モンスターハンター 紫煙の狩人 第二回アンケート実施中   作:蜘蛛の意図

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第1章:憤怒のティガレックス編
ヘタレ女ハンター、二つ名ハンターを知る


モンスターが空を駆け、大地を踏みしめる。世界の支配者はモンスターであり人間はそのテリトリーから外れた場所で生活を営んでる時代。そんな世界で、モンスターの脅威から日々を守るため、その巨躯に立ち向かい、狩る者がいた。

 

ハンターである。

 

この物語は無数にあるハンターたちの物語のひとつ

 

 

古代林。主に新人ハンターの狩猟場所として有名な場所でありマッカオなどのモンスターが存在している。そのため下位ハンターが多く行く場所である。いまそこで無数の銃声が聞こえてきた。

 

「これで、とどめ!!」

 

白系統の鳥竜種の鱗で作られた装備を着た金髪の少女が同じ色合いのライトボウガンの弾丸を放った。それを受け派手なトサカをした緑色の鳥竜は吹き飛びそのまま息絶えた。

 

「ドスマッカオ討伐っと、よしこれでクエスト完了。さて、龍歴院に戻るかな」

 

彼女はテノア。ポッケ村出身の新米ハンターである。全身をギアノスのガンナー装備で固め、ボウガンもギアノスの素材をふんだんに使ったショットボウガン・白を基本装備としている。ハンターとしての経歴は少ないが短期間で中型モンスターを狩れるほどの実力を持っている。

 

「ふふふ、順調順調。これであとは装備の質をもう少しあげれば飛竜に挑戦できるんじゃないかしら」

 

そんなことを言いながら彼女はキャンプエリアを目指していた。彼女自身依頼を達成して少し気が緩んでいたためエリア4と呼ばれる森林地帯に突入したときの衝撃は想像以上だった。

 

「?!な、何よこれ?!なんなのこの怪物の死体は?!」

 

テノアの前には大型の飛竜の腐食しかかってる死体があった。その飛竜の亡骸は原始的な雰囲気を色濃く残しており、それだけで生きているときは恐ろしい強さを持っていたことをうかがえる。またその死体をいろいろと確認しているといろいろと分かったことがあった。

 

「これって砲撃の焦げ跡……?じゃあ、ハンターにやられたのかな……?」

 

それは死体にあった無数の焦げ跡だった。その他にも何か鋭利なもので刺されたような傷も多く確認できた。これだけでもハンターにやられたことがわかった。

 

「とりあえず鱗の一枚でも取って龍歴院に報告するか……って汚!!何このドロドロ感?!」

 

テノアが剥ぎ取り用のナイフで飛竜の鱗をとろうとしたときまるで果物が腐り落ちるように鱗が皮膚とともに崩れ落ちた。テノアはとっさに飛びのいたが彼女のギアノスコートにその体液らしきものが飛んでしまった。

 

「まったく何よこれ……ん?なんか変なにおいが……?……!!わ、私のギアノスコートが解け始めてるぅぅ?!!なんなのよこれもういやぁぁぁ!!!」

 

そう、さっきとんだ液体がテノアの腰装備をかなりのスピードで溶かし始めていたのだ。幸い彼女はすぐに腰装備を外して投げ捨てその場を駆け足で逃げた。なお、テノアは気づかなかったがギアノスコートが溶けるのに十数秒もかからなかった。

 

 

「あー多分その死体はティガレックスだねぇ。かなり砂漠から寒冷地隊まで広い範囲で生息している凶暴な飛竜だよ。確か最近では古代林でも存在が確認されているとかいないとか……」

 

「そういうのいいから!!それがなんであんな死体で発見されたのよ!!しかもあんなドロドロした腐死体で発見されたのよ!!しかもその体液のおかげで私のギアノスコートが使い物にならなくなったんだよ?!」

 

ここは龍歴院集会所。多くのハンターが所属し人々のために依頼をこなす場所である。あの依頼の後全速力で帰ってきたテノアは早速ギルドマスターの老人に八つ当たりという名の事後報告を行っていた。

 

「でもおかしいねぇ。ティガレックスは毒なって持ってないのに……それにギアノスコートは鳥竜種装備の中ではかなり粗末だけどそんな簡単に溶けたりしないしねぇ……。ねぇ他に何か情報はないのかい?」

 

「えっと他には……あ、そうだ!!」

 

さりげなく自分の装備をディスられたが今は場面を教えることを優先した。そして体液ドロドロで忘れていたが忘れていたが砲撃と切り傷のことを思い出したのでそのことをギルドマスターは納得したような呆れたような表情になった。

 

「ああ、なるほどねやっと納得できたよテノア」

 

「どうしたのよギルドマスター、一人で納得しないで私にも教えてよ!」

 

「わかったよテノア、でもここから先は……真面目に聞きなよ」

 

いつも温和そうなおばあちゃんという感じのギルドマスターの顔が一気に真剣になった。その雰囲気は普段そこまで彼女に敬意を払ってないテノアすらも気構えさせた。

 

「……紫毒姫という二つ名のリオレイアがいる。強力な毒を持ち大抵の装備だったら、それこそギアノスシリーズ程度なら十数秒と掛からず廃品にできる。そしてそれをたった一人で倒しきったハンターがいたんだよ。そしてそのハンターを人々は畏怖を込めてこう呼ばれた」

 

ギルドマネージャーは一拍おいて言った。これから忘れることができない狩人の名を。

 

「『紫苑の荼毘』、とね」

 

 

『紫苑の荼毘』。性別が男であることと紫毒姫を素材とした紫色を基調色としたガンランスと防具をつけていること以外ほとんど不明。そのガンランスによってできた砲撃の紫色の煙がまるでそれが死者を燃やした時に出る煙に似ているところから、そのような二つ名がつけられた。

 

「ソロで今も活動しているらしいがあいつは人嫌いだからめったにこの辺にも現れないんだよ」

 

「でもそれじゃ依頼とか受けられないんじゃ……?」

 

「そこは裏技を使ってね。たとえば龍歴院の調査隊に紛れて狩場まで行ったり、自分でネコタクシー代払ってフリーハントに出かけたりね。……と、噂をすれば来たね」

 

ギルドマスターの見ている方向を見てみると薄紫色の軽装のアイルーがとてとてと歩いてきた。垂れた耳に大きな目が特徴のかわいらしいアイルーだった。

 

「え、あの子は、一体……?」

 

「あいつの小間使いさ。基本的にあいつが毎日集会所の依頼を確認しに行く。で、いい依頼があったらあいつが依頼書を『紫苑の荼毘』の所に持っていく、てところさ」

 

「そうなんですか……ってあの子なんかこっちに来ましたよ?!」

 

龍歴院の対話スペースで話していた二人のほうに先ほどのアイルーがよってきた。表情からは本心を見にくいアイルーのためなぜこちらのほうに来たのか全く分からなかった。

 

「ユカリ。どうしたんだい珍しい」

 

「ギルドマスター。ご主人からご報告があったのにゃ。最近古代林のモンスターの気が非常に立っているからもっと本格的な調査団を加えて調査したほうがいい……らしいのにゃ」

 

「まあ、下位の狩場にティガレックスが現れるぐらいだからねぇ」

 

「?あれギルドマスター?ティガレックスが現れたことを知っていたんですかにゃ?僕はそれも報告しにきたんですけどにゃ」

 

「ああ、それはこの子が……」

 

話の流れでギルドマスターはテノアをユカリに紹介した。そしてこれまでの経緯をユカリに掻い摘みながらも説明した。

 

「ああ、なるほどじゃあ、あなたがご主人が言っていた乱造女ハンターさんかにゃあ」

 

「……は?」

 

その言葉を聞いた瞬間柔らかな笑顔で話を聞いていたテノアの顔にピシッとと亀裂が入った。そして小さく震える。

 

「なんだか狩りをしているところを見ていたらしいですけど、要領が悪くて見ててイライラしたってご主人が言ってたにゃ」

 

にゃにゃにゃ、とユカリは笑いを加えながら軽快にしゃべった。本人からしたら軽い笑い話だと思ったらしいのだがことの本人はぶち切れ寸前だった。

 

「乱造女……?私が………?ポッケ村一の……ガンナーの素質を持ってるって言われた私が……?ふふ、ふふふ、ふ、ふふふふふふふ、ふふ」

 

「ら、乱造さん?ど、どうしたのにゃ?どうして僕の後ろに回り込んでるのにゃ?なんで僕の首をつかんでるんだにゃ?!なんで力を込めるんだにゃ?!!」

 

「離してほしかったらぁ……………私をあんたのご主人の所に連れて行きなさい」

 

「えぇ?!!ちょっとそんなことしたら僕がご主人に怒られ……っていたたたた?!痛いのにゃ、わかった、わかった連れて行くから痛くしないでにゃあああああああああああ!!!」

 

ユカリの首をつかんだままテノアはそのまま彼が指差す方向に歩いて行った。そしてそんなものを見ながらギルドマスターは誰にも聞こえない声でこうつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、シエンが誰かを『評価』するなんて珍しい……これは少しこの先が楽しみになってきたねぇ」

 




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