ゴライアスを討伐して新たに【アグライア・ファミリア】に入団したパルフェ。
それから数日後にミクロ達の
「ある意味絶景だね」
「そうね」
集まっている人集りを見て口角を上げるリュコスとそれに同意するティヒア。
多くの種族達が談笑、喧騒しながら
今噂されている【アグライア・ファミリア】に入団する為に。
「うわぁ……もうこんなにも集まっている」
「予想を上回る数だ。どうしますか?ミクロ」
予想をも上回る入団希望者に感嘆の声をあげるパルフェとどうするべきかとミクロに問いかけるリュー。
「全員は無理?」
「それは止めた方がいい。それぞれの【ファミリア】には独自の規律、特色があります。組織としてのしがらみも増えることがあります。この人数全員は止めた方がいい」
全員を入団という意見を止められたミクロは四十人は超えている入団希望者に視線を向ける。
【ファミリア】を結成してから入団者の募集はしていたミクロ達。
それをゴライアスを討伐した途端に溢れ出るぐらいの入団希望者が集まった。
だが、予想を上回った人数をどうするべきかとミクロは思考を働かせる。
「入団試験を行う?」
考えた案は入団者に試験を受けさせて数を減らす試験。
その案をリュー達に提案する。
「それは構いませんが、内容はどうするのですか?」
「模擬戦にしないかい?根性ある奴を入れさせようじゃないか」
「私はアグライア様が一人一人面接して決めて貰ったほうがいいと思うけど?」
「私は……特にないかな?」
それぞれの案が出て、どうするかを考えるミクロ達。
「アグライアはどうする?」
ソファで本を読みながら寛いでいるアグライアに声をかけるミクロにアグライアは本を閉じて視線をミクロ達に向ける。
「そうね、悪い子は入団させる気はないけど、ここは覚悟を問いかけてみましょうか」
微笑を浮かばせながらアグライアはミクロに言う。
「ミクロ。貴方のやり方で構わないわ。集まっている子供達の覚悟を見せて頂戴」
「わかった」
了承したミクロは
現れたミクロに騒めき、視線をミクロに向ける。
「俺はミクロ・イヤロス。今日は集まってきてくれてありがとう」
一礼しながら名を告げる。
「これから入団試験を行う。覚悟のある奴は残れ」
入団試験、という言葉にざわめきが増す入団希望者達だが、ミクロはそのざわめきを気にも止めずにナイフを取り出して自身の手に突き刺した。
『―――――――ッ!?』
突然の自傷行為に入団希望者達だけじゃなくリュー達までも目を見開く。
突き刺した手から流れる血を見て顔を青ざめる者もいるなかでミクロはナイフを抜いて突き刺した手を見えるように入団希望者の方へ向ける。
「この程度の傷で怖がるようなら帰った方がいい」
淡々とした口調でミクロは入団希望者達に告げる。
「冒険者は常に危険が付きまとう。いつどこで命を失ってしまうかわからない。運よく生き残れてもその先一生不自由に過ごすこともある」
ミクロは語る。
ダンジョンの恐ろしさを。
冒険者とはどのような職業なのかを。
今まで自分が経験したことの一端を入団希望者の前で語る。
「もう一度言う。覚悟のある奴だけは残れ」
ミクロの言葉に多くの入団希望者達は言葉を失った。
多くは夢や希望を自身の胸に掲げて【ファミリア】に入団しようと足を運んだ。
だが、その夢と希望をミクロが壊した。
現実を叩きつけた。
静まり返った空間で一人が去り、また一人と去って行く入団希望者。
それを見守るミクロ達。
そして、残ったのは最初に集まった数の半数。
全員がじっとミクロに視線を向けるなかでミクロは血が流れていない方の手を入団希望者達に差し伸ばす。
「ようこそ。【アグライア・ファミリア】へ」
残った半数は【アグライア・ファミリア】に入団した。
それでも二十人の入団者が決まり、ミクロ達の【ファミリア】は一気に大きくなった。
その後、アグライアは入団者に『
「これからのことについて話し合いましょう」
改めて新しくなった【ファミリア】。
今後の活動、方針など話し合わなければならないことは山ほどあった。
「そうね。まずは
今いる人数でやっと過ごせている今の
増築もしくは新しく建て直すか。
「それもいいけど、まずは新人の実力を見る必要があるんじゃないかい?それによって探索範囲を考えないいけないじゃないか」
「それなら新人の装備もある程度は揃えた方がいいと思うけど?」
「【ファミリア】の方針はどうするの?」
それぞれ纏わりのない案を出しながら話し合いが続く中で現在反省中で床に正座しているミクロが皆に言った。
「【ファミリア】のエンブレムと団長は誰がするんだ?」
「団長は貴方ですよ、ミクロ」
「それにエンブレムはもうできているわ」
ミクロの案を即答で返すリューとアグライア。
「私達は別の【ファミリア】から来た者ばかりだ。だから、団長は貴方に相応しい」
「そうそう、あんたがやりな」
「副団長はリューでいいでしょう」
「私も団長はミクロがいいと思う」
驚くほどあっさりと団長と副団長が決まり、アグライアは一枚の用紙を皆に見せる。
「これが私達のエンブレムよ」
一枚の用紙に描かれていたのは光を背に立つ戦士のエンブレム。
その戦士が誰なのかリュー達はすぐに気付き苦笑を浮かべていた。
「いいエンブレムですね」
「もちろんよ。ずっと考えていたんですもの」
褒め言葉に胸を張るアグライア。
「後、方針に関しては私からは特にないから自由に決めても構わないわ。貴方達も、入団してきてくれた子達も皆、私の家族。仲良くできたらそれ以上に言うことはないわ」
笑みを浮かばせながら告げるアグライアにミクロ達は頷く。
「それと後で全員、私の部屋に来なさい。パルフェ以外ゴライアスを倒してから一度も【ステイタス】を更新していないのだから」
「わかった」
全員が頷くのを確認したアグライアは一人、
「……話すべきかしら」
額に手を当てながら息を吐くアグライアは悩んでいた。
ミクロの出生と【シヴァ・ファミリア】。
その事をミクロに話してもいいのか、このまま内密にしておくべきなのかを考えるアグライアだが、すぐに結論を出した。
「やっぱり、話すべきよね」
シヴァが下界にいる以上、ミクロとシヴァが遭遇しないという保証はどこにもない。
その時に真実を知らされるぐらいなら自分が真実を語った方がいいと判断した。
「意外と問題児ね、ミクロは」
微笑しながら自室へ向かうアグライアは続きが気になっている本の再読をしながらミクロ達を待っていた。
しばらく待っているとノック音が聞こえミクロが入って来た。
「終わった」
「そう、じゃ、ここにうつ伏せになってちょうだい」
ベットにうつ伏せになるように促すアグライアの言葉にミクロは従い上着を脱いで寝ころぶ。
【ステイタス】の更新を行いながらアグライアは覚悟を固めて口を開いた。
「ミクロ。実は貴方に大切な話があるの」
「何?」
アグライアは全てを話した。
ミクロが【シヴァ・ファミリア】の眷属の子供だということも。
ヘルメスと話したこと全てをアグライアは話した。
それに対してミクロは答えた。
「どうでもいい」
「え?」
恐ろしいほどあっさりした答えにアグライアは一驚した。
「俺はアグライアの眷属。それ以外何者でもない」
そのらしい答えに悩んでいた自分が馬鹿のように思えたアグライアは笑みを浮かべる。
「そうね。貴方は私の初めての家族ですもの」
抱きしめたい衝動を抑えながら更新に集中すると、【
それに気づいたアグライアの指の動きが止まる。
「【ランクアップ】………」
【ランクアップ】可能だと知ったアグライアは目を見開き速すぎると思った。
Lv.が上がるにつれて【ステイタス】は伸びにくくなる。
ゴライアスという偉業を成し遂げたミクロ達であったが、ミクロはLv.2になってまだ半年と少し。
Lv.2の【ランクアップ】の時より速い
そして、発展アビリティ欄に新たなアビリティが発現していた。
――――『神秘』。
『堅牢』とはまた違うレアアビリティ。
オラリオで五人もいないレアアビリティを発現していた。
神の
「………」
普通ならお目にかかれないレアアビリティに喜びたいアグライアであったが、今回は素直に喜ぶことは出来なかった。
それとも、ミクロ自身の実力で発現したアビリティなのかを悩ませる。
「どうした?」
ミクロの声に正気に戻るアグライアは思考を切り替えてミクロに【ランクアップ】が可能なのと『神秘』の発展アビリティが発現していることを話す。
「じゃ、それで」
相も変わらず即決のミクロ。
こうしてミクロはLv.3へ【ランクアップ】を果たして『神秘』のレアアビリティを手に入れた。
その後もリュー達の更新を済ませるアグライアだったがリュー達は大量の【
全員の更新が終えたアグライア達は全員
「さて、【ファミリア】も改めて新しくなるから皆で宴を開きましょう」
その案にミクロ達は賛成して、団員を集めて『豊穣の女主人』で宴を開くことになった。