ダンまちに転生したが、脇役でいいや   作:冬威

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すいません。
15日に間違えて書きかけのを投稿してしまったので再度上げます。




調教師 2

 

 

「今の風。…そうかお前がアリアか」

 

「ッ⁉︎」

(今、なんて…?どうしてそれを)

 

 

アイズは赤毛の女の言葉に思わず固まってしまった。なぜ知っているロキ達以外に知る人はいないはず…。頭が混乱し、どうして良いか分からない。

 

固まって動かないアイズの後ろで動くものがあった。何かに起こされたように瞑っていた目を徐々に開けていく。

 

 

「アアアアアアアア‼︎」

 

 

覚醒し産声に成るのだろうか、甲高い人外の叫び声を上げる。思考を停止させていたアイズ達の意識を一気に引きずり込む。

 

宝玉の胎児は自身を覆う宝玉を突き破り、アイズ目掛けて飛び出してきた。アイズはギリギリでかわし、背後に離れて居た食人花に張り付いた。そして、ズブズブと一体化していく。

 

ズズッゴゴゴゴゴゴ‼︎

 

寄生した食人花は周りの食人花を取り込みながらその姿を変貌させた。

 

 

「一体なにが⁉︎」

 

「チッ…、全て台無しだ」

 

 

赤毛の女は睨みつける。その視線の先には変貌し、女型の食人花の姿があった。

 

女型の食人花は街の方を見やる。おそらく魔導士達の魔力を感じ取ったのだろう。

 

 

「レフィーヤ、早くフィン達の所へ。私はこの人の相手をする」

 

「ッ⁉︎…」

 

 

レフィーヤはルルネの手を引き再び街へと駆けていく。フィン達にはやくこの事を知らせる。それが自分の役目だ。

 

 

「…街を襲え」

 

 

赤毛の女は食人花に指示を出し、アイズを見据える。ふっと姿が消えたと思えばすぐ目の前に現れ、真黒な片刃の剣が振り下ろされる。しかし、オラリオで1、2を争う剣士であるアイズはデスペレードで受け止めいなす。

 

その僅かに出来た隙を逃さず(エアリアル)を発動させる。風を使った強制的な瞬間移動で赤毛の女の背後に回り込み、渾身の一撃を叩き込む。

 

 

「ふん…」

 

「ッ⁉︎」

(避けられた⁉︎)

 

 

赤毛の女は難なくアイズの一撃を屈んで避け、腹部に強烈な蹴りを叩き込み弾き飛ばす。

 

風のクッションを作り地面から突き出す水晶の柱に衝突しないように受け身を取る。威力を殺しきり目の前を向くと既に赤毛の女の剣が迫っていた。

 

 

「…」

 

「くっ‼︎」

(このままじゃ⁉︎)

 

 

鍔迫り合いのなかアイズは徐々に押され始める。赤毛の女は剣の柄から片手を離し、アイズに拳を叩き込もうとした時。2人の間に斬撃が飛び込んできた。

 

 

「なに⁉︎」

 

「七郎治…。」

 

 

アイズはこんな緊迫した状況にも関わらず、いつも自分の背中を守ってくれる相棒の姿にどこか安心感を覚えた。

 

何も言わずチラッとアイズを見やる。言葉など交わさずとも分かる。後方にとびのいた赤毛の女に追撃を加える。

 

 

「リャアアア!」

 

「…ふっ!」

 

「クソッ‼︎」

 

 

赤毛の女は一気にペースを乱される。アイズが振るった剣を受け止めると、死角から七郎治の刀が追随する。こちらから攻撃を仕掛けると七郎治が受け流し、アイズが攻撃を仕掛けてくる。

 

2人の一糸乱れぬ攻撃。このまま押し切れるかと思った瞬間、七郎治目掛けて剣撃が打ち込まれた。目の前に迫る刃を体を回転させて紙一重でかわす。

 

 

「…ギトーか」

 

「すまない、レヴィス遅くなった。…いや、邪魔したか?」

 

「ふん…」

 

 

少し癖のついた黒髪に浅黒い肌。まるで血のような赤黒い瞳。よく鍛えられたその体は黒の戦闘服(バトル・クロス)を身に纏っていた。その手に握られているのは刀だ。刀身は吸い込まれるような黒、その刃に浮かぶ波紋は怪しく、禍々しい紫が煌めいている。

 

 

「…あの人の仲間?」

 

「…やろうね。それよか、お互いご指名みたいやね。気いつけて」

 

「うん、七郎治も…」

 

 

レヴィスと呼ばれた赤毛の女はアイズを見据え、ギトーと呼ばれた黒髪の男は七郎治を見据える。一歩一歩横に間合いを取り始めていた。

 

七郎治は普段の眠そうな顔を真剣なものに変え、ギトーに視線をぶつける。

 

 

誰こいつ?知らんっちゃけど?

原作で赤毛の調教師(テイマー)にこんな仲間おらんかったろうもん。仲間が出てきても今じゃなかろう?

…マジか〜。イレギュラーかこれ。

 

 

それぞれ邪魔にならないぐらいの距離を開けたら戦闘が開始された。

 

アイズとレヴィスの剣を打ち合う音が響き渡る。七郎治達は動かず相手の様子を探る。

 

 

向こうの出方を見たかったんだが…。こっちから仕掛けな埒があかん。

 

 

間合いを少しずつ詰める。ギトーは相変わらず動かない。

 

顔はギトーを捉えたまま、刀の柄に手をかけているのを隠すように体を右に向け腰を落とす。

 

 

雷電型(イカヅチノカタ)第二式 紫電閃(シデンセン)

 

 

左足を軸に残し完全な脱力にし、右側へと倒れこみ体を落下させる。

 

 

「ッ⁉︎」

(はやいな…)

 

 

重力による落下速度は普通に倒れこむより予想以上に早い。地面すれすれまで倒れこむとここに脱力していた体の筋力を全開にし、魔力を踏み込む足に集中させ超加速へと移行。

 

重力と筋力が合わさった疾さと威力。それら全てを殺さずに体を半回転させながら逆袈裟に抜刀。普通なら反応できずにただ切られるのみ。

 

 

ガキン!

 

 

だが、ギトーは上段からの振り下ろした刀で七郎治の下段から斬り上げを難なく防いだ。

 

 

クソッ!こいつ受け止めおった‼︎…それに

 

「ふふっ。どうした?この程度か?」

 

ワシを殺す気ねーな?完全に遊ばれとるわ

「そげん余裕かましてええんか?自分より弱い奴に足元すくわれるぜ?」

 

「ふふふ。僕は楽しいんだよ。正直、君より強い奴はいくらでもいるだろう。でもね、剣士として僕はこんなに楽しいのは久しぶりだよ」

 

 

鍔迫り合いを押しのけ、何度も斬り結ぶ。

 

七郎治は都市でも最高峰に位置するロキ・ファミリアに所属している。

他の第一級冒険者や第二級冒険者のレフィーヤのようなずば抜けてはおらず陰でアイズの腰巾着だとか、ランクアップもアイズのおこぼれだとか言われたりもしている。だが、目立たないだけでその剣士としての実力は本物。今まで幾度となく敵を斬り伏せてきた。

 

そんな七郎治が、目の前の剣士に手も足もでず只々遊ばれていた。

 

 

「セヤッ!」

 

「甘いよ」

 

「う!ぐぁ」

 

 

後方に跳びのき威力を殺しながら受け身を取る。刀を構えた直後、別の場所から何かが叩きつけられたような大きな音が響き渡る。

 

ハッとして音の方に目を向けるとアイズが岩壁まで吹き飛ばされ、レヴィスがとどめを刺そうとゆっくりと近づいていた。

 

ほぼ反射的にアイズの方へ駆け出そうとしたが、ギトーにより阻まれる。

 

 

「何処に行くつもりだい?君の相手は僕だよ」

 

「くそ邪魔やのぅ」

 

 

抜けきれない。隙をつこうとしても直ぐに阻まれ、鍔迫り合いを強いられる。

 

アイズの方へ目を向けると、レヴィスは拳を握りアイズへと振り下ろそうとする瞬間だった。

 

 

「アイズ‼︎」

 

 

普段は敬称呼びだが、そんな事は気に留めずなりふり構わず叫んだ。七郎治には周りがスローモーションに感じた。

 

 

嫌、だ。

 

 

自分は相棒なのに、その背中を護る為にいるのに、何も出来ずに終わらせてしまうのか?

怒り、悲しみ、焦燥感。いろんな感情が押し寄せて来る。アイズへ迫る死の気配をただ見ている事しか出来ない。

 

 

間に合わん、のか?

 

 

アイズに迫る拳を呆然と眺める。

 

 

 

 

 

しかし、レヴィスの殺意をはらんだ拳はアイズに届く事は無かった。

 

黄金の穂先を持つ槍と、九つの魔法石が輝く長杖が交差し受け止めていた。

 

 

「うちの姫君に手を出すことは」

 

「我らが許さん」

 

 

我らが団長、フィン・ディムナ。副団長、リヴェリア・リヨス・アールヴ。家族(ファミリア)の危機に颯爽と駆けつけ、家族(ファミリア)に仇なす敵を打ち払う。2人の姿がとても輝いて見えた。

 

 

カッケ!お二人さんかっけぇー‼︎お二人三角形‼︎

 

助けに来て分断された阿呆とは大違いだ(笑)

…もう泣きたいわ、ばか

 

 

 

 

 


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