路地裏で女神と出会うのは間違っているだろうか   作:ユキシア

129 / 203
New69話

【ロキ・ファミリア】の獣人に案内されてミクロ達が訪れたのは旧式の地下水路。

そこにある隠し階段を進むとそこにはロキやリヴェリア達がいた。

「お連れしました」

「おお、ようやった」

ミクロ達を連れて来た団員に礼を述べるロキにリヴェリアが申し訳なさそうに謝る。

「すまない、ミクロ。他派閥である君達まで巻き込ませてしまって」

「問題ない」

既に闇派閥(イヴィルス)と敵対しているミクロ達も狙われている。

敵のアジトがわかっただけでも僥倖だった。

「今知っている情報を教えてくれ」

「ああ」

リヴェリアそしてロキから現在知っている情報をミクロに伝える。

それを聞いたミクロは頷く。

「わかった。俺達もすぐに向かう」

リュー達に視線を向けるミクロにリュー達も強く頷いて返す。

他派閥とはいえ一度は共に遠征をした仲。その中でも名実共に高いLv.6の冒険者が四人の助っ人はこれ以上にないぐらい心強い。

「君には何度も助けられているな」

「気にするな。友達とその仲間を助けるのは当然だ」

助けることを当然と言い張るミクロは『リトス』からローブを取り出してリュー達に手渡すとロキが面白げにそれを見つめる。

「ほーこれなんや?」

異常魔法(アンチ・ステイタス)呪詛(カース)を防ぐローブ」

以前キュオとの戦闘でフェルズから教わり作製した魔道具(マジックアイテム)

「ここから先にいるのはモンスターだけじゃない」

これから向かうのはダンジョンではない。

敵の罠が満載の本拠地(アジト)

異常魔法(アンチ・ステイタス)呪詛(カース)の使い手とも戦うことも考慮しなければならない。

「………なぁ、【覇者】。これうちらにもいくつか譲ってくれへん?」

「作製に時間が掛かるからまだ五つしかない」

ミクロが人数を絞ったにもこれが理由だった。

自身の最強戦力の中でLv.6という実力者で留めてローブを身に着けさせる。

『リトス』には食料と予備の武器もある。

最小限の人数で最強の精鋭で留めて被害を最小限に抑える。

犠牲者を出さない為に。

「行くぞ」

ローブを身に纏い、ミクロ達は内部へと進んでいく。

内部に進むにつれて構造は迷宮。ダンジョンと変わらない広さと複雑行路になっている。

「これは……」

その構造にリューは驚愕の声を漏らす。

その広さ、複雑な構造は少なくとも数年、いや数百年の月日がいる。

年月を感じさせる迷宮の壁は超硬金属(アダマンタイト)で作られていることからミクロは敵の規格外さに気を引き締める。

通路を進むとミクロは通路の先にある悪魔の彫像を見て破壊した。

「ミクロ……?」

「彫像は破壊した方が良い。これは眼晶(オルクス)のようにこちらの様子を遠くから見ている」

やっぱり闇派閥(イヴィルス)には『神秘』持ちがいることを確信したミクロはリュー達に指示する。

「ここから三組に分かれる。俺とリューは個別で行動して【ロキ・ファミリア】と合流することを最優先。アルガナとバーチェは敵を発見次第捕縛だ。生きてさえいればいい」

「それは危険です。敵はどのような戦力かわからない以上集団で行動するべきだ」

ミクロの指示に反対の声を出すリューの言葉は正しい。

何が出てくるかわからない以上、用心して集団で行動したほうがいい。

「危険だからこそ、敵は俺達も集団で行動すると思うはずだ。それを逆手に取って各自で動いた方が良い。ロキ達が話した最硬金属(オリハルコン)の扉も踏まえれば敵の意識を分散することができる」

最硬金属(オリハルコン)の扉は敵の手によって開けられた。

なら、扉を開ける鍵のようなものがある。

鍵は誰かが使わなければ開閉しない。

先程の悪魔の彫像からミクロ達を見ているとなると見ている人物が最硬金属(オリハルコン)の扉を開閉している可能性が高いとミクロは踏んでいる。

なによりミクロにはその鍵と思われるものを持っている。

『D』と刻まれている赤い球体。

もしそれが最硬金属(オリハルコン)の扉を開閉できる鍵なら敵の虚を突くことが出来る。

「ミクロ、私とバーチェは敵を捕まえればいいのか?」

「ああ、頼む」

「任せろ」

「………」

即答する恋する乙女のアマゾネス姉妹はミクロの期待に応えようと気合を入れ直す。

ミクロはリュー達に眼晶(オルクス)とアルガナ達に球体を持たせる。

「何かあれば即時連絡。危ない時は俺が助けに行く」

『リトス』から魔武具(マジックウェポン)『アヴニール』を取り出す。

「この槍には最硬金属(オリハルコン)なんて関係ない」

『アヴニール』に付与されているのは破壊属性(ブレイク)

その槍の前には如何に最硬金属(オリハルコン)でも無意味だ。

「全員生きて地上に帰還する。散開」

ミクロの言葉に散開するミクロ達はそれぞれ【ロキ・ファミリア】の元へ向かう。

散開した後にミクロは単独で行動しながらも彫像や他にも彫細工(レリーフ)を壊しながら進んでいくと例の最硬金属(オリハルコン)の扉を発見した。

普通の冒険者、いや、例え【ロキ・ファミリア】のような実力者達でもこの扉を破壊することは出来ないだろう。

魔法を使って破壊という手もあるが、最硬金属(オリハルコン)の扉には深層37階層に出現する黒曜石の身体を持つモンスター『オブシディアン・ソルジャー』のドロップアイテムが混じっている。

そのモンスターの特性は魔法の効果の減殺。

鍛冶師(スミス)が往々にして優秀な対魔法装備の盾や鎧を作り上げる程だ。

黄金色に輝く槍を構えミクロは最硬金属(オリハルコン)の扉を穿つ。

「通じるな」

見事に最硬金属(オリハルコン)の扉に風穴を空けたミクロは次々に風穴を空けて行き人一人が通れるサイズまで破壊していく。

【ロキ・ファミリア】を捜索するが複雑な構造だけでなく広大さも誇るこの迷宮ではすぐに見つけ出すことはできない。

地道に探し出すしかなかった。

「……取りあえず真っ直ぐ進むか」

目の前に最硬金属(オリハルコン)の扉だろうとモンスターだろうと闇派閥(イヴィルス)の残党だろうと障害を壊して前に進めばいい。

ミクロは二つ目の最硬金属(オリハルコン)の扉を破壊する。

 

 

 

 

 

「フッ!」

ミクロ達と別れたリューは早速食人花(ヴィオラス)と交戦していた。

小太刀で食人花(ヴィオラス)を斬り払い瞬く間に瞬殺するリューは周囲を見渡して思う。

「いったい何が目的でこのような迷宮を……」

最硬金属(オリハルコン)超硬金属(アダマンタイト)も入手困難な希少金属(レアメタル)

集める為の資金も作る時間も相当の筈。

そこまでしてでもこの迷宮を創り出す訳がリューには理解出来なかった。

闇派閥(イヴィルス)が以前から身を隠すために築き上げたという説も考えたがこれほどの迷宮を作るのにはそれだけの年月が必要になることから違うと判断。

底も目的もわからない闇派閥(イヴィルス)に表情が険しくなる。

最硬金属(オリハルコン)の扉を避けて歩いているとリューは広間(ルーム)に似た正方形の空間へ足を運んだ。

周囲を見渡すと戦闘を行った後や血が地面にこびり付いていた。

誰の血かまではわからないがここで戦闘が行われていたのは確かだった。

「……遺体がないということはまだ生きている可能性は高い」

敵か【ロキ・ファミリア】かはわからないがここに遺体がない以上、死んでいない可能性も十分にある。

なら、ここからどうするかと思考を働かせると足音が聞こえた。

「チッ、ミクロじゃねえのか」

リューが入って来た別の通路から舌打ちと共に姿を現したのは灰色の髪をした狼人(ウェアウルフ)の男性。

その瞳を見てリューはすぐに悟った。

「……破壊の使者(ブレイクカード)

「ああ、俺はヴォール・ルプス。テメーの言う通り【シヴァ・ファミリア】の一員だ」

ヴォ―ルと名乗る狼人(ウェアウルフ)は後頭部を乱暴に掻き毟る。

「何故【シヴァ・ファミリア】は闇派閥(イヴィルス)に加担している?」

「あぁ?それに答えてなんか意味があんのかよ?ここでくたばるテメエによ」

敵意と殺意を隠すことなく猛獣のように剝き出しにするヴォ―ルにリューは《アルヴス・ルミナ》を握りしめる。

瞬間、二人は姿を消す。

それと同時に広い空間で戦闘音が空気を震わせて響き渡る。

ぶつかり合う木刀と拳撃と蹴撃。

Lv.6の高速戦闘を行う二人の速力は更に加速する。

「ハッ!多少はやるじゃねえか!」

高速戦闘中にヴォ―ルはここまで速度についてこれるリューに賛辞を送ると同時に獰猛な笑みを浮かべる。

その笑みは壊しがいのある獲物を見つけた猛獣の眼だ。

「上げるぜ?」

「!?」

その言葉と同時にヴォ―ルの速力が飛躍的に加速する。

明らかにリューが出せる最高速力を上回った速度で壁を跳躍するヴォ―ルの動きが徐々に捉えられなくなる。

完全にリューより速さを上回ったヴォ―ルは死角からリューに蹴撃を食らわせる。

「死ね」

勢いをつけた強烈な蹴撃がリューに炸裂する。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。