ダンまちに転生したが、脇役でいいや   作:冬威

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さて、ようやくここまできましたー。






豊穣の女主人

 

 

夜明け前。遠征から帰還したばかりのロキ・ファミリアはまだ眠りについているなか、七郎治は1人抜け出し都市の外れにある小さな森へと向かう。

 

 

ふふふ…遂にLv.5‼︎

Lv.2に上がった際に全アビリティオールSば叩きだしてから、今までずっとそうして来たけんな…。

長かったわ〜。後から入ったヒリュテ姉妹、毛玉にも追い抜かれるし…。特に毛玉‼︎散々、雑魚扱いしやがってからホント‼︎まぁいいんだけどさ、ツンデレだから。あれ?あの時ツンデレになってたか?ガチじゃね?

 

 

いつもの基本の型を一通りこなし、目の前に立ててある丸太に集中する。力を抜き自然体に立ち、正中線を真っ直ぐに…。一歩を踏み出すと、いつの間にか丸太を通り過ぎ、刀を鞘から抜いていた。

 

 

「鼻唄三丁 矢筈斬り…」

 

 

刀を鞘に収めると、丸太の上半分が斜めに滑り落ちる。

 

 

ふぅ…。なんとか形になってきたばい。

 

 

【抜刀斎】の二つ名がついてから、必死に抜刀術に部類される技を練習して来た。

 

 

飛天御剣流が出来れば一番いいんじゃけど、なかなか上手く行かんのよね〜。一つ目お化けこと【単眼の巨匠(キュクロプス)】のせいで、めっちゃ大変〜。ワシたいへーん。

 

さて、今日はやらないかんことが沢山あるけん帰るか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠征から帰還したロキ・ファミリアは魔石の換金から、ドロップアイテムの売却、消耗したアイテムの補充etc…。兎に角やる事が山積みなのだ。

 

ギルド本部の前。役割を分担された団員達がフィンの声に耳を傾ける。

 

 

「僕とリヴェリア、ガレスは魔石の換金に行く。みんなは手筈通りに動いてくれ。換金したお金はどうかちょろまかさないでおくれよ?ねぇ、ラウル?」

 

「あ、あれは魔がさしただけっす⁉︎あれ一回きりっす‼︎」

 

「たーけしー‼︎お金をちょろまかすなんて…。母ちゃんはそんな子に育てた覚えはないよ‼︎」

 

「ちょっ、たけし⁉︎何言ってるんすかロージ君‼︎誰が母ちゃんすか⁉︎」

 

「えっ?副団長」

 

「誰が母ちゃんだ…。遊んでないでさっさと行かんか」

 

 

リヴェリアに怒られた為、割り当てられたドロップアイテムを売りに行く。いつもの素材屋だが、貴重なドロップアイテム、相場の値が高いものをすきあらば安く買い叩こうとしてくる。

まぁ今回は大したものがないから大丈夫だろう…。

 

ラウルが手際よく交渉を進めて行く。店の店主も特に問題は無さそうだが…。

 

 

「ちょい待ち、前回と比べて安くね?」

 

「相場が値崩れしてるからな…。価値が低いんだよ」

 

「それはおかしい、他の店では通常価格で売られていたけんな。価値が無いなら安売りしとるはずばい。なんなら他の店に持って行くきの…」

 

「あぁ、分かった‼︎分かった‼︎ちゃんとした金額で買い取るよ」

 

 

無事に交渉を終え、割り当てられた役割は終わった。

 

 

「さて、換金したお金をホームに置いてくるっす。ロージ君はこの後どうするんすか?」

 

「とりあえず、ヘファイストス・ファミリアやね。武器の手入れに行かないけん。」

 

「そうっすね〜。自分も防具溶かされたし…」

 

 

2人は一度ホームに帰り、バベルにあるヘファイストス・ファミリアに向かう。それぞれが契約している鍛治師と話す為、別れる。この後は打ち上げだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー豊穣の女主人ー

 

「みんなー‼︎ダンジョン遠征ご苦労さん‼︎今日は宴や、飲めーー‼︎」

 

主神ロキのカンパイの音頭で打ち上げが始まる。ロキを中心に幹部、準幹部達が集まる席。後は仲の良いメンバーまたはただ黙々と酒を煽るやつらの席にいくつも分かれていた。そんな中、キョロキョロと辺りを見渡す少女が。

 

 

「アイズ、どうしたの?」

 

「…七郎治がいない」

 

「あれ?ほんとうだ。ラウルー!ロージは⁉︎」

 

「ロージ君ならヘファイストス・ファミリアっす‼︎まだ、かかるそうっす‼︎」

 

「なんやー!あいつ打ち上げに遅れよってから〜、ランクアップのお祝いもかねとるっちゅーに…。これは脱がな許されへんでー‼︎」

 

 

 

 

 

 

辺りは真っ暗だ。七郎治はヘファイストス・ファミリアで言われたことを考えながら豊穣の女主人へとトボトボ歩いていた。

 

 

中から騒がしい声が聞こえる。打ち上げが始まってだいぶ経っている。ほとんどが酔っ払いだ。中に入ろうとした時中央のテーブルからベートの声が響く。

 

 

「よっしゃあ‼︎アイズ、あの話しを聞かせてやれ‼︎」

 

「…あの話し?」

 

「ほれ、あれだって、俺たちが何匹か逃がして泡食って追いかけたミノタウロスだよ‼︎」

 

「それって17階層の?」

 

「そうそうそれだよ!最後の1匹を始末した時にいたんだよ‼︎ミノタウロスに追い詰められているいかにも駆け出しのヒョロくせーガキが‼︎」

 

 

ベートの声を聴き思い出す。確かベルも来ていたはず…。カウンターの隅にベルの姿を捉える。

 

 

「ふむん?で、その子はどうなったん?」

 

「間一髪でアイズと七郎治がミノタウロスを殺してよ!そのガキ、ミノタウロスの臭っせー血を被って真っ赤なトマトみたいになったんだよ‼︎くくくっ、腹いてー、なぁアイズ‼︎あれわざとだよな⁉︎」

 

「そんなこと、無いです…」

 

 

アイズは絞り出すように声を出すが、ベートは聞き入れず、上機嫌で話しを続ける。

 

 

「しかもだぜ⁉︎ウチのお姫様とカマ野郎、助けた相手に叫びながら逃げられてやんの‼︎」

 

「…くっ」

 

「アハハハハ!そりゃ傑作やー!冒険者怖がらせてまうアイズたんマジ萌えー‼︎」

 

「ごめんアイズ‼︎我慢でき無い‼︎」

 

 

どっと周りも笑い出す。アイズは悲しい気持ちになる。

 

「見聞色の覇気」により、アイズとベルの気持ちが流れ込んでくる。

 

なぜ笑う。自分は別にいい、これじゃあ助けたアイズが報われ無い…。

 

止めに入りたいがこれはベルに取って必要な事なので、気持ちを堪える。

 

 

 

「しかし、あんな情けねーやつ久々見たわ、泣くわ喚くわ胸糞悪いわ!冒険者なんかなるなよなー俺達の品位が下がるぜ、なぁアイズ?」

 

 

やめろよ、今のお前の言葉はいつもよのような裏返しじゃない。

 

怒りがこみ上げる。

 

 

「いい加減うるさい口を閉じろ、ベート。我々の不手際で巻き込んだ少年に謝罪することはあれ、酒の肴に走る権利はない。恥を知れ」

 

 

リヴェリアの言葉に先ほど笑ったもの達は気まずそうに肩を縮こませる。

 

 

「チッ‼︎ゴミをゴミといって何が悪い、アイズお前はどう思うあんな情けねーやつ」

 

「…あの状況じゃ仕方なかったと思います」

 

「…んだよ、いい子ちゃんぶりやがって。じゃあ質問を変えるぜアイズ。あのガキと俺、番にするならどっちがいい?雌のお前はどっちの雄に尻尾を振って滅茶苦茶にされたいんだ⁉︎」

 

「…私は、そんな事を言うベートさんとだけは御免です」

 

「無様だな」

 

「黙れババア‼︎じゃあ何かあいつを選ぶってのか⁉︎雑魚じゃアイズ・ヴァレンシュタインにわ釣り合わねー‼︎」

 

 

ガタンッ‼︎

白い掛けが出口へと駆け抜けていく。七郎治の横を通り抜け、泣きながらダンジョンへと走っていく。

 

ウェイトレスとアイズが出てくる。追いかけようとするアイズの腕を掴む。

 

 

「…七郎治」

 

「自分の気持ちが整理しきれて無いのに追いかけても相手を傷つけるだけぜよ…」

 

 

七郎治は怒っていた。いくら原作の流れとはいえ、自分の身内が、家族(ファミリア)が誰かを傷つけた。そして家族であるはずのアイズさえも…。

分かっている酒の席だと、空気を壊してはいけない。では、壊さずに元凶に制裁を。せこい気もするが…。

 

七郎治はアイズと共に店に入る。

 

 

「ようやく来たか七郎治。Lv.5になったそうじゃな!ほれ、お前も飲め‼︎」

 

 

ガレスが杯を勧めるてくる。

 

 

「また、戻らないかん、顔を出しに来ただけぜよ」

 

「七郎治…。おまえ…」

 

 

七郎治の様子にガレスは気づく。自分が育てた弟子である。表面上は変わらないが、口調が僅かに変わり、その目には怒りの色に染まっている。

ガレスの杯に酒を注ぐ。ロキ、フィン、リヴェリアとアイズ以外の全員に酒を注いで回る。それぞれお祝いの言葉や等、話しかけられるが軽く流す。そして最後、紐で縛られて天井に吊るされるベートの所へ。

 

 

「ほれ、毛玉。はよーせい、注いでやるぜよ!なに?ジョッキが持てん?じゃあ直接飲ませるぜよ‼︎ワハハ‼︎」

 

七郎治はそういうとベートの口を僅かに外し、鼻から酒を注ぎ込む。アルコールが鼻に入ると相当痛いのだろう。ベートが暴れまわる。どっと皆も笑い出す。ヒリュテ姉妹は本当に楽しそうだ。

 

 

「ちょっ!ゴボッ!何しやがるテメェ‼︎」

 

「お前だけ注がんわけにはいかんぜよ」

 

「このヤロー‼︎雑魚の分際で‼︎だいたいお前みたいな雑魚がなんでアイズの相棒なんだよ⁉︎釣り合わねーよ‼︎さっさと消えちまえ‼︎」

 

 

辺りが静まり返る。あろうことか仲間に対してとんでもない言葉を投げつける。ベートを咎めようとするリヴェリアを手で制する。

 

 

「なんで?…か」

 

 

七郎治は喉の調子を整える。

 

 

「…じゃあ、質問を変えるぜアイズ。この発情毛玉とオレ、番にすらならどっちがいい?め「えっ?七郎治がいい」早いよ⁉︎最後まで言わせて〜ん」

 

 

ベートの声真似をしながら、アイズに先ほどと同じ質問を問いかけるも、オチまでいかなかった。周りは一瞬呆気にとらわれるもまた笑い出す。アイズに想いを寄せるレフィーヤからは殺気を放たれ、ベートは余りのショックに真っ白に燃え尽きる。

 

 

「じゃあ、ワシはもう戻るぜよ」

 

「ちょっと!ロージー‼︎」

 

 

店を出て、一目散にダンジョンへと走り抜ける。手を貸すわけでもなく、ただ見守るしかできないが…。ベル、君の勇姿をしかと見届けよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ベート。お前はこのネタでしばらくいじり倒す‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






ベート…。これで反省しなさい!



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