こっからじょじょにヘイトとか入れていきます。
どうも、皆さん。ただいま時刻は午前9時37分です、愛染朝陽です。
クラス対抗戦が始まります、一回戦から早くも織斑君と凰さんの試合があります。
といっても10時頃なのでまだ先ですが。
「――あ、愛染君おはようございます。アリーナに向かうところですか?」
『おはようございます、山田先生。はい、これから、向かうところです。会場は第二アリーナ、ですよね』
廊下で山田先生に会いました。先生がたが忙しそうにしている中、山田先生も例に漏れず忙しそうです。
「そうですよ、観戦するだけでも面白いですからぜひ楽しんでくださいね!」
にっこりと笑った山田先生は踵を返してパタパタと走り去っていく。やっぱり忙しそうである。
その時、確かにカチャリン、と何かが落ちる音がしたのでそちらを見てみる。
そこには――おそらく山田先生が落とした――鍵束が落ちていた。
悪戦苦闘しながらも拾い上げてからどうしようか思案する。山田先生の姿はすでにいない。他の先生に声をかけて渡しても、この状況では山田先生に鍵束が回らないのではないだろうか? なら、やっぱり時間はかかるけど直接――
「――何をしているのだこんな廊下のど真ん中で」
後ろから唐突に声をかけられて驚いてしまう。声をかけたのは箒さんだった。
『お、驚きました。箒さん、おはようございます、織斑君とは一緒ではないんですね』
「あ、あぁ。今日は少し、な……――って私の質問に答えておらんだろう」
箒さんが言い淀むのを見て、あぁ、原因は織斑君か。と思った。
見ててわかったが、織斑君は女性関係で難を頻繁に起こしていた。この前もいつもの散歩コースを回っているとベンチに座り込んでいる凰さんを見た。思わず声をかけてどうしたのか事情を聞くと、織斑君が昔した約束事を履き違えていた、という。
他にも他の女生徒に付き合ってと告白された際に「俺でよければ買い物に付き合うよ」、なんて言ったり。
箒さんにも初日に色々とやらかしたらしい。
『えっとですね、これからアリーナに、向かうところだったんですが、山田先生がこれを、落としてしまった、みたいで』
僕が鍵束を見せると納得した顔をして手に取る。
「あぁ、ならば私が返しておこう。何、一夏の元に行けば千冬さんがいる、あの人に渡せば山田先生まで届くだろう」
その手があったかと思い、箒さんに感謝する。
『わざわざ、ありがとうございます』
「何、気にするな。ではな」
そう言って去っていった箒さん。僕もアリーナに急ごう。
――さぁ、始まりましたクラス対抗戦。アリーナもかなりの盛り上がりを見せております。
二年生や三年生も各アリーナで行っており、どこも白熱しているようです。
……話は変わりますが、こういう時ってトイレに行きたくなりませんか? 僕は行きたくなります。いつも良いところで行きたくなるので少し困ります。
男子トイレは一階職員室トイレか、同じく一階にある仮設男子トイレ(元女子トイレ)がある。職員室トイレより仮設男子トイレの方が広くて使いやすいので僕はそちらを使っています。
トイレも無事に終了し、戻る時に山田先生に再開しました。若干、視線が隠れるほどの量の書類を持っています。
『手伝いましょうか? 山田先生』
「あ! その声は愛染君ですか? す、すいませんお願いできますか?」
『構いませんよ、これはどこまで?』
『えっとですね、中継室までです』
中継室とはアリーナで司会者が色々と喋ったりしている、観客席よりも高いため試合がよく見える場所らしい。
中継室に着くまで僕は山田先生ととりとめのない会話をしていた。
「――ありがとうございます。試合も見ていないのに……」
『いえいえ、大丈夫ですよ。それよりも織斑先生から、鍵は渡されましたか?』
「鍵……ですか? 何の鍵です?」
眉を少し寄せ、首をかしげている山田先生。本当に知らないといった感じだ。
『え? 貰っていませんか? 箒さんに渡して、織斑先生に渡すと言って、いたのですが……?』
「――そんなはずは、現に私が鍵を持って……あれ⁉︎ な、ないです⁉︎」
服のポケットを確認し、ないことに気付いた山田先生はわたわたと慌て始める。
「た、大変ですぅ!」といって中継室を飛び出して行ってしまった。
僕も追いかけようかと思っていた時、アリーナの方で、中継室にいた司会者が叫び声を上げた。何事かと思い、そちらに見に行くとアリーナ内に黒く大きいISのようなものがいて、織斑君や凰さんに襲いかかっていた。
するとビーッという音が鳴り響き、カチッという音が聞こえた。
司会者の女生徒はハッとして扉の前に行き開けようとするが、開かない――僕も含めて閉じ込められたようだ。
僕も扉を確認してみるが、ダメだった。扉の方は諦めるとして、どうするかと思った時アリーナから腹の底に響くような音がした。
『うわっ』
何かが直撃したかのような揺れにバランスを崩しそうになる。そちらに視線を向けるとあのISのようなものが手の平から大きな
「え? きゃっ――」
扉の方にいた女生徒が悲鳴をあげる。何だと首をそちらに向けると閉ざされていたはずの扉は開け放たれており、そこには鍵束を手にした箒さんがいた――中継室の鍵は施錠式なため、自動的に施錠がされただけで鍵さえあれば簡単に開けることができる――織斑先生に鍵は渡していないのかとか、山田先生はとか今は置いておいて何故ここに来たのか。
司会者でもある女生徒は先ほど開いた扉からすでに出て行ってしまったのでここには僕と箒さんだけになった。箒さんはツカツカと歩を進めてマイクを手にしたあたりで僕が我に帰り声をかけて止めに入る。
『ほ、箒さんっ、何をしているんですかっ』
「えぇい、話せ愛染! 私は一夏に喝を入れてやらねばならんのだ!」
方や男子とはいえ重病人にも似た体躯、姿形をしている僕、方や女生徒はいえ健康体で鍛えているのかしなやかな体つきをした箒さん。力負けするなど目に見えていた。
『あぐっ』
力負けして車椅子ごと倒れこむ。この状況になってしまってはもう周りに起こしてもらうかISを使って立ち直すしかない。ISを起動させようとしたところで箒さんがマイクをオンにしてアリーナへと叫ぶ。
【――一夏ぁっ‼︎】
キーンッというハウリングが不快に響く。それでも構わずに箒さんは続ける。僕は必死にISの姿を思い浮かべる。
【男なら、男ならそれくらいの敵に勝てずして何とする!】
大音量でアリーナ内に響き渡った音声は凰さん、一夏にも聞こえ、あのISにも聞こえていた。こちらを見る、そしてゴツい手の平を箒さんに向ける。
――まずい。あの熱線が撃たれる。
そこでやっとISが起動し、換装する。
危ないと、声をかける手間さえ惜しい。
すぐに立ち上がった僕は箒さんを出口付近の方へと突き飛ばす。
「なっ⁉︎ きゃっ――」
女の子らしい悲鳴を上げた箒さんは出口付近の壁に激突した。ISをまとっている状態で突きとばせばかなり危ないが、思えばそれが良かったのかもしれない。
――瞬間、愛染朝陽は高出力と熱量を持った熱線にISを纏った状態で全身を灼かれながら吹き飛ばされた。
前話に登場した牧部理澄先輩ですが、私がこの話を考える前からどうしようか悩んでいたキャラの一人です。
つまりお気に入りキャラその一