IS・人並みの幸せ   作:1056隊風見鶏少尉

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最後はある人物を登場させたかったから無理やり入れた。
後悔はしていない。
多分あと一話で戦いは終わります。


番外3 『集いしは世界』

 

 

 

 

 「――――!」

 

 束は一方通行(アクセラレータ)がプラズマを発動させたことに驚いたのではなく、それ自体が墜ちてきたことに目をむいていた。

 

 今までプラズマを発して攻撃手段にするということは知っていたがそれを落とすなど見たことがなかった。

 

 「くっ――!?」

 

 そこで篠ノ之束な初めての動揺が奔る。ISにプラズマが誇る破壊力を受け止められる防御力は無い。

 いや、あるにはあるがそれをすると他の攻撃に対処できなくなる――

 

 1秒未満で様々な場合を考え、そして行動に移った。

 

 「――――!」

 自身にISを纏わせ、さらに数機呼び出して覆うように展開させてから絶対防御値数を最大まで引き上げる。

 そうすれば摂氏一万度などという馬鹿げた威力も少しは削げる。

 

 そこまで考えた時、プラズマが束に堕ちた――

 

 

 最初は無音だった。忘れていたのを思い出したかのように音と熱波が縦横無尽に襲いかかってくるが、一方通行と垣根帝督には通用しない。

 一方通行は反射で、垣根は未元物質(ダークマター)で自身を守っていた。

 

 「ふぅ、やりすぎですよ一方通行、これでは流石に周囲の民間人に気付かれます。あと頭から血、出てますよ」

 

 「あァ? うるせェクソが、あのクソメルヘン女がキレさせたのが悪ィンだよ」

 

 血を拭いながら垣根に悪態を吐く一方通行。

 こんなやりとりを、かつての二人を知っているものが見たらどう思うかなど明白であろう。

 

 「! ――おやおや」

 

 「……ずいぶん気骨があるじゃねェか。一応、全力だったんだがなァ」

 

 「褒めてやるよ」と一方通行は嗤いながら束にいう。

 

 視線の先には確かに篠ノ之束の姿があった。

 限りなくボロボロになり、黒焦げになっているISだったものが周辺に転がっており、束の纏っていたISも限りなく破壊されていた。

 

 束の使ったISには少なからず電撃耐性や避雷針のようなことができるのだがまるで意味をなさなかった。束が無事なのは少なからず奇跡も入っているのかもしれない。

 

 「ふは、やってくれたね」

 

 凶器にも近い笑みを浮かべ、即座にISを数体召喚する。

 一つは見上げるほどの巨大。一つは骸骨のように細い機体。一つは腕と足だけが特質して太い機体。一つはカラダがバラバラと宙に浮いている機体。

 

 「おィおィ、こりゃァ何の冗談だ? まさかたったこンだけでやれるとでも思ってンじゃねェよな」

 

 喋りながら一方通行はビルの壁に寄り掛かる。

 垣根もまた、能力を発動し未元物質(ダークマター)でできた翼を出現させる。

 

 「垣根、テメェにメインディシュは任せてやる」

 

 バッテリー残量が残り少ない一方通行は垣根に束を任せると言って石を能力を使って砂に変える。それをISに向かって緩く投げる。

 

 「――さっきのプラズマ、ありゃァ確かに全力だ。アクセラレータとしてな」

 

 微小な砂つぶがISに寸分違わず向かっていき、当たる。そこで一方通行は地面を音が鳴るほど踏んだ(・・・)

 次にはその砂つぶがあった全ISが地面に寝そべっていた。壊れわけではない、束はISを動かそうとするが何かに押さえつけられているように立ち上がらない。

 

 空気のベクトルを変換、さらにそこから砂つぶだけをベクトル変換し、力を微調整しながらISを押さえつけるという荒技をやってのけた一方通行。

 そのまま一方通行は寄り掛かかっていたビルの壁に手を当てる。

 

 「なら今度は一方通行としての全力(・・・・・・・・・・)をぶつけてやるよ」

 

 一方通行によるベクトル操作。腕がビルに飲み込まれるような現象、雄叫びと共にビル自体が浮き、そのままISに向かって投げた。

 

 窓のないビルに一撃を放った時と同じ攻撃。地球の自転五分分を使った攻撃だが、今回はバッテリー残量的に一分分。しかしそれでも威力は十分すぎる。

 

 何の抵抗も出来ず全ISはビルの下敷きになった。ビルが砕け、瓦礫の山と化したその場所には動く者は三名しかいなかった。

 

 「――化け物め」

 

 「おィ、人外がいうなよなァ、悲しくなるぜェ」

 

 すでにIS数機を失い、服がボロボロになっている束だったが、狂気の笑顔は消えない。

 

 「こい――」

 

 唐突に束が何かを呼ぶ。

 

 「――『スペクルム』」

 

 それ(・・)は束の背後から|空間を歪めながら這い出てきた。

 流体のように様々な面から光を反射させ、ところによっては虹色に輝いて見える正体不明のIS。

 

 「――『未元物質(ダークマター)』」

 

 それを見た瞬間、白垣根は動いていた。自身の能力をフルに使い――今は夜。そして満月は天高く昇っている――物理原理を捻じ曲げ、羽根に透過した月光をまばゆい光線に変え、対象を殺すべく射出した。

 

 「――なに⁉︎」

 

 しかし、垣根が放った殺人光線はISに当たるとこちらに跳ね返ってきた(・・・・・・・・・・・)

 

 すぐさま回避行動を取る。避けられないわけがないが、まさか未元物質(ダークマター)の攻撃が跳ね返されるとは思っていなかった。

 

 「――あァ……スペクルム。鏡か」

 

 一方通行は目の前の現象を即座に理解した。遅れて垣根も。

 

 「――イラ」

 

 束が呟き、立っていた場所から束の胸あたりまで大きさがある狼のようなものが現れた。

 それは雄叫びをあげると、垣根に向かって弾丸のように飛んでいく。続いてスペクルムと呼ばれたISもゆっくりと移動を始める。

 

 

 「やれやれ。私は運が良いようだ」

 

 羽根を広げ、辺りに散りばめると殺人光線、熱線、斬撃、刺突……攻撃のオンパレードで迎え撃つ。

 

 攻撃の応酬、読み合い。どちらも様々な手を出し、かわしあう。

 

 「――いったぁ……こけちゃったでありけるのよ」

 

 そのまま続くと思われた時、場違いな声が聞こえ、両者はその声の方を見た。そこには――

 

 「――第一の質問です。何故ここにあなたがいるのですか。最大主教」

 

 「――サーシャちゃぁん、放置プレイなんて濡れる――あらー?」

 

 「――最大主教(アークビショップ)! 勝手に動かれては困ります! っ⁉︎」

 

 天災・篠ノ之束、第1位・一方通行、第2位・未元物質のいる場所に――

 

 

 イギリス正教・最大主教、ローラ・スチュアートが。

 イギリス正教・必要悪の協会(ネセサリウス)、ステイル・マグヌスが。

 ロシア成教・『殲滅白書』、ワシリーサが。

 ロシア成教・『殲滅白書』、サーシャ・クロイツェフが。

 

 超能力者(科学)魔術師(魔術)超人(外の世界)が邂逅する瞬間であった。

 

 

 

 




ワシリーサの【バーバ・ヤーガ】
ステイルの【イノケンティウス】

……ヤベェな、束さん逃げ切れるかな

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