しばらく時間があきました。申し訳ないです。
ーダンジョン 6階層ー
「もうすぐ地上だね!」
「ちょと、いくら上層だからって気を抜き過ぎよ」
「アイズどうしてんのかな?」
「って聞きなさいよ‼︎」
ヒリュテ姉妹が呑気に会話をしながら前にいるモンスターを片手間に文字通り蹴散らす。その後ろを歩くフィン、レフィーヤ、ラクタは渇いた笑みを漏らした。
「あ、ははは。た、確かにアイズさん達の事は気になりますね…」
37階層で別れた自分達の仲間の安否が気になり、ティオナの言葉に同意した。
「アイズ嬢なら心配いらんめぇ?副団長も付いてるんやし」
「「「「え⁉︎」」」」
ここに居ないはずの人物の声が聞こえ、いっせいに後ろを振り向く。そこには皆んなと一緒に後ろを振り返った七郎治の姿があった。
「…何もおらんよ?ビックリさせんでくれん」
「いやいや、えっ?七郎治いつからいたの?」
「はっ?ずっとおったばい?」
いけしゃあしゃあと言う馬鹿に対して詰め寄る。
「ねぇアイズは⁉︎1人なの⁉︎」
「あんたアイズのとこにいたんでしょ⁉︎」
「どうして1人なんですか⁉︎アイズさんとリヴェリア様はどうしたんですか⁉︎」
「じゃけん、ワシはずっとおったろうもん!何これ新手のイジメなんか⁉︎」
ギャーギャーと言い合いを始め、問い詰めるティオナ達に対して知らぬ存ぜぬを突き通す七郎治。ラクタはオロオロとし、フィンは大きなため息つく。「アイズに余計な心配をかけない為に、七郎治は皆と一緒に帰った事にする」と決めたのだが…。本人が戻ってきた途端これだ。
「はぁー。その位にしてくれないかい?…七郎治は僕らと一緒にいただろ」
「はい、団長‼︎七郎治はいました‼︎」
「「え〜」」
フィンの一言で治まったものの、思い人の言葉に手のひらを返したティオネ以外は不満気だった。これ以上、団長の言葉に文句を言うと今にも怒り出すだろう。ティオナは、んーと考えこむ。普段は何かを考えて行動しないので上手く聞き出す方法を思案していた。
「…ねぇロージ、アイズは大丈夫なんだよね?」
「大丈夫やろ」
心配そうに問いかけるティオナに対して、あっけらかんと答えが返ってきた。
「…そっか!」
結局聞けるのはこのぐらいだった。七郎治がアイズの元に向かったのは間違いない。その七郎治が1人で戻って来たなら心配は要らないのでは?それに大丈夫だと言っているのだ。今はこれで充分。本人が帰って来たら聞けばいいと結論した。
「そうだ、帰ったら話があるんだ。覚悟は出来ているかい?ねぇ、七郎治」
「あ、はい」
勝手な行動をとった団員を許すはずがない。物凄く良い笑顔を、逃がさないよ?と言わんばかりに向ける。あっコレいかんパターンや、と七郎治は諦めた。
ー黄昏の館ー
門番が帰還したメンバーを優しく迎えてくれる中、1人だけ憂鬱としていた。
どげんしようかな〜。逃げたら余計怒られるしな…。
どうしたものかと考えていたが、救いの神は手を差し伸べてくれた。
「おっ?お帰り〜!」
一つにまとめた朱色の髪を揺らしながら、嬉しそうに眷属を出迎える主神の姿があった。
「…あっ!お、おおお!主神様ー‼︎会いたかったyo‼︎」
「むふふ、なんや〜?ロージたん今日はえらい甘えん坊やな〜」
キャッキャ、ウフフ、ロージタンノウナジ、ハアハアとじゃれ合う。普段は出迎えてもセクハラのせいで冷たくあしらわれるだけなのだが…。今回に限っては七郎治のみ抱き付いて喜びセクハラし放題である。
「はぁー。ほら、七郎治は僕と行くよ」
「なんや?フィン、ヤキモチか?」
フィンは大きなため息をつき、七郎治の首根っこを掴み主神ごと引きずって行く。これから待ち受けている事をつゆとも知らずに、ロキは見当違いな発言をし戯れ続ける。
目の前で起こった一瞬の出来事をポカーンと見つめていたレフィーヤはラクタと顔を見合わせ同時に首を捻り、ティオナ達は至って普段通りにダンジョン探索の後始末を始めていた。
「あ、あの〜。今のは?」
レフィーヤがおずおずと今しがた起こった事に問いかける。
「んー、たぶん1人で怒られるのが嫌だったんじゃない?」
「タイミング良くそこにいたロキを道連れにしたんでしょ?」
「なんか思い付いたみたいに「あっ!」って言ってたし!」
(か、神を道連れって…)
そんな話し聞いた事がない。と呆れなが3人が去って行った方を見つめ、聞かなかった事にしようと決め一つ間を置いてティオナ達の手伝いを始めた。
2時間後
「さて、説教はこれ位でいいかな?今後は気をつけるんだよ?」
勝手な行動をとった事に対する説教が30分程。ティオナ達を押さえて帰還する苦労に対する愚痴が1時間程。ロキに対して普段のダラシない生活と態度の説教に30分程。執務室に正座をさせられて、主神と眷属は仲良く説教されていた。
たまたま執務室で作業をしていたガレスは、最初は何事かと思ったが、早く出て行けば良かったと後悔していた。完全なとばっちりだ。
「う、おお…。足が…」
「うう…。ウチ神やのに…。お前わざとウチを巻き込んだな〜?」
「…主神様、こう考えたら良いいばい「副団長よりは遥かにマシ‼︎」ってな。それに後半は主神様の事だったけんな」
「そらそうやけど!」
子供じみた言い合いを始めた2人はお互いの痺れた足を突きあう。それをよそにフィンは疲れ切った表情で執務室のソファーに腰掛けた。
「フィン、お主も大変じゃったのう」
「あ、ははは…まぁね。それより留守を任せてしまってすまないね、ガレス」
「ふむ、その事なら別にええんじゃが…。あの様子だと大丈夫そうじゃのう」
ロキとじゃれ合う弟子の姿を見て眼を細める。リヴィラの街の事件後に見たときは何か思い悩んだ様子だったが、今は気が晴れた様だった。
「まぁね…ガレス、七郎治の事で話があるんだ」
「妖刀の事か?それならリヴェリアが戻ってからじゃな」
フィンはコソッと耳打ちで話し、ガレスの問いにも素直に頷く。ガレス自身も首脳陣で話さなくては思っていたので直ぐに理解した。
「よっしゃ!うちを巻き込んだ罰や!後でお酌してもらうで‼︎」
「わしは呑まんけんな」
「ええ〜!ロージたんのいけず〜」
酒に弱い七郎治は頑なに呑まんと言い張り、泣き真似をしながら縋り付くロキは神とは到底思えない。
「どれ、儂も付き合うかのぅ‼︎フィン、お主もどうじゃ?」
「そうだね。僕も少し呑みたい気分だ」
二人のやりとりを呆れながら見ていたが、自分達も呑もうと話に加わる。この二人がいれば七郎治に呑ませ過ぎないようにストップがかけられる。
「よっしゃー‼︎今晩は呑み明かすでー‼︎……
「よし、言うとこう」キリッ
「やめて‼︎」
そんな主神と眷属の宴会は、たわいのない話や飲み比べ。他の団員に止められるのも無視して明け方まで続いた。
そして翌朝、いつもと変わらないガレス。二日酔いで頭痛を堪えるロキとフィン。途中で巻き込まれたベートとラウルは燃え尽きていた。そして…
「オロロロロ〜!げぼろしゃ〜‼︎」
まぁ、いつもの事だ。
久しぶりに始めたモンハンが楽しすぎた。人間だもの。