これからもよろしくお願いします。
どうも、皆さん、こんばんわ。愛染朝陽です。
クラス代表決定戦はオルコットさんが勝ち上がりました。あの後、織斑君とも試合をして負けたので、結果としては3位ということになります。
それから後日、オルコットさんがクラス代表になるのかと思いきや、その座を織斑君に譲渡。訳は「ずぶの素人の攻撃でわたくしのビットが破壊されてしまったのです。代表候補生としてまだまだだったわけですからクラス代表は譲りますわ」とのことだった。本人が納得しているならばぼくは良いと思う。織斑君、クラス代表、頑張って。
そんなわけでクラス代表就任パーティというものが食堂で執り行われている最中、僕はというと、自室にいた。
何故かというと、試合中に右脚、左太腿の骨を骨折していたからだ。無理な立体起動をしたため、負荷がかかり折れてしまったのこと。
動けないとはいえ、両足にギブスをはめて骨を癒着させている中、こんな僕が行ったら空気を悪くさせてしまうんじゃないかと思い、行かなかった。何人かには誘われたが、丁重に断らせていただいた。ちょっと罪悪感があったが。
勉強の他に何かないかと考えた結果、日記を書くことにしました。これからの習慣にもできるので良い考えです。
ふんふんと身体を動かしたり、勉強をしたりして今日は過ぎていった。
おはようございます、昨日は賑やかでしたね。どうやら、噂で二組に転入生がやってくるらしいです。
今日は土曜日なので授業は休みなため、布仏さんは寝ています。僕はというと、気分転換のため、外に出ることにしました。といっても学園付近ですが。
カラカラカラ、と車椅子を移動していると、学園の門前広場に差し掛かったところで前から誰かがやってきて声をかけられる。
「――ちょっとそこのアンタ。ここの学園の人でしょ? ちょっと事務室まで案内してくれない?」
身長は小さめで、ツインテール。勝気な目をしており、Tシャツにショートパンツという、とてもラフな格好、手には小さめのボストンバッグを持っている少女がいた。
『あ、はい。いいですよ』
特に断る理由もないので案内することにした。案内といっても事務所に連れてくだけだが。
「アンタ、もしかして発見された二人目の男?」
『そうですね』
「なんで車椅子乗ってんの?」
『体がうまく動かせないので』
「アンタ本当に男なの? 正直ぱっと見分からないわよ」
『そうですか? 自分ではわからないですね』
事務所に着く間、沈黙が嫌なのかずっと質問してきたので答えてあげる。この娘、ずいぶんとグイグイと聞いてくるな。
『――着きました。ここです』
「わかったわ、ありがと」
礼を述べて事務所に入っていくのを見送りながら僕はどういたしまして、といってから部屋に帰った。
部屋に帰ると起きていた布仏さんに昼食に誘われたので一緒に行くことに。今日は梅がゆでした。いい塩梅とはまさにあのおかゆのことを言うんだなと思うほど美味しかったです。
その後は布仏さんに勉強を教えてもらったり、からだを動かしたり、日記を書いたりしました。
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おはようございます、愛染朝陽です。今日はどうやらその噂の転入生がやってくるそうです。クラスでは一体誰なのか、という話で持ちきりみたいで、そこかしこでそういった話題が上がっています。
「……おはよう、愛染君」
『おはようございます。サミュエル・ウォルトさん、アリシア・ウォルトさん、ハイネ・ウォルトさん』
あれからすこしずつではあるがウォルト三姉妹とも接するようになった。
『――あの、もしよかったらで良いんですが、今度ISのことを、教えてもらってもよろしいですか?』
今週は山田先生は忙しく、織斑君は箒さんやクラスのみんなから今度ある学年別の大会に向けて放課後は訓練に追われていたりと、とても僕がついていけるものではなかったのでダメだった。
「……まぁいいけど。愛染君の専用機と訓練機の動きは違うんだけど。あとなかなか訓練機が回ってこないんじゃない?」
疑問を口にする長女のサミュエルさん。確かに専用機ならそうだ。
『教てもらうのは、訓練機の方ですから、大丈夫ですよ』
「……何で? 専用機持ってるのに訓練機なんで使うのさ。持ってない私たちに同情? それともあてつけ?」
若干不機嫌さを醸し出しながらサミュエルは僕に悪態を吐いてくる。
うーん、そんな気はないんだけどな。そう見られちゃったのか。
『いえ、そういうわけでは、ありません。
これはあの試合のあとに織斑先生に言われたことだ。
「なら良いけど……大丈夫なの? その脚で」
サミュエルさんは僕の足を指差して言う。まだ骨折は治っていないのでつけているギブスを見ていた。
『訓練ができる頃には、外れてると思います』
「そんだけ後になること前提で話してたのね……」
呆れ顔で言われた。でもとサミュエルさん言葉を続ける。
「受けてあげるわ。その代わり、あなたのISの稼働データで手を打ってあげる。どう?」
サミュエルさんがそういった途端、横にいたアリシアさん、ハイネさんが動揺をあらわにしていた。
『稼働データ……ですか? よく分かりませんが良いですよ。僕みたいなものの、データが役に立つのであれば』
稼働データでどんなことをするのか分からないけど、僕が出せるのは多分それくらいだから喜んで提供しよう。
そう言うと今度はサミュエルさんが動揺を見せていた。
僕が疑問に思っていると次女のアリシアさんが代わりに口を開いた。
「自分が何を言ってるかわかってる? 稼働データよ、稼働データ。それをほいほい渡すなんて何考えてるのよ」
『そうなんですか? でも、僕が出来るのは、それくらいかと思いまして。』
「あなた……もっと人を疑うことを覚えなさい」
アリシアさんは困惑げに僕に言う。
「――その情報、古いよ」
そこで教室のドアから響き渡るようなハッキリとした声が聞こえ、話が中断される。ウォルト姉妹も僕もそちらを見る。
そこには僕が事務所に案内した少女が立っていた。
「二組も専用機持ちが代表になったの。そう簡単には優勝できないから」
「鈴? 鈴じゃねぇか! 久しぶりだな!」
少女を見たとたん織斑君が親しげに話しかけていた。どうやら知り合いらしい。
「そうよ。中国代表候補生、
ファン・リンイン。今日は宣戦布告に来たってワケ」
「何かっこつけてんだよ。すげぇ似合ってないぞ」
「なっ⁉︎ うっさいわよ!」
顔を朱に染めて織斑君に吠える凰さん。
「……とりあえずそう言うことよ、気を付けなさい」
ウォルト三姉妹はチラリと時間を見て、話に区切りを付け、席に戻っていった。戻り際に三女、ハイネさんがこちらにバイバイ、と言うように胸のあたりで小さく手を振ってきたので、こちらも振り返して挨拶をする。
「あ、アンタは」
後ろから先ほどの少女が僕に気付いたような声を上げていた。
それに振り返ると丁度織斑君が聞くところだった。
「あれ、鈴は朝陽のこと知ってるのか?」
「昨日ちょっと案内してもらったのよ」
『はじめまして。僕は愛染朝陽と言います。よろしく、お願いします』
「わたしは凰・鈴音。よろしく」
僕と凰さんは握手をしてその場は織斑先生が来たため、お開きとなった。
『――セカンド幼馴染、ですか?』
休憩時間に織斑君が話をしてきたので聞くとどうやら箒さんがファースト幼馴染、凰さんがセカンド幼馴染と言っていた。
『幼馴染に、ファーストもセカンドも、ないと思うんだけど』
「そうか? そっちの方が分かりやすいんだよな」
織斑君の言葉に後ろにいた箒さんが顔をしかめる。そうなのかな? 僕はそうは思わないが。
織斑君の意外な性格が見れた日だった。
おや? 織斑一夏の様子が……
後で少し修正すると思います。