ベルを追っかけた七郎治が見たものは…。
どこにいる?思い出せ。
前世の記憶を辿る。
確かベルは6階層まで降りていたはず…。
豊穣の女主人からダンジョンまで、一気に駆け抜けて来て、現在3階層。ふと思い付き『見聞色の覇気』で辺りの気配を辿る。
見つけた…。
自分の足下から感じた。
4階層だ。
近くの縦穴を使いベルのもとへと一目散に走り、一定の距離を置き見据える。
少年は、ただ我武者羅にひた向きに、モンスターへと
(ちくしょう‼︎ちくしょう‼︎僕はバカかよ)
ろくな装備もせず、ギルドから支給されるナイフのみでモンスターを追い求めて全力でぶつかる。
「うおおおおお‼︎」
(悔しい‼︎悔しい‼︎何も反論できない‼︎)
少年は自分を蔑んだ
ついに5階層まで降りた。5階層からは出現するモンスターが今までと異なってくる。普通の駆け出しの冒険者では対処しきれないのだが…。
「っぐ‼︎せやああああ‼︎」
(こんなところで…。立ち止まれない‼︎ただ何もせず、待ってるだけじゃあの人達に近づけない‼︎)
足に力を込め、すれ違いざまに切り捨てる。立ち止まらず、前へ前へと進む。
「はぁはぁ、ここは何処だろう?」
(…5階層?いや、6階層だ)
「帰らなきゃ…。神様が心配しちゃう…」
ベルは満身創痍の体を引きずる。七郎治も先回りして、ベルに注意を向けながら梅雨払いをし、地上へと向かう。
ーバベル・ダンジョン入り口ー
真っ暗だった空は僅かに明るみをおび始めた頃、ダンジョンからボロボロな兎のような少年が現れる。
「やぁ、少年。朝帰りか?」
黒髪の剣士がダンジョン入り口前の広場に繋がる階段に腰掛けていた。ロキ・ファミリア所属【抜刀斎】オウギ・七郎治。ベルを助けた一人だ。
「ッ⁉︎あなたは…。どうして此処に?」
「ん?このダンジョンと地上の境目から見る景色が好きでの〜。生きて帰れた、ワシは生きていると感じるんじゃ」
「…そう、ですか」
ベルは今この人に会いたくなかった。そっと横を通り過ぎようとしたとき、足がもつれるが…。肩を支えられる。
「少年、手を貸そう」
「いえ…。僕は…。僕は‼︎」
払い除けようとする手を、あっさり掴まれる。
「甘ったれるなよ少年。いつでも誰かが助けてくれるわけじゃないけんな、差し伸べられた手を掴めんようなやつに次はないとぜ?」
「ッ⁉︎…」
「ホントは、おぶってもええけど…。地に足を付けて帰った方がええじゃろ?」
カラカラと笑う。支えられる手は、自分と変わらないくらいの線の細さなのに、しっかりと力強く安心を感じられた。胸が痛む。
「すまんな少年。うちの者が君を蔑んだ事を心から謝罪する…申し訳ない」
「謝らないで下さい。…何も間違っていません。」
ベルは奥歯をギュッと噛みしめる。
少しの沈黙の後、七郎治が問いかける。
「…少年は冒険者になって何を目指す?」
「…僕は、…英雄になりたいです」
自分は何を言っているんだと、こんな事を言えば笑われてしまうじゃないかとベルは後悔する。
「そうか…。力を振りかざすだけじゃ強者になれても、英雄にはなれん。…ワシは少年は優しいやつだと思っちょる。その優しさを貫き通せ。そしたら、いつかきっと少年の力に変わる」
この人は笑わなかった。弱い自分がこんな事を言っても真剣に聞いてくれた。
「…は、い」
涙が溢れて止まらない。僕は英雄になりたいんだ。
メインストリートを外れて裏路地を進んで行く。
「あの、もう大丈夫です。あとは1人で帰れます。」
「ん、そうか。じゃあな、ゆっくり休めよ、ベル」
「はい、ありがとうございました」
去っていく背中を見つめる。
(あのとき、アイズ・ヴァレンシュタインさんと一緒に助けてくれた貴方は、貴方たちは僕の理想の姿でした。背中合わせに息を合わせて佇む姿は本当にカッコ良かった。
僕もいつかなれますか?貴方達のような冒険者に)
ベルは自分のホームへと足を向ける。
(あれ?僕、名前言ったかな?)
七郎治side
やっべーわ。自己紹介もしてないのに、ふつーに名前呼んじまったべ…。
原作で知っとったけど、ベルの心は純粋やね〜。優しいわ〜。
あんだけ馬鹿にされて、一回もロキ・ファミリアの事を悪く思わんかったな〜。自分やったらめっちゃ愚痴るわ‼︎毛玉、ゴラァ‼︎ってな。
ははは、自分の心の汚なさに落ち込む今日この頃…。
しっかし、ウォーシャドーと対峙した時はハラハラしたばい、無茶ばっかしよってから〜。んーとにもー。
まぁ、これで一安心やね。
帰って寝るばい。
なんか脇役のつもりで、当初書く予定だったのにガッツリ絡んでるんだよな〜
七郎治〜、お前〜。
タイトル変えるか検討中です。