ここは階層主『
「あれ?
「んー、リヴィラの街の冒険者が倒したんじゃないかな?」
なんじゃ、おらんのかい…。せっかく三代鬼徹を試したかったんに…。
階層主がいない大広間にいたのは先程大量に倒したミノタウロスだった。七郎治が三代鬼徹を握りしめながらそんな事を考えていたら不意に話しかけられる。
「それで?妖刀を手に入れた経緯をはなしてくれないかい?」
チッ!忘れとらんかったな…。
「あ〜これはですね。かくかくしかじか」
フィンに目が笑っていない笑顔で問われた七郎治は大人しく三代鬼徹を手に入れた経緯を話す。
「えー‼︎片腕かけたの⁉︎」
「あんたバカなんじゃない?」
「ありえないです」
「お前という奴は…」
「……」
その場にいた全員から非難の目を向けられる。あの時は三代鬼徹を見つけたことでテンションが上がりきっていて、確かに普通に考えたらありえない話だ。
「それにしても…。まさかヘファイトス・ファミリアの妖刀とはね。一時期すごく話題になっていたよ」
フィンが思い出すように七郎治の腰にある三代鬼徹を眺める。リヴェリアも思い当たることがあるのだろう、表情を曇らせる。二人は心配をしているのだ。妖刀を手にした冒険者の末路を知っていたからこそ。
「私はその妖刀を使う事に反対だ」
「そうだね。僕も賛同出来ない」
二人の真剣な空気が場をつつむ。アイズ達も二人から妖刀の危険性を感じ取り七郎治をみつめる。
「…神ヘファイトスとも約束をした。決して妖刀には飲み込まれない。必ず使いこなしてみせると」
「……」
「じゃけんが、そげな顔せんでほしいわ」
普段見せない真剣な顔で自分の意思を主張し、ふっと笑顔をみせる。
「はぁ、分かったよ。いざとなったら僕がとめる。それだけは約束してくれるかい?」
「そげんことにはならんけど、団長と約束するべ」
「よし!じゃあ早く18階層に行こうよ‼︎」
難しい話は終わりとティオナが先陣をきってミノタウロスに突っ込んで行く。他のメンバーもそれに続き18階層に繋がる連絡路まで進んで行く。
ー18階層ー
17階層の連絡路を抜けると、そこには先程までの殺伐とした洞窟ではなく。緑豊かな森と暖かな日差しが降り注いでいた。モンスターが生まれない、ダンジョンに幾つか存在する安全地帯の一つである。
「どうやら今は昼のようだな」
リヴェリアが天井を見上げる。そこには大小様々な水晶が連なり光を放っていた。その光は所々に地面から生える水晶の光と合わさって階層全体を照らす。この水晶は一定時間で光を消し、また時間が経つと光出すためダンジョン内にも関わらず昼と夜を作り出す。
「いつ見ても綺麗ですね!ね、アイズさん」
「うん、そうだね…」
自然を愛するエルフであるレフィーヤは感嘆しながらアイズに話しかけ、美しい森木漏れ日と小川が流れるせせらぎに耳を傾けるが、
ボリ、ボリ、ボリ…。
ボリ、ボリ、ボリ…。
美しい自然が奏でる音に相応しくない雑音が入る。レフィーヤはジト目で音の方を向くと…。いつもの死んだ目でおかきを食べる七郎治の姿があった。
「…なんで、おせんべい食べてるんですか?」
「えっ?これ、おかきばい?食べる?」
「いりません‼︎あと、どっちでもいいです‼︎」
レフィーヤはせっかくの美しい雰囲気を台無しにされむすっと膨れてしまう。
「ねぇ、このまま19階層に行っちゃう⁉︎」
「バカティオナ、街に行くのが先よ魔石とドロップアイテム換金しないといけないでしょ?」
「あっそうか‼︎」
双子の会話を聞きながら、おかきを食べつつふと思った事を口にする。
「そういや、誰も野宿道具を持っとらんけど…。ダンジョンにこもるんやろ?どげんするん?」
「街の宿を使うよ」
「いけません!団長。街で宿をとったらいくら請求されるか…」
「えー!ティオネけち臭い‼︎」
「ケチいうなー‼︎借金返すためでしょうが⁉︎」
「あ、はは。ここは僕が出すよ」
ティオネ達のやり取りに苦笑いを浮かべながらフィンが団長の懐の大きさをみせる。
「さっすがフィン‼︎太っ腹ー‼︎」
「団長ステキ!抱いて‼︎」
「七郎治テメェ‼︎団長に色目使いやがってぶっ殺すぞ⁉︎」
「いや、ちがっ!冗談じゃけん!」
ティオネに追いかけられる七郎治は街の方へ全力疾走する。捕まったら人生に終止符うたなければならない。
ーリヴィラの街(333)ー
安全地帯に設置されたリヴィラの街。ここは冒険者が営む街である。その為地上に比べて市場価格がものすごく高く、魔石やドロップアイテム等の買取価格はものすごく安く買い叩かれるのだ。
それでも一度地上に戻って、またダンジョンに潜るよりはるかに効率が良い為、中層にいけるLv.2以上の冒険者でにぎわっているのだ。余談だが333という数字は333代目と言う意味で今までに332回崩壊しているのだ。その原因は他の階層から辿りつくモンスターだったり、冒険者だったりする。
「まぁてぇ‼︎ゴラァ‼︎」
「ムリムリムリー‼︎」
鬼神のような形相のティオネと真剣な眼差しの七郎治が街中を全力疾走する。リヴィラの街が334代目になるかもしれない。
「そこまでだよ。二人とも」
「「団長‼︎」」
フィンに話しかけられて喜ぶティオネと、フィンに救われた七郎治の歓喜な声がハモる。
「街の様子がおかしいんだよ。今リヴェリア達に聞き込みをしてもらってる。みんなと合流するよ」
「はい」「…」
フィンに言われて二人も気付く。普段は冒険者でごった返しているのに妙に静かだ。
三人はリヴェリア達と合流し、情報を確認する。
「どうやら、街中で殺人があったようだ…」
「街中でかい?」
「ああ、それも宿屋だ」
「それは…。僕らも使う予定だから見に行ってみようか」
リヴェリアが聞いた情報を確認し、フィンが少し考えてから決断する。一体街で何が起きているのか?どうしても拭えない違和感が、フィンの危険を知らせる親指を疼かせるのだ。
18階層の殺人ってなんやっけ?
んー、原作にあったげなー。思い出せん…。
暫くダンジョンの話です。
また、ロキが出せないことが悲しいです。