ダンまちに転生したが、脇役でいいや   作:冬威

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調教師 1

 

 

「見つけたぞ」

 

「ッ⁉︎…あなたは?」

(男性?でも、声が…)

 

 

アイズ達の前に現れたのは、真黒なフルプレートを身につけた男だった。その放たれる雰囲気はどこか不気味で決して関わってはいけない、と危険を何度もくぐり抜けてきたアイズ達の本能が騒ぎ立っている。

 

 

「…出ろ」ピィーー‼︎

 

ドオオン‼︎‼︎‼︎

 

「ッ、あれは⁉︎」

 

 

いきなり目の前に現れた人物に、臨戦態勢に入っていたが、指笛の音ともに極彩色の食人花の群れが街に現れた。

 

 

「レフィーヤ、ルルネさんとフィン達の所へ」

 

「でも、アイズさ「はやく‼︎」」

 

 

アイズの言葉に従いレフィーヤはルルネと共に街へと走り出す。

 

フルプレートの男は対峙するアイズを無視してレフィーヤを追おうとするも、アイズによって阻まれる。

 

 

「行かせない」

 

「邪魔だ」

 

 

男が腰に下げていた真黒な片刃の両手剣を引き抜きアイズへと切り掛かる。アイズは振り抜かれた剣を愛剣【デスぺレード】で受け止める。

 

 

ガキン!

(ッ⁉︎この人、強い)

 

 

鍔迫り合いを行いながら男は、片手を剣から離し再び指笛を吹く。

 

 

「オオオオオォ‼︎」

 

「きゃあ⁉︎」

 

「レフィーヤ!」

 

 

街へと向かおうとしていたレフィーヤ達の前を食人花が立ちはだかる。

 

 

「くっ!」

キン!

 

 

アイズは剣に力を込めて、男を弾き飛ばす。一気にレフィーヤ達の元に駆けつけ食人花を葬る。が…。

 

食人花の群はアイズに狙いを定め、襲いかかってきた。アイズとレフィーヤ達は分断されてしまう。その隙を逃さず男はルルネを投げ飛ばし水晶の柱が飛び出す岩肌に叩きつける。

 

 

「と、止まってください‼︎」

 

 

レフィーヤが、杖を向け男を威嚇するも一瞬で接近されてしまった。男はレフィーヤの細い首を片手で掴み持ち上げる。

 

 

「あ、ぐぁ」

 

 

地面から足が離れ掴まれた首がどんどん絞められる。掴まれる手を振りほどこうと必死にもがくがびくともしない。

 

 

(ーアイズ、さん)

 

 

朦朧とする意識の中、敬愛する彼女の名を呟く。ミシッと音を立て手足がだらんと力を無くす。もう、駄目だと。諦めかけたとき…。

 

周りの水晶ごと複数の食人花を薙ぎ倒しながら金髪金眼の少女が現れるのが見えた。少女はそのまま男に切り掛かり、真黒な兜を弾き飛ばす。ああ、また助けられた…。と自分を情けなく思う。

 

 

「大丈夫?レフィーヤ」

 

「ゴホッ、ゴホッ…。はい、大丈夫です」

 

 

アイズによって切り飛ばされた男がのそりと立ち上がる。

 

 

「ああ、窮屈でかなわん」

 

 

男はフルプレートの鎧を次々と脱ぎ捨てていく。

 

 

「え?…あなたは、男性なんじゃ?」

 

 

レフィーヤは鎧の下から現れた、細くしっかりと鍛えられた手足、七郎治が魅力を感じると言ったくびれ。そして女性特有の双丘。

 

 

「あなたが、ハシャーナさんを殺した人?」

 

「それがどうした?」

 

 

最後に()()()()()()()()()

皮のしたから目つきは鋭いが整った容姿の赤毛の女が現れた。

 

 

「そ、それは?」

 

「知らないのか?死体の皮をポイズンウィルミスの体液に浸せば腐敗を止められる」

 

「そ、それじゃあ…。もしかしてハシャーナさんの?」

 

 

レフィーヤはとてつもない吐き気に襲われる。死体の皮を被って変装するなんて人として考えられない。目の前の女の行動が信じられなかった。

 

 

「…宝玉を渡せ」

 

 

迫り来る赤毛の女にアイズが応戦する。あまりの出来事に固まったレフィーヤとルルネを庇いながら剣戟を繰り広げる。

 

 

(くっ、人間相手に使いたくない、けど)

「【目覚めよ(テンペスト)】」

 

 

アイズの風を纏った一撃が赤毛の女を吹き飛ばす。受け身をとり地に着地した女はゆっくりとアイズを見据える。

 

 

「今の風、…そうかお前が()()()か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

「なんだ、こいつらは⁉︎モンスターの侵入を許しやがって…。見張りは何してやがる⁉︎」

 

「こいつら、怪物際(モンスター・フィリア)のときの!」

 

 

突如、リヴィラの街に現れた食人花に街の冒険者達はパニックを起こし逃げ惑う。

 

 

「ボールス!5人一組で小隊を作らせろ‼︎リヴェリアは詠唱を!ティオナ、ティオネは彼らを守れ‼︎」

 

「もう、どっから現れたの⁉︎」

 

「ちょっとバラバラに逃げるんじゃないわよ!」

 

 

突然の異常事態(イレギュラー)にも関わらず、都市最強派閥の一角を束ねる団長であるフィンは的確で迅速な指示をとばす。

 

 

(このタイミングでモンスターの強襲。まさか…。)

 

 

安全地帯である18階層はモンスターを生み出さない。上下の階層から紛れこむ事があっても此処までの規模はそうないことだ。

 

明らかに不自然すぎる。まるで誰かが裏で糸を引いているようだ。

 

フィンは指示を出した後、すぐに街の外壁へと駆け抜けて行く。水晶が突き出す岩肌を一直線に縦断し、崖の淵から下を見下ろす。

 

そこには湖の中から数十にも及ぶ食人花が押し寄せていた。

 

 

(間違いない。殺人犯は調教師(テイマー)だ‼︎)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

「ーー!ーーー‼︎‼︎」

 

「ーー〜⁉︎〜〜ー‼︎」

 

 

途切れていた意識が少しずつ戻ってくる。周りの喧騒に何事かと思いゆっくりと起き上がった。

 

 

あれ?…ウソやろ?

 

 

目に飛び込んできたのは、食人花がリヴィラの街で暴れまわり、街にいた冒険者が混乱し逃げ惑っているように見えるが、何とか応戦しようと奮起していた。その中にフィン達も食人花と戦う姿が。

 

自分は宿の中に居たのでは?いつの間に中央広場に?

頭を振り、記憶のたどっていく。

 

 

あー、殺人事件の犯人の話をしとって?悪ノリし過ぎてリヴェリアにとんでもないもんくらったんよね。…ヤベッ、思い出したくないわ。

 

 

ハッキリと思い出してもいないのに体が拒否反応を起こし、全身に寒気が走る。

 

 

って、そげんことじゃなか!ばかたれがー!

原作を思い出さんか!…取り敢えず死体の身元確認が取れたんやろうな。街の冒険者を集めてたな。そんで転がってたワシもここに運んだんやろか?…で?次が?

 

確か、アイズ達がハシャーナの荷物を持った人を捕まえて?…鉄拳制裁?いや、違うな…。

 

ゾクリッ‼︎

 

 

記憶を次々と辿っていき、今がどんな状況なのかやっと理解し、全身に鳥肌が立つ。

 

 

やべーな…。食人花を街にけしかけたのはハシャーナを殺した女。そして犯人は今‼︎

 

 

弾かれたように立つ上がり、一気に駆け出す。『見聞色の覇気』を使い周りの声に集中する。

 

 

『うおおおおー‼︎』

 

『ぐあぁ!』『怪我人を下げさせろ!次が来るぞ‼︎』

 

『うわぁぁ⁉︎』『おい⁉︎しっかりしろ‼︎』

 

『くそ!何なんだ⁉︎』

 

 

周りの声をどんどん拾い上げる。冒険者達の必死に健闘する声、傷を負った悲痛の叫び。そして、一つの声を拾い上げる。

 

 

『【目覚めよ(テンペスト)】』

 

トクン

 

いつも自分の傍で聞く、探していた声を見つけた。だが同時にドロドロとした気持ちの悪い得体の知れない鼓動を感じ取る。

 

 

なん、じゃ?

 

『ーーー。お前が()()()か…。』

 

ドクンッ

 

『アアアアァアアァアアアアアーー‼︎‼︎‼︎』

 

うっ、うあ…。

 

 

訳のわからない鼓動の後に、頭が割れそうなほどの凄まじい人外の絶叫が体の中から響き渡り、足がもつれ走っていた勢いのまま前方へ突っ込む。

 

一度『見聞色の覇気』を切り、冷静になるよう落ち着かせる。

 

 

ズズッゴゴゴゴゴゴーー‼︎‼︎‼︎

 

街の外にいた一体の食人花が周りの食人花を次々に取り込み、前回の遠征で50階層に現れた女体型の食人花へと変貌した。その姿を七郎治はボーとみつめる。

 

 

…あぁ゛、うっとおし〜のぅ。

 

 

ゆらあと立ち上がる。

 

 

ほんに腹がたつぜよ。毎度毎度、先の事が分かっちゅーに…。

原作をこわさんように?阿呆か?

貴様ん家族(ファミリア)が目の前で傷付くのを黙って見とるんか?阿呆かそげなことあるか‼︎

 

 

怒りに任せて地面を蹴り自身の相棒の元へと駆ける。

 

 

赤毛の調教師(テイマー)は今のアイズよりも強かったはずぜよ。

 

アイズより弱い自分が行っても何も出来ん。

 

…知らん!強いとか弱いとかどうでもいいぜよ‼︎自分の思うように動くだけぜよ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






あまり上手くまとめられなかったな…。



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