なんか内容とタイトルが合わん気がする。
メインストリートに建ち並ぶヘファイストス・ファミリアの店の一つ【はごろもや】は知る人ぞ知る極東の衣類専門店だ。
主神より店長を任されているのはLv.3二つ名は【羽衣】のシホウイン・天華。武具製作の最高峰のヘファイストス・ファミリアの中でも裁縫を得意とし、様々な生地を作り出す。
冒険者が着る
極東の衣類以外にも、エルフ、アマゾネス、
「天華さん。こんちわー」
「あら?七郎治、いらっしゃい。注文の品は出来上がっているわよ」
店のカウンターから顔を覗かせたのは、シホウイン・天華。艶のある黒髪に少し癖のある、ゆるふわパーマを後ろで高めに結び、泣き黒子が色っぽく、
「今回は前回のと比べて、生地を頑丈かつ伸縮性を取り入れて動きの阻害を少なくしてみたの。早速試着してみて。気になるところは教えてね?」
七郎治は着物を受け取ると、早速着替えた。白と黒のバイカラーの着流しに、薄い青を基調とした陣羽織。
「どうかしら?」
「んー、動きやすくて問題はないんじゃけど…。なんでまた花柄なん?蝶々までおるし、ワシ無地で頼んだはずやけど?」
前回のと比べて、裾と袖口に派手に色とりどりの花柄があしらえてあり、柄は男物に使われるものではなく、どちらかと言えば女物であった。
「あらぁ?私の作品にケチ付ける気?タダで刺繍入れてあげたのよぅ?」
ふーと紫煙を吐き出す。天華が施す刺繍はどれも美しく、それに似合った金額が掛かる。
「そうは言わんけど、どうせするなら竹とか虎とか燻銀とか、もっとこう渋い柄にしてくれんね」
「あなた自分の顔、鏡で見なさいよ。渋い柄なんて似合わないわよ?もっと男を磨いてから出直しなさい」
ふふふと笑い完全に七郎治を子供扱いしている。少しイラつきながら代金を払い、店を出ようとするが天華に声を掛けられる。
「今日のこの後の予定は?」
「ん?ランクアップしたけん、ギルドに報告せないかん」
「あら?ほんと?ふふ、おめでとう」
「おう」
「ねぇ?何を落ち込んでいるのか知らないけど、近くでバザールをしていたわよ。気分転換に行ってきたら?」
見透かされていた。努めていつも通りを装っていたが、さすが客商売のプロ。常連さんのことはよく見ていた。
ーギルドー
魔石の換金や
「おいっす、ソフィア」
「あっ!七郎治君、久しぶりー。今日はどうしたの?」
七郎治はカウンターにいた、自分の担当アドバイザーに声を掛けた。担当アドバイザーと言ってもロキ・ファミリアは熟練者が多い為、あまりギルドで講義は受けていなかったが、何かと自分を気にかけてくれたので仲が良いのだ。
「ランクアップしたけん、手続きしに来た」
「えっ⁉︎ホントに⁉︎Lv.5になったの⁉︎」
声が大きく、周りの冒険者に聞こえてしまったようだ。「Lv.5?どこのファミリアだ?」「おい、あれ【抜刀斎】じゃねーか?」「てことはロキ・ファミリアかよ」「マジかよ⁉︎また第一級冒険者が増えたのか‼︎」ザワザワと周りの話し声が聞こえてくる。
「あっ⁉︎ゴメンね、大きな声で…」
「どうせ分かることやけん、気にせんで。それよりも手続きよろしくな」
「あっ、うん。分かったわ」
周りの視線を浴びながら、ギルドを後にした。
ーメインストリートー
新しい武器の事を考えないといけないが、どうにも頭が回らない。武器に関しては慎重に選ばなければならない。それに近々また遠征がある。出来るだけ早く用意して慣らさないといけない。はぁとため息をつき椿のいるバベルではなく、天華に言われた通り気分転換にバザールに行ってみる事にした。
色んな露店が引っ切り無しに声をあげ、客寄せに精を出している。装飾品に食べ物屋の屋台、ちょっとした古本屋など色んな店が出ていた。ふと、目に付いたのは武具屋だ。店主は駆け出しの冒険者であろう数人と話しをして売り込んでいた。ド◯クエの小さな町にありそうな簡素な露店だが自然と足が向かう。
露店の端には、樽に乱雑に差し込まれた刀剣類があった。「どれでも3,980ヴァリス‼︎」とかなり安めの金額だが、よく見ると刃こぼれしていたり、何かしら問題があった。修理に出せば使えるし、ダンジョンの上層では十分通用するだろう。樽を漁っていると、一つの刀の柄を掴んだ。
なんじゃあ?この刀は…。
触れた瞬間、背筋に悪寒が走り今迄見てきたどの武器にも感じた事がない感覚だ。気になって樽から取り出す。鞘は朱塗を基本として布を巻き付けたような拵えだ。どこかで見た事があるような気がして、鞘から引き抜き刀身を眺める。
少し刃こぼれをしていて、恐らく血であろう錆も浮いていた。それでも鋭い光を放つ刀身に禍々しく紫がかった乱れ刃の波紋が広がる。七郎治はこの刀を知っていた。
これは…‼︎ゾロが使ってた三代鬼徹じゃねーか⁉︎マジで⁉︎
良く見てみる。アニメでもマンガでもみた、バイト代の中から8,000円を掛けて取ったUFOキャッチャーのフィギュアにもついていた物と酷似していた。
「おい、店長さん。この刀は?買いたいんだが」
横入りは申し訳ないと思いながら気持ちを押させきれず、店主に声をかける。途中で割り込まれた冒険者はなんだ?と訝しんだが、七郎治に気づき一歩引いた。店主もこれに合わせて七郎治の接客に移るが、その手にしていた物を見て青ざめる。
「そ、その刀は極東の名工が作った業物でしてね…。お、お客さん本当にそれを買われるんで?」
「あぁ、気に入ってね。何か問題でも?」
「う‼︎その刀は三代鬼撤と言って、鬼撤一派の物でして…。鬼撤一派は初代から名刀なんですが、使い手をことごとく死に追いやる妖刀でもあるんでさぁ。なんでも、その刀を使って死んで行った者たちの怨念が乗り移っているとか逸話もありましてぇ」
「エェ⁉︎」
周りの冒険者が驚きに声をあげる。
ッ⁉︎やっぱりそうだ。
なんでそんな物が此処に実在しているのかサッパリ分からん。あの神様見習いのミスかいな?
考え込む七郎治に店主が声をかける。
「あの〜やっぱり辞めといた方が…。私としてもそれで貴方に死なれたら目覚めが悪くてですねぇ」
「…。じゃあ、運試じゃ!こいつの呪いとワシの悪運どっちが強いか勝負じゃ‼︎」
「「はぁ⁉︎」」
七郎治はゾロの真似をし、三代鬼撤を宙に放り右腕を突き出し、目を瞑る。
正直いって怖い。それでもワシはこの刀が欲しい。
触れてもいないのに、自分を殺そうとする殺気。『見聞色の覇気』により、より強く感じる。
【お前は…。我の担い手たるや?】
三代鬼撤!お前が欲しい‼︎
ワシを主人と選べ、絶対に後悔はさせん‼︎
周りが見守る中。くるくると円を描きながら落ちていた刀が、不自然に右腕を避けて地面に深々と突き刺さる。
「三代鬼撤‼︎ワシが主人じゃ‼︎」
「あっ…。あぁ」
店主や周りの冒険者達、はたまた様子を見ていた街の人たちは驚愕の表情を浮かべる。
「店主、3,980ヴァリスでいいけ?」
「い、いや!お代なんかいらねえ、持って行ってくれ‼︎」
「いや、タダって…。じゃあこの1,980ヴァリスの下緒を売ってくれんね」
七郎治はお金を払うと店を後にした。
よっしゃー‼︎三代鬼撤‼︎イチキュッパでGETだぜー‼︎
そうや、椿の所に持ってって手入れしてもらわな♪
七郎治はすぐにこの事が噂で広まるとはつゆ知らず、ハイテンションのルンルン気分でスキップしたいのをこらえ、ポーカーフェイスで椿のいるバベルへと向かっていった。
こんな事して良かっのか分からんが、後悔はしてない‼︎
妖刀ってカッコイイよね‼︎