ダンまちに転生したが、脇役でいいや   作:冬威

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七郎治の事件簿 3

 

 

ー18階層 ヴィリーの宿ー

 

 

リヴェリアの「七郎治更生プログラム」が終了し、本題の殺人事件に戻る。

 

 

「それで、結局そのローブの女性の事は分からず終いか…。殺された冒険者の方はどうなんだい?」

 

フィンが何事も無かったかのように話を進める。

 

 

「あ、ああ。野郎についてはこれから直接本人の身体に聞く。おい!解鍵薬(ステイタス・シーフ)はまだか⁉︎」

 

 

ボールスの命令と同時に獣人の冒険者が小瓶を持って来た。手早く作業を進めていく。

 

解鍵薬(ステイタス・シーフ)。一般的に冒険者の背に刻まれたステイタスを主神達の手によって他者に見えないように(ロック)されているのだ。複雑な手順があるが主神の手を借りずに外せる薬なのだ。

 

 

「…たく、コッチの野郎なら身元も犯人も分かってるんだがな」

 

 

ボールスはアイズ達の足下にチラッと視線を移す。うつ伏せでピクリとも動かない冒険者の姿があった。その冒険者の指先には血文字で“MA☆MA“と床に書かれていた。

 

 

「あ、はは…。ボソッ(ボールス?余計な事は言わないでくれ)」「ボソッ(お、おう)」

 

 

フィンの忠告に背後から放たれる威圧感にボールスは冷や汗を垂れ流す。

 

 

「ボールス、出来た‼︎」

 

「お!さてどこのファミリアだ?…と、神聖文字(ヒエログリフ)が読めねえな」

 

「…神聖文字(ヒエログリフ)なら私が読める」

 

「私も…」

 

 

リヴェリアは先の七郎治の件で、すこぶる機嫌が悪かったが頭を切り換えて事件に協力し、アイズもそれに続く。

 

 

「名はハシャーナ・ドルリア。所属は…」

 

「【ガネーシャ・ファミリア】」

 

「「「ッ⁉︎」」」

 

 

リヴェリアとアイズが読み上げたステイタスの内容にその場にいた冒険者が息を飲む。

 

 

「ガネーシャ・ファミリアはオラリオの上位派閥だぞ⁉︎」

 

「おい!おい‼︎おい⁉︎ハシャーナって言ったら【剛掌闘士】。…Lv.4じゃねーか‼︎」

 

 

ボールスの言葉に辺りが静まり返る。

 

 

「ボールス…。確認させてくれ、事件の発見からこの場を触ったりはしていないかい?」

 

「…ああ、してねえ」

 

「争った跡も、複数が立ち入った跡もない…。犯人はLv.4を一撃で仕留めている。少なくともLv.4…。いや、それ以上だ」

 

 

冷静な判断を下すフィンの言葉に、ゾクリと悪寒を走らせる。今この場にはオラリオ屈指のロキ・ファミリアの第一級冒険者が揃っているが、殺人犯は同等の力を、へたしたらそれ以上かもしれないとそう言っているのだ。

 

 

「そ、そんな事があり得るのかよ?」

 

「死体を見る限り首の骨を折られている。恐らくその後に顔を潰されたのだろう。何か目的があったのか、あるいは苛立って死体にあたったんじゃないかと思う」

 

 

フィンは目線を死体から血にまみれたハシャーナの荷物に移し、その中から一枚の用紙を取り出す。

 

 

「これは冒険者依頼(クエスト)の依頼書だ。血が滲んで読めないが…。わかる部分だけ見るとハシャーナは30階層に何かを取りに行っている」

 

「犯人はそれが目的で、見つからず。それで死体に…。確かに筋が通りますね、団長」

 

 

フィンが自分の見立てた推理をざっと説明し、ティオネ達も納得していく。

 

 

「…ボールス。街を閉鎖して、街にいる冒険者を全員集めてくれ。この事件はまだ終わっていないはずだ」

 

「お、おう!テメェら手分けして冒険者全員集めろ‼︎従わねえヤツは街のブラックリストに載せる脅せ‼︎」

 

 

自体を把握したボールスは子分達に指示をだし、迅速な対応をしていく。

 

 

 

 

 

 

ーリヴィラの街 中央広場ー

 

通達を受けた街の冒険者達でガヤガヤとひしめき合っていた。

 

 

「おい、これで全員集まったぜ。街の出入り口も封鎖してきた」

 

「よし、では早速始めよう。女性冒険者の身体検査は私達で進める。…フィン?」

 

「…いや、上手くいきすぎじゃないか?何か騒ぎが起きると思っていたんだが」

 

 

先程から黙り込み自分の親指を見つめるフィン。その様子を感じ取りリヴェリアは考え込む。フィンの親指は危険を察知する第六感のようなものだ。これには何度も助けられてきた。今、その親指が疼いているのだろう。何か危険が迫っているのだと。

 

そんな二人の様子をアイズは見つめていた。

 

 

「この中から探すんですよね、アイズさん」

 

「…うん。…レフィーヤ、あれ」

 

 

レフィーヤに問いかけられ、視線を外した先に街の外へと繋がる階段に挙動不審な犬人(シアンスロープ)の姿を捉えた。その腕には何かが抱き抱えられていた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

「はぁ、はぁ、」

(マズイ!マズイ!マズイ‼︎もし捕まったら)

 

 

アイズとレフィーヤに追われている犬人(シアンスロープ)の少女は荷物を抱え、焦りでおぼつかない足を必死に動かす。後ろを振り返り、追ってとの距離を確認する。

 

 

(あれ?一人だけ?…ッ⁉︎)

 

 

自分を追いかける者が一人減っていることに疑問を感じたが、突如として進路を塞がれた。

 

 

(も、もう、ダメだ…)

 

 

ヘナヘナとその場にへたり込んでしまった。

 

 

「ハァ、ハァ…。アイズさん、流石です!」

 

「ん、レフィーヤありがとう。…あの、貴方が持っているのは、ハシャーナさんの荷物?」

 

「ッ⁉︎あ、それは…。お願いだ!逃がしてくれ‼︎でないと今度は私がころされちゃう‼︎」

 

 

少女は完全に怯えきっていた。アイズとレフィーヤは困ったように顔を見合わせて、取り敢えず話を聞くことにした。

 

少女の名前はルルネ・ルーイ。黒髪に黒い肌、ヘルメス・ファミリア所属で二つ名は【泥犬(マドル)】。Lv.3の冒険者だった。

 

ルルネは冒険者依頼(クエスト)を受け、18階層の指定された酒場でフルプレートの冒険者から荷物を受け取り、依頼人に届ける手はずだったようだ。

 

 

「その、依頼人はだれ?」

 

「分からない。真っ黒なローブと仮面で顔を隠していて…。結構な前金を貰ったから、そこまで確認しなかったんだ」

 

「…やはり、団長達に話したほうが」

 

「それはダメ‼︎人のいるところは怖い…」

 

 

ルルネは今にも泣きそうだった。アイズ達はどうしたものかと考え、その荷物を預かることにした。布に包まれた丸い物体を受け取る。

 

アイズが中身を確認すると、それは宝玉の中に胎児のようなモンスターが閉じ込められていた。瞑っていたモンスターの目が薄っすらと開く。

 

 

「ッ⁉︎」

 

 

アイズは目が合った途端、一瞬訳のわからない目眩が襲う。

 

 

「アイズさん⁉︎大丈夫ですか‼︎」

 

「う、ん。大丈夫」

 

 

レフィーヤはすかさずアイズの手から宝玉を取り上げる。これは一体何なのか?アイズに何が起きたのか?もう嫌な予感しかしない。レフィーヤの全身に悪寒が走る。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「見つけたぞ…」

 

 

 

 

 

 






タイトルは七郎治の事件簿ですが、現在再起不能の為活躍しません‼︎

…こいつ大丈夫か?

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