ダンまちに転生したが、脇役でいいや   作:冬威

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なんか、変なところでキャラ紹介したな〜





防衛戦

 

50階層に突如として現れたのは、全体的に黄緑色の身体に濃密な極彩色の模様が刻まれている。無数の足が蠢いてずんぐりとした巨体を運んでいる毒々しい芋虫だ。

 

 

うん、知ってたけど。実物見ると気っっ持ち悪か〜‼︎

えっあれに突撃すんの?まじで?えぇ〜

 

 

崖の上の開けた平地に拠点をかまえているが、芋虫の群れは崖に張り付き防衛を行うロキ・ファミリアに腐食液を浴びせていく。

 

盾を構えた団員達が腐食液を防ぐも盾を溶かされ、防ぎきれなかったものが腐食液を受ける。

 

 

「うわぁ‼︎た、盾が溶かされた‼︎」

 

「あああ‼︎腕がっ‼︎」

 

「奴らが吐き出す液に触れるな‼︎矢を放て、その隙に怪我人を下げろ‼︎」

 

 

リヴェリアの指示が飛び、団員達も混乱する中、的確に指示に従う。

 

 

(フィン達が戻ってくるまでにまだ時間がかかる。矢には限りがある…。魔法を詠唱出来る時間を貸せがなくては…どうする?)

 

 

リヴェリアは指示を飛ばしながら、打開策はないかと思考を張り巡らせる。しかし相手は待ってくれない、極彩色の芋虫達が再び腐食液を放とうと構える。

 

 

「前衛!盾構え‼︎腐食液を被った盾はすぐさま放棄しろ‼︎」

(っ‼︎どうすれば⁉︎)

 

 

第二波。盾で防ぎ、すかさず矢を放ち芋虫の僅かな数を減らす。しかし、巨体のすぐ後ろで第三波が待ち構えていた。

 

 

「マズイ‼︎盾をすぐ構えろ‼︎」

 

 

リヴェリアの指示に、慌てて次の盾を構えようとするも間に合わない。もしこの腐食液に触れてしまったら?前衛の顔が青ざめる。

 

 

スパッ

 

 

風を切る音がなり、腐食液が届くことはなかった。何が起きたのかわからず、団員達は唖然としていた。

 

 

「人の世三十六煩悩。『三十六煩悩砲』‼︎」

 

 

斬撃が飛ぶ。先頭の芋虫を切り裂く。芋虫は倒されると破裂し、周りの仲間を巻き添えに腐食液を撒き散らす。そんな地獄絵図から前衛の目の前までバックフリップで後退してくる人影。

 

 

「あっぶね〜‼︎マジ、ベーや‼︎」

 

 

少し涙目になりながら、焦った顔の七郎治だった。

 

 

「七郎治‼︎お前がやったのか⁉︎」

 

 

リヴェリアが驚愕の声を上げる。

 

 

「あっはい。切っちゃった♡テヘペロ」

 

 

他の団員達は声も出さずに固まる。今なんと言った?このバカは鋼の盾さえも溶かす腐食液液を()()()と言ったのだ。

 

 

「…まぁ、時間は少しだけなら稼ぐけん、魔法の詠唱ば始めてくれんね?」

 

 

七郎治が飛び出していった。

 

 

「っ!待て‼︎七郎治‼︎…くっ、魔導師部隊は詠唱に入れ‼︎前衛は盾で進行を阻止、使えるものは鍋でもまな板でも構わん‼︎後衛組は矢を構えろ‼︎」

(無茶するなよ七郎治…)

 

 

芋虫の群れに飛び込む。飛びかかる腐食液は『見聞色の覇気』で先読みしてかわし、相討ちにさせる。かわしきれないものは剣先でそっと添えるように、決して触れてはいけに無い、力に逆らわず逸らす。

 

その巨体をもって踏み潰さんと迫り来る。

 

 

焔燃型(カグツチノカタ)第一式 火柱」

 

 

刀を持つ右腕を頭上に地面に平行構え、左腕をその下に添え力を加え押し上げる。右腕を鞭のようにしならせ、全体重を乗せた一撃が芋虫を縦に一刀両断にする。

 

 

「げっ‼︎少し刃こぼれさせちゃったべ…」

 

 

七郎治の刀は、不壊属性(デュランダル)が寄付されてる訳でもなく何か特別な力がある訳でも無い、ただの良く切れる刀だ。

 

 

もう、なんじゃこいつら?好かんわ〜

崖の上のポニョならぬ崖の下のブニョってか?

アホウか!つまらん‼︎

お前の話はつまらん‼︎つまらん‼︎

 

ん〜。どうすっかな〜思ってた以上に難しいな。腐食液が刀に触れる前に振り抜く。()()()()()()なのにな〜。斬撃飛ばすのはタメがいるからな、どうするか…

 

 

思考しながら、次々に襲い来る腐食液をかわし『見聞色の覇気』で周りの様子を伺う。魔道部隊の詠唱完成までもう少しだが、レフィーヤは51階層から戻っておらずリヴェリアが指揮な回っている為、一撃でこの数を葬ることはできない。

 

 

 

一か八かだ、試すしかなかろうや…

 

 

 

左手で脇差しを抜き放ち、二刀流で構える。

Lv.4に上がるきっかけ、神々が認める「偉業」を達成した時に僅かばかり感じ取れた自分自身の力。

 

身体に見え無い鎧を纏う感覚でより硬く練り上げる。

 

右腕の付け根から刀の剣先まで、左腕の付け根から脇差しの剣先まで、黒く変色する。

 

 

「リャアアアアアアア‼︎」

 

 

腐食液を斬りはらい、巨体を切り捨てる。破裂して飛び散る腐食液をさらに芋虫めがけて斬り飛ばす。休む事なく繰り広げられる斬撃。覇気を纏った刀は溶けるとこもなく、次々と芋虫を切り裂いていく。

 

 

「うっ!ぐぁぁ」

 

 

しかし、覇気を纏うことが出来たのは腕のみ。僅かに避けきれ無い、捌き切れなかった腐食液が七郎時を襲う。装備を溶かし、剥き出しの肌を溶かし、顔の左半分と左足は感覚が無い。

 

 

「っ!はっ!」

 

 

仲間の声を拾う。足先に魔力を貯めて放出。『縮地』と名ずけたこの技は瞬間的な速度は目にも映らぬ速さだ。崩れかけた前衛部分へ走り、敵を斬り捨てる。

 

 

 

 

「七郎治‼︎下がれ‼︎詠唱が完成する‼︎」

 

 

リヴェリアの指示に従い自陣に戻る、と同時に魔導師部隊の一成攻撃だ。

 

 

ドドドカーン‼︎‼︎‼︎

 

 

芋虫の数を減らすも、まだ残っている。すぐさま突撃しようとするが身体がダメージに耐えれず、膝から崩れ落ちる。意識が薄れ…

 

 

「っ!七郎治‼︎早く手当を‼︎」

 

「リヴェリア様‼︎残りが来ます‼︎」

 

「っ‼︎密集陣形を崩すな‼︎もうすぐフィンやアイズ達が戻ってくる‼︎それまで何としても持ちこたえるんだ‼︎」

 

「あぁ足がぁ」

 

「盾、盾はもう無いのか⁉︎」

 

「くそぉ!」

 

「っ、ロージ!あんたは寝てなさい‼︎」

ペシッ‼︎

 

 

数を減らせてもこちらの消耗が激しい為、苦戦を強いられる。団員達に不安と焦りが広がり「ここまでか」と諦め始めるものもいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな不安を薙攫うように一陣の風が巻き起こる。風は絶望を断ち、希望を運んで来た。

 

 

「アイズ‼︎間に合ってくれたか…。魔導師部隊‼︎全員詠唱開始‼︎私も入る‼︎援護を頼む‼︎」

 

「「「「はい‼︎」」」」

 

もう誰も絶望するものは居なかった。ロキ・ファミリアが誇る第一級冒険者が集まったのだから。その姿は団員達全員を奮い立たせ、必ず生きて帰る、帰る事ができる。そう鼓舞するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





一生懸命頑張ったのに美味しいところを持って行かれた七郎治(笑)


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