冒険…
まだ?
ロキの部屋を逃げるように出て、ガレスが待つ正門に向かう。
「おっ?来たな。今日はギルドに行ってお前の冒険者登録をすませる。その後に軽く訓練をするぞ。夜はリヴェリアにダンジョンの基礎知識を教えてもらえ。では、行くぞ」
今日の予定を言い渡された。
結構キツくね?まだ6才児だからそこまで厳しくないよね⁉︎
いろいろ考えながらガレスの後を着いてメインストリートを歩く。途中はぐれそうになったのでガレスの服の裾を掴む。徐々にいかにも冒険者‼︎って感じの人が増えてくる。
「ほれ、着いたぞ。早く登録をすませるぞ。」
中に入ると昨日私に冒険者になる為の説明をしてくれて、探索系のファミリアの場所を書いたメモまでくれた人がいた。茶髪を下の方で二つ結びにしてパッチリとした目が可愛らしく受付嬢が似合う少女だ。歳は15、6だろうか。
入ってきた私に気づき微笑みながら近づいて来た。そして、横にいるガレスを見て驚愕の表情を浮かべ、私とガレスを交互にみる。
「冒険者登録に来たんじゃが、任せて良いか?」
「…‼︎っはい‼︎ではこちらへ‼︎」
受付まで着いて行く。周りの冒険者達がヒソヒソ何かをはなしていたが、耳に入ってこなかった。
私は大事なことに気付いたからだ!
ガレスに字の読み書きが出来ないことを伝えていない!
「えーと、改めまして。担当をさせていただきます。ソフィア・ディーンと申します。
では、この用紙に必要事項をご記入下さい。」
ヤバイよ!ヤバイよ!
変な汁が止まらない!昨日からちょっとしたことでテンパりまくりだよ!
固まったまま動かない私をみて、ガレスが察したのか何も言わずに用紙を埋めていく。時々質問をされたが、なんて答えたか余り覚えていない。ガレスとソフィアが一言二言話して冒険者登録が終わったようだ。
ギルドをでてから、ホームへの帰り道。余り情けなくなりうつ向きながら歩いていると、ガレスに問いかけられた。
「何故、何も言わなかった?」
「…忘れてました。すみませんでした。」
「儂等はもう家族だ。遠慮せずになんでも言え。」
「親方様…」
ガレスの大きな手で頭を撫でられた。
嬉しい反面、罪悪感を覚えた。
転生者であること。
フィンやリヴェリアのような原作で活躍する人ではなく、ファミリアの主要人物でありながら余り登場しないガレスを師事したのも、本人の申し出もあったが、余り目立たずに、厄介事に巻き込まれたくなかっただけだ。
結局、何も言えずにホームに着いた。
「さて、朝話した通り軽く訓練を付けてやる。今から訓練所に行くぞ!」
ガレスはニッと笑うと私の頭を乱暴に撫でた。髪の毛を整えながら、後を着いてゆく。
いつか全てを話せる日が来るだろうか…
この人結構脇役じゃね?ちょうどいいかも!
…なんて思った昨日の自分をしばき倒したい
「ほれぇ!どうした!脇が甘いぞ‼︎」
ッバキ‼︎
痛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎
もう嫌だ。とりあえず木刀振ってみ?って言われて、筋がいいなんて言われて、まぁ剣道してたから( *`ω´)なんて思ってたら、じゃ模擬戦ね☆ってなって、今メッチャしごかれてます!
「どうしたぁ!その程度では冒険者など務まらんぞ‼︎」
ドカッ‼︎‼︎
ちょっ!マジやめて!まだ6歳よ!容赦なさ過ぎばい‼︎
えっ、てか、ほんと、うん…
やめろやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎
いいよやってやんよ。ああやんよやんよ!
「リャァァァァァァァァァ‼︎」
「面‼︎」
スパン‼︎
「ふん!その程度かぁ!」
ドコンッッ‼︎
私は意識を失った。
ソフィアside
昨日の可愛い子どうしたんだろ?ちゃんとファミリア見つかったかな?
なんて考えていると入口に昨日と同じ小さな姿が。私は思わず駆け寄った。ふと、小さな手が掴んでいるものをみると、なんと【ロキ・ファミリア】の最高幹部【重傑】ガレス・ランドロックだ。
え?うそ?まさか都市最強派閥のファミリアに入ったの?たしかに神ロキが好きそうではあるけど…
えぇー⁉︎
そんなことを考えていると冒険者登録をすることに…
受付に案内して説明を進めると、あの子が固まって動かない。困ったような、焦ってるような表情だ…
ひょっとして字が…
【重傑】ガレス・ランドロックが用紙を埋めていく。書き終えた用紙に目を通す。
ロキ・ファミリア
七郎治
男
・・・・・・え?男?うそ?
今日1番の驚きだった。
用紙の記入が終わると、ギルドでの冒険者ようの講習があるのだが、読み書きが出来ないのでファミリアで教えるようだ…。ロキ・ファミリアなら安心だけど、少し残念かな?私はうつむいた小さな背中を見送った。
ソフィアside.END
ガレスside
ロキに言われ、七郎治の冒険者登録に同行することになった。ロキ・ファミリアであることを証明するのに手っ取り早いからのぅ。
ギルドに向かう途中、何かに服の裾を掴まれた。目線を下げると七郎治の小さな手だった。笑いそうになるのをこらえた。…ロキに見られたらからかわれそうだが。
ギルドに着くと受付の1人がこちらに向かってきた。七郎治を見てから儂をみて驚いているようだ。まぁ無理もない。
登録をするように促すと、用紙を前に七郎治が固まったまま動かない。
…こやつは読み書きができんのか?
何故言わん。
ホームへの帰り道で問いただすと、どうやら伝え忘れたらしい。しかし、その顔はひどく悲しそうだった。
「儂等はもう家族だ。遠慮せずにいなんでも言え。」
複雑な表情を浮かべた。
ホームに着くと、まず訓練所に向かう。予定通り訓練をする。最初にどの程度出来るか確認だ。
木刀を構えるその姿は、先程の感情を捨て剣にのみ集中されていた。
ほぅ?良い構えだ。振るわれる太刀筋も年の割にしっかりとしそれなりの期間剣を振るっていたかのようだ。どれほど出来るか試してみるか。
結果を言えば、型にはまりすぎている。実戦経験が無いというわけではなさそうだか、これではダメだ…。とことん鍛えてやろう。
気を失った。力加減を間違ってしまったようだ。
しかし、のぅ…最後の打ち込みは悪くなかった。こらからが楽しみじゃわい!
ガレスside.END
次回はリヴェリア。
もう少しでダンジョン。(遅)