【ロキ・ファミリア】の獣人に案内されてミクロ達が訪れたのは旧式の地下水路。
そこにある隠し階段を進むとそこにはロキやリヴェリア達がいた。
「お連れしました」
「おお、ようやった」
ミクロ達を連れて来た団員に礼を述べるロキにリヴェリアが申し訳なさそうに謝る。
「すまない、ミクロ。他派閥である君達まで巻き込ませてしまって」
「問題ない」
既に
敵のアジトがわかっただけでも僥倖だった。
「今知っている情報を教えてくれ」
「ああ」
リヴェリアそしてロキから現在知っている情報をミクロに伝える。
それを聞いたミクロは頷く。
「わかった。俺達もすぐに向かう」
リュー達に視線を向けるミクロにリュー達も強く頷いて返す。
他派閥とはいえ一度は共に遠征をした仲。その中でも名実共に高いLv.6の冒険者が四人の助っ人はこれ以上にないぐらい心強い。
「君には何度も助けられているな」
「気にするな。友達とその仲間を助けるのは当然だ」
助けることを当然と言い張るミクロは『リトス』からローブを取り出してリュー達に手渡すとロキが面白げにそれを見つめる。
「ほーこれなんや?」
「
以前キュオとの戦闘でフェルズから教わり作製した
「ここから先にいるのはモンスターだけじゃない」
これから向かうのはダンジョンではない。
敵の罠が満載の
「………なぁ、【覇者】。これうちらにもいくつか譲ってくれへん?」
「作製に時間が掛かるからまだ五つしかない」
ミクロが人数を絞ったにもこれが理由だった。
自身の最強戦力の中でLv.6という実力者で留めてローブを身に着けさせる。
『リトス』には食料と予備の武器もある。
最小限の人数で最強の精鋭で留めて被害を最小限に抑える。
犠牲者を出さない為に。
「行くぞ」
ローブを身に纏い、ミクロ達は内部へと進んでいく。
内部に進むにつれて構造は迷宮。ダンジョンと変わらない広さと複雑行路になっている。
「これは……」
その構造にリューは驚愕の声を漏らす。
その広さ、複雑な構造は少なくとも数年、いや数百年の月日がいる。
年月を感じさせる迷宮の壁は
通路を進むとミクロは通路の先にある悪魔の彫像を見て破壊した。
「ミクロ……?」
「彫像は破壊した方が良い。これは
やっぱり
「ここから三組に分かれる。俺とリューは個別で行動して【ロキ・ファミリア】と合流することを最優先。アルガナとバーチェは敵を発見次第捕縛だ。生きてさえいればいい」
「それは危険です。敵はどのような戦力かわからない以上集団で行動するべきだ」
ミクロの指示に反対の声を出すリューの言葉は正しい。
何が出てくるかわからない以上、用心して集団で行動したほうがいい。
「危険だからこそ、敵は俺達も集団で行動すると思うはずだ。それを逆手に取って各自で動いた方が良い。ロキ達が話した
なら、扉を開ける鍵のようなものがある。
鍵は誰かが使わなければ開閉しない。
先程の悪魔の彫像からミクロ達を見ているとなると見ている人物が
なによりミクロにはその鍵と思われるものを持っている。
『D』と刻まれている赤い球体。
もしそれが
「ミクロ、私とバーチェは敵を捕まえればいいのか?」
「ああ、頼む」
「任せろ」
「………」
即答する恋する乙女のアマゾネス姉妹はミクロの期待に応えようと気合を入れ直す。
ミクロはリュー達に
「何かあれば即時連絡。危ない時は俺が助けに行く」
『リトス』から
「この槍には
『アヴニール』に付与されているのは
その槍の前には如何に
「全員生きて地上に帰還する。散開」
ミクロの言葉に散開するミクロ達はそれぞれ【ロキ・ファミリア】の元へ向かう。
散開した後にミクロは単独で行動しながらも彫像や他にも
普通の冒険者、いや、例え【ロキ・ファミリア】のような実力者達でもこの扉を破壊することは出来ないだろう。
魔法を使って破壊という手もあるが、
そのモンスターの特性は魔法の効果の減殺。
黄金色に輝く槍を構えミクロは
「通じるな」
見事に
【ロキ・ファミリア】を捜索するが複雑な構造だけでなく広大さも誇るこの迷宮ではすぐに見つけ出すことはできない。
地道に探し出すしかなかった。
「……取りあえず真っ直ぐ進むか」
目の前に
ミクロは二つ目の
「フッ!」
ミクロ達と別れたリューは早速
小太刀で
「いったい何が目的でこのような迷宮を……」
集める為の資金も作る時間も相当の筈。
そこまでしてでもこの迷宮を創り出す訳がリューには理解出来なかった。
底も目的もわからない
周囲を見渡すと戦闘を行った後や血が地面にこびり付いていた。
誰の血かまではわからないがここで戦闘が行われていたのは確かだった。
「……遺体がないということはまだ生きている可能性は高い」
敵か【ロキ・ファミリア】かはわからないがここに遺体がない以上、死んでいない可能性も十分にある。
なら、ここからどうするかと思考を働かせると足音が聞こえた。
「チッ、ミクロじゃねえのか」
リューが入って来た別の通路から舌打ちと共に姿を現したのは灰色の髪をした
その瞳を見てリューはすぐに悟った。
「……
「ああ、俺はヴォール・ルプス。テメーの言う通り【シヴァ・ファミリア】の一員だ」
ヴォ―ルと名乗る
「何故【シヴァ・ファミリア】は
「あぁ?それに答えてなんか意味があんのかよ?ここでくたばるテメエによ」
敵意と殺意を隠すことなく猛獣のように剝き出しにするヴォ―ルにリューは《アルヴス・ルミナ》を握りしめる。
瞬間、二人は姿を消す。
それと同時に広い空間で戦闘音が空気を震わせて響き渡る。
ぶつかり合う木刀と拳撃と蹴撃。
Lv.6の高速戦闘を行う二人の速力は更に加速する。
「ハッ!多少はやるじゃねえか!」
高速戦闘中にヴォ―ルはここまで速度についてこれるリューに賛辞を送ると同時に獰猛な笑みを浮かべる。
その笑みは壊しがいのある獲物を見つけた猛獣の眼だ。
「上げるぜ?」
「!?」
その言葉と同時にヴォ―ルの速力が飛躍的に加速する。
明らかにリューが出せる最高速力を上回った速度で壁を跳躍するヴォ―ルの動きが徐々に捉えられなくなる。
完全にリューより速さを上回ったヴォ―ルは死角からリューに蹴撃を食らわせる。
「死ね」
勢いをつけた強烈な蹴撃がリューに炸裂する。