はい、もうタイトルも思い付かなくなってきたのでそのまま活用ささました。
リヴィラの街で起こった殺人事件から、六日が経つ。ギトーが去った後、七郎治はリヴェリアの回復魔法とポーションで傷の手当を受け、リヴィラの街の冒険者達と合流して地上に戻ることになった。
地上に戻ってからは、主神であるロキの指示により、
ー37階層
事件の後始末を終えた後、アイズ達はサポーターに
「それにしても、リヴィラの街はもう治ってたね!」
「まぁ、ないと困るしね」
途中で立ち寄ったリヴィラの街を思い出しながらヒリィテ姉妹が話をしていた。街の頭であるボールス曰く『この街は冒険者の要だ‼︎俺様達が一肌脱がないでどうする⁉︎』といっていたが、金儲けがメインだろうと言わずもがなであった。
「それに、
「ンー、この短期間でアレだけのモンスターは手懐けられないだろうから、暫くは動かないと思うよ」
ティオナの質問に答えたフィンの言う通り、あれだけの事件を起こしたのにも関わらず、レヴィス達の動く痕跡は一切ない。
その為、襲撃を受ける事なく37階層という深層まで難なくこれた。まぁ、深層に入ってからはLv.3のレフィーヤとラクタは他の第一級冒険者達の戦いを見ている事しか出来なかったが。
「やっぱりリヴィラの事件からアイズの様子が変よね?鬼気迫ってるっていうか…。それに七郎治もあまり喋らないし」
最前列で戦闘するアイズと七郎治を見ながら、ティオネがそっと妹であるティオナに話しかける。
「そうだよね〜。…よし、私もアイズ達の所に行くね‼︎」
「あっ!こら、周りのモンスター倒してから行きなさいよ‼︎」
周りにモンスターがいるにも関わらずティオナが抜けてしまった為、ティオネはその分カバーしなければならなくなり愚痴をこぼす。
一通り戦闘を終え、ルームで休憩をとる事に。この37階層は真白な壁に包まれており、さらに上層とは違い壁の高さから幅の広さ全てが大きい構造だ。
現在は37階層の最奥に当たるそれまでより遥かに大規模なルームに来ていた。この最奥のルームは階層主が現れる場所だが、ロキ・ファミリアが三ヶ月前の遠征で倒してからまだ復活していない。
モンスターが生まれないようにルーム内の壁を傷を付け。その際、大量のアダマンタイトが採れたのは思わぬ収穫だ。
各々が軽い食事をしたり、武器の手入れをしている中。アイズは地面に座り込み顔を伏せていた。
(…あの赤毛の
アイズはリヴィラの街の事件で退治した
(強かった。このままじゃ辿り着けない…。それに…)
ギュッと唇を噛み締める。
(七郎治にあんな、怪我をさせてしまった。私がもっと強ければ…)
どんな時でも自分の背中を守ってくれていた相棒が、自分を助けに来て怪我を負った。敵に分断されなければ?自分がもっと強ければ?あんな事にはならなかった。自責の念が沸き起こり治まらない。
「ねぇ、アイズ?聞いてる?」
「…ごめん、ティオナ」
思考に没頭していたアイズは、話しかけてきたティオナに気付く事が出来なかった。
「だから、そろそろお金も貯まったんじゃないかな?」
「そう、だね」
ティオナの話にアイズは何処か上の空だ。
「…リヴェリアは何か聞いていないのかい?一度負けたくらいでは、あそこまでならないだろ」
「ダメだ。なんでもない、の一点張りだ」
アイズの様子を見ながらフィンが困ったようにため息をつき、リヴェリアも片目を伏せる。
「今、灸を据えても意味はないだろう」
「そうだね…。七郎治もあんな感じだし、今は放っておこう」
フィンはチラッと視線を移す。その先には、いつもの死んだ目ではなく、何かを見据えるようにただジッとアイズを見ている七郎治の姿があった。
休憩を終え、バックパックも魔石やドロップアイテムで一杯になっているので、地上に帰還することに決めた。しかし、その矢先にルームの入り口から大量のスパルトイが現れた。
スパルトイ。Lv.4にカテゴライズされる骸骨の兵士。この階層では最強に部類され、力も強く、スピードも速い。その上骨で出来た様々な武器を携えている。
七郎治は初めて見たときにブルック!と叫び。二回目に遭遇したときは遠征中にも関わらず、わざわざ持参したアフロのカツラを一番背の高いスパルトイに被せ、最高幹部の3人から大目玉をくらったのは、また別のお話。
「…私が行く」
アイズはデスペレードを引き抜く。スパルトイの軍団に単身で突っ込もうとするも、アイズの前に七郎治が立ち塞がる。
「七郎治。私が、行く」
「【悪しき魂を持つ鬼の群れ。この世に禍をもたらす】」
七郎治はアイズをチラッと見やるも、構わず魔法の詠唱に入った。
「【邪なる者を打ち払う。四ッ目ヶ金眼の守り人。我、鬼を討つ鬼とならん】」
金色の光が七郎治を包み込み、四ツ目の鬼の形をなす。
「【鬼千切り】‼︎」
魔力を集結した金色の巨大な斬撃が飛び、たったの一撃でスパルトイの軍団を一掃してしまった。
「…七郎治」
「…」
アイズは悔しそうに顔を歪めた。何故邪魔をした?私はもっと強くならないといけないのに。焦燥感に駆られて、気づかない内に七郎治を睨みつけていた。
「…アイズ嬢。ワシと勝負しようや」
「…」
「は?何言ってるんですか⁉︎七郎治さん」
いきなりの七郎治の提案に全員が何言ってんだこいつ?みたいな顔をした。しかし、そんな事はおかまい無しに七郎治は構える。
「ほら、こいよ」
「…」
「こんのなら、こっちから行くばい」
七郎治はアイズに向かって飛び掛かり、そのままの勢いで刀を振り下ろす。七郎治が冗談ではない事が分かるとアイズも応戦する。
「ちょっと!何やってんの⁉︎」
ティオナが二人を止めに入ろうとすると、リヴェリアとフィンが待ったをかける。
「少し様子を見てみよう」
本来であればダンジョンの深層で、手合わせとはいえ仲間同士での戦闘など関与されるものではない。だが、団長であるフィンと副団長のリヴェリアがこれを許すのであれば他の者は口出しできない。
ルーム内に剣の打ちあう音が響き渡る。
アイズの攻撃はいつものようなキレはなく、荒々しくなっていた。今のアイズの目には赤毛の女、レヴィスしか映っていない。
そんな中、七郎治が距離を取り、刀を鞘に収め腰を据え居合の構えをとる。アイズはその様子を見て上段から斬りかかる。
「ッ⁉︎」
「「「「「ッ⁉︎」」」」」
今しがた起こっている事に全員が唖然とした。アイズの一撃を止めたのは、七郎治の居合ではなかったのだ。アイズのデスペレートは七郎治の両手で挟み込まれていた。七郎治は俊速のアイズの剣を真剣白刃取りで止めたのだ。
七郎治はゆっくり立ち上がり、デスペレートから手を離しアイズをじっと見つめる。
「…今のアイズ嬢じゃ、ワシを倒すことは出来んよ?」
「ッ⁉︎…私は‼︎」
「前に言ったげな?一枚の葉にとらわれてたら木の全体は見えん。一本の木にとらわれてたら森全体を見ることは出来んよ」
『見聞色の覇気』により、アイズがレヴィスのことで悩み、自分自身の弱さに怒り、七郎治に傷を負わせた事に責任を感じていた事を知っていた。
「…」
「…アイズ嬢。一枚目の葉すら見えてなかろう?今闘っていたのはあの赤毛の女ではなく、ワシやって知ってたか?」
「ッ⁉︎…」
前世の記憶でアイズがこれを乗り越えることを知っていた。だが、自分が傷を負った事で余計な重荷を背負わせてしまった。そんな自分の不甲斐なさに腹がたつ。
だからアイズの重荷を減らそう、あの日の約束を絶対に果たすと誓ったのだから。
「アイズ嬢が何を思おうと、ワシは約束を破る気はないとぜ」
七郎治は笑う。
一緒に行こう。共に約束を果たそうと。
他の誰も知らない二人だけの約束。
そんな七郎治の言葉を聞いて、アイズは少し肩の力が抜けた。
目を瞑り考える。今の自分に必要なこと、やらなければならい事を。
(約束、だからこそ強くならなくては…)
決意を新たにアイズは一歩を踏み出す。
「フィン、リヴェリア。お願いがあるの」
アイズの願い。
「…私だけ、もう少しここに残りたい」