路地裏で女神と出会うのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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第56話

セシルが12階層でインファント・ドラゴンを討伐して数日後。

「おめでとう。【ランクアップ】可能よ」

「やったああああああああああああっっ!!」

偉業を達成してセシルはLv.2に【ランクアップ】した。

 

セシル・エルエスト

Lv.2

力:I0

耐久:I0

器用:I0

敏捷:I0

魔力:I0

狩人:I

 

単独(ソロ)でインファント・ドラゴンを討伐。

それが偉業と認められてセシルは最初の目標であったLv.2に至った。

「それと念願の魔法も発現したわ」

「え!?」

写された用紙の魔法欄に視線を向けると確かに魔法が発現していた。

 

《魔法》

【グラビディアイ】

・重力魔法。

・限定された時間及び空間の重力操作。

・詠唱式【天地廻天(ヴァリティタ)】。

・解除式【天地反転(チャジェス)】。

 

「あ、ああ……」

用紙を握り締めるセシルは喜びが隠せれなかった。

【ランクアップ】しただけでも嬉しいのにそれに続いて魔法まで発現した。

この喜びをどう表現すればいいのかわからないぐらいセシルは感動していた。

そんなセシルをアグライアは頭を撫でる。

「おめでとう」

「はいっ!!」

満面の笑みで返答するセシルにアグライアも嬉しく思う。

酷烈(スパルタ)の訓練を乗り越えて偉業を達成して【ランクアップ】した。

努力が報われたのだと思うと自分事のようについ喜んでしまう。

「お師匠様に報告して来ます!!」

「ええ」

師であるミクロに報告するべく部屋を飛び出すセシルだが、部屋の外にはミクロが立っていた。

「【ランクアップ】おめでとう」

「はい!これからもご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします!!」

「わかった」

これからもミクロの元で訓練を行う。

【ランクアップ】したのは嬉しいセシルだが、これはまだ最初の一歩を踏み出したに過ぎない。

まだまだミクロの背中は遠い。

憧憬のミクロに追いつくためにも今以上に努力しなければならない。

次の目標は同じ憧憬を抱く宿敵(ライバル)のレフィーヤと同じLv.3。

次の目標を目指してセシルはこれからも努力を重ねていく。

「少し寄り道してギルドに報告に行くか」

「はい、お供します!」

ギルドに報告前にミクロは回復薬(ポーション)を補充するためにナァーザの本拠(ホーム)に足を運ぶ。

「ナァーザ」

「いらっしゃい、ミクロ、セシル……」

「ご無沙汰してます、ナァーザさん」

「いつもので」

「りょーかい……」

カウンターの裏から持ってきた数ダースの回復薬(ポーション)をミクロは『リトス』に収納して金貨をナァーザに渡す。

「便利だね……今度、私にもくれる?」

「いいよ。今度持ってくる」

『リトス』の便利さに欲しがるナァーザにミクロは平然と了承する。

「あとこれ、試してみて」

一本の試験管をミクロに渡す。

超高等回復薬(ハイパーポーション)の試作品。試してみたら効果を教えて……」

「わかった」

試験管を(ホルスター)にしまうとナァーザはミクロに視線を向けながら言う。

「ミクロももう第一級冒険者か……凄いね」

「皆やナァーザのおかげ」

「そんなことありません!お師匠様は十分に凄いです!」

謙遜するミクロを褒め称えるセシル。

「もう四年も経つんだね……」

【アグライア・ファミリア】結成当時から付き合いのあるナァーザはミクロとの出会いを懐かしく感じる。

一緒にはダンジョンに潜れなくはなったがこうして成長していくミクロを見て行くのもすっかり慣れてしまった。

当時はナァーザの方が先に【ランクアップ】したが、今となってはミクロは第一級冒険者で上位派閥の団長を務めている。

凄く成長したなと感慨深く頷く。

「ナァーザ。また来る」

「ん、またね」

「失礼します」

ミクロ達はナァーザがいる本拠(ホーム)を後にしてギルドにセシルの【ランクアップ】を報告して本拠(ホーム)に帰ろうとギルドを出る。

「改めて【ランクアップ】おめでとう、セシル」

「い、いえ!お師匠様のご指導のおかげです!!」

帰還中にミクロは改めてセシルの【ランクアップ】を祝うがセシルは謙遜する。

「努力したのはセシルだ。謙遜する必要はない」

弟子入りしてからずっと努力を重ねてきたことを誰よりも知っているミクロは謙遜する必要はないとセシルに告げるとセシルはその言葉に顔を赤くする。

憧憬を抱く人に褒められて本当に嬉しい。

「何か欲しいものはある?【ランクアップ】のお祝いに何かあげたい」

【ランクアップ】したセシルのお祝いとして何かをあげようと思ったミクロは何が欲しいのかセシルに尋ねる。

「えっと、それでは一つだけいいですか?」

「問題ない」

「わ、私も遠征に連れて行っては下さいませんか……?」

遠慮がちにセシルはそう告げた。

「危険なのは十分承知していますし、足を引っ張らないように頑張りますから………私もお師匠様達と一緒に………」

師であるミクロの傍で強くなっていきたい。

だけど、Lv.1では足手まといと思っていたセシルは【ランクアップ】を記念に思い切ってそう言うつもりだった。

Lv.2なら少しはミクロ達の役に立てれるかもしれない。

危険なのも十分知っているけど、やはり憧れのミクロをもっと見てみたい。

ミクロのようになる為にもセシルは遠征への同行をミクロに懇願した。

「わかった。次からはセシルも一緒に行こう」

驚くほどあっさりとミクロは許可した。

「はい!!」

笑顔で返事をしたセシル。

これからもこの人について行こうと改めてそう思った。

「じゃ、次の遠征までに【ランクアップ】した体の調子を整えて中層で鍛えるから」

「はい!頑張ります!」

返答するセシルに最初の相手はミノタウロスにしようとセシルの訓練内容を考案しながら本拠(ホーム)に到着すると一人の女性が本拠(ホーム)前で立っていた。

「入団希望者でしょうか?」

女性を見てそう口にしたセシルの言う通りかもしれないと思いミクロ達はその女性に近づくとミクロはその女性と目が合った。

「ッ!?」

「キャッ!?」

咄嗟にミクロはセシルを抱えてその女性から距離を取った。

「ほう、危機回避能力はそこそこと言ったところか」

ミクロの反応に微笑を浮かべる女性。

ミクロはその女性の目を見てすぐに気付いた。

「【シヴァ・ファミリア】の団員か……」

破壊の悦びを知った目を見てすぐに【シヴァ・ファミリア】の団員だと気づいた。

セシルも顔を上げてその女性の尖っている耳を見てエルフだと思ったがそれにしては耳が短かった。

「ハーフエルフ…?」

「ああ、お前の言う通り私はエルフと人間(ヒューマン)のハーフだ」

「――ッッ」

セシルの言葉に女性はセシルに目を合わせてそう答えるが目が合ったセシルは全身が凍り付いたように動けなかった。

恐怖なんて生易しいものではない。

目が合っただけで一瞬自分が死んだと思い込んだ。

「落ち着け」

「ハァ……ハァ………」

ミクロの言葉にやっと呼吸が出来るようになったセシルは大きく息を吸う。

「何の用だ?」

警戒するミクロに女性は微笑を浮かべたまま言う。

「戦いに来たわけではない。少なくとも今のお前とでは面白くない」

つまらなそうに息を吐く女性に対してミクロはどうするかと思考を働かせていた。

目の前にいる女性は間違いなく強い。

それもセツラ達とは比べ物にならないくらいに。

Lv.6とミクロの直感がそう告げた。

「おっと、自己紹介がまだだったな。私はエスレア・ファンだ。知っての通り【シヴァ・ファミリア】に所属していた。二つ名は【冷笑の戦乙女(フロワヴァルキリー)】だ」

「ミクロ・イヤロス」

目線で名乗れと告げるエスレアにミクロは名乗るとエスレアはミクロ達の本拠(ホーム)を指す。

「ここではなんだ。中に入れてはくれないか?」

「………わかった」

多くの団員達がいる本拠(ホーム)で戦う訳にも何よりセシルを守りながらでは戦えないミクロはエスレアの提案を受け入れる。

「だけど、誰にも手を出すなと約束しろ」

「いいだろう。弱者に興味はない」

ミクロはエスレアを本拠(ホーム)内へと連れて行く。


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