路地裏で女神と出会うのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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New18話

セシシャの交渉により、リリルカ・アーデは改宗(コンバージョン)

【アグライア・ファミリア】へと入団した。

同じ【ファミリア】になれたことにベルとリリはセシシャに何度も頭を下げて礼を言ったがセシシャは仕事だから礼を言われる覚えはないと当然のように言った。

リリはどうやって【ソーマ・ファミリア】の団長であるザニス・ルストラ。

酒守(ガンダルヴァ)】をどう言いくるめたのか気になったがその疑問をセシシャは微笑みながら答えた。

『知らない方が良いこともありますわ』

その答えにリリは震えながら頷いて肯定した。

後に風の噂では現在【ソーマ・ファミリア】の団長はチャンドラが引き受けているとか、ザニスは行方不明と聞いたがリリは聞かなかったことにした。

今はベルと一緒に行動を共にする。

そんなこんなで一つの問題が片付いたミクロは椿がいる工房に足を運んでいた。

「まったくもってどういう工程で作り上げたのか手前には理解できん」

「そうか」

ミクロはジエンが使用していた『アビリティソード』を椿に見せていた。

「唯一理解出来るのはどの形状も上級鍛冶師(ハイ・スミス)と同等の作品ということだけだ」

そう結論を出す椿はミクロに『アビリティソード』を返す。

ミクロの母親であるシャルロットが作製した魔武具(マジックウェポン)の構造を知る為に鍛冶師(スミス)である椿に見せたが思っていたよりも答えはでなかった。

ジエンとの戦いでリューが使用した『薙嵐』。

ミクロ自身が作製した魔武具(マジックウェポン)だが、今持っている『アビリティソード』には大きく劣る。

それだけシャルロットの技量が凄まじく、今のミクロでは足元にも及ばないことが判明された。

「ありがとう、椿」

「構わん。手前も面白いものが見れて満足だ」

礼を言うミクロに対して呆気なくそう言い返す椿。

ミクロは『アビリティソード』を『リトス』に収納する。

「椿」

「おお?主神様よ。手前に何か用か?」

工房に入って来たのは【ヘファイストス・ファミリア】の主神ヘファイストス。

「やぁ、ミクロ・イヤロス。この間ぶりだね」

「なんや、二人で談話でもしとったんかいな?」

それと【ロキ・ファミリア】の主神ロキとその眷属であるフィンがやって来ていた。

「ロキ達と『遠征』の話し合いをするって言ったでしょう?」

「おお!」

主神の呆れ声に合点がいったように声を上げる椿。

ミクロはこれからの話し合いに邪魔にならないよう早々に工房を出ようと足を動かすがちょっと待って欲しいとフィンに呼び止められる。

「ちょうどよかった。ミクロ・イヤロス、この後にでも君の【ファミリア】に足を運ぼうと思っていたところだったんだよ」

「俺に何か用?」

問いかけるミクロにフィンは頷いて答える。

「ミクロ・イヤロス。是非にも次の『遠征』に君達の【ファミリア】の力を貸して欲しい」

フィンはミクロに『遠征』の同行願いを出した。

「………」

目線を細めるミクロは振り返ってフィンに耳打ちする。

「18、24階層に関わることか?」

食人花(ヴィオラス)、宝玉、レヴィスという怪人(クリーチャ)など今までとは異なる異常事態(イレギュラー)

そのことを知らないヘファイストスや椿に聞こえないように耳打ちして確認を取るミクロにフィンは小さく頷いた。

「可能性的にはあるとみていいだろう」

あくまで推測として肯定するフィンにミクロは離れる。

「『深層』に行けるのは俺を含めた主力メンバーのみ。それでも構わないのなら同行する」

「助かるよ」

どの道近い内に遠征に行く予定だったミクロ達にとってもいい経験になる。

これからの事ともしものことも考えてミクロは同行することにした。

後程主神であるアグライアや【ファミリア】のメンバーには報告することを頭の片隅に置いてミクロもフィン達の『遠征』の話し合いに参加した。

大体の話し合いが終わった頃、ロキがミクロに尋ねた。

「なぁ、【覇者】。前から聞きたかったんやけど自分は何者や?」

薄っすらと細目に開くロキの眼力は真っ直ぐミクロを視る。

「最初にうちがアグライアと自分にちょっかいかけたのは気に入らないからや。せやけど、自分の噂やアイズから聞いた話を聞いてうちは思った。自分はただものではないってな」

ロキはミクロが【シヴァ・ファミリア】の眷属の子供だということはフィンやリヴェリアから聞いている。

だけどロキはそれだけではないと踏んでいる。

「協力するんならそれぐらいを話してもええやろ?」

『遠征』の同行を承認しているミクロにロキは尋ねた。

協力するならそれなりの信用をみせろと言外にそう加えて。

「答える義務はない」

だけどミクロは拒否した。

一秒も経たずに拒否するミクロにロキの眉根はピクリと動く。

その固い口をどう割らせようかと思考を働かせて再度問いかける。

「素性もはっきりとせん奴にうちは協力したくはないわ」

「嘘。お前は俺の素性をフィンかリヴェリアから聞いている」

あっさりと看破されてロキはフィンに視線を向けて気付いた。

そのことを知る余地もないミクロがそれを知っているわけがない。

だからロキにかまをかけてその反応を確かめた。

結果、ミクロの素性をロキが知っていることに気付かされた。

地上の子供にかまをかけられえて歯を食い縛るロキに素っ気なくするミクロ。

想像以上に頭が切れるミクロにロキはどうするかと考えると椿がミクロに聞いた。

「ほほう、ミクロよ。手前もお主の素性は知らぬ」

「俺は【シヴァ・ファミリア】の眷属、へレスとシャルロットの子供」

「って、何あっさりと話てんねん!!?」

先ほどまでのやり取りはいったい何だったのかと思うぐらいあっさりと暴露するミクロにロキは突っ込みを入れる。

「椿は世話になっている。義務はなくても義理はある」

そう答えるミクロに椿は大笑い。

悔しむロキに肩を竦めるフィンとヘファイストス。

しかし、素性を聞いた以上ロキはミクロの同行を完全に許すしかない。

更に聞こうと追求するがミクロはこれ以上答える義務も義理もないと告げてそれ以上は話さなかった。

「ミクロ・イヤロス。これは個人的なお願いなんだが構わないかい?」

「何?」

話を切り替えるようにフィンはミクロに尋ねる。

「君には弟子がいたはずだ。ついででも構わないからレフィーヤを鍛えて欲しい」

「ちょっ!?フィン、自分なに言ってるんや!?」

突然の言葉に驚愕するロキを無視してフィンは続ける。

「以前アイズとの戦いで君がみせた『並行詠唱』は見事だった。その技術をレフィーヤにも教えてあげて欲しい」

「リヴェリアが教えてるやろ!?何で【覇者】に頼むんや!?」

「こう言ってはレフィーヤに悪いけど、彼女は自分に劣等感(コンプレックス)を抱えている。日頃から努力しているのは僕から見てもわかるけど彼女はアイズ達と自分を比較しすぎている」

フィンの予想通りレフィーヤは自分に劣等感(コンプレックス)を抱えている。

強すぎるアイズ達と自分自身を比較しているレフィーヤにいつもと違う刺激が必要とフィンは判断した。

「『遠征』までの一週間でも構わない。彼女を鍛えてあげてくれないか?」

友達想いであるミクロを信用して懇願するフィンにミクロは頷く。

「わかった。でも、二つ条件がある」

「聞こう」

「レフィーヤが心配なら誰か同行してもいいけど、訓練の内容は全て俺が決める。もう一つはアイズに鍛えて欲しい奴がいる」

「アイズに……?」

わざわざアイズに指名するミクロにフィンは訝しむ。

「アイズは誰かを師事したことはないけどそれでも構わないのなら」

「問題ない」

忠告するフィンにミクロは即答する。

「その者の名は?」

「ベル、ベル・クラネル」

『遠征』までの一週間。

レフィーヤはミクロの下で。

ベルはアイズの下で指導を受けることになった。

 


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