埠頭攻防
「おや?」
「どうしたんだキャスター?」
あれからバーサーカーを桜の元に待機させながら夜の街を歩いていたら、キャスターが分かりやすい魔力の残滓を感知する。それはどこかに誘うように続いている。
「誰かが誘っていますね」
「追ってみるかい?」
「どうしましょうかね……」
ここまで堂々としていると罠の可能性も高い。だが他のマスターやサーヴァントの情報を集める為には虎穴に入らなければとも考える。雁夜はキャスターの判断に任せると言った感じである。
「そうですね……行ってみますか。危険だと判断したらすぐに撤退します」
「ああ」
それではと魔力の残滓を感知しバーサーカーの時と同じように辿って行く。そうして歩いていくと人払いの済ませてある埠頭に着く。そこでは3人の人物が対峙していた。
片や純白の女性を庇う様に立っている騎士の風貌をした人物。片や槍を携えた優男。辺りを警戒しながらも、物陰からその人物達の動向に注意を向けると、ランサーのマスターと思われる姿無き男性の声が響く。二、三言言葉を交わした後、騎士とランサーがぶつかる。
「獲物の長さが分からないのに中々やりますね、あのランサーは。技量の高さが伺えます」
戦いを観戦しながらそんな事をポツポツと呟くキャスターであった。刃を交えて数分ランサーのマスターが痺れを切らして令呪を切って宝具の開帳を命じた。
「2つの槍を使うサーヴァントですか……」
2つの槍、それも黄色と赤色の特徴的な槍を使う者はそう多くないだろう。聖杯から得た知識と照らし合わせておおよその真名を掴んだキャスター。セイバーの小指の腱を断ち少し優勢といった所で海の方から野太い声と少年の悲鳴が聞こえてくる。
「派手な登場ですね」
2頭の牛が牽く戦車でセイバーとランサーの間に割って入る赤毛の大男。少しグロッキーになりながらも文句を言うマスターと思われる少年。勝負の邪魔をされた2人は不服そうな顔をしながら刃を向ける。
「双方とも剣を収めよ!王の御前であるぞ!」
少年にデコピンを食らわしながらも堂々とした姿勢と共に声を張り上げる。
「余の名は征服王イスカンダル!此度はライダーとして現界した者なり!」
いきなり真名を暴露するライダーにキャスターも含めたその場に居た全員が唖然とする。少年が慌てている様を見て「あぁ……本当の真名なのだな」と内心で察している。
「あの大胆不敵さはギルガメッシュ様を思い起こさせますね」
「え?キャスターが仕えてた王もいきなり真名を言うような奴なの?」
「そこまではしませんが……真名を知っていて当然といった反応はするでしょう。そして知らないと言ったら少し怒ります」
「おっかない王だね……でも、そんな王ならこんな戦争に参加なんて……」
「残念ながらその可能性は消えました」
ライダーがセイバーとランサーに軍門に下るか尋ね一刀両断された後に、これを見ている者は来いと叫ぶ。その声に反応するのは黄金のサーヴァント。
「我をおいて王を名乗る不届き者が居るとはな!」
その声を聴いたキャスターが少し顔を引きつらせていた。戦争はまだ始まったばかりである。
すまない・・・遅くなって本当にすまない。これも全部グランドオーダーって奴の仕業なんだ!
最初、セイバーをジークフリート(すまないさんに非ず)、ランサーをカルナ、ライダーをオジマンにでも変えてやろうかと思ったのですが止めました。冬木が滅びそうだからね!是非も無いよね!