その炎は五体に火をつけ、燃え立たせた
貴様ら今すぐこの炎を消せ
さもなくば、貴様らの血でこの炎を消そう
武器を取れ、武器を取れ、今すぐに
共に戦い、共に死のう
Briah―――
「あの!少佐の創造って、何なんですか!!」
「は?」
第二次世界大戦が終結してから50年程の時が経った
東方の島国である日本は敗戦国でありながらも、焼け野原を建て直し、再び人々が平和を謳歌出来る時代を築いていた
そして、そんな日本に黒円卓は集まり始めていたのだが……
ぶっちゃけ、軍神と呼ばれていた男の前に黒円卓第五位の『ベアトリス・キルヒアイゼン・ヴァルキリア』が学生服を着ていると、この諏訪原市で儀式を行うなど更々ないのではと思ってしまうほどだ
それはさておき
諏訪原学園の授業が終わってすぐにやって来たベアトリスにすっとんきょうな質問に軍神は呆れた顔をしていた
「聞いてどうするつもりだ?むしろ、俺の事をあまり詮索するな。お前のツキが落ちるぞ」
「どういうことですか?」
「だから、聞くな。それと、学生がこんなとこに来るな……営業の邪魔だ」
ベアトリスがいるのは、軍神が営むBAR
つまり、未成年である学生が入るのはお門違いな場所である
「いーじゃないですか。まだ、開店するまで時間があるんですから。それに私、70代ですから問題ないです」
「そういう問題じゃねぇよ……学生服姿のお前がこんな所に来てみろ……ややこしい事になるに決まっているだろ」
「ベアトリス……」
「ほら、見たことか……飼い主がやって来たぞ」
BARに入ってきたのは、ベアトリスと同じようにこのBARに似合わない長身でロン毛の色男
「すいません、またベアトリスがお邪魔して……」
「だったら手綱くらい、しっかりしろ。戒」
軍神に戒と呼ばれた青年
彼はベアトリスと同じ黒円卓
第二位
継いだと言ったのには理由がある
戒より前にもトバルカインは存在していたということだ
初代は櫻井武蔵
戒から見れば曾祖父にあたる人物
彼が櫻井一族の呪いの始まりであった
とある聖遺物の模造品を作らされるために呼び寄せられ、あまりにも出来がよすぎる模造品を作ってしまった結果、自分が生ける屍となって朽ちることを呪い、いつか自らを解放させるために『呪いを代々引き継がせたい』という強烈な意志は魂からの渇望となり、呪いを生み出してしまった
二代目は櫻井鈴
彼女は武蔵の孫であり、戒から見れば叔母にあたる人物
彼女は屍兵の呪いを受け継ぐことを徹底的に嫌がり、どうせ死ぬならさっさと死のうと戦場を駆け回る傭兵となった
しかし、ベトナム戦争で不運にもヴィルヘルムと出くわしてしまった
鈴はただの人間であったにも関わらずヴィルヘルムに形成位階までも使わせるほどに善戦するも、絶体絶命の状況で生きるために偽槍を使ってしまったために呪いを受け継ぐことになってしまった
結果としてはヴィルヘルムを退けたものの、屍兵となり彼女は櫻井一族の呪いから逃れることは出来なかった
「ほら、帰るよ。ベアトリス……蛍も君の帰りを待っているんだから」
戒に帰宅を促されるとベアトリスは渋々ながらもBARから出ていった
戒もBARから出ていくが立ち止まると、軍神に質問を投げ掛けた
「ベアトリスは何でここに来たか何か言っていませんでした?」
軍神は自分の創造について聞かれただけと答えると戒は「そうですか」と呟くと一礼してBARから出ていった
「…………出てこい、ヴァレリア。俺に用があるんだろ?」
軍神が誰もいないはずの店の奥に声をかけると、神父が現れた
彼が大隊長、副首領、首領が抜けた黒円卓の最高指揮権を持つ司令官『ヴァレリア・トレファ・クリストフ・ローエングリン』である
「そんな殺気立てないでください……私は貴方にお願いがあって来たのです」
「願い?俺に頼むくらいならシュピーネやルサルカを使え。俺だとヴィルヘルム以上の損害が出るくらい知っているだろ……」
「その損害を出して構わないからお願いに来たのです。ヴァルキリアが裏で東方正教会と繋がっていることが判明しました……ですので、裏切者の彼女の始末をお願いします」
「なるほど」
「それと、カインにも彼女の始末をお願いしましたので確実にお願いします」
ヴァレリアはそれだけ言うと姿を消した
残された軍神は店を出ると諏訪原の夜の街に姿を消した