少年と少女はめぐりあう   作:メガネコ

6 / 29
お気に入りが300を超え、多くの人がこの作品を見てくれていることに感謝感謝している、メガネコです!

今回は、八幡さんに変化が起きます。


ご指摘、ご感想があればしていただけると、ありがたいです。



雪ノ下陽乃は、面倒見がよい

八幡side

 

めぐり先輩の部屋から出た後、自分の昼の分を作ることにした。

おかゆはタッパに入れ冷蔵庫に保存しておき、夜に食べてもらうつもりだ。

ごはんが幸い残っているので、おにぎりを作り白菜の浅漬け、そして昨日の残りの味噌汁を食べた。

 

 

お腹にものが入り、一息ついたせいかさっきまでの出来事を思いだす。

今考えれば、とっさに食べさせてしまったと言っても、相手は先輩で小町じゃないというのに…。

やべえ、結構恥ずかしいことしてしまったな…。

でも一体なんで八幡君と名前で呼んでくれたのだろうか?

風邪でただ単に弱っていただけだと思うが。

 

 

俺は今後のことについて考える。

自分を取り巻く環境は、こうしていても変わることはない。

今までは、精神的なものが多かったが、暴力沙汰になるのもそう遠くないだろう。

一人で解決できるか…?

 

答えは否。

 

一人で解決できるなら、とっくにしてる。

 

 

誰かを頼るか?

 

 

では、誰を?

そもそも俺をたすけようとする奴なんているのか?

 

 

そこで名前が浮かんだのは、めぐり先輩だ。

あれだけ優しくしてくれて、抱きしめてくれてあの人なら頼ってもいいんじゃないか?

 

 

でも本当にそれはいいのだろうか?

きっとめぐり先輩は誰にでも優しい。

由比ヶ浜結衣のように。

誰かが、困っていたらきっと手を差し伸べる。

そんな人だ。

別に俺だから助けてくれたわけではないだろう。

 

 

心の中で謝ってくれたのを、建前なんじゃないかと疑っている自分に腹が立つ。

それでも人を信用するのは怖い。

嫌なことがたくさんあった。

信用して、頼って、そして裏切られたらそんな不安が絶えず泉のようにわいてくる。

そんな思考を振り払うために、頭を振る。

 

 

 

気晴らしにテレビでも見よう。

きっと、こんなことばかり考えても意味はない。

それに、さんざん助けてくれた先輩を疑ってしまうのは失礼だ…。

そう思いテレビをつける。

今はやりのタレントが司会をやっているものだった。

 

 

 

 

テレビをつけていても、いやな考えが頭から離れなかった。

 

 

 

 

ぼーっとテレビを見ていると、自分のカバンの中のスマホが鳴り始める。

小町が心配してかけてきたのかと思い、特に画面を確認せず電話に出る

 

 

「はろはろ~、比企谷君元気~?」

 

 

陽気な声が聞こえてくる。

 

「はぁ、なんで俺なんかに電話を?雪ノ下さん。」

 

 

「いやぁ、悩める少年を助けるのは、お姉さんとして当然のことだし~」

明るい声に、いらだつ。

 

 

「そんな建前いいですから。早く、本題を言ってくれません?」

 

急に。陽乃さんの声が、低くなる。

 

「君は、今面倒な状況にいるよね?」

 

 

「まあ、そうですね…。」

雰囲気が変わった陽乃さんに戸惑うがちゃんと答える。

 

「あの君が、泣き叫ぶくらいだからね~。」

 

 

「なんで、それを?」

 

 

「なんでも知ってるの、お気に入りの子たちのことは。」

 

「不気味っすよ。陽乃さん」

茶化すように言うが

 

 

「まあ、なんて言おうが、構わないけれど。

君は誰かに助けを求めないの?

例えば君の事を助けようとしている『めぐり』とか」

 

この人はどうしてこんなに人が悩んでいるところをあててくるのだろう…。

 

 

ドキッとした。

自分の考えを読まれているような、嫌な感じ。

 

 

「君は、おびえてるよね?過去の事、そして、今起こっていること、嫌なことばかりだしね。

人のことを頼るのがこわいのは、わかる。

だけど、昔の君と今の君は違うよ。

今は君のそばに立ち君の事を思っている人は、それなりにいるんだよ?

まあ私が言ったところで、君は聞かないと思うけど。

少なくとも、めぐりは君の事を救いたいと思い真剣に考えてる。」

 

 

図星を刺される。

 

 

「そんなの、本人じゃないあなたに何が分かるんですか?」

 

俺は思わずそう言ってしまった。

人のことをその中身を完全に理解することはできない。

だから怖い。

内心で、めぐり先輩も自分に周りの奴らが、自分に向けるように黒い感情を持ってたらどうしようと…。

 

 

「分かるよ…。あの子私の事尊敬はしてても、頼ってきたこと一度もないんだもん。

そんな子が、八幡君のことを助けたいから力を貸せって言ってきたんだよ?

だから、めぐりの気持ちは『本物』だと思う。君の嫌いな欺瞞や上辺だけの気持ちではなく。」

 

 

俺は答えることが出来なかった。

しばしの沈黙をやぶり、今度は明るい声で話しかけられる。

 

「まあ、めぐりが起きて来たら聞いてみるといいよ。

そうすればわかるし~。

あ、後、小町ちゃんには私の家にいるって言ってるから、そこのところよろしくね~♪」

言いたいことを言い終わったのか、電話が切られた。

 

 

俺は陽乃さんの言った意味を考えていた。

 

 

 

 

めぐりside

 

 

 

いつの間にか、また寝てしまったようだ。

時刻は午後六時。

近くに置いてある体温計を手に取り、熱を測る。

37:2

熱は薬のおかげである程度さがったみたいだ。

 

彼の様子が気になったので、リビングに向かう。

ちょうど、その時リビングの方で話し声が聞こえた。

リビングの扉に耳を近づけ中の音を聞こうとする。

どうやら電話をしているようだ。

 

相手は誰だろう??

ご家族の方かな、それとも他の人だろうか?

でも電話に受け答えしている、彼の声はいらだっているように聞こえた。

耳を澄まし、しばらく扉の前で立っている。

 

 

ようやく電話が終わったのか、静かになっている。

今なら入っても邪魔にならないだろう。

リビングの扉をあけ中に入る。

 

 

「比企谷君、電話誰からだったの?」

気になっていたので思わず聞いてしまった。

 

 

「陽乃さんからですよ。」

疲れたように、彼が笑う。

 

何か言われたのだろうか…?

聞いてみると、彼は素直に内容を話してくれた。

 

 

 

やっぱりまだ完全には信用されてはいないのだろう…。

そう思うのも無理もない。

周りからあれだけ悪意をむけられて、二、三日で人を信じるのは無理だろう。

陽乃さんによると中学時代にも、いろいろあったそうだし…。

 

 

私の沈黙に不安に思ったのか、彼が口を開いた。

 

「俺はまだ誰かを心の底から信用することが出来ないみたいで…。

あんだけ助けてもらったのに、どうして城廻先輩が俺を助けてくれたのか、わからなくて…。」

 

そこで一度言葉を区切りゆっくりと息を吐く。

 

「もしかしたら、あなたも俺の事周りの奴らみたいに、内心思ってるんじゃないかって不安で。

なんか、どうしても先輩のことを疑っている自分がいて…。

そんな自分が情けなくて……。すいません。」

 

 

彼はそう言って頭を下げた。

握っているこぶしが、力を入れすぎて白くなっている。

 

 

 

「顔をあげてくれない?」

 

 

彼は本音で今思っていることを私に話してくれた。

なら私も彼に対して、思っていることを素直に話そう。

 

 

 

 

「君を助けたいと思ったのは、私が君の事が好きだからだよ、八幡君。」

 

 

 

 

八幡side

 

 

電話が終わった後、めぐり先輩がリビングに入ってくる。

心配そうな顔で「比企谷君、電話誰からだったの?」

 

 

「陽乃さんからですよ。」

 

 

本当に優しい先輩だ。

だからこそ、不安になる。

表面をうまく隠しているんではないかと…。

 

 

「何か言われたの?」

 

浮かない顔をしていたのか、不安そうに聞いてくる。

陽乃さんが本人に聞くように言っていたし、素直に話してみよう。

俺は今思っていることを伝えた。

 

さんざん助けられた人に向かってすごく失礼なことを言っているのはわかってる。

それでも、知って安心したい、知らないことはひどく怖いことだから。

そう思い、頭をさげた。

 

城廻先輩が真剣な声で、顔をあげるようにいってきた。

 

顔を上げ、城廻先輩をみる。

 

「君を助けたいと思ったのは、私が君の事が好きだからだよ、八幡君。」

 

そう言われ、驚きのあまり声が出なかった。

 

そのままめぐり先輩は言葉をつなげる。

 

「この気持ちに気付いたのはつい最近なんだ。

文実の時には、文句を言いながらもしっかりやる子っていう感じのイメージでしかなかったしね。

それに相模さんの解決の仕方も、よく考えずに君に否定の言葉を言ってしまったことを後悔してた。

 

傷つけたんじゃないかって。」

 

そこで小さく息を吸う。

 

「だから、君がボロボロになってた時に、助ければ許してもらえるんじゃないかって…そう思った。

ひどいよね、自己満足で君を助けようとしてた。

でも君のいろんな面を見て、だんだん君の事を知りたいとか、傍にいたいとかおもうようになって、看病してくれた時に優しくしてくれて。」

 

 

 

「そして、私は、君の事が好きになったの。」

 

 

 

「すぐに、すべてを信用してとは言わない。

でもこういう気持ちを私が持っているということは、知ってほしい。」

 

そう言い終わった彼女は、俺に向かって微笑み。

ゆっくりと近づき、抱き寄せられる。

 

 

 

「だからさ今の君はもう一人じゃないよ。」

 

 

俺は、うれしさでも泣くことはできるということを、生まれて初めて知った。

 

 

 

めぐりside

 

 

私は、今まで感じてきたことを、そのまま素直に彼に伝えた。

 

 

すべてを伝えた後、一番彼に気付いてほしいことをいう。

 

「だからさ今の君はもう一人じゃないよ。」

 

そう言いながら、ゆっくりと彼の体を抱きしめる。

 

私の思いに気づいてくれるように強く。

一人じゃないんだと。

私がそばにいると。

 

 

彼が泣いているのを感じた。

 

 

しばらくして、彼が

「めぐりさん…頼らせてもらってもいいですか?」

おずおずと聞いてきた。

 

 

「いいよ、頼って八幡」

私はやさしく答えた。

 

 

「俺、めぐりさんのことm「さっきの返事は、君の問題が解決してからでいいよ。

そうすれば、君も私のことを疑う気持ちもなくなるでしょ?」

彼の言葉を遮りながらそういう。

 

まだ彼に疑いの気持ちがあるのは分かっている。

なら自分は信用できるんだということを証明すればいい。

単純なことだ。

 

だからそこで返事を聞こう。

じゃないと弱ってるところに付け込んだみたいでいやだしね。

 

 

「ありがとう…ございます…。」

そういう彼は、申し訳なさそうにつぶやいた。

彼は、ひねくれているけれど根は優しいんだろう。

 

気持ちに答えられない事を、気にしてるんだろう。

だったら…

 

私と彼は身長差があり、彼の顔まで少し距離がある。

私は、ゆっくりと彼の首に腕をまわす。

かかとを少し浮かせて背伸びをする。

彼の顔との距離が近くなる。

 

 

 

彼の頬にキスをした。

 

 

恥ずかしいので、すぐに腕をとき一歩離れる。

 

「君が、私のことを好きになったときまで、口はとっといてね♪」

 

そう言って私は今までの中でとびきりの笑顔を彼に向けた。

 

 

外の天気は大荒れだが家の中は不思議と温かかった。




展開がようやく動き始めました。
長かった…初めのプロットでは、7話で終わる予定だったのに、どうしてこうなった…

まあ、プロットに書いてあったのは、八幡ボロボロ、めぐり天使救済
この二言だけだったんですが…w

あと、十話ぐらいあれば、完結するかなと予想は立ててはいます。
ただ、検査などがあり、投稿スピードは今より落ちます。
それでも、夏の間には完結すると思います。というか、早く後日談の方も書きたいと思っているので…。

最後まで読んでいただきありがとうございました(^o^)丿

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。