てかACVDのヴェニデオペ子の声超可愛い。ポンコツだけど許す。
誰の目からも結果が分かりきったような、そんな簡単なものだったはずだ。
女には反応して男にはピクリとも反応しない兵器。
それが俺たちのISという兵器に対する感想で、折角の休日を無駄な時間に潰されたという俺の憤りが燻んでいた。
『どうせこの中からISを使える男なんていないんだからやるだけ無駄だろう』
そう思っていた俺は、女性検査官の「触れ」という命令に渋々目の前に鎮座するISに片手で触れた。
数秒間、シーン。という微妙な空気が流れて検査官の「次の人」という無機質な声を聞いて「はいはいやっぱり無理ワロタ、乙」と言おうと思っていた俺の頭に無数の単語や頭痛、半ば走馬灯のような思い出が、脳みその中をグルグルと高速で巡り巡った。
……………そして俺は、気がついた時には何故か、ISを起動させていた。
「じょ、冗談じゃ………」
何処からともなくそんな声が聞こえた。
………いや、多分それは俺の声だ、今の状況に理解が追いついていない俺の切実な心の声だ。
「な、なんでこんな事に……」
「は、早くIS学園に報告して!!世界2番目の男のIS起動者よ!貴女はここの学園長に報告、貴女はこの適合者を人目のつかない場所に、わかった?まだ適合検査は続いてるから他の学生に気付かないように!」
「ま、待ったぁ!ノーカウント!ノーカウントだ!!頼むからもう一度やり直させてくれ!これはきっと何かの間違いなんだ…」
目の前にいる4人の女性のうち、リーダーと思われる長身の女が、3人の部下に矢継ぎ早に指示を出す。
女の指示を聞いて部下らしき女たちが慌ただしくかけて行った。
「まさか……2人目の適合者が出るなんて……」
リーダー格の長身の女が俺をちらりと横目で見た……紛れもなく憐れみな瞳で。
その目で見つめられた俺はこれから起こるだろう最悪の未来を予想してグビッと生唾を飲み込む……………………喉が緊張でカラカラに乾いていたために生唾を飲み込むことができなかった。
続いて俺の体がISという機械から除かれ、両腕を検査官の1人に拘束された。恐らく俺が現状に混乱して逃げ出すのを防ぐ為だろう。
そうして隔離された部屋の中で長身の検査官が気の毒そうな顔で部屋の中へ入ってきた
「……貴方のことはIS学園に報告したわ。もうすぐで担当者が来るから………気持ちの整理をつける事ね」
「糞が……最悪だ……ついてねぇ……ついてねぇよ……」
長身の検査官の言葉に諦めの思考に至った俺はがっくりと項垂れて悪態を吐いた。
隔離された壁の向こうではまた別の学生が意気揚々とISに触れては「適正無し」と検査官の無機質な声が聞こえたーーーーー
IS学園入学式
「貴様が2人目の男性操縦者か……」
IS学園という校門の前、沈痛な表情でIS学園に到着した俺の前に立つ、凛とした表情のある種伝説の女。織斑千冬がこう告げた。
「ISへようこそ、歓迎しよう。盛大に…な。教室に案内する、着いてこい」
盛大にとはいうもの、織斑千冬の顔は不機嫌そのものであり、脅しのような低い声で歓迎されたこちらとしてはいい迷惑だ。
うんざりとした表情のまま、織斑千冬の後を追ってIS学園校舎内を歩いていく。
「………そうだ、貴様に言っておく事がある。まず一つ、私の事は織斑先生と呼べ、次に」
廊下を歩いている最中に織斑先生が注意事項を勧告し始め、後ろを振り返って俺を睨みつけるような鋭い目つきでこう言った。
「良いか、私は面倒が嫌いだ。分かったら面倒ごとを極力起こさんようにな…良いな?」
『ーーー以上です!』
ガッシャーーーン!!!
「……………」
「…………えっと、あんな感じの問題を……?」
織斑先生が神妙な顔で念を押した直後、教室から男の大きな声と、何かがひっくり返ったような喧しい音が廊下に響いた。
それを聞いた織斑先生は片手で頭を軽く押さえてチッ、と舌打ちした後、教室の扉を開けて中へ入って騒ぎの原因と思われる男の人頭を、出席簿で思いきり叩いた。
スパーン!!
「げええええ!!?か、関羽!?」
「誰が三国志の英雄か、バカ者」
教室で見えたのは男の俺の目から見ても女にもてそうな爽やかイケメン。ナニカサレテしまえばいいのに。
「なんで千冬姉がここに…?って、お、男!?」
頭をさすっていた男ーーー世界初の男性IS起動者の織斑一夏………が、俺の顔を見て非常に驚いた感じでオーバーリアクションを取り、周りの女生徒が釣られるようにこちらへ視線を向ける。
「………おい、自己紹介をしろ」
「………」
はぁ、視線が痛い……とりあえず織斑一夏のような自己紹介をすれば織斑先生からクリティカル出席簿を喰らうから当たり障りのない自己紹介をせねば……
「ん……と。し、至鋼 在夜だ。今日から一緒にISについて学ばせてもらう……よろしく」
……まあまあな自己紹介を終えることが出来たんではないでしょーか?何処からかコソコソと「地味ね、貴方」「可能性を感じたが……錯覚だったか」「諦めな、お前じゃこの先生きのこれないぜ」とか聞こえる。普通に精神的ダメージが………もう死にたい。いっそ殺せ。
「……まあいいだろう、そして私が今日から貴様達の担任になる織斑千冬だ」
「「「キャーーーーーーー!!!」」」
「「ッッッ!!!?」」
俺の自己紹介とは一転して教室中に女の嬌声が何重にも重なって響く響く響く!!
咄嗟のことで反応できなかった俺の鼓膜がぶち破られてしまった。
「じょ、冗談じゃ……」
その後織斑先生の一喝によってミーハー女共の歓声は一瞬で消えたが、俺と織斑一夏は顔を顰めたまま特大のため息を吐いた。
「……俺、これから生きていけるのか」
……と。
「な、なあ!在夜!」
公開処刑に等しい自己紹介を終えた後、俺は座れと指示された席で机に突っ伏していた。
もう数分は……もっと言えば今日1日はずっとこの体勢で居たい……と、考えていた俺の耳に織斑一夏が声をかけてきた。しかももう下の名前で呼んでくるというコミュ力である。
「俺は織斑一夏!男同士、これからよろしくな!」
ニカッと歯を見せて笑う織斑。
イケメン界の頂点に立つと言っても過言ではないこのイケメン野郎はあろうことか俺の肩に手を置いて明るく言った。
「織斑くん、初対面なのにあんなにグイグイ♂」
「無理♂矢理!新しい!惹かれるわ!!」
「一×在ね!アリじゃないの!」
「こ、この後織斑くんが在夜くんの服をブチっと破って…グ腐腐腐腐腐腐腐腐腐」
クソ織斑。ふざけんなよ!?速攻で変態共の餌食じゃねえか!?て、あんなものを想像して喜ぶか!!変態共がッ!!
「ん?どうしたんだ?在夜」
死に腐れ変態共の格好の獲物にされていることに気付かない織斑に無性にイライラしてくる。クソ、なんでこんな奴と2人なんだ……もっと男がいて良いだろう!?く、くっそぉ。なんか織斑がめっちゃくちゃイラつく……
「あ、分かった!周りが女の子ばっかで在夜も緊張してるんだな!」
ブチッッッッ!!!!あ、キレた。キレちゃったァァァハハハッ!?
「ハハハッ!ねえねえ、随分と調子良さそうだねぇ…………織斑?」
ボルテージが限界を突破した俺は織斑に口は笑ってるけど目は笑ってない表情で非常ににこやかに話しかける
「………あ、在夜?」
「調子良いとこ悪いけどさ、俺たちの他は女しかいなくてISの理解度も大幅に差があるって分かるかな?ねえ?ねえ?ねえ?ねえねえねえねえねえねえ?」
「ぅ………お、おぅ……」
「うんうん、それで俺はこれからISの勉強をするから君の後ろの話しかけたくてウズウズしてる女を連れてとっとと、消えろッ!イレギュラー!!」
「お、おうふ………あ、あっ!!ほ、箒!箒じゃねえか!よ、良かった!お前と色々話したかったんだ!」
「い、一夏……!」
般若のような形相で織斑にブチ切れたら後ろにいたポニーテールの女(多分知り合い)を連れて教室をそそくさと出て行った。
「………聞いた?今の………」
「え、ええ………バッチリと………」
「まさか………まさか」
「在夜くんがあんな激しい気性の持ち主だったなんて!!一×在なんて幻想だったのよ!やっぱり在×一ね!これしか無いわ!!」
「……………じょ、冗談じゃ」
織斑を追い払ったと思えば次はこいつらが…本当耐えられそうに無いぞこれからの学校生活。これは早急に癒しを手に入れられなければ死んでしまう……。
そんな癒しになってくれるのは俺の要求通りに政府が付けてくれると言っていた「オペレーター」ぐらいだが………果たして………
『あいむしんかーとぅーとぅーとぅーとぅとぅー』
これからの学校生活の計画を立てながらISの参考書を読んでいるとスマホにメールが届いたようで、スマホが僅かに震えた。
「お、政府から…なになに?『要求のオペレーターの件はこちらで手配した。同じクラスにいるので気兼ねなく話しかけてもらいたい』……と」
ふんふん、んん!?『尚、オペレーターの彼女はオペレーター志望の一年生のため、これから共に実力を付けてくれる事を期待する』…………はあ!?素人かよ!?じょ、冗談じゃ………。
「あの」
素人同士をくっつけてあげようという政府の心優しい配慮にまたもやブチ切れ寸前の俺の前に、戸惑いがちな少女の声が聞こえた。
「……はい?」
「ええと、貴方のオペレーターを務めることになりました。カルマ・ヴェニデです。よろしくお願いします」
肩の上までの黒髪のショートヘアに紅色のヘアピンを付け、如何にも緊張してるような面持ちのカルマと言う少女。
……………この少女こそが、これからの人生の中で、最も出会いたくなかったポンコツオペレーターである事を………俺は知りたくなかった。
至鋼 在夜(しこう ありや)名前の由来は03-AALIYAH(ぜろさん-アリーヤ)アリーヤ→スワヒリ語で至高の存在=至高・アリーヤ です。
カルマ・ヴェニデ 知る人ぞ知るACVD超実力主義組織ヴェニデで致命的な失敗を犯したお茶目なポンコツオペ子。でも声が可愛いから許す。名前の由来は紅をフランス語でカルマかなんかだったから……。
「情報より少ない、楽勝です」→騙して悪いがー………