さぁ今回の遠征のラスボスです‼︎
ーーー僅かな意識の中、戦闘音が聞こえてくる。
目を覚ます。
自分は誰かに運ばれているようだ。
相変わらず左半身の感覚が無い。
音の方に目を向ける。信じられ無い光景が映った。
林をなぎ倒し、先程の芋虫より遥かに大きく、およそ6
四枚の腕を広げ、光が舞う。七色の粒子群が辺りに広がった瞬間、爆発を起こす。そんな中、風が盾となり爆発を防いでいる場所がある。
アイズ・ヴァレンシュタインだ。
えっ?マジで?なんで?
起き抜けの頭を必死に動かす。そうこうしている内にアイズが必殺の『リル・ラファーガ』で止めを刺しにはいる。
なんだこの感じ?変な気配だ…
『見聞色の覇気』により何かを感じとる。七郎治は嫌な予感が身体を突き動かし、アイズのもとへ
『
「ッ⁉︎七郎治⁉︎」
リヴェリアの声を背に前を見据える。アイズが女体型に止めを刺し、上半身を風が削り取る。敵は膨れ上がり爆発を起こし殲滅したと思えたが…その巨体の下から、爆煙に包まれた2体目が現れた。
「ッ‼︎‼︎⁉︎」
アイズは回避へと移行する。もう一度このモンスターを倒すには魔力を練り直さなければならない…。
ふと背後に感じる何時もの安心感。そちらに目を向けると宙を駆けるボロボロの相棒の姿があった。
「七郎治…」
【悪しき魂を持つ鬼の群れ。この世に禍をもたらす】
『
【邪なる者を打ち払う。我、四ツ目ケ金眼の守人。鬼を打つ鬼とならん】
七郎治の身体が金色に輝く光を纏う。さすれば四ツ目の鬼が現れる。
【鬼・千・切‼︎】
魔力を纏った金色の巨大な斬撃が、横一閃に女体型を切り伏せる。切られた女体型が膨れ上がり巨大な爆発を起こす。
あっやべっ…避けきらんわ…
七郎治が冷静に考えていると、風が自分を包む。更には脇腹に手が下から添えられ、両膝の下を抱えられる。
俗に言うお姫様抱っこだ。
仲間達全員が固唾を飲んで、舞起こる爆煙を見つめるなか二人の人影が見えた。アイズとお姫様抱っこされた七郎治だ。
「「「ーー‼︎‼︎」」」
歓声が湧き起こる。誰もが仲間の帰還を喜んだ。
ようやく50階層での戦闘を終えた。
「さて?七郎治、なぜ勝手に飛び出した?」
凄く良い笑顔のだが、目が全く笑っていないフィンとリヴェリアの前に、アイズにお姫様抱っこされたまま突き出される。
「だっ、だってアイズ嬢が飛び込むけん…」
「今回は、フィンの指示に従ったんだよ?」
アイズがどこか得意げに答える。
「うっそ⁉︎マジでか⁉︎…ワシも心の中の団長の指示に従っただけじゃ」キリッ
「七郎治〜?言いたいことはそれだけかい?」
「すんませんでした‼︎‼︎」
七郎治が全力で謝る。
「ガハハハ‼︎まぁ良いではないか。実際2体目が現れたときはどうなるかと思ったわい」
そう言うと近ずいてきて乱暴に七郎治の頭を撫でる。我らが親方様が助け船を出してくれた。
「はぁ〜しょうがないな。アイズ、帰りは七郎治を見張っておくように。」
「うん。…」
アイズは何かを考えると、七郎治を背負い直し落ちないように紐でくくる。
「アイズ嬢…どげんしてこうなった?」
そうアイズは背中合わせになるように結んだのだ。アイズの頭から少し七郎治の頭が出て、足は地に付かない。余談だが七郎治の身長は少しアイズより小さい。
べっ!べつにまだ14歳だから、これから身長が伸びるんだからね‼︎
「抱えてたら、戦えないでしょ?」
「いやいや、背負わんでも良かろうもん‼︎ワシは荷物か⁉︎文字通りお荷物ってか⁉︎」
そんな二人の姿をみて爆笑する団員達、一部はアイズと密着する七郎治を睨み付ける者と毛玉。
「…七郎治。あんまり無茶したら、ダメだよ?皆んなを守る為でも、ダメ…。約束、覚えてる?」
「アイズ…」
二人には他の誰も知らない約束がある。だから、アイズは心配し、怒っているのだ。七郎治はコツンとそっと頭でアイズの頭を小突く。
「さぁ、主発するぞ」
「えっ?このまま?」
フィンの号令と共に団員達が動き出す。
自分達の帰りを待つホームへと。
ダンジョン内に七郎治の絶叫が響きわたるとも知れずに…
七郎治の運命はいかに‼︎
七郎治とアイズの約束とは?そのうち放り込みます。