モンスターハンター 紫煙の狩人 第二回アンケート実施中   作:蜘蛛の意図

14 / 17
即席パーティ、G級青熊獣に遭遇する。そして、あっけなく蹂躙される

 

「うわぁ、すごいこんなきれいな場所初めて見たわ!うーん、風が気持ちいい……!」

 

「うぉ‼アプトノスだ‼こんな高いところにもいるんだなぁ‼」

 

「……人が入れないほどの高所とはいえ生態系はそこまで変わらねぇみたいだな……」

 

「オイこらぁ、さっさと探しに行くぞ。その灼けた甲殻とかいうのを」

 

テノア、ヒィト、ブルーノ、ギーヴは現在クエスト用のベースキャンプから出発し現在遺群嶺のエリア1と呼ばれる場所に足を踏み入れていた。古代林や遺跡平原にも負けはしない雄大な景色に穏やかに吹く風、ゆっくりと歩を進めるアプトノス。それらすべてが神秘に満ちたその世界を作り出していた。4人はひとまず草類、ハチミツ等を採取しつつ灼けた甲殻を探していた。

 

「シエンの話によると灼けた甲殻がある場所は地面が抉られているらしいんだけど……あ!あれかも?!」

 

テノアがエリアの東の端近くにできていた小さなクレーターに対して指をさしてその場所まで走っていった。他の三人もそれに気づいたのかその場所に駆け寄る。そのクレーターの中心には黒い何かが突き刺さっておりテノアはそれ砂竜の素材で出来た籠手でつかみ、地面から引っこ抜いた。形や大きさこそ違っていたがその質感や色は間違いなく灼けた甲殻と同種の物だった。

 

「よし、ゲット‼しかも二枚‼」

 

「意外と簡単に集まりそうだな……なんか拍子抜けだな」

 

「だぁぁぁぁ‼先越されたぁぁぁ‼畜生!今度は俺が先に見つけてやるからな‼」

 

テノアは高らかに灼けた甲殻を上に掲げ、ヒィトはそれを見て悔しがり、ブルーノは小さく息を吐いた。このクエストにはシエンに弟子入りできるか否かがかかっているため幸先よくターゲットの内5分の2が見つかったので肩の力が抜けたのだった。しかしそこであることに気づく。そう、悪態をついていたギーヴがエリア1の北側にある通り道を凝視していたのだった。

 

「おい何よそ見してんださっさと行く…」

 

「うるせえボケ、俺に指図するんじゃねぇ……‼」

 

ギーヴはブルーノの言葉に一切振り向かず答えさらに背を低くして抜刀体勢をとった。さすがにそれに対して何か危機感を持ったのかブルーノもそっちの方を向き、その剣呑な雰囲気に遅らせながら気が付いたのかテノアとヒィトも一緒になって向いた。別エリアへの通り道から現れたのは、

 

「あ……?あれは…アオアシラか……?でも、なんかデカい……?」

 

「いや普通にデケェ‼しかもなんかすげぇ傷だらけで強そう‼」

 

青熊獣アオアシラ。下位二級以上のハンターであれば誰でも戦ったことがあるモンスターで牙獣種との立ち回りを学ぶときに役立つモンスターである。時々『紅兜』と呼ばれる強力な力を持つ二つ名個体が出現することもあるがハンターズギルドとしては腕試しレベルのモンスターとして確認されている。しかし今目の前に要る個体からはそんな低レベルなモンスターには全く見えなかった。おそらく金冠サイズと思われる大きな体。遠目でもわかる鋭い牙と血走った眼。そして歴戦を潜り抜けた証である体中の傷。どう見積もっても下位の個体には見えなかった。

 

「やっばい、これ………‼」

 

テノアの額にはいやな脂汗が流れ出す。それは憤怒の轟竜と初めて遭遇したときと同じ感覚だった。少なくても今の自分では絶対に勝てない、そんな予言めいた確信をすることができた。

 

「みんな‼今すぐ逃げよう‼アイツ間違いなくやば……ってギーヴ?!!」

 

「おおおおおおらあああああああああ!!!」

 

何とギーヴテノアの言葉に一切反応することなく雄叫びを挙げて得体のしれない青熊獣に突っ込んでいったのだ。さすがにその蛮行にテノアとブルーノは目を見開くほど驚いていたが、ヒィトは二人とはまったく違う感想を抱いていた。

 

「すげぇ……‼自分よりも格上に対しても一歩も引かずに……‼漢だぜ‼よし、加勢する!!」

 

「ちょ、ヒィトあんたまで?!」

 

「おい、ボケカス共戻れ‼あれが下位上位の個体に見えんのか?‼あれは……‼おそらく……‼」

 

顔に冷や汗を流しながら得体のしれない青熊獣に突撃を仕掛ける二人に怒鳴りつける。あまりに大きな音は出すとモンスターを引き寄せてしまう可能性があるので狩場で大声を出すのは愚策中の愚策なのだがそれでもブルーノは声を出すことをやめることができなかった。なぜなら、今彼らの前にいるあの青熊獣は………。

 

「特級個体、G級だ‼」

 

 

特級個体。通称G級。ハンターズギルドではソロでの狩猟は上位一級、上位特級のみが許されるモンスターで弱肉強食のこの世界を生き延びた歴戦の個体である。事実龍歴院の残っている記録ではG級狗竜ドスジャギィの群れが上位恐暴竜イビルジョーを瀕死寸前まで追い込んだという記録が残されているほどだ。結論から言おう。

 

下位二名、上位二名のこの面子で勝てる可能性は限り無くゼロに近い。

 

「だからって見過ごせる訳がないでしょ!!」

 

「おい‼まさかお前まで行く気じゃねぇだろうな‼」

 

「ブルーノ‼3分、いや2分でいい‼何とか時間を稼いで‼」

テノアはブルーノの質問に答えず逆に彼に時間稼ぎするように言って草むらや地面から何かを一心不乱に採取し始めた。ブルーノは奥歯をかみしめながらテノアの方とギーヴ、ヒィト、そしてG級青熊獣の方向を交互に見た。

 

「……どいつもこいつも…………くそったれがぁあああああああああ!!!」

 

この状況に対する怒号の声を上げG級青熊獣に走っていくのだった。

 

 

「いいいいいいいいやああああああああ‼」

 

ギーヴは助走を付けながら千刃竜より作られた太刀の抜刀攻撃をよそ見をしていたG級青熊獣の頭部に与えた。頭部近くを斬り付けられたことによって血は派手に出るがG級青熊獣は特に表情を変えず、彼から見て右方向に退避したギーヴの方向をじろりと向いただけだった。

 

『ごぉおおぉおおぉぉおぉおぉぉぉおおお!!』

 

G級青熊獣は威嚇姿勢である二足歩行の体勢となり体を大きく見せるようにする。しかし、ギーヴはそれに一切ひるまず腹部に対して突きからの切り上げ、振り下ろしの連続攻撃を与えた。しかしG級青熊獣は少し眼を鋭くしただけだった。ギーヴは迅竜によって作られたマスクの下で大きく舌打ちをする。

 

「チッ!まだよろつかねぇか、くそ熊ぁ……‼」

 

「だったらこれはどうだ?!」

 

ガンっっ‼ボォウ‼

 

すると横から再びG級青熊獣の頭部に向けて思いっきりジャンプしながら赤い山羊を模した大剣を叩き付けた。この攻撃によって切り傷は発生しなかったがその代り固い物同士がぶつかった音と炎によって物が焼ける音二つの音が聞こえた。

 

「おい、三下ぁ。そりゃ『抜刀術【力】』か?」

 

「お、よく知ってんじゃねぇか!その通りだぜ!!」

 

抜刀術【力】。それは抜刀時にのみ刃物系の武器に鈍器の特性を付与させる技能のひとつであり大剣のように抜刀と納刀を繰り返す武器に相性バッチリの技能である。しかし、音の割にはG級青熊獣が怯んでいる様子はなかった。

 

「っても全然効いてねえな……‼」

 

「は‼関係ねぇ、ぶっ潰す‼」

 

「そこまでだ、ボケカス共‼!」

 

その怒鳴り声と同時に彼ら二人の間二つの球が通過した。一つはG級青熊獣の顔面に、もう一つはその足元ににぶつかった。そしてぶつかった瞬間エリア中に濃霧のように白い煙と確かな悪臭がしてきた。そうこれは煙玉とこやし玉だ。さすがにこれば厳しかったのかG級青熊獣苦しげに顔をゆがめる。……初めてこのモンスターを苦しませたのがこやし玉というのは何とも皮肉だが。ブルーノはギーブの左側に立ちG級青熊獣の状態を確認する。

 

「……よし、あの怪物が悶絶しているうちにさっさと俺たちもベースキャンプに逃げるぞ……‼……あそこまで逃げればもう追ってこれねぇ‼」

 

「おい、何狩りを邪魔してんだ‼せっかくの流れをぶち壊しやがって‼」

 

「うるせぇ……‼テメェらはこの数合でまだ戦力差を理解していねぇのか……‼?……テメェらご自慢の武器を見ろ‼」

 

「………‼なっっっ?‼」

 

「ああぁ!!俺のバロバイドブレイドなんかすげぇ歪んじまってる‼たった一回で?!」

 

見るとギーヴの太刀は鈍同然に刃こぼれし、ヒィトの大剣は山羊の角を模した部分の片方が見るも無残に凹んでいた。普段の彼らならすぐに気づくだろうが今は生命危機的状況に陥りアドレナリンが放出しっぱなしで冷静な判断ができなくなっていたのだ。

 

「……ほら行くぞ‼……このままじゃ俺たちは犬死するだけだ……!!」

 

「……くそったれがぁ……!!」

 

太刀を抜刀状態のまま震わせそこに立っている。ブルーノが言っていることがすべて正論であることを彼だって理解している。しかしその反骨心だけが今彼をこの場に引きとめているのだ。

 

「……早くしろ‼……置いてくぞ‼」

 

「………くそったれがぁぁあああ‼!」

 

「……?‼」

 

ところでこの煙玉は視覚情報を著しく制限する効果がある。だが逆に言えばそれぐらいしか効果がなく、その効果はハンター側にもむしろハンターの方がより強く影響される。だから問答の中心になりで頭に血が上ったせいでほかの感覚も鈍くなっていたブルーノとギーヴは気づけなかった。逆に若干蚊帳の外に追い込まれていたヒィトはギリギリで気づくことができた。そして、彼は力の限り叫ぶ。

 

「ギーヴ、ブルーノ!!よけろぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!」

 

『ぐぅぅぅぅううおおおおおおあぁぁぁぁあああぁ!!!』

 

「「!!?!!?!??」」

 

二人は恐怖後悔焦燥絶望全てが詰まった瞳でその光景を見る。青熊獣お得意の剛腕から繰り出される死のラリアット。ために溜められた左の横薙ぎが繰り出される。その瞬間ブルーノは小盾で防御を試み、ギーヴはジャスト回避によっていなすために構えようとした。しかし、

 

全て、無駄だった。

 

バキャッッ!!キンッッッ!!ズシャァ!!

 

「ガホォウッッッッ!!?」

 

「んぎゃぁぁああああああ?!!」

 

「う、うわああああああぁあああ!!」

 

ブルーノの小盾の上からそれを砕きすさまじい衝撃を彼の体全体にぶつけ、ギーヴのいなそうとした太刀をあっさりとあらぬ方向に弾き飛ばし、さらに返す勢いで繰り出された右のラリアットを、というか鋭い爪を使った5本の斬撃をまともに浴びせた。二人はその勢いのまま後方に飛ばされてしまった。遠目で見た限りではまだ息をしている感じだが、二人とも夥しい量の血を流しており、早く手当をしなければ手遅れになることは明白だった。

 

しかしここまでに被害を敵に出してもG級青熊獣の攻撃は止まらなかった。今度は完全に動揺してしまったヒィトにターゲットを絞ったのだった。三回目のラリアットをし終わった後、体幹全体を使ってヒィトの後に回り込むようなスカイアッパーを繰り出してきた。

 

『ぐうぅぅぅおおおおおおおおああああおおあああ‼』

 

「ち、ちっきしょおおおぉおぉぉおおおおお‼!」

 

これで止めだ。

 

まるでG級青熊獣はそう叫ぶかのような咆哮を上げ右腕のスカイアッパーをヒィトに打ち出し、それに対してヒィトは破れかぶれの横薙ぎで迎撃をしようとする。この時点で戦闘の結果は見えたようなものだったが、

 

ぼぉぉん!

 

そのあまりに場違いな軽い爆発音が聞こえた瞬間、中途半端な体制のままG級青熊獣の動きが止まった。標的が急に止まったため大剣が空振りしていまいヒィトは尻餅をついてしまう。しかしG級青熊獣はそんな無防備のヒィトなど目もくれず爆発が起こったと思われる方向を凝視しそして猛然と走り出していった。目的の場所に着いたら急にお尻から座り込んで地面にある何かを食べ始めたのだった。

 

「な、何が起こったってんだ……?!しかもあの爆発は一体……?それになんか甘い臭いが……?ハチミツ……?」

 

「(………ヒィト……!……ヒィト‼)」

 

ヒィトが体を起き上がらせながら混乱していると下の方から声が聞こえてきた。そこには血だらけのギーヴの傷口にハンター用簡易止血布を押しつけつつ肩を組ませて持ち上げているテノアの姿があった。

 

「?!……テ、テノア……だっけか?!……まさかあの爆発、お前がやったのか?!一体どうやって?!」

 

「(……説明は後!今はとりあえず煙玉が効いているうちにベースキャンプまで行かないと……‼二人を運ぶの手伝って……!!あと小声で、あんたたち大声出しすぎ‼)」

 

「(……お、おう…わ、分かった…!!)」

 

テノアにきつく言われて小声に変えつつ荒い呼吸をしているブルーノをおんぶして持ち上げるヒィト。二人はそのまま大怪我人二人を連れてベースキャンプに丁寧にそれでいて素早く運び込んだ

 

クエストを開始してから約5分。龍歴院遺群嶺調査団最初のクエストはあまりにも残念な結末と終ってしまった。

 

クエスト:新天地にて焼けた星見たり

フィールド:遺群嶺

環境:不安定

メインターゲット:灼けた甲殻を五つ納品 3000z

サブターゲット:なし 

制限時間:50分

 

クエスト失敗‼

 




励みになるのでコメント待っています!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。