もうすぐ…もうすぐです。冒険。
最後の方に…
目がさめる。
知らない天井だ。
周りを見渡すと、医薬品の様なビンなどが並べられた棚がある。医務室かな?
ガレスにやけくその面を打ち込んだ後の記憶がない。
体を起こす。あちこちが悲鳴をあげる。節々が痛む。年かな?
部屋を出ると、どうやら夕方らしい。廊下の奥から誰かきた。
「あっ‼︎ロージ君、目が覚めたっすね⁉︎」
ラウルだ、はぁとため息をつく。
「えっ⁉︎また自分なんかしたっすか‼︎」
「えっ?いや、べつに〜」
「ま、まぁもうすぐ夕飯の時間だから呼びに来たっす」
「あぁ、ありがとう」
「⁉︎ロージ君がお礼を⁉︎」
何ビックリしてんだよ。失礼やがなお前。
2人で食堂に向かう。腫れたホッペのせいで、ものっそい食べづらい‼︎クソガレスめ。
「おっ、目が覚めた様じゃな‼︎」
ガハハと豪快な笑い声と共に、後ろから掛けられた声に反射的に飛びかかる。首根っこを掴まれて、宙ぶらりんだ。
猫かわしは‼︎
「まったく、力加減を考えろ」
「あぁロージたんのホッペがめっちゃ腫れとる〜」
呆れた様に片目を瞑るリヴェリアと、泣き真似をしながらロキもきた。
「七郎治。気分はどうだ?」
「ロージたんムリしたらあかんよ?うちが添い寝しよか?ご飯あーんしたろか?」
バキッ!
ロキがリヴェリアに殴られた。
「夕飯の後は、私がダンジョンの基礎知識を教えよう。風呂に入ったら、私の部屋に来い。」
リヴェリアが優しく微笑みかける。
「先に風呂に入れてロージたんにナニする気やリヴェリア⁉︎」
ドカッ‼︎
ロキが地面にめり込んだ。
あっぶね〜「ナニってナニでしょうww」とか言わんでよかったわ。
夕食後、言われた通りリヴェリアの部屋に来ていた。中は綺麗に整頓されてあり、気品が溢れている。
「七郎治は読み書きができないようだな。図解で説明していこう。字はそのうち覚えていけばいい」
リヴェリアの講義始まった。とりあえず忘れないように日本語でメモを取っていく。リヴェリアがその様子を見ていたが何も言わなかった。講義はダンジョン誕生の話から、仕組み、必要なこと、注意事項、上層の地図にモンスターの弱点etc…
うん、なっっがいし‼︎量多いし‼︎終んねー‼︎‼︎
最後に本日のまとめ。小テストだ。読み書きが出来ないので、口答になるが…
なめるな!こちとら高校は特待生だったんだぞ!施設だから行ける高校の上限が決まってて、すんげー勉強してきたんだ。この位楽勝だわ‼︎
リヴェリアにテストの結果を褒められた。
照れるわ〜
今日の講義は終わり、字を覚えるように帰り際に本を渡された簡単な絵本だった。
リヴェリアにお礼を言って、部屋に戻る。
リヴェリアside.
七郎治に講義をする事になったのだが、どうやら読み書きが出来ないらしい。年齢を考えればおかしな事ではないが本人は気にしているとガレスに聞いた。
夕飯のとき、七郎治の様子をみたが元気そうだ。些か不機嫌そうにガレスに持ち上げられていたが…
ロキは…はぁ、七郎治の講義より長い説教が必要なようだ。
約束通り七郎治が私の部屋にきた。
図解で説明していくのだが、なんと七郎治はメモをとり始めた。読み書きができないのでは?
…極東の文字を使っているようだ。なるほど、共通語がわからないだけのようだ。それもその内覚えるだろう。
最後に軽く小テストをするのだが、今まで初日のテストで6割正解する者も殆どいないが、この子はどうだろうな?
私は驚愕した…
初の全問正解だ。知識の取り入れ方を分かっている。6歳なのになぜ?…しかしガレスに指導役を取られたのは惜しいな。
帰り際に絵本を渡す。興味深そうに眺めていた。その顔はまだまだ子供だな。
さて、七郎治の講義も終わった。ロキの説教の時間だ。簡単に済むと思うなよ。
リヴェリアside,END
あぁやっと終わった。
あまり感情を顔に出さずに講義を受けたが…
ダンジョン面白そう‼︎
よし、ちょこっとだけ行ってみるべ‼︎
部屋にリヴェリアに貰った絵本を置き、脇差を腰にさげ、爆睡するラウルの顔に落書きをし、いざ出発‼︎
門番がいたが、こっそり屈んで通りすぎる。
…警備以外とザルやな。
さぁやって来ました‼︎ダンジョン1階層‼︎
夜だからか、他の冒険者は誰もいない。静まり返る空気は不気味で、どこか遠くでモンスターの鳴き声がする。
しばらく歩くと、ビキッ!と壁にひびが入る。
来た。
脇差を下段に構える。ダンジョンに生み出されたのはゴブリンだった。リヴェリアとの講義で行動パターンは分かる。相手が仕掛けて来るのを待つ。
ゴブリンが私を殺そうと、向かって来る。一瞬怯んでしまうが、斜め横に動きゴブリンの死角に入る。体制を建て直される前にその背中を逆袈裟で切り上げる。
赤い液体を吹き出した。ゴブリンが悲痛の叫びをあげる。まだ、絶命していない。尖った爪を振り下ろしてくる。半歩横にズレてかわすも、少し腕をかすった。攻撃直後の隙をつきゴブリンの胸を横に切る。また、赤い液体を吹き出した。今度は紫紺の石が飛び出た。灰になり消えた。
私は紫紺の石を見つめる。魔石だ。モンスターが死んだ証拠。
そう…私が殺した。
吹き出した赤い液体は、私が腕から流して入るものと同じ“血“だったのだ。
吐きそうだ。冒険者はモンスターを狩るもの。それは命を奪う行為だ。
私はがむしゃらにホームに向かって走った。ベッドに勢い良く飛び込んで、毛布を被る…
これからどうすれば良い?
七郎治の初ダンジョン。
なんか散々な感じですね〜