少年と少女はめぐりあう   作:メガネコ

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予想よりも多くの方に見ていただき、また、お気に入り登録していただきテンションが高まり書いてしまいました。

前回よりは、雰囲気が軽くなっていると思います…。

ご指摘、ご感想をいただけると幸いです。


城廻めぐりは思いに気付く

八幡side

 

 

俺は真っ暗な中に一人ぽつりと立っている。

どこからともなく声が聞こえてくる。

 

「君は不真面目で最低だね」

 

「マジありえないんだけど、あいつ」

 

悪意ある言葉が次々と投げかけられる。

俺はその場にいることに耐えられずひたすらに、暗闇の中を走り続ける。

 

 

はっとして目が覚めた。

「嫌な夢を見たもんだ……。」

思わずつぶやいてしまった。

 

目を覚ましあたりを見渡すと、ふと疑問がうかんだ。

 

「ここは、いったいどこだ?」

 

見知らぬベッドで寝ている。というか部屋自体見たことがない。

ただ置かれている家具や小物から女性の部屋であることは想像がつく。

現状を整理するため、さっきまであったことを思い出そうとする。

 

 

自転車の惨状を見た後やみくもに走ったんだった。

今まであったことがショックだといえばそうなのだが、なぜあんなに取り乱したのだろうか……?

自分でもよくわからない。

俺自身かなりの人から悪意を向けられ、慣れているはずなのに…

帰りも、なんだか分からずに、ただがむしゃらに走って走って学校から遠くに少しでも遠くに行きたかった。

途中に城廻先輩に出会い話しかけられた気がするが、その後の記憶がさだかではない。

 

 

待てよ…じゃあここ城廻先輩の家なのか…?

 

 

なんかむずむずしてきた。

いや決して変な意味ではなくてですね。

まともに異性の部屋に上がったことのない身としては、どうすればいいのか分からなくなっている。

雪ノ下はって?あんなのノーカウント、ノーカウントだ。

 

 

ふと机の上に目がいくと、メモ帳にかわいらしい字で

 

 

[買い物に行って来るのでしばらく留守にします。

トイレは一階の玄関前の廊下を突き当たったところにあるよ~

飲み物は机の上に置いてあるポットにあるからね! めぐり]

 

 

なんて気が利くのだろうか。

もしかして城廻先輩は戸塚につぐ、天使なのではないだろうか…

 

ありがたくポットの中のお茶を飲む。

あったかくて優しい味だ。

紅茶を飲んで温まったせいか、眠気に襲われ俺はまたベッドに戻り意識を手放した。

 

 

 

 

 

めぐりside

 

 

コンビニに行き男性物の下着を買った後、スーパーにより食料品を買い込んだ。

その時に陽さんに彼の好みの食べ物を聞いておいたのは、彼には秘密にしておく。

聞く時に陽さんにさんざん問い詰められたけど……たぶん、ごまかせたはず…。

そう信じたい…切に。

 

「ごはんおいしいって食べてくれるかな…?」

料理はそれなりにしてきているけど、家族以外に食べてもらうのは初めてのことだ。

ちょっと緊張してきた…。

そんなことを考えていると、いつの間にか自宅についていた。

玄関の扉をあけ中に入る。

食料品を冷蔵庫に入れた後コンビニで買った下着をもち、二階の自分の部屋に向かう。

 

すると彼が寝苦しそうにうめいている。

嫌な夢でも見ているのだろうか。

私はベッドに近寄りかがんで彼の頭をなでる。

 

 

「大丈夫だよ。私がそばにいるからね。」

 

 

安心できるように、穏やかな声で。

すると彼の手が自分のほうにのばされる。

私は頭をなでながらごつごつした彼の手に自分の指を絡ませしっかりと手を握る。

しばらくすると落ち着きを取り戻したようで、規則正しい寝息を立てながら寝ている。

私は夕食の準備をするため、音を立てないように静かに立ち上がろうとする。

 

しかし、しっかりと手を握られているため。

離れようにも、離れられない。

どうしようか考えていると。腕が強く引っ張られる。

 

「あぅ」

 

立ち上がろうとしていた中腰の態勢なので踏ん張りがきかず、彼が寝てる上に覆いかぶさるように倒れた。

 

 

彼の顔が近くにある。

鼓動が早くなる。

軽く開いている彼の唇に目が行く。

 

 

してはいけない。

 

 

そう分かっていても、自然と目がひきつけられる。

彼の顔が徐々に近づいてくる。

違う…自分の顔が彼に近づいている。

互いの吐く息が触れ合う。

 

 

もう少しで触れる…そんな時に彼の泣いている顔を思い出す。

 

 

罪悪感が生まれる。

比企谷君や、彼の周りにいるおそらく彼に気のある雪ノ下さんや、由比ヶ浜さん

自分の勝手な欲望でこんなことをしていいはずがない。

何より弱っている人間にこんなことしていいはずがない。

 

ゆっくりと彼の顔から離れていく。

そして夕食の準備をするために、自分の部屋の扉を静かに閉じた。

 

 

 

 

夕食を作っている最中に、ずっと考え事をしていた。

 

そもそも彼に何があったのだろうか??

もし私の聞いている噂が本当だった場合、いじめが起きている可能性がとっても高い。

しかしいじめが起きていたとしても、彼は迷惑をかけないように誰も頼ろうとしないだろう。

こちらから手を差し伸べても、その手を払われたら助けようがない。

 

 

「どうしようかな…。陽さんだったらうまくやれるのかな……。」

 

 

こういう時自分の力のなさを思い知る。

文化祭も形の上では成功したといえ、成功させるために一人に犠牲を背負わせてしまった。

また、去年の文化祭を経験している人たちからは、陽乃さんの代のほうが楽しかった。

というような声も上がっている。

 

過去を悔やんでも仕方ない。

次には体育祭が控えている。

それに彼が起きてこないことには、詳しいことが分からない。

 

 

もう一つ、私は比企谷君のことをどう思っているのだろうか、ということ。

彼のことを知りたい、彼の支えになりたいという気持ちはどんどん大きくなってきている。

 

これは、彼に対して『恋』しているということなのだろうか?

 

異性のことを、好きになったことがないから自分でもこの気持ちが何なのかよくわかっていない。

それに、あんなにボロボロになっているのに好きになってもいいのだろうか?

彼にとって失礼なことなんじゃないか?

 

いろんなことが頭をめぐる。

 

 

よし!

切り替えるために、自分の両頬を叩く。

 

ぺちん。

 

 

「がんばるぞ~、おぉ~!」

 

 

そこにシューーとお味噌汁が沸騰した音がした。

慌てて火を消す。

 

「し、しまった…。考え込みすぎた。」

 

 

クスクスと笑い声が聞こえる。

後ろを見ると、比企谷君がいて、苦笑いしながら話しかけてきた。

寝起きだからかいつものように目が腐っていなくて、さわやかなイケメンに見える。

 

「城廻先輩何やってるんですか??」

 

は、恥ずかしい……

 

 

 

 

八幡side

 

 

暗闇の中に自分が立っている。

周りから嫌な声が聞こえてくる

「何キレてんの。マジきもい。」

「ざまぁww」

 

 

またこの夢か……。

嫌な出来事を、凝縮して見せてくる。

もうやめてくれ…

これ以上俺を責めるのはやめろ。やめてくれ……。

俺は自分の耳をふさぎ、しゃがみこむ。

 

 

その時耳元で優しい声が聞こえてくる。

「私がそばにいるから」

そんな言葉が聞こえた気がした。

やわらかい感触を頭に感じる。

落ち着く甘いにおいを感じ、少しずつ嫌な声が小さくなってくる。

そして暗闇がうっすら明るくなっていく。

 

 

 

目が覚めると、時計は八時を過ぎたところだった。

トイレに行きたくなって、一階に降りていく。

用を足した後、どこからか人が話しているのが聞こえた。

まあ城廻先輩以外は考えられないのだが。

いや待て今日は金曜日つまり平日……あれ親御さんとかご家族とかいるんじゃない、これ。

 

 

やばい、やばい、なんかパジャマで人のご両親に会うのはさすがに悪い。

というか、どう状況を説明すればいいの?八幡わかんない。

 

 

リビングのほうから音が聞こえてきてる。

親御さんと鉢合わせたらと恐る恐るリビングに通じる扉を開けちらりとのぞき見る。

 

 

すると城廻先輩がエプロンを着て、料理をしている。

私服のせいか普段より大人っぽい雰囲気をまとっている。

 

 

突然、シューーっという音が鳴る。

片手鍋の中のものが沸騰したようだ。

あたふたしながら城廻先輩が火を消す。

その際に近くに置いてあったさい箸が体にあたり飛んでいく。

 

普段の優しいお姉さんが、ドジッ子のようになっているのを見ると、思わず笑ってしまった。

その笑い声が聞こえたのか、顔を真っ赤にさせ、

 

 

「み、見てたの?」

と上目遣いで言ってくる。

 

 

計算されていない、あざとさは強いということを改めて感じた。

昔の俺だったら、告白をすっ飛ばしプロポーズするレベル。

そして振られるまでのワンセット。

結局ふられるのか…俺は。泣けるぜ。

 

 

そんなことを考えていると、反応しない俺を見て、

城廻先輩が心配そうに俺の顔を見てくる。

 

 

「大丈夫…?雨に濡れてたし、一応体は拭いたけれど…熱とか出てない?」

 

 

そう聞きながら自分のおでこを俺にあててくる。

 

その時夢で匂ったあまい香りがした。

心が安らぐのを感じる。

 

「熱はないみたいだね。良かった~。」

 

おでこをはなし、ほっとしたような表情で俺を見る。

その顔を見て、こんな俺を心配してくれる人もいるのかと、うれしくなった。

 

「おなか減ったでしょ?ごはん食べよ!ごはん!」

 

明るい声で俺を食卓に案内する。

四人掛けのテーブルに向かい合うように座った。

今日の夕食は、和風ハンバーグにごはん、味噌汁、サラダという健康的な食事メニューだった。

二人で、手を合わせて「「いただきます。」」

 

まずは汁物からと思い、味噌汁に手をのばす。

具材は油揚げとかぼちゃが入っていた。

一口汁を飲む。

ダシと味噌のバランスがちょうどよく、具材のかぼちゃの甘みとの相性も良い。

 

あっという間にお味噌汁を飲み終わってしまった。

 

 

「そんなにおいしかった?」と嬉しそうに聞いてきた。

 

 

「めちゃくちゃ、うまかったです。あんまりうちでは味噌汁にかぼちゃとか入れないんで、珍しかったんですけど、合うんですね。」

 

 

「お味噌がしょっぱい分ちょうどいいでしょ?おかわりあるけどいる?」

 

 

その後迷わずおかわりを選択した。

 

 

 

 

 

夕食を食べ終わりごはんを作ってもらったので、食器の片づけくらいはしたいと頼んだ

けれどお客さんだからと断られてしまった。

リビングのソファでくつろいでいると、食器洗いを終えた先輩が二人分の紅茶の入ったマグカップをもってやってきた。

 

そしておれの隣に座り、真剣な表情で言葉を発した。

 

 

「私比企谷君に謝りたいことがあるの。」

 

 

俺はどうして先輩がそんなことを言うのかわからなかったが、真剣な表情の先輩をみていると冗談ではないことが分かった。

 

 

「私は、文化祭の時ちゃんとよく君の行動について考えもせず、君のことを不真面目で最低だと言ってしまって、ごめんなさい。」

そういって、城廻先輩は俺に向かって頭を下げた。

 

 

 

「城廻先輩は、悪くないですよ。あの状況じゃどんな人が見ても、俺のほうが悪いですし、気にすr「それでも、私は君のことをちゃんと評価してあげれなかった。雪ノ下さんや陽さん、平塚先生も気づいてたのに…。だから、そのことを謝りたくて…。ごめんね。」

涙でうるんだ目で俺のことを見上げながら謝ってくる。

 

 

 

「分かりました。謝罪を受けます。だから、その、泣かないでください…。」

 

 

先輩の頭をなでながらそう言った。

しばらくなでていると、はっと気づいた。

普段のお兄ちゃんスキルが発揮されてしまった。

相手は自分より年上の人である。

そんな人の頭をなでるなんて、ばかにしてるとおもわれないだろうか……。

そんな考えが脳裏に浮かび頭の上から手をのけようとした。

すると、先輩がなでていた俺の手をつかみ、顔を赤くしながら

 

 

「もう少しだけ、こうしてくれない…?」

そうぽつりとつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

めぐりside

 

考え事をしていて、お味噌汁を沸騰させてしまった。

とめようとしていたら、菜箸を飛ばしてしまった。

なんだろうすごく頼りないよね……こんな先輩。

話しかけてもぽーっとしてる彼に不安になり、

 

「大丈夫…?雨に濡れてたし、一応体は拭いたけれど…熱とか出てない?」

そう尋ね、彼のおでこに自分のおでこをこつんとぶつける。

 

どうやら熱はないみたいだ…。

「熱はないみたいだね。よかった~。」

取り敢えずは、大丈夫そうなのでほっとする。

 

 

彼の顔を見てみるとうっすらと赤く染まっている。

それもそうだ…お互いの吐息があたるぐらい近くにいるのだから。

彼の唇が目の前にあり、思わず見つめてしまった。

 

 

そんなことがばれないように彼に食事をとるように勧める。

私は彼が口に入れるまで緊張していた。

そもそも異性に対して料理を作った経験もなく、いくら台所にそれなりにたっているといっても、雪ノ下さんたちには、かなわないだろうし。

もしおいしくないと言われたらどうしよう…といろいろ考えていた。

だけれど彼が一口食べた後顔がほころんだのを見て、うれしくなってしまった。

その後もどの料理も比企谷君の口にあったようで、おかわりをたくさんしてくれた。

 

自分の料理をあんなにおいしそうに食べてくれて、とてもうれしく、あったかい気持ちになった。

思わず食器を洗いながら鼻歌を口ずさみそうになるくらいに。

そしてやっぱり私は比企谷君のことが好きなんだと気づいてしまった。

 

 

浮かれていて忘れそうになってはいたが、比企谷君に謝らないといけないことがある。

このことを今頃謝っても、意味なんてないのかもしれない、それでも謝りたかった。

 

 

食後の紅茶を二人分作り、リビングにいる比企谷君に持っていく。

彼のそばに腰かけ、真剣な顔で彼に向かって話しかける。

「私比企谷君に謝りたいことがあるの。」

 

彼も真剣な表情で先を促してくる。

 

「私は文化祭の時ちゃんとよく君の行動について考えもせず、君のことを不真面目で最低だと言ってしまってごめんなさい。」

そういって、私は彼に向かって頭を下げた。

 

「城廻先輩は、悪くないですよ。あの状況じゃどんな人が見ても、俺のほうが悪いですし、気にすr「それでも、私は君のことをちゃんと評価してあげれなかった。雪ノ下さんや陽さん、平塚先生も気づいてたのに…。だから、そのことを謝りたくて…。ごめんね。」

 

彼のやさしい言葉を遮りながら、私は思っていたことを伝える。

 

 

「分かりました。謝罪を受けます。だから、その、泣かないでください…。」

 

 

困ったような表情で彼は私の頭をなでた。

男の人のごつごつとしているけれど、あたたかい手が自分の頭をなでていく。

だんだん気持ちが落ち着いてくる。

 

 

しばらくそうされていると、比企谷君が手を放そうとしてきた。

 

 

放してほしくない。

 

もっとこうして欲しいという思いから

思わず手をつかみ

 

「もう少しだけこうしてくれない…?」

そうつぶやいてしまった。

 

 

 




二つの視点で同じことを書くのは想像していたよりも難しかったです。
他の作者様のようにうまく書けるようになりたいです…。

めぐり先輩の癒しの雰囲気が少しでも出せていたら幸いです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。(^o^)丿

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