Dies irae 番外の軍神   作:祇園

1 / 4
それでは皆様、私の歌劇をご観覧あれ

その筋書きは在り来たりだが

役者が良い

至高と信ずる……

故に面白くなると思うよ


第1話

―――ドイツ ベルリン

 

第二次世界大戦も佳境である1945年5月1日

 

この日のベルリンは炎の海であった

 

ドイツが迎え撃つのは赤軍

 

ベルリンを守るためドイツ軍人は戦い続けるが、第二次世界大戦当初の快進撃は彼らにはない

 

総統が自殺した

 

親衛隊全国指導者が降伏を申し出した

 

それだけで、彼らの戦意を失うほどであった

 

「この……大馬鹿野郎共がッ!!」

 

それでも諦めない者もいる

 

階級は少佐でありながらも、その男の声は戦意を失った者を震い立たせる

 

彼がいる隊は全員生き残る

 

彼がいる隊は全戦全勝

 

いつからか『軍神』と呼ばれるようになった男の一言一言は絶望から希望へと変わっていく

 

「死ぬなら、守って死ね!赤軍から家族を!女房を!子を!国を!己を守れ!!」

 

「――もう、守んなくていいよ」

 

その一言と共に白い影が降り立った瞬間、爆発が起きた。

 

軍神を除く軍人全員その爆発に飲まれ命を落とすが、軍神は傷一つ付いていなかった

 

「ヤッホー、軍神様。表舞台お疲れ様」

 

「何の用だ。シュライバー」

 

軍神は今の行為に静かに怒るが、シュライバーと呼ばれた少年はあどけなく答える

 

「どうせこれから死ぬんだから、早いか遅いかの違いじゃない」

 

シュライバーが空を指指す

 

ベルリンの赤い空に浮かぶのは巨大な鉤十字

 

その中心を貫くような尖塔には何者かが立っている

 

鬣のごとくたなびく髪、全てを見下す瞳は黄金

 

人体の黄金比とも言われる肉体を持つ男

 

人の世に存在しはならない、愛すべからざる光の君

 

その横には輪郭の曖昧な影絵のごとき男

 

対照的なこの二人こそ、黒円卓聖槍十三騎士団第一位と十三位

 

首領と副首領である

 

「始める気か……」

 

「そうだよ。本当ならもう少し魂を食べたかったんだけどね」

 

「程々にしておけ。アイツへの分が減る」

 

「はいはい」

 

軍神とシュライバーが話している間にも黄金の男の声はベルリン全体に響き渡ってた

 

逃げる住民は足を止め先ほどまで戦っていた軍人も手を止め黄金の男を声を聞いていた

 

そして――

 

『ならば我が軍団に加わるがいい』

 

その言葉が紡がれた瞬間に、異変が起きた

 

銃を持つ者はそれを口に入れて撃ち、刃物を持つ者はそれを胸に突き刺し、何も持たぬ者は火の中に飛び込み自殺した

 

ベルリンにいる万人ともいえる住民、軍人が異常な速度で死んでいき、その魂は黄金の男へ吸い寄せられていく

 

「ふん……」

 

「あれ?もう行くの?」

 

「聞いていなかったのか?『城』に行くのはお前とザミエルとマキナだ。番外の俺がどこに行こうが勝手だろうが」

 

「まぁ、選ばれたのはいいけどなぁ……しばらく人間を殺せなくなるなぁ。ねぇ、殺してい――」

 

シュライバーが殺気も漏らした瞬間、シュライバーは瓦礫の山に吹き飛ばされていた

 

「寝言は寝て言え」

 

『やはり、行くのか?』

 

黄金の男は軍神に問いを投げ掛けたが、軍神は黙ったままベルリンの外へと歩き出した

 

『沈黙なら是ととろう。ならばいずれまた会おう――少佐』

 

そう言うと、黄金の男と影絵の男は尖塔から姿を消した

 

同時にシュライバー、ザミエル、マキナの三人もベルリンの地から消えた

 

残っていた他の7人も歩き出す

 

何年先に始まるかは分からないが目指すは東方の島国

 

「なら覚えておけ。ラインハルト……次に会ったら――」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。