ダンまちに転生したが、脇役でいいや   作:冬威

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やっと帰ってきた〜





帰還と更新

 

 

北のメインストリートから外れた所にそびえ立つ、赤茶色の外壁で黄昏時を彷彿させる城。ロキ・ファミリアのホーム【黄昏の館】。亜人で構成された一団が門をくぐる。

 

 

ドドドドド‼︎

 

「おっかえりーーー‼︎‼︎‼︎」

 

 

鍛え抜かれた冒険者でも驚く程のスピードと勢いで、男性陣をすり抜け女性陣へと突撃する自分達の主神の姿があった。

 

 

「キャーー‼︎」

 

「ぐへへへ…」

 

 

慣れたようすでかわす者の中に、かわしきれず魔の手にかかった犠牲者が…。

 

〈レフィーヤ〉を生贄に〈セクハラ神ロキ〉を召喚‼︎

レフィーヤのおっぱいにアタック!必殺の〈神の手(ゴッド・ハンド)〉‼︎‼︎

 

 

「レフィーヤ!おっぱいちょっと大きゅうなった⁉︎」

 

「ッ⁉︎なってません‼︎」

 

 

そんないつもの光景を、主神の姿を見て呆れつつも帰って来たと実感する団員達は談笑しながら、遠征の片ずけに入る。

 

 

「…ただいま、ロキ」

 

「ん、お帰りアイズたん。…ズキズキ痛むな〜、無理したらあかんよ。ゆっくり休み。」

 

 

遠征での無理な戦闘はアイズの体に負担を掛けていた。誰にも悟られない様にしてきたが…。あっさりと見破り、労ってくるロキ。やはり神様なんだなと改めて実感しさせられた。

 

 

「ちゅうか、アイズたん何背負っとるん?」

 

「…七郎治」

 

 

アイズはくるっとロキに背を向ける。そこにはダンジョンから地上に出た瞬間、緊張の糸が切れたのだろう口を半開きにして、スヤスヤと眠るボロボロな七郎治の姿があった。

 

 

「こいつ‼︎アイズたんの背中で何居眠りこいてんねん⁉︎」

 

 

うがー!と憤怒し、うちもされたい、おんぶしてー‼︎と宣い始めた。ロキの騒がしい声に目を覚ます。

 

 

「うっさいわー‼︎今何時だと思っとるんじゃ⁉︎まだ、おネムの時間じゃろうがー‼︎」

 

「もう夕方や‼︎アイズたんの背中にそんなに引っ付いてから〜許さへん‼︎」

 

 

飛びかかってくるロキ。巻き添えはごめんだと紐を素早く切り離し戦線離脱をするアイズ。アイズがいなくなったことにより、不安定な体勢からロキを受け止め踏ん張る七郎治。

 

 

「…ロージ、お前も大概無茶したな」

 

「えっ?あぁ、うん」

 

「ったく、揃いも揃って…。ロージお前のかわええ顔が台無しやんか‼︎ほんま何で女の子やないんやお前はー‼︎」

 

「えぇ、そんなことは…「ムギュ」ほんまやー‼︎‼︎」

 

 

ゲラゲラ笑う二人。

眷族の無茶な行動を咎めたと思ったら、いきなりハイテンションで訳の分からない八つ当たりを始めた。それに対してさ◯まさんのノリで、股間を握り自身が女の子ではないことを確かめる。男性陣は笑い、女性陣からは白けた目で見られる。

 

こうして、ロキ・ファミリアは遠征を終え、自分達のホームに帰って来たのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕刻。シャワーを浴び、夕食を終え、団員達が思い思いの時間を過ごす。

【黄昏の館】中央棟最上階。

ロキの私室に1人の少女が険しい表情をしていた。

 

 

…低すぎる。

 

 

アイズは夕食を食べ終え、今回の遠征の成果を、ステイタスの更新に来ていた。ロキの手によって蓄積された経験値(エクセリア)がその背中に新しく刻まれていく。

 

レベルが上がるに連れて、経験値(エクセリア)取得が難しくなり上昇値は少なくなるのが通常だ。

 

今回の遠征で、新種のモンスターとの戦闘を加え沢山のモンスターを葬ったアイズのステイタスは10オーバーしか上がっていなかった。

 

Lv.5に上がって3年の月日が経つ。今回の更新はアイズのLv.5としての限界を指している。後は器を昇華させて次のレベルに行くしかない…

 

 

「アイズ…。いつも言っとるな?つんのめりながら走っとったらいつか必ず転けてまう。これからも何度も言うで?忘れんようにな…」

 

「…」

 

 

思いつめているアイズを見守っていたロキが、優しく諭すように語りかける。

 

アイズはロキの優しさが伝わっているからこそ答える事が出来ずにいた。どうしたものか…

 

コンコン…。ドアがノックされる。

 

 

「ワシ入りま〜す」

 

 

七郎治が返事を待たずに入ってきた。

 

 

「七郎治…」

 

「おまえ、返事くらい待たんかい‼︎アイズたんが着替えとったらどないするんや⁉︎」

 

「あぁ、ワシ別に気にしないんで」

 

「おまえのことちゃうわ‼︎」

 

「そげんことよりも、ステイタスの更新してくれんね」

 

「おっ?珍しいな〜、いつ以来か覚えとるか?」

 

「あー確か、1ヶ月…いや2ヶ月…3ヶ月、4ヶ月…。分からんわ」

 

「1年ぶりや、そんぐらい覚えとき」

 

 

ロキと七郎治の締まらない会話を聞きながら、アイズは七郎治のステイタスに興味を持った。

 

 

「ねぇ、見ててもいい?」

 

「ん、今回の遠征はワシの中で実りがあったけん、多分そろそろ…」

 

 

七郎治は上着を脱ぎ、ロキが更新の作業を進めて行く。

 

 

「おっ?キタでー‼︎ロージー‼︎今、ステイタスの更新うつすな‼︎」

 

 

ロキに渡されたステイタスを見る。

 

 

Lv.4

 

力:A861 → S903

耐久:B796 → S900

器用:S982 → SS1006

敏捷:S912 → S941

魔力:S951 → S961

 

 

トータル200オーバー

全アビリティ・オールS

 

アイズは驚いていた。1年間更新をしていないと言ってもLv.4の上位でこの上昇値。さらにオールSどころか限界突破したものまであった。

 

 

「よし、じゃあロキ。ランクアップしてくれい‼︎」

 

「おう‼︎任せとけー‼︎」

 

 

2人の会話が聞こえる。今なんといったのだろうか?たしかランクアップと…

 

 

「えっ?ランク、アップ?」

 

「ん?…1年前にはランクアップ出来たんよ。でも、まだ伸びそうやったけん保留にしとったけんな」

 

 

アイズはまたしても驚いた。いつの間にか器まで昇華させていたとは知りもしなかった。自分は相棒なのに…。

 

思うように上がらない自身のステイタス。自分の知らないところで強くり、自分と同じLv.5へと追いついてきた。焦燥感にかられる。

 

考え込んでいるうちに更新が終わったようだ。

 

 

「よし、寝るべ」

 

「おー、ロージおやすみな〜」

 

 

部屋を出て行く七郎治を追いかける。

 

 

「あの、七郎治、私…」

なんて言えばいいの?どうしてそんなに上がるの?何をしたの?

 

 

聞きたいこと、言いたいことがあるのに…うまく喋れないアイズを尻目に歩き出すとアイズも黙って付いてくる。どうしてもうまく言葉にできない、そんなアイズの心を感じ取る。とある剣豪の師匠の言葉を贈ろう。

 

 

「…1枚の葉にとらわれている者には、木の全体は見えん。1本の木にとらわれている者には、森は見えんよ」

 

「えっ?」

 

 

七郎治は、あっこれ全然伝わってないな…。恥ずかしさを我慢しながら自室に帰っていく。

 

アイズはその背中を見つめるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







久しぶりのロキです。
嬉しいです‼︎



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