に戻るわよ」
元の道……個人で宇宙へ飛び立つためのパワードスーツ、その考え方に世界は頷くだろうか。
「それよりも、UNACの新兵装を追加して欲しいんですが」
鷹月大明神がキラキラと瞳を輝かせて常盤先輩に喋りかけると、常盤先輩は一つ頷いた。
「それだけど、ボクはアリーヤのノーマルACの開発や改修、改造に付きっきりになるから、アリーヤ並みに面白い技師を呼んでるよ」
「技師ですか?」
「うん。女尊男卑の世では類い稀な発想を発揮できなかった技術者たちだよ」
先輩がホログラムディスプレイを展開して技術者達の映像を映し出す。
有澤、如月と一番トップに名前が出ている技術者に感嘆の声を漏らすと同時に、何故先輩がこの技術者達の名前を知っているのだろうかと好奇心が疼く。
「ああ、彼らの事かい?職を失って肩を落としていたから拾ってあげただけさ」
あらやだ常盤先輩って男前……
「彼らにはボクが設立する新しい企業の部下になってもらうから覚えておくと良い」
へー、そうなんですねー……でも俺が覚える意味なくないっすか。
「何言ってるんだい?元々アリーヤはボクのオモチャだから、入社は決定事項だよ。それに美穂とは整備担当で、マキちゃんはテストパイロットで社員契約を結んでるのさ」
「……UNAC1の開発もその会社で?」
「もちろん」
鷹月大明神と常盤先輩ががっしりと握手をした。
いや、鷹月大明神……あんた常識のあるしっかり者の委員長タイプだろ?どんだけUNACにハマってんだよオイ。
「既にアメリカの大企業や空軍からクビになった男達も確保しててね、新しいノーマルACを開発予定だよ……クスクス。楽しくなってきたね」
「いろんなACっすか」
「うん。ボクのノーマルACは頭、コア、腕、脚の四つの基本要素を別のパーツに組み替えて個人に合わせた機体…というのをコンセプトにしてるんだけど、まずはそれぞれのテーマで標準機を作った方が良いからね。アセンブルはその後さ」
上機嫌にノーマルACの話をする常盤先輩は恐らく開発予定だというノーマルACの画像を投影していく。
「アメリカ系の装甲や実弾防御に安定感のある重装甲と実戦的な重火器を得意とするサンシャインにアメリカ空軍のパイロットの要望を元に隠密性能が高く機動力もあるステルス機のラプター。他にもノーマルACのバージョンが構想されているよ」
「へー………それを俺と齋藤さんでテストしろと?」
「クスクス。二人に負担をかけても効率が悪くなる……だからIS学園で素質のある操縦者をスカウトしようと思ってるんだけど……2、3年生はいかんせん粗製ばかりで中々見つからなくてね」
ふぅ、と常盤先輩は至極残念そうに肩を竦めた。
「でもまあ、南アジアでキレた女で有名な一年の操縦者を手元に置いてるし、今年の一年は面白いに事欠かないから今の内に契約を結びたいんだよね」
「キレた女ですか………」
「うん。でも彼女、テストパイロットの一人にやけに突っかかるのが玉に瑕でね、しかもいつもは高圧的でサドスティックな癖に一度立場が逆転しちゃったり優しくされたりするとその性格がすっかり鳴りを潜めるから凄く面白くてねぇ……クスクス」
なるほど、構ってちゃんが凶暴化したバージョンか?
「じゃあ俺の今後の目標はテストパイロット候補を最低一人集めろって事っすか」
そう言うとテーブルの上に身を乗り出した先輩が人差し指の腹を俺の唇に押し付けて耳元で囁いた。
「ナイトフォーゲルのテストも、忘れたらダメだよ?アリーヤ……クスクス」
「………うーっす」
その後、打ち上げも堤がなく終了して解散。
俺とオペレーターは部屋へ帰る廊下を歩いていた。
「……………オペレーター、あの子誰?」
「あれは……」
部屋の目の前に、青い髪と眼鏡をかけた女が、人目も憚らず静かに鎮座していた。
アルゼブラのキレた女vs.オータム……つまり.女郎蜘蛛vs.蜘蛛の勝負がしたかったんだ。
デュノア社からはエクレール。
あとSLからカラミティメイカーとメビウスリング出したい。
あと女権団か束に操られてる感じでビーハイヴも出したいっすね(´Д` )そしてムラクモでズドーン